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第37話 二つの選択肢、異世界で見つけた居場所
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金色の朝日が牧場を優しく包み込む中、悠真は納屋から出てきたばかりだった。彼の手には古い木製のバケツが握られており、朝露に濡れた草の匂いが鼻をくすぐる。
「今日は、リーフィアがミリアムの村に遊びに行くんだったな」
独り言のように呟きながら、悠真は納屋の扉を閉める。リーフィアはミリアムの住んでいるグリーンヘイブン村を見てみたいということで、今朝早くに出発していった。今日中には帰ってくるようだが、久しぶりに牧場で一人きりになる時間ができた。
ウィンドが遠くの丘で優雅に舞い、朝の光を浴びて銀色の翼が輝いている。アクアとフレアはいつものように追いかけっこをしており、前者の水色の尻尾と後者の炎のような赤い毛並みが対照的だ。
「みんな、今日も元気だな」
悠真がそう微笑むと、足元でテラが「ミュウ!」と元気に鳴き、目をキラキラさせながら見上げてきた。カーバンクルは小さな手を動かして何かを訴えているようだ。
「わかった、わかった。畑の手入れを手伝ってくれるんだな」
テラの額の赤い宝石が満足げに光り、彼はぴょんぴょんと跳ねて畑の方へと先に進み始めた。
――――――
午前中の作業を終え、悠真は居間のソファに腰を下ろした。窓から差し込む陽光が床に四角い光の絨毯を作り出している。テーブルの上には魔像結晶で撮った牧場の写真と、広げられた『世界の希少生物図鑑』が置かれていた。
「一人だと静かすぎるな……」
彼の独り言に応えるように、ルナが静かに足音を立てずにソファに飛び乗り、悠真の膝の上で丸くなった。
「お前も暇なのか、ルナ」
黒猫は気持ちよさそうに喉を鳴らし、悠真の手の下で体を丸めた。彼は無意識に猫の頭を撫でながら、窓の外を見つめる。
青い空、緑の丘、そして遠くに広がる森。この風景はもう、彼にとって馴染み深いものになっていた。そして、ふと彼の心に記憶が蘇る。
「そういえば……あの日から、もう一年近く経つのか」
異世界に召喚された日のことを思い出す。白い光に包まれ、気がついたらバストリア王国の召喚の間に立っていた。予期せぬ出来事に戸惑いながらも、この世界の現状やスキルのこと、世界を救ってほしいと頼まれたこと。そしてあの時、最後に国王が語ったこと――
「元の世界に戻す方法はある」
その言葉は今でも耳に残っている。しかし、それには大量の魔力と複雑な儀式が必要だと説明された。魔王グレイヴァスとの戦いの最中、そのような余裕はないという話だった。
「もちろん、せっかく召喚した勇者にいきなり帰られては困るってのもあっただろうけど……」
悠真は苦笑する。しかし同時に、真剣に考えざるを得ない問いが彼の心に浮かび上がっていた。
「もし、彼らが魔王を倒したら……俺は元の世界に帰るだろうか?」
ルナが不思議そうに顔を上げ、黄金色の瞳で悠真を見つめた。その目には何かを見透かすような賢さが宿っている。
「来たばかりの頃なら、迷わず帰ると言っただろうな……」
しかし、今は……分からない。元の世界では彼は一人だった。両親は早くに亡くなり、親戚付き合いもほとんどなかった。仕事仲間などは多少心配してくれているかもしれないが、深い絆で結ばれていたわけではない。
対して、この世界には——
窓の外を見ると、ヘラクレスが角から小さな炎を出しながら草を食んでいた。そばではベルがのんびりと横たわり、サクラは桜色の毛並みを風になびかせている。トレジャーが空から舞い降り、何か光るものを落としていった。
「この世界には、大切な仲間がいる」
心の中でそうつぶやいた時、悠真は自分の考えに驚いた。いつの間にか、この場所は彼にとって「居場所」になっていたのだ。リーフィア、ミリアム、そして牧場の動物たち。彼らとの日々は、かけがえのないものになっていた。
「もし、どちらかを選ぶ日が来たら……」
悠真は深く考え込み、窓の外を見つめたまま動かなくなった。時間が過ぎていくのも忘れ、彼の心は二つの世界の間で揺れ動いていた。
――――――
「メェ~」
心配そうなベルの鳴き声に、悠真は我に返った。見れば、いつの間にか牧場の動物たちが居間の窓の外に集まっていた。ベルの横には、角から小さな炎を漏らすヘラクレスが立ち、アズールも小さな翼をパタパタさせながら心配そうに覗き込んでいる。
「みんな……何してるんだ?」
悠真が窓を開けると、フレアが小さく鳴いて尻尾を振った。シャドウとミストも不安げな表情で見上げている。彼らは心配したように悠真の周りに集まってきた。
「大丈夫だよ。ただ考え事をしていただけだ」
悠真が微笑むと、動物たちも少し安心したように見えた。彼は一人ひとりの頭を優しく撫でて回る。温かい毛並み、そして彼を心配してくれる彼らの存在に、胸が熱くなった。
その時、牧場の入り口からリーフィアが帰ってくるのが見えた。彼女の腕には色とりどりの草花が入ったバスケットが抱えられていた。
「悠真さん、ただいま戻りました……あら?」
リーフィアは動物たちが悠真の周りに集まっている様子を見て、首を傾げた。彼女の銀色の髪が風に揺れ、碧色の瞳には心配の色が浮かんでいた。
「何かあったんですか?みんな心配しているようですが」
悠真は軽く頭を振り、微笑んだ。
「いや、ちょっと考え事をしていて、みんなを心配させてしまったみたいだ。それより、ミリアムの村はどうだった?」
リーフィアは一瞬だけ悠真の表情を探るように見つめたが、すぐに明るい笑顔を見せた。
「はい、とても楽しかったです。ミリアムさんが色々と説明してくれました。それに……」
悠真はリーフィアの話を聞きながら、内心では先ほどの自問自答を続けていた。答えはまだはっきりとは出ていない。しかし、ひとつだけ確かなことがあった。
「今は、この瞬間を大切にしよう」
アズールが「キュイッ」と鳴き、悠真の足元に寄り添った。彼は小さなドラゴンの頭を撫で、空を見上げた。オレンジ色に染まり始めた夕焼け空の下、牧場は穏やかな時間が流れていた。
「お前たちがいてくれるおかげで、この場所は特別なんだ」
それは動物たちに向けた言葉でありながら、自分自身への確認のようでもあった。答えはまだ出ない。しかし、今はこの世界で精一杯生きよう。悠真はそう心に誓いながら、温かな夕暮れの牧場で、仲間たちとの時間を噛みしめていた。
「今日は、リーフィアがミリアムの村に遊びに行くんだったな」
独り言のように呟きながら、悠真は納屋の扉を閉める。リーフィアはミリアムの住んでいるグリーンヘイブン村を見てみたいということで、今朝早くに出発していった。今日中には帰ってくるようだが、久しぶりに牧場で一人きりになる時間ができた。
ウィンドが遠くの丘で優雅に舞い、朝の光を浴びて銀色の翼が輝いている。アクアとフレアはいつものように追いかけっこをしており、前者の水色の尻尾と後者の炎のような赤い毛並みが対照的だ。
「みんな、今日も元気だな」
悠真がそう微笑むと、足元でテラが「ミュウ!」と元気に鳴き、目をキラキラさせながら見上げてきた。カーバンクルは小さな手を動かして何かを訴えているようだ。
「わかった、わかった。畑の手入れを手伝ってくれるんだな」
テラの額の赤い宝石が満足げに光り、彼はぴょんぴょんと跳ねて畑の方へと先に進み始めた。
――――――
午前中の作業を終え、悠真は居間のソファに腰を下ろした。窓から差し込む陽光が床に四角い光の絨毯を作り出している。テーブルの上には魔像結晶で撮った牧場の写真と、広げられた『世界の希少生物図鑑』が置かれていた。
「一人だと静かすぎるな……」
彼の独り言に応えるように、ルナが静かに足音を立てずにソファに飛び乗り、悠真の膝の上で丸くなった。
「お前も暇なのか、ルナ」
黒猫は気持ちよさそうに喉を鳴らし、悠真の手の下で体を丸めた。彼は無意識に猫の頭を撫でながら、窓の外を見つめる。
青い空、緑の丘、そして遠くに広がる森。この風景はもう、彼にとって馴染み深いものになっていた。そして、ふと彼の心に記憶が蘇る。
「そういえば……あの日から、もう一年近く経つのか」
異世界に召喚された日のことを思い出す。白い光に包まれ、気がついたらバストリア王国の召喚の間に立っていた。予期せぬ出来事に戸惑いながらも、この世界の現状やスキルのこと、世界を救ってほしいと頼まれたこと。そしてあの時、最後に国王が語ったこと――
「元の世界に戻す方法はある」
その言葉は今でも耳に残っている。しかし、それには大量の魔力と複雑な儀式が必要だと説明された。魔王グレイヴァスとの戦いの最中、そのような余裕はないという話だった。
「もちろん、せっかく召喚した勇者にいきなり帰られては困るってのもあっただろうけど……」
悠真は苦笑する。しかし同時に、真剣に考えざるを得ない問いが彼の心に浮かび上がっていた。
「もし、彼らが魔王を倒したら……俺は元の世界に帰るだろうか?」
ルナが不思議そうに顔を上げ、黄金色の瞳で悠真を見つめた。その目には何かを見透かすような賢さが宿っている。
「来たばかりの頃なら、迷わず帰ると言っただろうな……」
しかし、今は……分からない。元の世界では彼は一人だった。両親は早くに亡くなり、親戚付き合いもほとんどなかった。仕事仲間などは多少心配してくれているかもしれないが、深い絆で結ばれていたわけではない。
対して、この世界には——
窓の外を見ると、ヘラクレスが角から小さな炎を出しながら草を食んでいた。そばではベルがのんびりと横たわり、サクラは桜色の毛並みを風になびかせている。トレジャーが空から舞い降り、何か光るものを落としていった。
「この世界には、大切な仲間がいる」
心の中でそうつぶやいた時、悠真は自分の考えに驚いた。いつの間にか、この場所は彼にとって「居場所」になっていたのだ。リーフィア、ミリアム、そして牧場の動物たち。彼らとの日々は、かけがえのないものになっていた。
「もし、どちらかを選ぶ日が来たら……」
悠真は深く考え込み、窓の外を見つめたまま動かなくなった。時間が過ぎていくのも忘れ、彼の心は二つの世界の間で揺れ動いていた。
――――――
「メェ~」
心配そうなベルの鳴き声に、悠真は我に返った。見れば、いつの間にか牧場の動物たちが居間の窓の外に集まっていた。ベルの横には、角から小さな炎を漏らすヘラクレスが立ち、アズールも小さな翼をパタパタさせながら心配そうに覗き込んでいる。
「みんな……何してるんだ?」
悠真が窓を開けると、フレアが小さく鳴いて尻尾を振った。シャドウとミストも不安げな表情で見上げている。彼らは心配したように悠真の周りに集まってきた。
「大丈夫だよ。ただ考え事をしていただけだ」
悠真が微笑むと、動物たちも少し安心したように見えた。彼は一人ひとりの頭を優しく撫でて回る。温かい毛並み、そして彼を心配してくれる彼らの存在に、胸が熱くなった。
その時、牧場の入り口からリーフィアが帰ってくるのが見えた。彼女の腕には色とりどりの草花が入ったバスケットが抱えられていた。
「悠真さん、ただいま戻りました……あら?」
リーフィアは動物たちが悠真の周りに集まっている様子を見て、首を傾げた。彼女の銀色の髪が風に揺れ、碧色の瞳には心配の色が浮かんでいた。
「何かあったんですか?みんな心配しているようですが」
悠真は軽く頭を振り、微笑んだ。
「いや、ちょっと考え事をしていて、みんなを心配させてしまったみたいだ。それより、ミリアムの村はどうだった?」
リーフィアは一瞬だけ悠真の表情を探るように見つめたが、すぐに明るい笑顔を見せた。
「はい、とても楽しかったです。ミリアムさんが色々と説明してくれました。それに……」
悠真はリーフィアの話を聞きながら、内心では先ほどの自問自答を続けていた。答えはまだはっきりとは出ていない。しかし、ひとつだけ確かなことがあった。
「今は、この瞬間を大切にしよう」
アズールが「キュイッ」と鳴き、悠真の足元に寄り添った。彼は小さなドラゴンの頭を撫で、空を見上げた。オレンジ色に染まり始めた夕焼け空の下、牧場は穏やかな時間が流れていた。
「お前たちがいてくれるおかげで、この場所は特別なんだ」
それは動物たちに向けた言葉でありながら、自分自身への確認のようでもあった。答えはまだ出ない。しかし、今はこの世界で精一杯生きよう。悠真はそう心に誓いながら、温かな夕暮れの牧場で、仲間たちとの時間を噛みしめていた。
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