ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
298 / 517
秋めく私の学園祭編

第298話 始まる学園祭伝説

しおりを挟む
 ジャージよし!
 きら星はづきっぽい髪型、よし!

「リーダーが素のままではづきになるの、なかなか新鮮よね。思った以上にきら星はづきだわ……」

「えっ、ほんと!?」

 鏡で確認してみる。
 バーチャライズで、ちょいちょいゲームとかアニメチックな見た目を被せているんだけど……。

「表情とか動きとか骨格がきら星はづきだ……」

「本人だものね」

「まずいよ、超似てる」

「本人だもの」

 ビクトリアのツッコミ、切れ味が鋭いなあ。
 そっか、本人だからね。

 みんなには、動画を見て動きを練習したとか言い訳しておこう……。

『おっ、行くか、行くのか! 我も行くぞ行くぞ』

 食卓でぴょんぴょん飛び跳ねるちびバングラッド氏をリュックに放り込む。

「では行ってきます」

「後から行くからね」

「楽しみだなあ」

「リーダーに接客されたいなー」

 両親とビクトリアは私からの入場チケットがあるので、後からやって来るのだ。

『我は何をしていればいいのだ?』

「バングラッド氏はマスコットだから、小さいまま受付のところでピコピコ動いていてもらえると……」

『良かろう……』

 甲高いかわいい声で厳かなことを言うと面白いんだよね。
 クラスに到着したら、大歓声が出迎えてくれた。

 バングラッド氏大人気じゃん。

 なんか私の方を見て、みんな「本物……!」「本物きたー!」とか言ってるけど。
 うんうん、バングラッド氏は正真正銘の本物魔将だからね……。

 ぼたんちゃんがもう、凄く複雑な顔をして走ってきて、

「似過ぎでしょ!! ジャージと髪型でここまでそっくりになると思わないじゃん!!」

 何を焦っているのか。
 でも、なんか嬉しそうにニヤニヤを抑えきれないでいる。

 はぎゅうちゃんともみじちゃんは、

「まんまだね」

「御本人だねー」

 とか言ってる。
 やっぱりきら星はづきに似ちゃってるかー。
 じゃあこう、覇気のある感じのポーズをしてそれっぽく見られないようにしようかな。

 私は腕組みをして、ちょっと威厳のある顔になった。

「配信で見たあのポーズだ!」

「後方腕組みきたー!!」

 なんだなんだ!?
 不思議な受け方をしているぞ……!!

 うちのクラスは不思議なところだなあ。
 私は首をひねりながら持ち場に移動した。

 委員長がパタパタとやって来る。

「す、す、凄い仕上がりだわ。想像以上だった……! もう、クラスのみんなのモチベーションが天元突破よ! このイベントは成功する! ぜえったいに、成功する!!」

「お、おう!」

 凄いエネルギーだなあ。
 私はすっかり圧倒されっぱなしだよ……。

 なぜか、他のクラスや先輩、後輩たちもうちのクラスを見に来る。

「なぜわあわあきゃあきゃあ騒がしいのだろう……」

「それ気付いてないの先輩だけだと思いますよ」

「師匠、あまりにもまんまなんで」

「あ、つまり……そっくりさんを見に来たと」

「本人を見に来たのよ……」

 ぼたんちゃんは何を言っているのだ。
 きら星はづきの本物が、それっぽいコスプレをして案内をするだけの出し物ですから。
 お客さんはぜひ、雰囲気を楽しみに来て欲しい。

 そしてついに、学園祭がスタートした。
 うちのすごろく、いきなり行列ができた。

 こ、これは……。
 生徒ばかりではないか。

 通りかかる先生たちが首を傾げている。

「秘密はほとんどの先生には共有されていない……」

 委員長が意味深なことを呟いた。
 な、何を知っているんだ!

 だけど、流石に生徒ばかりだとまずいということで。

「外部のお客さん優先でいきまーす! 今並んでいる人たちは整理券を……」

 委員長が仕切り始めた。
 助かる~。

「じゃあ、クリアした人に参加賞を配って一言掛ける役をお願いね」

 委員長が私に新たな役割を言い渡した。
 なるほどー、それは楽そう。
 私にわざわざ負担の少なそうな仕事を振ってくれるとは、優しいなあ……。

「的確な人員配置……」

「委員長本当に分かってるねー」

「絶対最後に師匠と会えるなら師匠の取り合いにならないもんね」

 なんだなんだ……!?
 イノシカチョウ、何を知っているのだ……!

 だけどその後は、私は余計なことを考えている暇がなくなってしまった。
 なにせ、どんどんお客さんが入ってくる!

 そしてきゃあきゃあ歓声をあげながら、すごろくとそれに伴う数々のミニゲームを遊ぶ。

 ミニゲームが25マス全てに用意されていて、1つクリアできるとちょっと先に進めるのだ。
 ゲームも一つ一つが何十秒とかで終わる。

 ミニゲームのクリア失敗すると、一回だけ再チャレンジできる、と。

 あっ、最初にすごろくをクリアした人が来た!
 私は用意されていたセリフを読み上げる。

「お、おめでとうございます! あなたはきら星はづきすごろくをクリアしたので、はづき認定をさしあげます!」

「や、やったー!! 嬉しい! 嬉しい!」

 参加賞はバーチャルゴボウのペーパークラフトと、私の描いたカラーイラストをコピーして、ラミネートしたやつ。
 もしや、これを大量生産しているチームがいた……?
 段ボールにぎっしり詰まっているんだけど。

『よくやったな! きら星はづきのように精進するがいい!』

 バングラッド氏も私の頭の上からねぎらいの言葉を掛ける。
 参加賞を受け取った女子は、ものすごく嬉しそうに何度も頭を下げて去っていった。

 こんなに喜んでもらえるとは……。
  
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...