ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
157 / 517
年末! 私の色々挑戦編

第157話 チャレンジ、VR伝説

しおりを挟む
 事務所がクリスマス一色になっていた。

「あっ、はづき先輩! どうですかーこれ」

「と、とってもフリフリで赤と緑が乱舞してます……」

「リーダー! 私ともみじと二人で作ったよー!」

 なるほど……。
 シカコ氏とビクトリア、受付さんにマネさんまで加わって、事務所をクリスマス色に飾り付けていたらしい。
 あちこちからキラキラ光るモールが垂れ下がり、クリスマスっぽい飾りがたくさん壁にくっついている。

 兄はと言うと苦虫を噛み潰したような顔でこれを眺めて、ホットコーヒーをすすっている。

「社長としてはこれでよろしいの?」

「4対1の多数決で負けたんだ。男手であるたこやきはこっちに来ないしな……」

「そっかー。私は結構この賑やかなのは好きかも」

「ふむ、お前がそう言うならこのままでいいか」

 兄は諦めたようだ。
 黒とかダークブルーみたいな色がとにかく好きな人なので、赤と緑のクリスマスカラーとは合わないんだよね。
 でも分かってくれて良かった。

 受付さんがぼそっと、「やはりシスコン……。あたしたちが説得しても頑として譲らなかったのに……」とか呟いている。

「でもそこも好き……」

「頑張るのよ。社長、子どもの頃からモテたけど、彼を落とせた女の子は一人もいないんだから。何百人が泣いたことか……」

「が、頑張る!」

 マネさんに応援されている!
 マネさんは母の友人だから、小さい頃の兄を知ってるもんなあ。

「ところではづき先輩!」

 パタパタとシカコ氏が駆け寄ってきた。
 事務所は広くないから走らなくていいのに。

「なあに」

「チョーコに言ってやったそうじゃないですかー! さすが先輩だなー」

「えっ、なあに!?」

「またまたー。知りたいならこっちの世界に来なよって! チョーコ、すごく悩んでましたけど嬉しそうでしたよー!」

 なんの話だ……?
 たくさん食べるようになろうという話だろうか?

 でも、それでシカコ氏が喜ぶのはおかしい。
 あくまで私とチョーコ氏の間で完結する問題だからだ。

 何か……私は凄い勘違いをした気がする……!!

「リーダー、チュロス食べる?」

「食べるー」

 私の脳内で渦巻き始めていた疑念が、スパーっと飛び散った。
 まさに雲散霧消だ。

 チュロスうまーい。
 兄が入れてくれたミルクたっぷりのホットコーヒーがとても合う……。
 私は砂糖がたっぷりでも少なめでもイケる。
 苦いの平気なのだ。

「知っているか? 最近、配信にVRを取り入れる者が出てきている」

「VR?」

 兄がなんかタブレットの画面を見せてくる。
 それは、バーチャルな世界を配信している動画だ。

 あ、なんかバーチャル世界もダンジョンになってるじゃん。

「既にインターネット上にダンジョンが出現し始めているという話はお前も知っていると思うが……」

「は、初耳……」

「そうか……」

 兄が話す予定が狂ったっぽい。
 ちょっと考えている。

「いいか? オンラインで遊ぶゲームが存在するだろう。そこに人が集まる。長時間ログインしてプレイする者たちもいる。すると感情が蓄積するわけだ」

「ふんふん」

「感情が大きく蓄積する場所にダンジョンは生まれやすい。人が死んだ事故物件がダンジョン化しやすいのと一緒だな。一般的な施設なら、感情が蓄積しても人は流動する。だがゲームの場合、サーバーに感情が蓄積するわけだ。結果としてサーバーがダンジョン化する」

「ほえー。そんなことが……。でも今まではなくなかった?」

「無かったな。恐らく、新しいルールを持ち込んできた奴がいる。今までの状況から考えるに、嫉妬勢だろう。奴らはインターネットを通してこちらを侵略するため、ダンジョン発生の法則を新しく作り上げた可能性がある」

 なるほどー……。
 なんかとんでもないことになっている。

「まあ私には無縁なので……」

「リーダー、チュロスおかわり!」

「おほー!」

「またはづき先輩を甘やかしてるー」

 三人でわちゃわちゃしていると、兄がデスクの下からスッと変なものを取り出してきた。
 その、真っ白いハーフヘルメットみたいなものはなんですかね?

「VRゲーム機、インキュベーター666だ。こういうこともあろうかと買っておいた。事務所のwifiにも接続してあるぞ」

「そ……それは私にVRダンジョンにチャレンジしろと……」

「大罪勢がいるなら、お前がそこに行く意味ができるだろう?」

「私、ゲーム全般下手くそなんですけど!」

「はづき先輩にも陽キャと歌とダンス以外に苦手なものが……!」

 ゲームのシステムに合わせるのがとにかく苦手なのだ……。

「大丈夫だ。こいつは面白くてな。Aフォンとマッチングさせることでお前のアバターをそのまま出現させられる。そしてVRチャットのロビーとフリースペースまでならソフトなしで行けるんだ。後はダンジョンが発生しているソフトを購入し、そこのダンジョンへ向かえばいい」

「あっ、プレイ配信はしなくていい?」

「もちろんだ。やりたいなら別だが」

「やりたくないですぅ」

 ゲームは落ち物パズルとか上海以外は苦手……!
 嫌いじゃないけど人様に見せられる腕じゃない……!

 ということで、VRチャレンジとなってしまった。
 ビルの同じフロアに、兄が配信用のスタジオを用意してくれていた。

 ここでVR初挑戦を配信開始なのだ。

 初めての姿を配信しないなんて、撮れ高的にありえないからね……!

しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...