ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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年度末な私の決戦編

第186話 節分ダンジョン豆まき伝説

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 節分がやって来た。
 せっかくなので豆まき配信をする。

 場所はオフィス街に出現したダンジョンだ。
 イカルガビルに顔を出してついでに豆を買ってたら、その帰り道で遭遇した。

 なんかちょくちょくダンジョンに出会うなあ。
 こんなに頻繁に出現するんじゃ、みんな大変だ。
 配信者の半分以上が、今はVRで活動してるから踏破が間に合わないのかな。

「こんきらー。今日はですね、節分なのでこの買ってきた豆をダンジョンでまきます」

※『こんきらー!』『季節ネタだ!』たこやき『さては豆を買って帰る途中でダンジョンを見つけたな』『はづきっちのダンジョン遭遇率は異常』『外に出ればダンジョンに当たるもんなw』

 えっ、私がダンジョンに出会いやすいだけだったのか!?
 いやいや、そんなことは……。
 でも週一から週二でダンジョン潜ってるもんなあ。

 他の配信者の人はそこまで頻繁じゃないのがほとんどだし。
 不思議だ……。

「じゃあとりあえず潜りますね。お邪魔しまーす」

 ダンジョン化したのは雑居ビル。
 一階のテナントから、わあわあと人が逃げ出してくる。
 向かうは二階への階段。

「エレベーターを使いたいところですがー」

 逃げ出してきた人が、「え、エレベーターに人が食われた!」とか叫んでるのでやめておこう。
 一応覗きに行ったら、エレベーターの入り口が横開きのモンスターの口みたいになっていて、牙をむき出しにしてガシャーンガシャーンと開け閉めされていた。

※もんじゃ『フロアイミテーターだな! エレベーターそのものがモンスターに置き換わったんだ』『クリーチャーじゃん!』『こっわ』

「鬼は外~」

 私はここに、おもむろに豆を投げつけた。
 すると、輝く豆!
 ぶつかったところから、エレベーターのモンスターを粉砕していく豆!

『ウッ、ウグワーッ!?』

 フロアイミテーターとか言うモンスターは、あっという間に光になって消滅してしまった。
 後には普通のエレベーターが残る。

 食べられた人は消化前だったので、私が中から足を掴んで引っ張り出しておいた。
 良かった、生きてる生きてる。

 この人を担いで外に出て、

「す、すみません、救急車呼んでおいて下さい……」

「は、はい! すげえ、本物のはづきっちだ!!」

「あーっ、写真を撮る前に救急車を……!」

 というやりとりの後、階段へ向かった。

※もんじゃ『節分という季節は一般人でもダンジョンで戦える、退魔の力が発揮できる時期だが……はづきっちのそれはもうショットガンだな』『ショットガンでモンスターは祓えないので、なんか浄化された弾丸をばらまくみたいなことになってるw』『豆つえー』

「ちょっともったいない感じもしますよね」

 私は豆をポリポリかじった。

※『食うなw』『はづきっちがつまみ食いしたら全部食べちゃうだろw!』

「し、失敬なー!」

 豆は味の無い大豆なんでそんなに食べません!
 塩を振ってから炒ると美味しいんだよねー。

 二階もダンジョン化していたので、雑に豆をまいて浄化する。
 節分は楽だなあ。

「鬼は外、鬼は外。福は内~」

 声掛けもしたら、なんか豆の威力が上がった気がする。
 一回まいただけで、フロアの半分がもとに戻るんだけど。

※おこのみ『はづきっちがまいた豆、食べたい……』もんじゃ『鬼は外、福は内、の言葉が豆の神聖さを増す効果を発揮しているのだろう。はづきっちだから効果が倍加している気もするが……』

 そんなことが。
 それとおこのみ、フロアに撒いた豆はばっちいのでおよしなさい。

 あっという間に二階を制圧し、三階に上がる。
 階段途中でモンスターたちが待ち受けていたので、豆を投げつけた。

「鬼外福内」

『ウグワーッ!?』

※『略すなw』『軽くばらまいただけで全滅するじゃんw』『はづきっちが広範囲殲滅武器を手に入れてしまったな……』『袋に入っている豆の量だけ攻撃できるんだもんな』

「できるだけ節約して行きたい……。そ、そうだ。ゴボウを使えば……」

※『こら、節分配信やぞw!!』『豆をまけw!!』『こんなことで葛藤するなw』

 ううう、もったいないもったいない。
 私はちまちまと豆をまきながら、フロアを次々に踏破していった。

 最上階にはオーナーの家があり、なんと家の前がダンジョンラストフロアだった。
 どうやら不景気で売上が悪いのにお家賃を請求されて、怒り狂った借り主が怨霊化したみたい。

「払うものは払わねばならないのでは……?」

※『正論』『ぐうの音も出ねえw』『はづきっちをもシリアスにさせる』

『うおおお! 困窮した俺から家賃を取ろうというのは極悪人!! 許せねえええええ』

「あひー、話が通じません! じゃあ豆をまきますね」

※『ついに一粒w!』『ケチるなw!』

『ウグワーッ!? わ、わしの体が消滅するー!!』

※『一粒でw!!』『豆をケチりながらダンジョン攻略しやがったw』

「家でビクトリアと一緒に豆まきするので……」

 私が事情を説明したら、リスナーのお前らは納得したのだった。
 その代わり、豆まき模様を動画でアップしてほしいとお願いされた。

 仕方ないなあ~。

※『リスナーと交渉して豆まきの量を減らす配信者とか初めて見たわw』『はづきっちは本当に食い意地が……!』

 もったいない精神!
 もったいない精神です!

 ということで、サクッと雑居ビルを救った私。
 なんとオーナーさんから感謝の証として、たくさんの豆をもらったのだった。

 こっちは落花生だったのでそのまま食べられる……。
 嬉しい~。
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