強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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5th フェーズ 決

No.123 追跡者

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「どこまで逃げる気だい?ヴァ―リ!」
 破壊された壁から唐突に現れるMs.ストレングス。

「もう来たのか。怪物め」
 Ms.ストレングスをみてその場から早々に逃げ出すヴァ―リ。

「坊やと追いかけっこするのは慣れてるからね」
 彼女は障害物を破壊しながらヴァ―リを追いかける。

「くそ!」
 ヴァ―リは下がりながら手から光線を放つ。

「おー、キラキラしてて綺麗だね」
 ストレングスは光線を回避した。

(こちらの攻撃を予測して軌道から避けたのか、歴戦の傭兵なのは間違いない)
 
 ヴァ―リは逃げながら道中の防火扉を作動させ、時間稼ぎをしようとする。
 Ms.ストレングスは目の前に現れた扉をいとも簡単に破壊し突き進んだ。

「こんな扉で止まると思ってるのかい?」

 絵面だけみればモンスター映画かのようだ。
 扉や障害物を破壊しながら突き進む、Ms.ストレングス、彼女の剛腕の前では多少分厚く頑丈に作った扉程度では役に立たない。

 ヴァ―リはMs.ストレングスに捕まらないように攻撃を回避しながら逃げていく。
 彼は通路に面した部屋の一つに飛び込む、その後を追うMs.ストレングス。
 彼女が部屋に入るころにヴァ―リは更に奥の部屋にいた。

 部屋に入った瞬間、Ms.ストレングスが何か違和感を覚えた。

「ッ!」
 彼女は咄嗟に地面に拳を放ち、勢いを利用しヴァ―リに向かって飛びかかった。

「やるじゃないか」
 Ms.ストレングスの手はあと一歩の所でヴァ―リに届かなかった、彼女の動きが不自然に止まったのだ。

「こっちのセリフだ、全身を凍らせてやるはずだったのに」
 ヴァ―リは彼女がいた部屋に冷凍装置を仕掛けていたのだ、昔のように。

 装置を作動させ、厄介な追手を氷漬けにするつもりだった。だがそれは昔のようにはいかなかった。Ms.ストレングスの咄嗟の行動により彼女の片腕しか氷漬けに出来なかったのだ。

「だが腕を捉えることが出来た、足止めにはなるか」
 ヴァ―リがそう言うとMs.ストレングスが笑う。

「なにいってんだい?足止め?こんなんで足が止まると思ったら大間違いだよ」
 Ms.ストレングスは一切の躊躇もなく、氷漬けになった自分の腕を切り落とした。
 
「こいつ!腕を?!」
「こっちは最初から命かけてんだ、腕の一本ぐらい大した経費じゃないさ」
 ヴァ―リを射程に捉えるMs.ストレングス。

「さあ!残りもんで良ければどうぞッくらいやがれッ!」
 放たれた拳がヴァ―リを捉える。

「がぁッ!」
 勢いよく殴り飛ばされたヴァ―リ。

「喧嘩売る相手を間違えたね。どんなに便利な体を手に入れても、そこを間違えるとこうなる……良い教訓になったんじゃないかい?」
 部屋を幾つか破壊し、ヴァ―リは地面に倒れていた。

「あ……ああ、骨身に染みたよ。まったく、備えというのはしておくべきだな」
 起き上がるヴァ―リ。

「なに?」
「ここが、私が目指していた場所だ」
 彼は地面に落ちている注射器を自身に注射した。

 何かを注入した彼の目が光る。

「最新のアップデートが完了した」
 腕を細かい粒子に分散させ、幾つもの砲身を作り出すヴァ―リ。

「君の役目はここで終わった」
「やるじゃないか」

 部屋に眩い閃光が満ちる。


 一方その頃、シャーロットの元にチザキ・アキナが現れた。

「チザキアキナ……回復してきたのか?ということは誰かの血を飲んだな」
 チザキ・アキナを見たチャールズがそう言った。

「え?」
 シャーロットはチザキをみる。

「こっちサイドにはチザキ・アキナの吸血対象となる者は殆どいない、指令室などにいる者達は生身だが血液に細工はしてある。奴が持っていた輸血パックも全て私の毒で使えない。貴様らが乗ってきた船まで戻れば補給出来るだろうが、この短時間でそれが出来たとは到底思えない」
 チャールズは鋭い視線をチザキに向けた。

「誰の血を飲んだんだ?」

「ブルズアイ」
 チザキがそう答える。

「……!」
 シャーロットは目を見開いた。

「仲間割れか?正解だと思うぞ、奴はガンマとの戦闘により重症を負っていた。奴を殺して血を奪うのは極めて合理的だ」

「……それは」
 俯くチザキ。

「違うよ」
「シャーロット……?」
 チザキよりも先にシャーロットが口を開けた。

「チザキさんはそんな事しない、ブルズアイさんが彼女に託したんだよ」
 真っ直ぐとチザキを見詰めるシャーロット。

「ほう、その仮説の根拠は?」
 チャールズの言葉に首を横に振るシャーロット。

「仮説なんかじゃない。私が知ってる2人は仲間割れなんてしない、そう断言できるから」

「断言か、君らは知り合って間もない、断言できるほどの情報が集まっているとは考えにくい。浅はかではないか?」

「理屈で考えるとね。でも人の理屈がカバーしてる範囲なんて大した事ない」
 シャーロットの言葉を聞いて頷くチャールズ。

「興味深い、信頼関係か」
「あんたにはある?」
 今度は鼻で笑うチャールズ。

「分かりきったことを聞くな、無いに決まっている」
「やっぱりわかりあえないね」
 再び笑うチャールズ。

「分かりきった事を言うな」
 ガーディアンを自身の前に配置するチャールズ。

「行くよ、チザキさん!」
「うん!」
 シャーロットとチザキは構える。

「二人に増えた所で何も変わらん、こちらの数的優位は変わらん」

「チザキさん」
「分かった!」
 チザキは血液を元に分身を作成する。

「ほう、血で分身体を作れるのか。やはり、ただ血を操るだけではないな。血を核としてその周囲の物質を操っているのか?具体的な元素?それとも空気といった複合的なものか?」
 興味深くチザキの血の分身を観察するチャールズ。

 ガーディアンが彼女達に攻撃を仕掛けた。
 チザキとその分身たちはガーディアンの攻撃をかいくぐり反撃する。

 その光景を後ろから観察しているチャールズはある事に気付いた、ガーディアンの装甲に傷がついていたのだ。

(ガーディアンの装甲に損傷?この程度の連続した衝撃なら対耐性テストで既に検証済み、その時はかすり傷ひとつすらなかった)

「ガーディアン、損傷箇所の詳細なデータを……なるほど、非常に興味深い」
 ガーディアンの装甲に関する情報を即座に収集し分析するチャールズ。

「チザキ・アキナの血液にいる微生物か!進化している、私のガーディアンの装甲を侵食できるほどに!」
 チャールズは笑みを浮かべる。

「いいぞ、一度戦闘データを得た相手とまた戦うのは少々退屈だとは思った。その考えを改めよう!君たちは非常に良いサンプルになりそうだ!」

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