ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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年度末な私の決戦編

第191話 はづきのお悩み“を”相談室伝説

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「最近はづきちゃんがよく来るのですけれど」

「こ、こんきらー」

※『コラボだコラボだ』『VR追儺で人混みの隙間にはづきっちがいたやつでしょw』『あそこから愛が復活した』

「あ、愛とか言わないで下さいな!」

「まあ愛ですねえ」

※『キマシ』『尊い……』『数ある配信者の中で、お嬢は唯一はづきっちに愛を囁かれる存在だからな』『唯一無二すぎる』

 ということで本日は、カンナちゃんとコラボ配信しています。
 彼女の家で、お手製のマフィンとミルクティーをいただきつつ……。

 おお、カンナちゃんの手作りマフィン、すぐに食べてしまうのが惜しい……。
 ちょっとずつ食べよう……。

※『はづきっちがちょっとずつしか食べないw』『ガチじゃんw』『最強の百合営業だ』

「百合営業じゃありませんことよ! わたくしとはづきさんは清い仲です」

「うん、清い仲なのは本当です。まだ一緒に銭湯行ったりはしてないので……」

「そう言えば先日、委員長がはづきさんとメイユーさんとお風呂に行った動画をアップされてましたわね。一面曇りガラスで、会話しか聞こえませんでしたけど」

「行きました行きました。お風呂上がりのフルーツ牛乳が美味しかったです~」

※『なんて美味しそうな顔で回想するんだ』『風呂上がりに牛乳、昭和からの伝統だからな……』

「そうなんですの? わたくしは平成の半ば生まれなのでわかりませんわねえ……」

※『若い』『うっ、昭和は遠くなりにけり』『おっさんたちがいっぱいいるぞ』

「さて、今日なんですけど、はづきさんが色々お悩みがあるそうなので、それをわたくしが聞く配信ですわ。さあさあ、お話しになって」

 そう。
 このところ色々な事が起きたので、私としても情報量の多さにアップアップしていたのだ。
 なので信頼できるカンナちゃんに相談を……。
 そしてついでに、これを配信に乗せてエンタメにしようという試みなのだった。

 我ながら配信者の考えにどっぶり浸かっているなあ。

「あのですねー。空港で記者の人にオフの顔を撮られそうになったので、とっさに大罪勢の能力みたいなのを解放して切り抜けたんですけど」

※『爆弾発言来たぞwwww』『一発目からwwww』『一番ヤバい話じゃないかwwww』

「そうなんですのね。でも、それもはづきさんの個性だから気にしなくていいと思いますわ」

※『全肯定お嬢!!』『あまりにも懐が深すぎるw』『なんだかんだお嬢は優しいもんねえ』

 ああ~、カンナちゃんもっと好きになってしまう~。
 私にとって、一番距離感が近い、親友と呼べる存在が彼女なのだ。
 大切過ぎる。あまりに尊い。

※『はづきっちがお嬢を拝んでる』『信仰になったか……』『世界中から信仰を集める配信者から信仰されるお嬢……これは……?』

「なんだかわたくしの体がリアルに輝き始めてきたのですけど」

※『まずいまずいまずいw』『現人神になりかけてるじゃんw』『やめて、はづきっち拝むのやめてw!』

「はっ」

 慌てて崇拝をストップする私。
 カンナちゃんの輝きが収まった。

「じゃあ続き行きましょうか。それで何か問題がありましたの?」

「いやー、大罪勢の力が出ちゃった件は、迷宮省からは画像の提出を求められましたけどそれっきりで、職員の人に聞いたら『まあはづきさんは完全に制御してるから大丈夫でしょ、という感じです。あなたを束縛したらそもそも連中への対抗手段を失いますし。長官からフリーにさせておけという指示も出てまして』ということで」

※『重要機密がさらっと語られる配信だぞこれ』『いいのかw』

「許可はもらってまあす」

 私が宣言したら、コメント欄がざわつく。

「ふんふん、じゃあ問題ありませんわね」

 スパッとカンナちゃんが切り捨てたので、コメント欄にたくさん草が流れた。
 すっかりいい雰囲気になったなあ。

「じゃあ次なんですけど、世の中はみんなVRに行ってるじゃないですか。でも私、VRいまいち馴染めなくて、みんなVR
ダンジョンやってるならリアルダンジョンがおろそかだし、そっちをやろうかなーって思ってて」

「いいことだと思いますわ。誰かがやらなければならないことですもの。皆様の日常を守っているのがはづきさんなんですわよ」

「おほー、欲しい言葉を言ってくれるー。好き過ぎるー!」

 スキスキパワーが溢れ出したので、カンナちゃんをむぎゅっとハグした。

「あーっ、はづきさんいけませんわー! 配信中ですわよー!」

※『キマシ』『神配信』『百合営業はなんぼやってもええですからね』『寿命がメキメキと音を立てて伸びていくのを感じる』『見る長寿薬』

「あとは、人間関係なんですけど、なんか周りがみんな私に気遣ってくれるというかなんというか……。配信者になる前は世間から隠れ潜んで生きてきたので、世界が全然違う顔を見せてきて大変戸惑っております」

「それははづきさんが、世界への接し方を変えたからですわ。世界を怖がっていたら、あちらも近づいて来ませんもの。ですけど、はづきさんが世界に歩み寄ったから、あちらもあなたを迎え入れてくれたのだと思いますわ」

※『偉業を成した人の悩みを一般論に吸収したw』『お嬢何気にレスバ強いんじゃないか?』『まだ大学生らしいけどとてもそうは思えん……』『アラフィフの俺より大人だ……』『お嬢の父親くらいの年齢のリスナーおって草』『僕はアラカンです』

 コメント欄も盛り上がっているなあ。
 私のハートも盛り上がっているぞ。
 いやあ、本当にこの配信に来て良かった。

 すーっと胸の内が軽くなる。
 なんか気付かないうちにクラスメイトが後輩になってたこととか、そういうのも全然問題ないように思えてきたのだ。

 VRは他の配信者の人に任せて、私は日常通りの配信をして……。
 フィギュアとかプラモの企画には力を注いで……。
 学業もちゃんとやって……。

 それで、増えた後輩たちのお悩みなんかを聞いてあげようじゃないか。

※『はづきっちがすっかり浄化された表情になっている』『あっ、マフィンを凄い勢いで食べた』『ホットミルクティ飲む時にごくごく音する人いる?』

「美味しい! お代わりもらえますか!」

「あら、食欲がすっかり戻ったようですわね! 実はこうなることを予期して、マフィンはあと八人分焼いたのを冷凍していますわ……!!」

「うおおおー」

 盛り上がる私。
 配信は完全にお茶会になっていくのだった。
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