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第90話 獣人の集落
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アルティアの街を出発してから数日が経った。トウマは街道沿いの小さな宿場町で一泊し、そこで手に入れた新しい地図を広げていた。
「えーっと、今俺がいるのがここで……」
指で現在地を確認しながら、トウマは次の目的地を探す。地図には見慣れない街の名前がいくつか記されていた。
「深緑都市シルヴァーリーフか。なかなか面白そうな名前だな」
深緑都市は、大森林の中に築かれた自然と調和した街として知られている。エルフたちが作り上げたとも言われている都市だ。
「よし、次はここにするか」
トウマは地図を畳むと、荷物を肩に担いで歩き始めた。
――――――
街道を歩きながら、トウマは周囲の景色を楽しんでいた。のどかな田園風景が続き、遠くには山々が見える。
「いい天気だな。こういう日は歩いてるだけで気分がいい」
そんな平和な午後だったが、街道の先から騒がしい声が聞こえてきた。
「やべぇ、追いつかれる!」
「もう少しだ、頑張れ!」
トウマは眉を寄せた。明らかに誰かが追われている声だ。
「何かトラブルか?」
好奇心旺盛なトウマは、足を速めてその方向に向かった。
――――――
街道の向こうから、二人の人影が必死に走ってくる。よく見ると、どちらも獣人のようだった。一人は狼の耳と尻尾を持つ少年で、もう一人は猫の特徴を持つ少女だ。
「おい、大丈夫か?」
トウマが声をかけると、狼の獣人が振り返った。
「人間!?こんなところで……」
「今は説明してる暇はないです!」
猫の獣人の少女が、息を切らしながら言った。
「追われているのか?」
「はい!盗賊に……」
その時、街道の向こうから馬の蹄の音が響いてきた。五人の男たちが馬に乗って追いかけてくる。
「あそこにいたぞ!」
「小僧ども、観念しろ!」
盗賊たちは剣を抜いて、獣人たちに向かって馬を走らせた。
「なるほどな。俺の後ろに隠れてろ」
トウマは剣の柄に手をかけた。
「だけど、あなたは……」
「心配するな。こういうのは慣れてる」
――――――
盗賊たちが馬から降りて、トウマを取り囲んだ。
「何だ貴様は、邪魔をするな」
リーダー格の男が、剣を向けながら言った。
「その獣人どもは俺たちの獲物だ」
「獲物?」
トウマは眉をひそめた。
「獣人を何だと思ってるんだ?」
「決まってるじゃないか。奴隷商人に売り飛ばすための商品さ」
リーダーは嫌らしい笑みを浮かべた。
「獣人は高値で売れる。特にこの二匹は若いからな」
「最低だな。俺が一番嫌いなタイプだ」
トウマの瞳が鋭く光った。
「何だと?」
「聞こえなかったか?お前らみたいな人身売買をする屑野郎が一番嫌いだって言ったんだよ」
トウマは剣を抜いた。刃が陽光を反射して、眩しく輝く。
「やるってのか、一人で?」
「はっ!五人程度なら、俺一人で十分だ」
「舐めるな!」
盗賊の一人が、トウマに向かって剣を振り下ろした。
トウマは軽やかに横に跳躍し、その攻撃を避ける。同時に、反撃として剣の柄で男の顎を打ち上げた。
「がはっ!」
男は意識を失って倒れた。
「一人目」
「この野郎!」
別の盗賊が後ろから襲いかかってくるが、トウマは振り向きざまに剣を横に薙ぎ払った。
「うぎゃあ!」
盗賊は腹部を斬られて倒れた。
「二人目」
「くそっ、こいつ、只者じゃない!」
残った三人は、トウマを警戒して距離を取った。
「同時にやるぞ!」
三人が同時にトウマに向かってきた。トウマは落ち着いて、三人の攻撃を見極めると右からの剣を受け流し、左からの攻撃を後ろに下がって避ける。正面からの突きは、身体を捻って紙一重で回避した。
「単純すぎる。そんなのが当たるかよ」
トウマは短剣を取り出すと、右の男の肩に投げつけた。短剣は正確に男の肩を貫く。
「ぐああああ!」
男は痛みで動けなくなった。
「ひっ……」
残った二人は、完全に戦意を失っていた。
「お、俺たちの負けだ!」
「命だけは助けてくれ!」
トウマは命乞いをする二人を冷めた目で見つめると、無言で気絶させた。
「やれやれだな」
トウマは剣を鞘に収めると、獣人たちの方を振り返った。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございました!」
猫の獣人の少女が、深々と頭を下げた。
「本当に助かりました」
「気にするな。当然のことをしただけだ」
トウマは軽く手を振った。
「それより、君たちは大丈夫か?怪我はしてないか?」
「はい、大丈夫です」
狼の獣人の少年が答えた。
「僕はライカ、こっちはエニーです」
「俺はトウマだ。よろしく」
エニーは恥ずかしそうに小さく手を振った。猫の特徴を持つ彼女は、まだ幼さが残る可愛らしい少女だった。
「それで、二人はどうしてあんな奴らに追われてたんだ?」
「それは……」
ライカは困ったような表情を浮かべた。
「実は、僕たちの集落が襲われたんです」
「集落が?」
「はい。盗賊の大きな集団が、僕たちの村を襲って……」
エニーの目に涙が浮かんだ。
「みんな、みんな連れて行かれちゃったんです」
――――――
「それで君たちは逃げてきたのか」
「はい……村のみんなが逃がしてくれて……」
ライカは悔しそうに拳を握った。
「その後、僕たちだけでも助けを求めに行こうと思ったんですが、途中で見つかってしまって……」
「こうなったわけか。なるほどな」
トウマは顎に手を当てて考えた。
「その集落って、ここからどのくらいの距離にあるんだ?」
「山の向こうで、歩いて半日ほどです」
「そうか……」
トウマが少し考えこんでいると、ライカが真剣な表情でトウマを見つめた。
「トウマさん、お願いがあります。……僕たちの村を、助けてください!」
「ライカ……」
エニーも懇願するような目でトウマを見つめてきた。
「分かった」
トウマは地図を畳むと、二人に向かって頷いた。
「君たちの集落に案内してくれ」
「本当ですか!?」
「あぁ、本当だ」
――――――
三人は山道を歩きながら、獣人の集落について話していた。
「僕たちの村は、フォレストハウンドという様々な獣人が一緒に暮らしている、小さな村なんです」
エニーが小さく頷いた。
「本当に良い村なんです。みんな優しくて、温かくて……」
「そうか。なら、なおさら必ず助けてやらないとな」
「「はい!」」
ライカたちの目には、強い決意が宿っていた。
――――――
山道を二時間ほど歩くと、森の中に小さな集落が見えてきた。
「あそこが……」
ライカの声が震えていた。
集落は静まり返っている。本来なら活気に満ちているはずの村が、不気味なほど静かだった。
「人の気配がないな」
トウマは警戒しながら村の入り口に近づいた。
「慎重に行こう」
三人は足音を殺しながら、集落の中に入っていく。
「家の中も荒らされてますね」
ライカが悲しそうに呟いた。
「畑も踏み荒らされてるし……」
「ひどい……」
エニーが小さく声を震わせた。
「こんなにめちゃくちゃにしなくても……」
「盗賊連中は、脅しのためにわざとやったんだろう。許せない奴らだな」
その後、集落の中央広場で、トウマは地面に残された痕跡を調べていた。
「大型の馬車の跡が残ってる」
「馬車?」
「あぁ、おそらく村人たちを乗せて運んだんだろう」
トウマは馬車の轍を辿りながら考えた。
「この跡を辿れば、連れて行かれた場所が分かるかもしれない。急ごう!」
三人は馬車の轍を辿って、集落を後にした。
――――――
森の中の獣道を進みながら、トウマは轍の状態を確認していた。
「この辺のはまだ新しいな。そこまで遠くには行ってないかもしれない」
轍は森を抜けて、再び街道に向かっていた。
「ここで街道に出たみたいだな」
街道に出てから更に一時間ほど歩くと、森の奥に煙が立ち上っているのが見えた。
「あれは……」
「焚火の煙だな」
トウマは目を細めた。
「おそらく、あそこが盗賊の隠れ家だろう」
「村のみんなは、あそこに……」
ライカが拳を握った。
「焦るな。まずは偵察からだ」
「偵察?」
「敵の数や配置を調べるんだ。無計画に突っ込んでも、村人を危険にさらすだけだからな」
トウマは真剣な表情で二人を見つめた。
「君たちはここで待ってろ。俺が一人で様子を見てくる」
「私たちも一緒に……」
「ダメだ。危険すぎる」
「だけど……」
「心配するな」
トウマは微笑んだ。
「必ず村のみんなを助ける。約束する」
ライカとエニーは、不安そうな表情を浮かべたが、最終的には頷いた。
「分かりました。お気をつけて」
「あぁ、任せておけ」
二人をその場に待機させると、トウマは一人で森の中に消えていった。
――――――
トウマは木々の間を縫うように進み、盗賊の隠れ家に近づいていく。
「結構大きなキャンプだな」
隠れ家は、森の中の広い空地に設営されていた。テントが十数張り並び、中央には大きな焚き火が燃えている。
「盗賊の数は……三十人くらいか」
トウマは慎重に数を数えた。
「思ったより多いな」
キャンプの奥には、木で作られた大きな檻が見えた。その中に、獣人たちが押し込められている。
「あれが村人たちか」
老人から子供まで、様々な年齢の獣人が檻の中で身を寄せ合っていた。トウマが檻の周りを見回すと、檻の前に立っている見張りは二人だけの様だった。
「あの二人を何とかすれば、檻に近づけるかもしれない」
トウマは作戦を練り始めた。
「まずは、あの見張りを静かに片付けて……」
その時、キャンプの中から大きな笑い声が聞こえてきた。
「はっはっは!上手くいったなぁ!」
「獣人どもを一網打尽にできるとは思わなかったぜ」
「奴隷商人も喜ぶだろうな」
盗賊たちは酒を飲みながら、獣人たちを見て笑っていた。
「……どうやら遠慮は要らなそうだな」
トウマの拳が自然と握られた。
「えーっと、今俺がいるのがここで……」
指で現在地を確認しながら、トウマは次の目的地を探す。地図には見慣れない街の名前がいくつか記されていた。
「深緑都市シルヴァーリーフか。なかなか面白そうな名前だな」
深緑都市は、大森林の中に築かれた自然と調和した街として知られている。エルフたちが作り上げたとも言われている都市だ。
「よし、次はここにするか」
トウマは地図を畳むと、荷物を肩に担いで歩き始めた。
――――――
街道を歩きながら、トウマは周囲の景色を楽しんでいた。のどかな田園風景が続き、遠くには山々が見える。
「いい天気だな。こういう日は歩いてるだけで気分がいい」
そんな平和な午後だったが、街道の先から騒がしい声が聞こえてきた。
「やべぇ、追いつかれる!」
「もう少しだ、頑張れ!」
トウマは眉を寄せた。明らかに誰かが追われている声だ。
「何かトラブルか?」
好奇心旺盛なトウマは、足を速めてその方向に向かった。
――――――
街道の向こうから、二人の人影が必死に走ってくる。よく見ると、どちらも獣人のようだった。一人は狼の耳と尻尾を持つ少年で、もう一人は猫の特徴を持つ少女だ。
「おい、大丈夫か?」
トウマが声をかけると、狼の獣人が振り返った。
「人間!?こんなところで……」
「今は説明してる暇はないです!」
猫の獣人の少女が、息を切らしながら言った。
「追われているのか?」
「はい!盗賊に……」
その時、街道の向こうから馬の蹄の音が響いてきた。五人の男たちが馬に乗って追いかけてくる。
「あそこにいたぞ!」
「小僧ども、観念しろ!」
盗賊たちは剣を抜いて、獣人たちに向かって馬を走らせた。
「なるほどな。俺の後ろに隠れてろ」
トウマは剣の柄に手をかけた。
「だけど、あなたは……」
「心配するな。こういうのは慣れてる」
――――――
盗賊たちが馬から降りて、トウマを取り囲んだ。
「何だ貴様は、邪魔をするな」
リーダー格の男が、剣を向けながら言った。
「その獣人どもは俺たちの獲物だ」
「獲物?」
トウマは眉をひそめた。
「獣人を何だと思ってるんだ?」
「決まってるじゃないか。奴隷商人に売り飛ばすための商品さ」
リーダーは嫌らしい笑みを浮かべた。
「獣人は高値で売れる。特にこの二匹は若いからな」
「最低だな。俺が一番嫌いなタイプだ」
トウマの瞳が鋭く光った。
「何だと?」
「聞こえなかったか?お前らみたいな人身売買をする屑野郎が一番嫌いだって言ったんだよ」
トウマは剣を抜いた。刃が陽光を反射して、眩しく輝く。
「やるってのか、一人で?」
「はっ!五人程度なら、俺一人で十分だ」
「舐めるな!」
盗賊の一人が、トウマに向かって剣を振り下ろした。
トウマは軽やかに横に跳躍し、その攻撃を避ける。同時に、反撃として剣の柄で男の顎を打ち上げた。
「がはっ!」
男は意識を失って倒れた。
「一人目」
「この野郎!」
別の盗賊が後ろから襲いかかってくるが、トウマは振り向きざまに剣を横に薙ぎ払った。
「うぎゃあ!」
盗賊は腹部を斬られて倒れた。
「二人目」
「くそっ、こいつ、只者じゃない!」
残った三人は、トウマを警戒して距離を取った。
「同時にやるぞ!」
三人が同時にトウマに向かってきた。トウマは落ち着いて、三人の攻撃を見極めると右からの剣を受け流し、左からの攻撃を後ろに下がって避ける。正面からの突きは、身体を捻って紙一重で回避した。
「単純すぎる。そんなのが当たるかよ」
トウマは短剣を取り出すと、右の男の肩に投げつけた。短剣は正確に男の肩を貫く。
「ぐああああ!」
男は痛みで動けなくなった。
「ひっ……」
残った二人は、完全に戦意を失っていた。
「お、俺たちの負けだ!」
「命だけは助けてくれ!」
トウマは命乞いをする二人を冷めた目で見つめると、無言で気絶させた。
「やれやれだな」
トウマは剣を鞘に収めると、獣人たちの方を振り返った。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございました!」
猫の獣人の少女が、深々と頭を下げた。
「本当に助かりました」
「気にするな。当然のことをしただけだ」
トウマは軽く手を振った。
「それより、君たちは大丈夫か?怪我はしてないか?」
「はい、大丈夫です」
狼の獣人の少年が答えた。
「僕はライカ、こっちはエニーです」
「俺はトウマだ。よろしく」
エニーは恥ずかしそうに小さく手を振った。猫の特徴を持つ彼女は、まだ幼さが残る可愛らしい少女だった。
「それで、二人はどうしてあんな奴らに追われてたんだ?」
「それは……」
ライカは困ったような表情を浮かべた。
「実は、僕たちの集落が襲われたんです」
「集落が?」
「はい。盗賊の大きな集団が、僕たちの村を襲って……」
エニーの目に涙が浮かんだ。
「みんな、みんな連れて行かれちゃったんです」
――――――
「それで君たちは逃げてきたのか」
「はい……村のみんなが逃がしてくれて……」
ライカは悔しそうに拳を握った。
「その後、僕たちだけでも助けを求めに行こうと思ったんですが、途中で見つかってしまって……」
「こうなったわけか。なるほどな」
トウマは顎に手を当てて考えた。
「その集落って、ここからどのくらいの距離にあるんだ?」
「山の向こうで、歩いて半日ほどです」
「そうか……」
トウマが少し考えこんでいると、ライカが真剣な表情でトウマを見つめた。
「トウマさん、お願いがあります。……僕たちの村を、助けてください!」
「ライカ……」
エニーも懇願するような目でトウマを見つめてきた。
「分かった」
トウマは地図を畳むと、二人に向かって頷いた。
「君たちの集落に案内してくれ」
「本当ですか!?」
「あぁ、本当だ」
――――――
三人は山道を歩きながら、獣人の集落について話していた。
「僕たちの村は、フォレストハウンドという様々な獣人が一緒に暮らしている、小さな村なんです」
エニーが小さく頷いた。
「本当に良い村なんです。みんな優しくて、温かくて……」
「そうか。なら、なおさら必ず助けてやらないとな」
「「はい!」」
ライカたちの目には、強い決意が宿っていた。
――――――
山道を二時間ほど歩くと、森の中に小さな集落が見えてきた。
「あそこが……」
ライカの声が震えていた。
集落は静まり返っている。本来なら活気に満ちているはずの村が、不気味なほど静かだった。
「人の気配がないな」
トウマは警戒しながら村の入り口に近づいた。
「慎重に行こう」
三人は足音を殺しながら、集落の中に入っていく。
「家の中も荒らされてますね」
ライカが悲しそうに呟いた。
「畑も踏み荒らされてるし……」
「ひどい……」
エニーが小さく声を震わせた。
「こんなにめちゃくちゃにしなくても……」
「盗賊連中は、脅しのためにわざとやったんだろう。許せない奴らだな」
その後、集落の中央広場で、トウマは地面に残された痕跡を調べていた。
「大型の馬車の跡が残ってる」
「馬車?」
「あぁ、おそらく村人たちを乗せて運んだんだろう」
トウマは馬車の轍を辿りながら考えた。
「この跡を辿れば、連れて行かれた場所が分かるかもしれない。急ごう!」
三人は馬車の轍を辿って、集落を後にした。
――――――
森の中の獣道を進みながら、トウマは轍の状態を確認していた。
「この辺のはまだ新しいな。そこまで遠くには行ってないかもしれない」
轍は森を抜けて、再び街道に向かっていた。
「ここで街道に出たみたいだな」
街道に出てから更に一時間ほど歩くと、森の奥に煙が立ち上っているのが見えた。
「あれは……」
「焚火の煙だな」
トウマは目を細めた。
「おそらく、あそこが盗賊の隠れ家だろう」
「村のみんなは、あそこに……」
ライカが拳を握った。
「焦るな。まずは偵察からだ」
「偵察?」
「敵の数や配置を調べるんだ。無計画に突っ込んでも、村人を危険にさらすだけだからな」
トウマは真剣な表情で二人を見つめた。
「君たちはここで待ってろ。俺が一人で様子を見てくる」
「私たちも一緒に……」
「ダメだ。危険すぎる」
「だけど……」
「心配するな」
トウマは微笑んだ。
「必ず村のみんなを助ける。約束する」
ライカとエニーは、不安そうな表情を浮かべたが、最終的には頷いた。
「分かりました。お気をつけて」
「あぁ、任せておけ」
二人をその場に待機させると、トウマは一人で森の中に消えていった。
――――――
トウマは木々の間を縫うように進み、盗賊の隠れ家に近づいていく。
「結構大きなキャンプだな」
隠れ家は、森の中の広い空地に設営されていた。テントが十数張り並び、中央には大きな焚き火が燃えている。
「盗賊の数は……三十人くらいか」
トウマは慎重に数を数えた。
「思ったより多いな」
キャンプの奥には、木で作られた大きな檻が見えた。その中に、獣人たちが押し込められている。
「あれが村人たちか」
老人から子供まで、様々な年齢の獣人が檻の中で身を寄せ合っていた。トウマが檻の周りを見回すと、檻の前に立っている見張りは二人だけの様だった。
「あの二人を何とかすれば、檻に近づけるかもしれない」
トウマは作戦を練り始めた。
「まずは、あの見張りを静かに片付けて……」
その時、キャンプの中から大きな笑い声が聞こえてきた。
「はっはっは!上手くいったなぁ!」
「獣人どもを一網打尽にできるとは思わなかったぜ」
「奴隷商人も喜ぶだろうな」
盗賊たちは酒を飲みながら、獣人たちを見て笑っていた。
「……どうやら遠慮は要らなそうだな」
トウマの拳が自然と握られた。
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