ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
211 / 517
二年目な私の色々企画編

第211話 50万人記念はラノベ談義伝説

しおりを挟む
 イベントが始まる──。
 突貫で準備したとは言え、スタジオはすっかりラノベ図書館と化していた。
 新たに買った他、スタッフの持っている蔵書を持ち寄ったりした結果なのだ。

「夢のような空間だわ。ここに住みたい……」

 ビクトリアが目をキラキラさせている。
 ラノベ大好きだもんねえ……。

 ここに彼女と私ともみじちゃんがテーブルを囲んで座る。
 床にはモコモコした絨毯が敷かれており、その上にビーズクッションなどを置いてあるのだ。

「ああ、うちだめになる~」

 おお、もみじちゃんが配信開始前に溶け始めている……。本番前の緊張に強くなったなあ。
 配信していると度胸がつくもんね。

「それじゃあ配信五分前です!!」

 向こうで企画の人が声を張り上げる。
 撮影もやってくれるみたいだ。

 ほえー、今回のはテレビの放送みたいだなあ。
 ところどころでAフォンの撮影に切り替わったりもするみたいだけど。

「スタート!」

 ボーっとしてたらあっという間に五分経過して、配信が始まった。

「みんな、アリガトー! ビクトリアだよ……! 今日は私の、50万人達成記念で特別配信になるの」

 コメント欄を、おめでとうおめでとう、のコールが流れていく。
 愛されているなあ……。

「特別ゲストを迎えたわ。私の配信、あまりゲストが出てこないのだけれども。こちらがリーダー、みんな知っているでしょう? そう、きら星はづきチャンです」

「どうもどうも」

 私が手をふると、ワーッとコメント欄が盛り上がる。

「そしてこっちで溶けているのが……モミジ! モミジったら!」

「あっ、はっ! ほ、本日も、かいてーん! 鹿野もみじです!」

※『かわいい』『かわいい』『ビッキーの配信で得られない成分だな』

「あら、それはどういうことかしら……。私はカワイイじゃないっていうこと?」

 ビクトリアが突っ込んだので、コメント欄がドッと受けた。
 おお、彼女のチャンネルはこういう感じなのかあ。

 対等な関係みたいで楽しいなあ。

 そしてここから、私とビクトリアのラノベ談義が始まった。

「ステイツにいる頃から読んでいるけれど、この学園都市の無能力者シリーズが大好きなの。モデルになった場所は立川なんでしょう? この間遊びに行ったわ。アニメの中でもコミックの中でも描かれている光景が眼の前に広がって、とってもエキサイティングだった!」

「あー、あそこはねー。アニメでもモノレール映ってるもんねえ。で、お好きなキャラは」

「学園都市ナンバー3のパルスガン・比良坂真琴ね! 指先で銃を構えるポーズ、みんな真似したわ!」

 バーン、とやって見せるビクトリア。

※『うっ』『やられた……』『ラノベの話をするビッキーはいつも目がキラキラしてるな』

 ノリがいいコメント欄。
 そんな話をしつつ、ゲストタイムです。

 学園都市の無能力者シリーズの作者……とは違うけど、ビクトリアが最近ハマっている配信者ラノベの作者、チンアナゴ先生とザッコが繋がっているのだ。

「あーあー、んっんっ、ちょっとお水を飲むわ。うん、えー、聞こえているかしら? 私の声は届いていますか?」

『あ、はいー』

 ふにゃっとした優しい男性の声が聞こえた。

「チンアナゴ・センセイですね?」

『はい、どうもーチンアナゴと申しますー。僕の作品読んでくださっているそうで、嬉しいなあ』

「読んでますー!! 冴えない主人公がダンジョンフォールしたら、そこでピンチなヒロインを助けてしまうシーン……始まりから衝撃的でした! 彼には配信者の才能があって、そこでヒロインの使うAフォンと同調して現代魔法に目覚める……! あ、ごめんなさい。全部説明しちゃいそう」

 コメント欄もドッと笑う。
 ビクトリアが超テンション高いなあ……。
 しかし、そのラノベ、本当に今風の作品なんだなあ。

 有名配信者を助けてしまい、大活躍が配信に乗った主人公は一躍有名人に……。

 ……炎上とかしないの……?
 女性配信者と男性配信者はただでさえ勘ぐられるのだが……!!

 私は別のことが心配で仕方なくなった。
 だけど、そのラノベの世界は優しいみたいで、主人公とヒロインの関係をリスナーも優しく見守っている……。
 うんうん、世界全てがそうであればいいのになあ。

『現実だとそうはならないけれど、読者はファンタジーの世界で楽しくなりたいんですよ。だからそこはエンターテイメントに徹するんです。気を抜くと現実が顔を見せちゃう。だけどそうしたら、読者は夢の世界から連れ戻されますから』

「おおー」

「おおー」

「おおー」

 ビクトリア、私、もみじちゃんで異口同音に感嘆する。
 プロだ。
 プロのラノベ作家だ……。

 都合がいいように思える設定を、ご都合だ! って思わせないで入り込ませるプロの技!
 私たち配信者も、現実だと洒落にならないダンジョン探索をエンタメにしたりしてるもんねえ。

 色々含蓄のあるお話でした。

 ビクトリアが感激のあまり目が潤んでいる。
 お化粧落ちない……!?
 あ、ゴスのお化粧溶けてきてるじゃん!

※『ビッキー、メイク、メイクー!』『この人、うるっと来ると毎回メイク落ちてるな』『ラノベとかアニメ関係だとめっちゃ涙腺緩いんだよな』

 そうなの!?
 ビクトリアの知らぬ一面だった……!!

 その後、ビクトリアの衣装担当のイラストレーターさんからお祝いのメールが届いて、そこに新衣装デザインが添付されていたり。
 もうこれが、ひらひら、キラッキラのピンクゴスで……。

「こ、これは私とキャラが被るのでは……」

「先輩のピンクジャージと、ひらひらキラキラのピンクゴスだと色しか被ってないですよー」

 冷静にもみじちゃんが突っ込んだので、またコメント欄が大いに受けたのだった。

「リーダーと色がお揃い! 着てみたいなあ」

 ビクトリアが前向きなのだ。
 うんうん、今のイカルガの技術力なら、遠からず実現するねこれ……!!

 大盛況のうちに幕を閉じたビクトリア登録者数50万人突破イベント。
 どうやらここでチンアナゴ先生と伝手ができたみたいで、ビクトリア主演のボイスドラマみたいな脚本を書いてくれることになったようなのだ。

 おおお、私の知らない世界が広がっていく……!!
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...