ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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夏めく私の充電編

第226話 変わる世界情勢と今後のイカルガエンタ伝説

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 この間、私の配信で樹木っぽいダンジョンボスが、『異世界からの侵略本格化~』とか語った後。
 世界的にダンジョンの状況が変わってきたらしい。

 これまでは、大罪勢が減るにつれてだんだん落ち着いてきていたダンジョン。
 このままならダンジョンを踏破しきって人間の世界を取り戻せる……ってなってたんですって。

 ところが!
 新しいダンジョンが出現し始めた。

 地下鉄の途中とか、ビルの地下駐車場に扉が出現するパターン。
 何もなかったはずの平地に、突然古城が出現するパターン。
 スラム街がまるで中世ヨーロッパみたいな町並みに変化してしまうパターン……。

 色々な事が世界中で起きてるらしい。

 なんだなんだ。

「人類とダンジョンの戦いは、新たなるフェーズに突入したと見て良かろう」

 兄がなんか渋い声で言った。

「ええ、間違いありませんね」

 うちの事務所にやって来ていた風街さんもなんかかっこいい声で言ってる。
 だが二人とも、バーチャライズした姿の上に、なんかハイキングにでも行くみたいな衣装を身につけているではないか。

「その姿はなあに」

「実はさっきまでコラボ配信をしていてな……。彼女の番組なのだが、イカルガエンターテイメントのスタジオで歌ったり踊ったりを」

「二人で!?」

「うむ。イカルガの宣伝でもある。ライブダンジョンとの協力体制を作るためでもある」

「いやー、斑鳩さん、腕が落ちていませんね」

「日々練習ですよ風街さん。あなたこそ流石はライブダンジョンの歌姫です」

 ハハハ、とお互いをリスペクトし合う二人。
 古参配信者同士だ!

「話は戻るけれど……。迷宮省としては、きら星はづきさんの存在で異世界側が目論んでいたスケジュールが大幅に前倒しされたと見ているの。つまり、じっくりと浸透して人類を支配していくはずだった大罪勢が失敗したので」

「ははあ、直接手を出すことにしたと」

「そうなるわね。今、名古屋城の隣に暗黒名古屋城が出現したとかで、うちのライブXの五人がコラボで攻略に向かってるわ」

 ライブXは悪の秘密結社をモチーフにした、ライブダンジョンのグループの一つ。
 配信見たことあるけど、みんなわちゃわちゃしてて仲良しだった。
 悪の秘密結社とは……?

 だけど、ライブダンジョンから五人が一気に向かったっていうことは、暗黒名古屋城は安心ではないか。

「あとは……各地に異世界の住人と思われる人々が出現しているらしいの。ダンジョンごと送り込まれたのか、それとも迷い込んでしまったのか、はたまた、逃げ込んできたのか……」

「ほえー、異世界人!!」

「異世界人か……」

 兄が何か考え込んでいる。
 その後、ライブダンジョンとの共闘態勢を作るぞ、という話で落ち着いた。

 なうファンタジー側とも緩めの共闘態勢なんだけど、こっちは兄が元々所属してたのと、彼のアバターがなうファンタジー製だって言うのもあって、なかなか複雑な関係になってしまうらしい。
 ライブダンジョンとの方が、しがらみがない分やりやすいのかも?

 こうして風街さんは去っていった。
 この後、ゼロナンバーズの仲間とコラボの収録があるらしい。
 忙しいなあ!

「あちこちに新型ダンジョンが出現する状況の今、ゼロナンバーズにはこういう状況に対応するのが得意な配信者がいるな」

「そうなの?」

 兄、詳しいなあと感心する。

「DIz氏だ。だいきち、とリスナーからは呼ばれている、ライブダンジョン随一の清楚系配信者でな……。ジオシーカーという現代魔法を得意とする」

「ジオシーカー!」

「ダンジョンの写真を見て、場所を瞬時に割り出してそこに降り立つ移動魔法だ」

「ひょえー」

「海外の地形を判別し、そこにいきなり移動したこともある。帰るのが大変だったらしいが」

「ひょえー」

「近々、お前とコラボすることになるだろうな……。それはそうとして」

 兄が本題に入ってきた。
 私を事務所に呼んだ理由とは一体……!
 いや、呼ばれなくても遊びに来るんですけどね。

「異世界人が来たというじゃないか。異世界人を配信者にできないものか?」

「えっ!! 異世界人を配信者に!?」

 なんてことを考えるんだこの人は。

「いいか。うちは今五名の配信者を抱えている。だが、これは全てお前の働きに寄りかかって維持できているものだ。予定通り、お前が高校卒業と同時にいなくなったらどうなる? 現在の規模なら問題ないが、それにしても収益の大部分を失うことになる。柱が……新たな柱となる配信者が必要なのだ」

「な、なるほどー!!」

 私は感心した。
 兄は未来を見据えているなあ。

「なので、配信がてら異世界人も探してくれると助かる。お前が勧誘するのはかなり大変だろうから、しばらくは配信に彼女をつけよう」

 兄に呼ばれて、受付さんと一緒に仕事をしてた見習いさんが立ち上がり、ペコッとお辞儀した。
 受付見習いさんだ!

「大学では毎年、次々新入生をサークルに引きずり込んで来ました! 勧誘の腕には自信があります!」

「おおーっ!! な、謎のスキル……!!」

 こうして、イカルガエンターテイメントの新たな柱を見つけるための活動もスタートする私なのだった。
 私が三年で卒業するためには必要だからね……!
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