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フォローアップ! 私の春休み編
第205話 突撃! 私の隣の部屋伝説
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兄とザッコで兄妹会議をしていたのだった。
私、齢十六にしてイカルガエンターテイメントにおける副社長みたいなポジションに収まっているらしいのだ……!
『未成年なのでそこら辺りは色々あるが、既に役員報酬ぶんは取り分けてある……』
「あわわ、配信者にして副社長……!」
『最初はお前が一人で始めたことなんだから、それなりのポジションになるのは当たり前だろう。面倒事を俺がやるために社長になったんだ。お前はいつも通りでいい。それはそうと……ビクトリアの50万人達成記念イベントだが……』
「そういう話あったねー」
『お前の時は一千万人突破しても朝食雑談配信とかやってたからな。流石にうちもイベントをやらないとダメだろうという話に』
「うん、我ながらあまりにも登録者数に無関心になり過ぎている……」
今、私の登録者数何人いたっけ。
でも、可愛いチームメンバーであるビクトリアの50万人突破は祝いたい。
「そういうわけでだ。隣の部屋にビクトリアがいるだろう。どういう内容にするか話し合って、簡単なものでいいから企画書を提出してくれ。書式はこう。後日営業担当が書き方も教える」
テキストファイルが送られてきた。
なんだか本当に会社で仕事してる人みたいになってきたなあ!
配信者も規模が大きくなると、しがらみとか養わないといけない人が増えて、こうなるのかも。
私はファイルをタブレットに転送して、ビクトリアの部屋を訪れるのだった。
「ビクトリアー、ちょっといい? あのね、登録者五十万人記念イベントの話なんだけど……」
そうしたら。
座椅子もたれてラノベを読むビクトリアの後ろで、ベッドの上で寝転がりながらラノベを読む女の子がいるではないか!
「う、うわーっ」
私はあまりにびっくりして普通に悲鳴を上げた。
な、なんたることだー。
一般人がいるー!
「あ、リーダー! びっくりした? でも彼女、リーダーが知ってる子だよ。ほら、前にオープンキャンパス行った時にインドの方の話をしてくれた……」
「あっ、思い出した! 日本語が上手いインドの人!」
ベッドの上の彼女は起き上がり、正座して深々とお辞儀をした。
「ファティマです。よろしくお願いします。ビクトリアが配信者をやってることは、よく知っています。本人から教えてもらいましたから」
「な、なるほどー」
ファティマは天然のウェーブヘアをいい感じにセットして、くるくるっと結い上げた髪型の人。
メガネを掛けてて、物静かな感じで言葉遣いも丁寧で、大変頭が良さそうだ。
「ハヅキさんのことも知りました。まさかあなたがハヅキさんで、しかも私よりも年下だったなんて……。そっちの方がずっとびっくりしました」
「お、おう」
全てを知られてしまっていた。
でもまあ、ビクトリアが友だちを作って、新年からずっと付き合いがあるというのはめでたいなあ。
それにビクトリアいわく、ファティマはきちんと秘密を守れる子だとか。
「ラノベとか読むんですか」
「読みます。向こうにも翻訳されたものがありますが、こちらとはニュアンスが異なります。日本のボキャブラリで読むラノベは味わいが異なります」
「なるほどーー」
含蓄があることを言うなあ。
そう言えばビクトリアも、原文でラノベ読むの好きだもんね。
立ち話もなんなので、三人で座卓の周りに集まった。
「今日はね、ビクトリアが登録者数五十万人行くんで、イベントをするんだけどどうしようかーって言う」
「五十万人凄いです!! ビクトリア頑張っていますね!」
「ふふふふふ、日本に来てから調子がいいの。リスナーもステイツとはノリが違っていて楽しいし」
ビクトリア、絶好調らしい。
そう言えば事務所に、ビクトリア宛のお高い商品が送られて来たりしてるな。
ガチ恋勢までいたかあ。
「そっかそっか、何よりです……。んじゃあ、どういうイベントにしよう」
「ハヅキさんもビクトリアも、ラノベが好きです。二人でラノベの感想とか、リスナーから好きなラノベの話を聞く配信がいいです」
「うおーっ、意外な意見!!」
ファティマさんから新たな知見が得られるなあ。
私から出てこなかった発想だ。
ダンジョン行けばいいってもんじゃないもんな。冒険配信者のアイデンティティが危うくなるけど。
「そうね。私もリーダーとダンジョン行くのは楽しいけれど、最近のリーダーは新人の子をサポートするので大変でしょう? だったら今回は落ち着いて、一緒にお菓子を食べながら……というのもいいと思うわ」
ビクトリアからもいい意見をもらえた。
よしよし、じゃあラノベ座談会にしよう……。
イベントかと言うと、もう全然そんな感じはしないが!
私とビクトリアなら、これが一番らしいのではないか。
さらさらーっと企画書を書き上げて、兄に送信した。
三十分くらいしたら、OKの連絡が来る。
「反応が早いです。大規模なファンが関わるイベントの決定なのに」
「基本、兄と企画の人が二人か三人で目を通してるだけだからねー」
新しくやって来た企画の人は、テレビ局で活躍してたベテランさんらしい。
色々規制が厳しくなって、表現できるものが減ったテレビからネットに移ってきたんだとか。
頼れる人が増えていくぞ……。
さらに兄から付け加えられている一文が……。
『配信者になっているラノベ作家やイラストレーターがいるから、俺からアプローチしてみよう。遠隔でゲスト出演してもらえると思う』
な、なんだってー!!
身内のこじんまりしたラノベ談義だと思っていたら、普通にイベントっぽくなっていく。
私もビクトリアも、ラノベが好きなだけの読者なんだぞ!
あひー、今から緊張しそうだ。
だがそこへ、ファティマが差し入れてくれたお菓子が登場する。
「グラブジャムンです。丸いドーナッツをシロップに漬けたもので……」
「リーダー気をつけて、歯が溶けそうなくらい甘いわよ! 私、一個が限界だった!」
「ははは、大げさな。ファティマさんありがとう、いただきまーす。あひー」
今年食べたものの中で、間違いなく一番甘かった。
私、齢十六にしてイカルガエンターテイメントにおける副社長みたいなポジションに収まっているらしいのだ……!
『未成年なのでそこら辺りは色々あるが、既に役員報酬ぶんは取り分けてある……』
「あわわ、配信者にして副社長……!」
『最初はお前が一人で始めたことなんだから、それなりのポジションになるのは当たり前だろう。面倒事を俺がやるために社長になったんだ。お前はいつも通りでいい。それはそうと……ビクトリアの50万人達成記念イベントだが……』
「そういう話あったねー」
『お前の時は一千万人突破しても朝食雑談配信とかやってたからな。流石にうちもイベントをやらないとダメだろうという話に』
「うん、我ながらあまりにも登録者数に無関心になり過ぎている……」
今、私の登録者数何人いたっけ。
でも、可愛いチームメンバーであるビクトリアの50万人突破は祝いたい。
「そういうわけでだ。隣の部屋にビクトリアがいるだろう。どういう内容にするか話し合って、簡単なものでいいから企画書を提出してくれ。書式はこう。後日営業担当が書き方も教える」
テキストファイルが送られてきた。
なんだか本当に会社で仕事してる人みたいになってきたなあ!
配信者も規模が大きくなると、しがらみとか養わないといけない人が増えて、こうなるのかも。
私はファイルをタブレットに転送して、ビクトリアの部屋を訪れるのだった。
「ビクトリアー、ちょっといい? あのね、登録者五十万人記念イベントの話なんだけど……」
そうしたら。
座椅子もたれてラノベを読むビクトリアの後ろで、ベッドの上で寝転がりながらラノベを読む女の子がいるではないか!
「う、うわーっ」
私はあまりにびっくりして普通に悲鳴を上げた。
な、なんたることだー。
一般人がいるー!
「あ、リーダー! びっくりした? でも彼女、リーダーが知ってる子だよ。ほら、前にオープンキャンパス行った時にインドの方の話をしてくれた……」
「あっ、思い出した! 日本語が上手いインドの人!」
ベッドの上の彼女は起き上がり、正座して深々とお辞儀をした。
「ファティマです。よろしくお願いします。ビクトリアが配信者をやってることは、よく知っています。本人から教えてもらいましたから」
「な、なるほどー」
ファティマは天然のウェーブヘアをいい感じにセットして、くるくるっと結い上げた髪型の人。
メガネを掛けてて、物静かな感じで言葉遣いも丁寧で、大変頭が良さそうだ。
「ハヅキさんのことも知りました。まさかあなたがハヅキさんで、しかも私よりも年下だったなんて……。そっちの方がずっとびっくりしました」
「お、おう」
全てを知られてしまっていた。
でもまあ、ビクトリアが友だちを作って、新年からずっと付き合いがあるというのはめでたいなあ。
それにビクトリアいわく、ファティマはきちんと秘密を守れる子だとか。
「ラノベとか読むんですか」
「読みます。向こうにも翻訳されたものがありますが、こちらとはニュアンスが異なります。日本のボキャブラリで読むラノベは味わいが異なります」
「なるほどーー」
含蓄があることを言うなあ。
そう言えばビクトリアも、原文でラノベ読むの好きだもんね。
立ち話もなんなので、三人で座卓の周りに集まった。
「今日はね、ビクトリアが登録者数五十万人行くんで、イベントをするんだけどどうしようかーって言う」
「五十万人凄いです!! ビクトリア頑張っていますね!」
「ふふふふふ、日本に来てから調子がいいの。リスナーもステイツとはノリが違っていて楽しいし」
ビクトリア、絶好調らしい。
そう言えば事務所に、ビクトリア宛のお高い商品が送られて来たりしてるな。
ガチ恋勢までいたかあ。
「そっかそっか、何よりです……。んじゃあ、どういうイベントにしよう」
「ハヅキさんもビクトリアも、ラノベが好きです。二人でラノベの感想とか、リスナーから好きなラノベの話を聞く配信がいいです」
「うおーっ、意外な意見!!」
ファティマさんから新たな知見が得られるなあ。
私から出てこなかった発想だ。
ダンジョン行けばいいってもんじゃないもんな。冒険配信者のアイデンティティが危うくなるけど。
「そうね。私もリーダーとダンジョン行くのは楽しいけれど、最近のリーダーは新人の子をサポートするので大変でしょう? だったら今回は落ち着いて、一緒にお菓子を食べながら……というのもいいと思うわ」
ビクトリアからもいい意見をもらえた。
よしよし、じゃあラノベ座談会にしよう……。
イベントかと言うと、もう全然そんな感じはしないが!
私とビクトリアなら、これが一番らしいのではないか。
さらさらーっと企画書を書き上げて、兄に送信した。
三十分くらいしたら、OKの連絡が来る。
「反応が早いです。大規模なファンが関わるイベントの決定なのに」
「基本、兄と企画の人が二人か三人で目を通してるだけだからねー」
新しくやって来た企画の人は、テレビ局で活躍してたベテランさんらしい。
色々規制が厳しくなって、表現できるものが減ったテレビからネットに移ってきたんだとか。
頼れる人が増えていくぞ……。
さらに兄から付け加えられている一文が……。
『配信者になっているラノベ作家やイラストレーターがいるから、俺からアプローチしてみよう。遠隔でゲスト出演してもらえると思う』
な、なんだってー!!
身内のこじんまりしたラノベ談義だと思っていたら、普通にイベントっぽくなっていく。
私もビクトリアも、ラノベが好きなだけの読者なんだぞ!
あひー、今から緊張しそうだ。
だがそこへ、ファティマが差し入れてくれたお菓子が登場する。
「グラブジャムンです。丸いドーナッツをシロップに漬けたもので……」
「リーダー気をつけて、歯が溶けそうなくらい甘いわよ! 私、一個が限界だった!」
「ははは、大げさな。ファティマさんありがとう、いただきまーす。あひー」
今年食べたものの中で、間違いなく一番甘かった。
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