強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

文字の大きさ
125 / 135
5th フェーズ 決

No.125 完璧な作戦

しおりを挟む

 チャールズと戦うシャーロットとチザキ。

「クソ……有効な攻撃はできずじまい」
「当たらなくなってきた」
 二人の攻撃が徐々に通用しなくなってきたのだ。

「君らが合流するのが遅すぎた。ガーディアンは既に君たちの戦闘能力に関するデータを収集済みだ。ガーディアンは君たちの次にとる行動を予測して先手を取るだろう。もう君たちは詰みの状態にいるのだ」
 
 チャールズは冷たい視線を二人に向ける。

「なるほどね」
「チザキさん、大丈夫?」

「……うん」
 チザキとシャーロットは見つめ合い、頷いた。

「だが意外だった、ガーディアンの装甲すら侵食する微生物か。興味深い、次の改良項目が決まったな」
 チャールズは端末を操作し、次の改良リストというページを開く。

「研究に協力したんだからギャラもらえる?」
「確かに、ならばこちら側について貰わないとな。振り込む為の口座などの情報も必要だ、あとでヴァ―リに打診するぞ」
 そう言って手を差しだすチャールズ。

「交渉決裂ッ!」
「やはりな」
 シャーロットはチャールズに向けて発砲する。


 シャーロットが放った弾丸にチザキの血をコーティングさせる。相手の装甲を侵食する弾丸が出来上がった。
 しかしガーディアンたちはその銃弾を避ける。

「くらえッ!」
 銃弾を避けたガーディアンたちに対してチザキが追撃を仕掛けた。血の鞭を作り出し、全体に向けて攻撃を振るう。

 ガーディアンたちは彼女の攻撃を避けていく。

(よし!良いぞ!そのまま行けば!)

 ガーディアンのうち1体の背後から銃弾が迫る。先ほど避けられた銃弾だ。避けられた後に跳弾し、ガーディアンの背後を取ったのだ。

「……」
 しかしガーディアンはチザキの攻撃を避けながら銃弾を撃ち落とした。

「くっ!」
「その連携もガーディアンは予測済みだ」
 

「データをもとに私達の次の行動を計算して予測するんだよね……」
「その通りだ」
 チャールズは何やら手元の端末を操作しながら話す。

 どうやら次の改良のための図案を作成しているようだ、もうすでに彼の中でこの戦いは終わったものになっているのだろう。

「だったら、その予測の大前提を覆せばいいだけ」
「何?」
 チャールズの手が止まる。

「チザキさん!」
「分かった!」
 シャーロットはアーマーから飛び出し、チザキは彼女の首に噛みついた。

「なるほどそう来たか!」
 チャールズは端末を閉じた。


「アンタは厄介だ、ここでかならず倒す!どんな犠牲をはらっても!」
 シャーロットはこの言葉を放って倒れた。チザキは彼女の血の殆どを吸いだした。

「ガーディアンが予測に使用する計算式、その前提は対象が戦闘に勝利しようとすること、より具体的に言えば生き残ろうとする事だ。生存しているあらゆる生命が持つ絶対的な前提、その前提を覆す……」

「ガァアアァッ!」
 チザキは大量の血を全身から噴出させ、無数の刃に変形させる。
 それはまるで波のようだった。

「死をもいとわぬ作戦、自爆覚悟の攻撃か!」
 
 ガーディアンが回避しようとした、だがチザキが生み出した無数の刃の間を潜り抜ける事は出来なかった。

 刃は相手の防御も関係なく切り裂いた。

「ガーディアンを一撃かッ!」

(チザキ・アキナの攻撃範囲から考えるに、使用している血の量は奴にとっても致命的なはず。私もろとも道連れにするつもりか?)

 刃の波からチザキが飛び出し、チャールズに襲い掛かる。

「オマエモダァァッ!」
 チザキの一撃により体を引き裂かれるチャールズ。


 倒れていたチャールズはゆっくりと起き上がる。
「随分とひどくやられた。しかし、そちらの燃料切れが先に来たか」
 
「はぁ、はぁ……」
 彼の前にチザキが倒れている。

「悪くない……作戦だった。この身体も相当な額の研究費と時間を注いで作ったんだがな、他の連中との戦闘は不可能か」
 チャールズは周囲を見渡す。

「はぁ、この部屋もそうだ、特別製で他より頑丈に作られていたのに。酷い有様だな」
 彼は再びチザキに目線を向ける。

 すると彼は、チザキの腕に管が付いている事に気づく。
 管の先には輸血パックがあった。

「輸血パック?それは既に毒に汚染されている、ここに来て自決か?」
 
 チザキは倒れながらも汚染された輸血パックから血を吸っていた。

「……ッ!」
 倒れながらもチザキはチャールズを睨む。

「そんな訳じゃないよな」
 チャールズは自身の身体から銃を取り出す。

 次の瞬間、チャールズの側面から銃弾が撃ち込まれた。

「……そうか、ようやく分かった。なるほど、まったく私とした事が」
 銃弾を喰らい倒れるチャールズ、彼は銃弾が飛んで来た方向に目を向ける。

「少量ずつ毒入りの血を摂取し、耐性を得たのか。きわめて基本的、ワクチンなどと同じ仕組み。まさかあの特製毒でそれをするなんてな」
 チャールズはシャーロットに目を向ける。

 酷い顔色のシャーロットが寝たままの姿勢で銃を構えていた。

「取り込んだ血液から毒を排除し、その血をシャーロットに渡したのか」
「その……とおり」
 辛そうに返事するシャーロット。

「だがその作戦でチザキ・アキナは継続的に毒を摂取する事になる。いくら抗体を作れるとは言え身体への負担が消える訳ではない。現に彼女はかなりきつそうだぞ」

「これぐらい、ヘーキ、ヘーキ」
 チザキは息を切らしながらそう言い返した。

「シャーロット、貴様の回復だってそうだ、血液が戻った所で即座に元どおりとはいかんだろう」

「そのとおりだよ、我ながらよく今の当てられたと思う。正直めっちゃ気持ち悪い、起き上がれる気しないし」
 シャーロットも依然として顔色が非常に悪い。

「自爆覚悟で、その成功率も滅茶苦茶、酷い作戦だ」
 チャールズは笑った。

「それが私の考えた完璧な作戦……どーよ」
 シャーロットは笑って返した。


 彼女らの激しい戦闘に耐えられなかったのだろう、部屋の至る所から音をたて崩壊し始めた。

「これは再建築だな」
 チャールズは部屋の様子を見てそう言った。

「ここから、出なきゃ……!」

 するとシャーロットの上にある天井が崩壊した。
 彼女に目掛け天井の瓦礫が落下する。

「シャーロットッ!」
 チザキはシャーロットを助けようとする、しかしまだ毒の影響で体が思うように動かせない。

 それはシャーロットも同様だ。まだ血液が体に戻りきっていない。
 
 瓦礫が床に騒音を立て衝突し、煙と破片をまき散らした。

「シャーロット!シャーロットォッ!」
 チザキは声を上げた。

「あ、ああ、チザキさん、聞こえるよ……でもなんで?」
 シャーロットは落下してきた瓦礫の側に倒れていた。

 動けない筈のシャーロット、なぜ彼女が瓦礫から逃れられたのか。
 その答えはすぐに分かった。

「え……そんな、なんで?!」

 シャーロットの目の前には瓦礫の下敷きになったチャールズがいた。

「それはお前をここから押し出したからだろう」
 チャールズは平然と話す。

「そうじゃなくて!なんで私を助けたの!」

「うーん、それの答えだが。うーん、ろくな答えが見つからないんだ」
 首をかしげるチャールズ。

「気づいたらこうなっていた。お前は私の敵だ、このまま瓦礫の下敷きになれば生存率は極めて低い、チザキも毒によって動けない……私は残りのエネルギーを使い身体を修復し戦線に戻る。全てが上手く行く。なのになぜだ?」
 チャールズはシャーロットを見る。

「お前をみるまで子どもがいる事すら知らなかった、世間で言えば最低の父親だ、なのに情が湧いた?これは興味深い、バグのようなものか?私の完璧を揺るがすとは」
 彼はシャーロットの顔をよく見た。

「にしても……本当によく似ているな」

「え?誰に?」
「お前の母親だ、決まっているだろう」

 再び部屋の至る所から音がする。

「ではな」
 チャールズがそう言うと半壊したガーディアン達が動き出す。

「え?!」
「なに?」
 ガーディアンはシャーロットとチザキを抱えて外に連れ出した。

「……まって!」
 シャーロットは小さくなっていくチャールズに手を伸ばす。

(まだこの世界には興味深い事が満ちている。素晴らしい!完璧な世界だ)

 チャールズは瓦礫の向こうに去って行くシャーロットたちを眺めながら微笑んだ。

 シャーロットとチザキが外に出た瞬間、部屋は崩壊した。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...