ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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キラキラ? 私の夏休みラスト編

第77話 ショート動画チャレンジ伝説

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 アワチューブにはショート動画なるものがある。
 私もベッドの上でゴロゴロしながら、ショート動画を連続再生することがよくあった。
 中学生の頃までは。

 今は全くその暇がないんですけどね!!

 ということで。

「私、ショート動画を作ってみたいなーなんて……」

「ふむ」

 食卓の向こうで、兄が唸った。
 この人はなんかこう、真面目で厳しそうな雰囲気を醸し出しながらも私のお願いは色々聞いてくれる人だ。

「あれはあれで配信とは全く違う編集技術が必要になる。今のお前には厳しいだろう」

「ガーン!」

「斑鳩合同会社から正式な依頼を出そう。後はお前のリスナーでやれそうなやつに頼むという手もあるぞ? ツブヤキックスでのアカウントを知らないか?」

「あ、そういえば私のリスナーで……」

 一人、思い当たる。
 たこやき……!

 最初のリスナーで、私のまとめ動画を作ってアップしている人だ。

 こうして私は、ツブヤキックスを使って彼のアカウントを探すことに……あ、うちのフォロワーにいたわ。
 しかも一番最初のフォロワーじゃん!

 ちょこちょこリプくれてたけどこの人だったのか……。

 なになに? たこやきやいた……?

「いたか? よし、DMを送るんだ」

「DMを……!? い、いきなりDMを……!? ひいー」

「蚊の鳴くような悲鳴を……。仕方ないな、俺から送る。アカウントを見せろ。ふむふむ、こいつか。むっ、知り合いからしかDMを受けない設定にしてあるな。お前のまとめ動画で最大手になっているというのに、無欲なやつだ。おっと、俺のアカウントもフォローしてあるな。相互になって……これでよし」

 兄が呟きながら、自分のスマホからたこやきに連絡を取った。
 斑鳩合同会社のアカウントも作ってたんだなあ。

「いや? 鍵垢にしていた斑鳩のアカウントだが?」

「……それ、問題になったりしない……?」

「斑鳩の名義と使用権は全て俺が買い取ってある。問題ない。今、鍵も解除した。プロフィールを合同会社の代表取締役に書き換えておかないとな」

 行動が早い!
 なお、たこやきからの返答はすぐにあったらしい。

 たこやきはフリーランスのプログラマーで、ゲーム関係の仕事を主に請け負ってる人だった。
 で、時間に自由が利くらしい。
 だからいっつもいるんだな……。

 ちなみに、もうまとめ動画からの収益の方が本業を大きく上回ってるんだって。

 今回のお願いを、彼は快く引き受けてくれた。
 人見知りらしいので、実際に会うことはないっぽいけど。
 私も安心……。

 初対面の人と会うとめちゃくちゃ緊張するもんね。

 なので、オンラインで会議できるアプリのBOOMを使うことになった。
 なってしまった!
 こんなの、実質顔合わせじゃーん!

『本日はよろしくお願いします』

『よろしくお願いしまーす』

「ひぇっ、よ、よろしくお願いします」

 たこやきの画面は背景にたこやき画像を背負った感じ。
 御本人は……。
 紙袋を被った怪人がいるんだけど。

『あー、本当に配信のままなんですね。なんか、画面の向こうの有名人と実際にお会いできたみたいで嬉しいです』

 じょ、常識人の物言い!
 圧倒されてしまうな……。

「あ、ど、ども、ども……」

『では今回はショート動画についての依頼をしたい。きら星はづきの素材を使った手軽なものを……。もちろん、必要であれば新素材も提供しよう』

『ありがとうございます! ついに公式からの依頼、燃えてきますね。ではお願いしたいのは……』

「わ、私の新しい素材……? 動けばいいの……? わ、わ、わっかりました!」

 こうして素材撮影に向かう私。
 となればやっぱり……ダンジョンだよね。

 ついでに軽く配信を。
 ツブヤキックスでも移動ついでに告知をしておいた。

「こんきらー。今日はかるーい感じで配信なんで、肩の力を抜いて見てねー」

※『こんきらー』『今回は予告があったから箸休め配信だな』『のんびり見よう』

「メタ読み~」

 まあショート動画素材作成用の配信なんだけど。
 ちっちゃいダンジョンはいつもあちこちに発生している。
 個人勢の人たちは、そういう小さいところを狙って配信してるんだよね。

「今回はですねー。さっきツブヤキックスで確認したらできたてホヤホヤっていうダンジョンがあったんで、自転車飛ばしてきたんですけど」

※『フットワークが軽すぎる』『登録者100万人超えの配信者の動きじゃないだろw』『普通の個人勢よりも動きが早いとかどうなってるんだw』

「あ、自転車はリュックに回収したんで駐輪も大丈夫! じゃあ潜っていきますねー。えーと、ここは実はホームがない人が亡くなってたところで、ダンボールハウスがダンジョン化してるんですけど……」

※『凄いところに臆せず突っ込んでいくなあ!』『ダンジョン化するとダンボールハウス、こんなにでかくなるんだな』『なんか出てきた!』

『ウボアー』

「あ、ゾンビ! えーと、この辺に落ちてた木の枝で……えいえい!」

『ウグワーッ!!』

※『光になってしまった』『いつものパターンだな!』

 いつもの!?
 いけないいけない、新素材を作らないと……新素材……。

※『考え込み始めたんだけど』『危ない危ない、周りにゾンビが!』

『ウボアー』

「あ、ちょっとまってて下さい……!」

※『棒で雑にゾンビを倒してるぞ』『考え込むの優先か』『舐めプ過ぎる』

 結局私は、どんなに考えても斬新な動きが思い浮かばなかいのだった!
 上の空のままダンジョンを踏破して、怨霊を枝でペチペチ倒した私。
 ガックリしながら戻ってくると……。

『たこやき氏からだ。素材はばっちりだそうだ。あとは既存の素材を使ってショートを一本仕上げてくれるとのことだ。お疲れ様』

「そ、そうなの!? 何が新しかったんだろう……」

 解せぬままその日は終わり。
 翌日の夕方に、ショート動画がアップされたのだった。
 それは……。

※軽妙な音楽とともに、きら星はづきが登場する。

※ちょっとしたモンスターに驚いて、慌ててもたもた動く。

※もたもた動いているのに、モンスターが武器に突進してきて自滅する。

※今度はダンジョンで上の空のきら星はづき。

※雑に枝でモンスターを叩いて退治する。

※もたもたしてるシーン。

※雑に倒してるシーン。

※もたもた。

※雑。

※リズミカルに場面が切り替わり、音楽にもマッチした動画が一分ほど続いた後……きら星はづきチャンネルに案内しつつ終わる。

 なんか、ショート動画は一晩で100万再生くらいされた。
 何が起きてるの……!?
 一分だから誰でも気軽に見るのかこれ!
 ほえー。

 新しい世界が開けてしまった気がする。
 それはそうとして……。
 いつもの私を交互に見ているようなあのショート動画、なんで受けているんだろう……!?
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