ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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新学期な私の新生活?編

第98話 はづきの学校ライフ伝説

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「ねえ、一緒にお昼しない?」

「むっ!!」

 いきなりお隣さんに声を掛けられた。
 常に教室ではボッチの私、めちゃくちゃに驚き、警戒する。

 何を企んでいるんだ……。
 相手はずっと隣の席だった人。
 友達にチョーコとか呼ばれてたような。

 ロングの髪を揺らしながら、大きな目で私を見てくる。
 くうっ、陰キャの反応を楽しんでいるのか……!?

 いやいや、落ち着け私よ。
 陽キャがみんなそんな悪ではない。
 配信者の陽キャはみんないい人だったじゃないか。

「ど、どうして?」

「いつも一人でお昼食べてるから、たまにはどうかなーって思って」

「むむむっ」

 私が唸ったら、彼女がたじろいだ。

「無理にって言ってるわけじゃないけど……もし嫌なら」

「い、嫌ではありません」

「じゃあ決まりだね!」

 うーわーっ。なんと巧みに言葉尻を掴んで状況を支配するのかーっ。
 こうして私は!
 陽キャの巣窟に踏み込むことになってしまったのだった!

「イノッチとシカコ」

「ういっす! 今日も弁当箱でけー」

「よろしくー。よくお腹に入るねー」

「ど、ど、どうも。いっぱい食べます」

 私ももごもご言いながら自己紹介する。
 同じクラスメイトなのに、まるで初対面のようなやりとりである!

「あのさ、それマジですげえ量なんだけど、どこに入ってるの? ってかそれだけ用意するって親マジ大変じゃない?」

「じ、自分でおかずは詰めてくるので……」

「えっ、自分で弁当作ってるの……!?」

 愕然とするイノッチとやら。
 ぐわーっと茶髪が広がって大柄な、明らかに陽の者という感じのギャル! なのだが……。
 ふふふ、私のお弁当のおかずの多彩さに驚いたか。

 なお、私が自分のお弁当を用意し始めたのは夏休み前頃から。
 最近では父のお弁当も私が詰めている。
 不思議なことに、父は私の半分の量でいいらしい。

 いつも嬉しそうに小さいお弁当箱を持っていくのだ。
 年をとると胃が小さくなるのかも知れない……。

 物思いにふけりながら、オカズをもりもり食べて、ご飯をもりもり食べた。

「あっあっ、弁当がどんどん減ってくー」

 シカコという人が妙に戦慄した感じの声を漏らした。
 彼女は菓子パン一個と牛乳だけの昼食。
 そんなの一時間位でお腹減るでしょ……。

 だから彼女はめちゃめちゃ細いのだ。
 それでは配信者としてやっていけない。
 体は資本なのだ!

「なんか凄い鼻息を吹いた」

 チョーコという人が何故か感心している。
 というか三人とも、なんで私に注目するのだろう……?
 特にチョーコという人から感じる視線は、並ならぬ熱がある気がする。

 なんだなんだ……!?
 陽キャの思考はわからん……!!

「じゃ、じゃあ食べ終わったんで私はここで……」

「あの量があったのに一番早く食べ終わったぜ」

「ヤバいー」

「さっすが……。これだけ食べるからいい仕事ができるのね……。あー、でもガード硬いなー。なかなかお近づきになれない」

 仕事……!?
 ま、まさかチョーコという人……。

 私がバイトか何かをしてるからたくさん食べて働いていると思ってるんだろうか。

 近いなー。
 今日はリスナーと、委員長さんが作った私の学校の訪問動画を同時視聴する予定なのだ。
 あの人は本当に動画編集が上手くて、完成した動画を見せてもらった私は「ヒェー」と感嘆の声を漏らしてしまった。

 なるほど、これは私の身元が割れない……!
 私たちの姿がバーチャライズしたものになっていて、学校も真上からバーチャルっぽいテクスチャーが掛かっていた。

 いやー、今はあんなことができるんだねえ。
 私もやってみたい。

 Aフォンで動画のベータ版をチェックしながら、ふんふんと見どころを考える。

「はづきちゃんなーにしてんの」

「あっ、卯月さん!」

「人の気配がない非常階段、よくはづきちゃんいるもんねえ」

 同じ学校の先輩である卯月桜さんが絡んできた。
 私の後ろからAフォンを覗いてくる。

「おー、委員長の動画? 新作じゃん! そっか、はづきちゃんとメイユーさんとのコラボだったんだ。超大型コラボだわー。さっき委員長が告知してたのこれだったんだ」

「してましたか」

「してたしてた。かなり注目されてるよ。はづきちゃんもこれ同時視聴するの?」

「は、はい。リスナーの人たち、私と同時視聴するの好きらしくて」

「はづきちゃんのリアクションはいちいち面白いからね……。これベータ版でしょ? 委員長が先にこれをくれたということは、完成品はさらに思いっきりグレードアップしてると思うよ」

「な、な、なんですとー!?」

 そんな話は聞いていないのだー!

「だって、はづきちゃんのリアクションが面白いってのは委員長は絶対知ってるはずだもん。だったらはづきちゃんのリアクションを殺すようなやり方はしないよ? 期待してていいんじゃない?」

「ぐえー、前もって備えられない。いやいや……でも先に内容を知っておくアドバンテージはあるはずだから……。お前らを牽制できる……」

「自分の持ち味を知らないのははづきちゃんのみ……! 周りはみんな分かってるからねえ」

 なんか頭をポンポンされてしまった。

「ファイト、はづきちゃん!! あと、配信する時はちゃんと口元拭いたほうがいいよ! 身バレの元だからね!」

「ひえー、あの配信見てたんですかあ」

「今、はづきちゃんの配信みない配信者の方がもぐりじゃないかなあ……」

 なんだか恐ろしいことを言われてしまった。
 私は目立たないように生きていきたい!
 注目されないようにしながら配信していく手は無いものか……!

 
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