追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

文字の大きさ
111 / 119
3章 依存国ツィーシャ

魔導具

しおりを挟む
「よくここにいるってわかったね?何も言ってなかった気がするけど………」

クレアの突然の来訪に驚いたリュカオンが後ろの映し出された魔法陣をいじるのをやめて聞いてきた。
クレアは自身の目を指さして答えた。

「私、魔力が視えるからそれで辿ってきたの。ご飯を食べたからお礼を言いにきたんだけど………何してるの?」
「あぁ、今魔導具を造ってるんだ」

疑問が解消されて納得した表情を見せたリュカオンに、クレアが質問すると、リュカオンは少し楽しそうな様子で答えてくれた。
しかし、リュカオンの返答にクレアは眉根を寄せた。
後ろの何かをまじまじと見てみる。
人が1人入れるほどの円柱型カプセルの形をしていて、外側にいろいろと操作するパネルらしきものがついている。
今はカプセルの表面がモニターのようになってパネルから送り出された情報を大きく映し出している。
クレアは余計に訝しんだ表情をリュカオンに向けた。
リュカオンはクレアの反応にむっとした。

「『こんな形のものが?』とか聞くなよ?よく見る形じゃないけどれっきとした魔導具だよ」

クレアの反応はもっともで、実際いろんな魔導具が世の中では使われている。
人の気配で明かりがつくものや、体を温めたり冷やしたりしてくれるもの、ファルが使っていた大量のものを収納できる袋などがある。
魔導具は魔力の有無に関わらずに使えるようにつくられていて、とても便利であり、需要があるために生活に役立つ系統の魔導具が大半である。
しかも大体は身につけたり部屋においても邪魔にならない大きさだったりする。

だからこそ、カプセル型のよくわからない大きな物体が魔導具と言われても、あまりぴんとこないのだ。

「何をするものなの?」
「転移」
「………? でも、リュカオンは転移ができるでしょ?」

気になって聞いてみた答えに、クレアは首を傾げた。
また新たに現れた疑問を投げると、リュカオンは苦笑いしながら答えてくれた。

「確かに使えるけど、僕は『シャルア』みたいにもともと転移系統の属性でもないから後から覚えたんだ。おかげで魔力の消費が酷いし、座標もよくずれるからまだまだ使い勝手が悪くてね。それに………いや、なんでもない。
とにかくぴったりとした座標に転移できたらいいなと思って造ってるところ」
「………つまり、自分の『転移』の精度を上げるよりも魔導具をつくるほうが効率的ってこと?」
「まあそんな感じだね」

片手でパネルをいじりながら、もう片方ではメモをとるといった器用っぷりにクレアは少し感心した。
アナスタシアにいたときは、手合わせで魔法を使うことはあっても、こんなふうに魔導具をつくるリュカオンを見たことがなかったのだ。

まじまじと見てくるクレアにリュカオンは気恥ずかしそうにクレアのほうを向いた。

「ずっと見てるけど……そんなに気になるの?」
「え?……あぁ、たしかに気になるけど、それよりも私はリュカオンが魔導具をつくれることにびっくりしてるというか……」

魔導具はデザインや設計を考えて図面におこすのは誰にでも許されているが、造るには資格が必要になる。
資格の種類もさまざまで、簡単なものだけつくれる資格から、個人的研究や国家事業などに使われる危険なものなどをつくれる資格までと幅広い。

資格取得の試験は極めて公正で公平で、実技試験を除くすべての試験で魔法の使用が禁止される。替え玉だってカンニングだってできない。
そんな試験を受けてようやく得られるため、最も低次な資格でさえも合格率は2桁になることがあまりない。

リュカオンのこの魔導具は、個人的なものに分類されるだろうからとても高度な資格のはずだ。
だが、資格を得る試験に行けば指名手配の人間だとばれてしまう。
だとしたら指名手配されるより前になるが、一体いつ取ったというのか。

考えれば考えるほどわからず、リュカオンの返事を待つと、リュカオンはクレアのほうを向きながらもパネルを触る手だけは止めずに作業をしながら答えてくれた。

「もともと、何かを造るのが趣味でさ。大魔協に引き取られてからは手先の器用さを買われて、資格を取得させられたんだ。
おかげでアナスタシアでは表向き魔導具を造りつつ任務として『シャルア』たちを見ることができたり、今こうして罪に問われることなく造れたりしてるからこの資格にはいろいろと助けてもらってるけど、ちょっと複雑ではあるかな」

話しながらパネルを動かしていた手が止まり、なんとも言えないや、とうつむきがちにつぶやいたリュカオンに、クレアも黙ってしまった。

大魔協は、人を駒として見る者の集まりだ。
目的を果たせるならあるだけの死んでもいい駒を投下して、死んだら見捨ててまた駒を増やしていく。
その点、使い勝手のいい駒というのは重宝される。
計画が進みやすくなったり、無駄に駒を浪費しないで済んだりするからだ。
リュカオンが資格を、しかも高度な資格を取らされたのはきっと、いい駒になると思われたからだろう。

「……『シャルア』、この魔導具に魔力を流すのを手伝ってほしいって言ったら手伝ってくれる?」

沈黙がいたたまれなくなったのか、リュカオンは話を切り替えて何事もなかったように口を開いた。
クレアもそれを察して、少し間を置いて頷いた。

「ありがとう。まずここに手を置いてもらって、人にするのと同じ要領で魔力を流してほしい。
僕がいいって言うまで流してね」

クレアはリュカオンの指示通り、さっきまでリュカオンが触っていたパネルの前まで来て、パネルに手を置いた。
そうして体をめぐる魔力をを手先に集中させて、パネルに魔力を流していく。
リュカオンは近くでその様子を見守りつつ、時折ちらりと足もとを見ている。
魔力を確認しているのだろう。

そんなことを気にせず、クレアが魔力を流し続けること数十秒。

「………うん、いいよありがとう」
「えっ、もういいの?」

あまりにすぐ終わったため、クレアは驚いてしまった。

魔導具は、誰でも使えるようにできているが、道具との違いは魔力にある。
魔力が吹き込まれたら、システムが作動して道具として動く。言い換えるならば電池や電力のようなものだ。
一回の使用でどれだけの魔力が消費されるかの計算し、どれくらいの期間で使う魔力を出す。そうしてその必要分の魔力を魔法使いが入れたり、魔法石で移していくことで魔導具が出来上がる。
消費される魔力は効能や大きさによってさまざまだ。
魔導具の中の魔力がなくなったら、もう一度魔力を込めたら使うことができる。
しかし、また長い間使いたい場合は魔力量の多い魔法使いが時間をかけて魔力を込めるか、大量の魔法石の魔力を移すなどを行う必要がある。

大きさからして、稼働には相当な魔力を使うだろう。
魔法石だけで補えない場合に備えて、魔力を溜めるのはよくあることで、クレアは何度かやったことがあった。
今まで経験したものはこの魔導具よりも小さいものが大半で、それでさえ何日かに分けて十数分だった。
大きなこの魔導具ならなおさらだと思っていたために、拍子抜けしてしまったのだ。

聞き返されたリュカオンは、当たり前のように頷いた。

「……魔力を流すのはそれで十分。ありがとう」
「それなら、よかったけど………」

リュカオンは本当に?と言った表情で見てくるクレアの頭を優しくなでて、また作業に戻った。
クレアはなでられた部分を触りながらリュカオンの背中を少しの間見つめて、邪魔にならないように静かに去って行った。







キィ………

キィ………

扉の軋む音が2回聞こえて、クレアがいなくなったことを確認すると、リュカオンはパネルを操作して何かを決定した。

「……用途は言ってないけど、悪いことには使ってないし大丈夫なはず」

ひとりごとをいいながらリュカオンは参考文献を探すために魔導具の前をあとにした。





モニターには『変更完了』の字が浮かび上がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”  人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!

職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます! ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。 この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。 戦闘力ゼロ。 「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」 親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。 「感謝するぜ、囮として」 嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。 そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。 「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」 情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。 かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。 見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

処理中です...