ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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年末私の大感謝祭編

第360話 感謝祭クライマックス……外では何か起こってたみたいですね伝説

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 出番まで少しのんびりしようかなって思ったら、日本中でダンジョンハザードとか!
 こうなったらいきなりプログラム変更ですよ!!

 ということで、私は勝手にアナウンスして、みんなにこうやってってお願いして。
 もう緊張する間も無くステージに飛び出していって、ベルっちと二人で歌って踊ったのだった。
 必死ですよ必死。

 練習した成果を発揮はできた……と思う!
 歌い終わったら、会場中の人がワーッと喜んでいた。
 良かった良かった。

 サビの辺りで、泣いてる人とかいたし。
 横のコメントは『どんどんダンジョンハザードが押し戻されてく!』『アニメかよ!? 現実だよアニメじゃない!』とか流れてるし。
 うんうん、盛り上がってくれて何よりです。

 めちゃくちゃ動いて歌ってカロリーを使って、もう汗だくなのだ。
 私はベルっちと二人でみんなに手を振りながら、舞台袖に引っ込んだ。

 兄がニッコニコで出迎えてくれる。

「よくやった。今までの研鑽が生きた、実にいいステージだったぞ。俺の夢がかなった」

「夢え? 私がステージで歌って踊るのが?」

「アイドルをプロデュースしてみたかったんだ」

「なんだってー」

 こ、この人はー。
 あまりにマイペースな話をしているので、これを見かねた他のスタッフさんが寄ってきた。

「はい、はづきちゃんタオルとスポーツドリンク。お疲れ様です!」

「あ、どうもー」

『どうもどうも。お腹へった気がする』

「ねー」

 ベルっちと二人、わけのわからないことを言ってる兄はスルーして控室に向かった。
 今、ステージではイノシカチョウの三人が順番にソロをやって、それから三人の歌をやるターンだ。

 盛り上がってる盛り上がってる。

 そしてなんかステージ裏でもスタッフの皆さんが盛り上がっていた。
 なんだなんだ。

「見て見てはづきさん! これ、これ!」

 ルンテさんが駆け寄ってきて、スマホを見せてくる。
 なんだなんだ。

 なんか、さっき私が歌った歌が流れてくるんですけど。

「これ、今最速で上がったうぉっちチャンネルさんの切り抜き動画なんだですけど。さっき、日本全国で一斉にダンジョンハザードが消滅したって」

「『あひー!?』」

 物凄いニュースに、私とベルっちが椅子から飛び上がって驚いた。
 どういうことですかー!?

「いきなりのダンジョンからの大攻勢で大変な状況だったのが、はづきさんが歌いだしたら一気に形勢が逆転して……」

「おおー、よかったよかった」

『うんうん、プログラム変更した甲斐があったね』

 動画の中では、溢れ出したモンスターたちは私の歌が流れると一気に動きが鈍くなって、辺りをキョロキョロし始める。
 で、押されてた配信者さんがブワーッと光り出したりして、すごいパワーを纏ってモンスターをやっつけ始めたのだ。

 ダンジョンハザードは、大本になってるダンジョンの最深部をクリアしたら消滅する。
 みんな物凄い速さで、ダンジョンRTA(リアルタイムアタック)してるなあ。

 各地のダンジョン最奥にいる、ダンジョンボスが次々にやられるシーン。
 うぉっちチャンネルさんの切り抜きが上手い!

 後で完全版が出ると思うけど、最速版でも盛り上がりは体験できた。

「こんなお祭りみたいな事になってたのか……」

『乗り遅れてしまった……』

「乗り遅れるも何も、はづきさんがこの流れの源流でしょ!」

 ルンテさんの突っ込みを浴びてしまった!
 そうかあ……?
 そうなのだろうか……?

 うーむ。
 これ、いい感じに私の歌をBGMにしてるだけでは……?

「社長がまだ未発表の曲の使用許可とか出すと思います? コンサートが始まって、はづきさんが歌い出した途端、全部のAフォンをジャックしてこの歌が流れ出したんですよ」

「『な、なんだってー!?』」

 再び驚愕する私とベルっち。

『いかに魔王でも私はそこまでやらない』

「ベルっち平和的な魔王だもんね」

『お腹に食べ物が入っている限り人類の味方をするね』

 そんな話をしてたら、スタッフさんたちがベルっちの横に食べ物を積み上げてくれた。
 優しい人たちだ。
 分けてもらおうっと。

 二人でニコニコしながら、チョコバーとかをもぐもぐ食べる。
 甘いものが疲れた体に染み渡る~。

「それで、地の大魔将が出現して、一斉攻撃だったみたいなんですけど……。大魔将が慌ててまた地の底に引っ込んでいったそうです」

「ありゃりゃ。なんで逃げたんだろう」

「はづきさんの歌でパワーアップした配信者たちを見て、これはまずいと思ったんじゃないかな……。ファールディアでもこんなこと無かったし。っていうかこれ、もう、神話に語られている戦女神のバトルソングと、それに強化されて魔の軍勢を打ち破る聖なる戦士たちの聖戦の光景そのものだし」

 何その話、知らない。
 くわしく!

 ルンテさんから、ファールディアの神話を聞いてしまったぞ。
 ほうほう、一般人の中から普通の女の子が選ばれて、彼女がなんか幾多の試練を経て戦の女神として迎え入れられ、ついに光と闇の最終決戦で戦女神のバトルソングでみんな超強くなったと。
 ははあー。

『なんかはづきみたいね』

「私が女神? ハハハ、幾らなんでも盛り過ぎでしょ」

 なんか周りのスタッフさんが、ハハハとか笑ってるけど目が真剣だ。
 なんだなんだ。

「結局ファールディアの人間は、文化とか技術が発展したんだけど信仰を忘れて、世界から神は去ったと言われてるんです。私たち異種族はもともと人間から分かれた、あるいは人間の秘術で生み出されたとされてるんだけど、神は信じて無くてもその加護っぽいのを常に纏ってるの。例えば精霊とかがそうだし」

「なんか深い話になってきたぞ」

 ルンテさんの世界は、神様から見放された人間が魔王の侵略に全然抗えなくて滅びたんだと。
 こわいこわい……。

 そんな話をしていたら、また出番のようです。
 アンコールだと……!?

「きら星はづきの出番だ! 既に版権元から許可を取ってある。歌ってこい、虎になれ」

「えっ、あれをステージで!?」

 今回のイベントのサービス凄くない?
 私の消費カロリーも凄くない?

『仕方ない。いきますかー』

「いくかあー」

 二人でよっこらしょと立ち上がった。
 カロリー補給は十分。
 もう一発歌ってクライマックス終わらせますか。
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