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年越し私のまったり編
第367話 まったり確定大晦日伝説
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今年の大晦日は!
なんにも!
しないぞー!!
ということで、私は今家にいます。
我が家のリビングは洋式なのでコタツが存在しない……。
代わりに床暖房なんだけど、コタツというものにも憧れるんだよね。
ソファに腰掛けて、テレビでアワチューブの動画とか流しながら、カナンさんとぺちゃくちゃお喋りしている。
「昨日の温泉は良かったな。日帰りなのがもったいないくらいだった……。宿泊したかった」
「ごめんねー私が一緒だったからー」
「いや、いい。気にしないで。はづきは多忙だし、あなたの時間を奪うことはゴボウアースの損失だもの。こうして完全なオフを過ごすのだって久しぶりでしょう?」
「確かに……」
どれくらいぶりの完全オフか!
年内の仕事は全部終わらせたし、年末に出なきゃいけないのは断ったし。
今日だけは何もしないでのんびりするー。
なお、年が明けた瞬間に仕事から帰ってきたビクトリアと、カナンさんと三人で振り袖着込んで初詣に行く模様。
そこから寝て、朝になったらイノシカチョウの三人とバーチャル初詣。初ではないが!
そうそう。ビクトリアは忙しくて、今はソシャゲの年末特番配信に参加してる。
ソシャゲで演じたキャラが大人気らしくて、年末合わせで新衣装がいきなり投下されるらしく。
いやあ、売れっ子声優になりつつあるビクトリアも大変だ。
彼女、この忙しさが嬉しくて堪らないみたいだけど。
そりゃそうか、夢がかなってる最中だもんねえ。
「しかし私は思うのだが、配信者というのはとにかくタフだ。これは同接という信仰が集まり、私たちが生物として強くなっているためだと思う。誰が考えたのかは知らないが、冒険配信者は凄いシステムだ」
「ほんとにねー。誰が考えたんだろう……。大京さん……スレイヤーVさんね。あの人が若い頃が冒険配信の最初の頃で、その時にはまだ配信は無かったって」
「つまり、人間は生身でダンジョンに挑んでいたのか……。それはファールディアと変わらない」
「まあ、それで死んじゃう人の数は今も昔も変わらないらしいけど……」
「どうしてなんだろう? 今の方が配信者は強化されているだろうに」
「配信に乗って有名になっちゃうから、撮れ高の高い映像を作るために危ないこともどんどんやるからじゃないかなあ……。いやあ、私は人のこと言えませんけど」
えへへ、と笑ってたら、母が紅茶を淹れてくれた。
これを、私のコラボフードであるファッジと一緒にいただく。
おいしい~。
「ホッとする味だ。そうか、承認欲求というやつだな。欲望には際限というものがないものな……。だが、その欲望があったからこそゴボウアースはきら星はづきを生み出したのだと思う」
「えっ、私~? そこまでのものではないよ」
「そこまでものもではないどころか、一つの世界を滅ぼした魔王に唯一対抗できる人類の希望だと思う」
カナンさんが大げさな事を言いながらお茶を飲むのだった。
またまたー。
いつまでも私が認めないので、この話はここでおしまいになった。
「無自覚のまま世界を救う勇者や女神がいてもいいと思うわね」
とかカナンさんは謎の事を言っていたのだった。
その後、父がやってきてカナンさんに夫婦旅行の行き先の相談なんかを始めている。
そう言えば両親の結婚三十周年が近いのだった……。
ここは旅行アドバイザーとしても優秀なカナンさんの出番だろう。
私は席を外す。
邪魔しないためではない。
ファッジを食べ尽くしたので、ちょっと口寂しくなったからだ。
そこでハッとする。
「これ以上間食をすると、カンナちゃんにバレた時に運動をさせられてしまう……!!」
私の中のベルっちも震え上がったのが分かった。
いけないいけない……。
「じゃあ、ちょっとカロリーを消費するために走ってきますね……」
「私も行くわ」
母がジャージに上着を着込んでついてくる。
「珍しい……」
「あなたに合わせて食べてたらちょっとお肉が付きすぎて……」
「やはり」
親子揃ってよく食べるもんね!
私が配信を始める前まではそうでもなかった気がしたけど、配信後の私がもりもり食べてたら、母もつられてもりもり食べるようになった。
ここは体を鍛えなければ!
二人でランニングなのだ!
大晦日の街は、なんというかゆるーい感じの空気に包まれている。
ほとんどのところが休みだもんね。
今日明日と国民の休日みたいな感じなのだ。
まあ、私は明日から仕事なんですけど!
「あなた、外で走る時はサングラスつけるの?」
「はっ、正体がバレないように」
「むしろサングラスつけてる方がバレない? 顔を見せたくない人が走ってるーって思われそうだけど」
「ハッ!」
そ、その発想はなかった!
大感謝祭の時に得た知見を無条件で信用してしまっていたよ。
あの時も一瞬でバレたけど。
途中、もみじちゃんの家に到着したのでパンを買っていった。
大晦日もやってるんですねここ!!
「毎度! 娘がいつもお世話になってます! 今日は大晦日ですからね、五時で閉めるんですよ」
「なるほどー」
お正月だけ休んで、二日から営業なんだとか。
頭が下がるー。
でも、ここのパンを毎日食べてる人たちがいるわけだもんねえ。
今では完全に営業も軌道に乗って、たくさんのファンがいるパン屋さんになっているのだった。
私はここのキッシュが大好きでして。
どっさりお惣菜が乗ったパンみたいなもんです、あれ。
もみじちゃんも中身を作る時は一枚噛んでるようで、どんどん新しいキッシュが出てくる……。
日持ちがしないけど、大人気メニューなんで一瞬で売り切れる。
私が来た時、ちょうどキッシュが並んだところだった。
母と二人で、無言で五人分ゲット。
今日の昼食はキッシュにしよう。
夕飯はサラッとやって、夜に年越しそばを食べるんだし、昼はあっさりくらいでよろしかろう。
こうしてランニングに出た目的を忘れ、ほくほく顔で帰宅する私たち親子なのだった……。
なんにも!
しないぞー!!
ということで、私は今家にいます。
我が家のリビングは洋式なのでコタツが存在しない……。
代わりに床暖房なんだけど、コタツというものにも憧れるんだよね。
ソファに腰掛けて、テレビでアワチューブの動画とか流しながら、カナンさんとぺちゃくちゃお喋りしている。
「昨日の温泉は良かったな。日帰りなのがもったいないくらいだった……。宿泊したかった」
「ごめんねー私が一緒だったからー」
「いや、いい。気にしないで。はづきは多忙だし、あなたの時間を奪うことはゴボウアースの損失だもの。こうして完全なオフを過ごすのだって久しぶりでしょう?」
「確かに……」
どれくらいぶりの完全オフか!
年内の仕事は全部終わらせたし、年末に出なきゃいけないのは断ったし。
今日だけは何もしないでのんびりするー。
なお、年が明けた瞬間に仕事から帰ってきたビクトリアと、カナンさんと三人で振り袖着込んで初詣に行く模様。
そこから寝て、朝になったらイノシカチョウの三人とバーチャル初詣。初ではないが!
そうそう。ビクトリアは忙しくて、今はソシャゲの年末特番配信に参加してる。
ソシャゲで演じたキャラが大人気らしくて、年末合わせで新衣装がいきなり投下されるらしく。
いやあ、売れっ子声優になりつつあるビクトリアも大変だ。
彼女、この忙しさが嬉しくて堪らないみたいだけど。
そりゃそうか、夢がかなってる最中だもんねえ。
「しかし私は思うのだが、配信者というのはとにかくタフだ。これは同接という信仰が集まり、私たちが生物として強くなっているためだと思う。誰が考えたのかは知らないが、冒険配信者は凄いシステムだ」
「ほんとにねー。誰が考えたんだろう……。大京さん……スレイヤーVさんね。あの人が若い頃が冒険配信の最初の頃で、その時にはまだ配信は無かったって」
「つまり、人間は生身でダンジョンに挑んでいたのか……。それはファールディアと変わらない」
「まあ、それで死んじゃう人の数は今も昔も変わらないらしいけど……」
「どうしてなんだろう? 今の方が配信者は強化されているだろうに」
「配信に乗って有名になっちゃうから、撮れ高の高い映像を作るために危ないこともどんどんやるからじゃないかなあ……。いやあ、私は人のこと言えませんけど」
えへへ、と笑ってたら、母が紅茶を淹れてくれた。
これを、私のコラボフードであるファッジと一緒にいただく。
おいしい~。
「ホッとする味だ。そうか、承認欲求というやつだな。欲望には際限というものがないものな……。だが、その欲望があったからこそゴボウアースはきら星はづきを生み出したのだと思う」
「えっ、私~? そこまでのものではないよ」
「そこまでものもではないどころか、一つの世界を滅ぼした魔王に唯一対抗できる人類の希望だと思う」
カナンさんが大げさな事を言いながらお茶を飲むのだった。
またまたー。
いつまでも私が認めないので、この話はここでおしまいになった。
「無自覚のまま世界を救う勇者や女神がいてもいいと思うわね」
とかカナンさんは謎の事を言っていたのだった。
その後、父がやってきてカナンさんに夫婦旅行の行き先の相談なんかを始めている。
そう言えば両親の結婚三十周年が近いのだった……。
ここは旅行アドバイザーとしても優秀なカナンさんの出番だろう。
私は席を外す。
邪魔しないためではない。
ファッジを食べ尽くしたので、ちょっと口寂しくなったからだ。
そこでハッとする。
「これ以上間食をすると、カンナちゃんにバレた時に運動をさせられてしまう……!!」
私の中のベルっちも震え上がったのが分かった。
いけないいけない……。
「じゃあ、ちょっとカロリーを消費するために走ってきますね……」
「私も行くわ」
母がジャージに上着を着込んでついてくる。
「珍しい……」
「あなたに合わせて食べてたらちょっとお肉が付きすぎて……」
「やはり」
親子揃ってよく食べるもんね!
私が配信を始める前まではそうでもなかった気がしたけど、配信後の私がもりもり食べてたら、母もつられてもりもり食べるようになった。
ここは体を鍛えなければ!
二人でランニングなのだ!
大晦日の街は、なんというかゆるーい感じの空気に包まれている。
ほとんどのところが休みだもんね。
今日明日と国民の休日みたいな感じなのだ。
まあ、私は明日から仕事なんですけど!
「あなた、外で走る時はサングラスつけるの?」
「はっ、正体がバレないように」
「むしろサングラスつけてる方がバレない? 顔を見せたくない人が走ってるーって思われそうだけど」
「ハッ!」
そ、その発想はなかった!
大感謝祭の時に得た知見を無条件で信用してしまっていたよ。
あの時も一瞬でバレたけど。
途中、もみじちゃんの家に到着したのでパンを買っていった。
大晦日もやってるんですねここ!!
「毎度! 娘がいつもお世話になってます! 今日は大晦日ですからね、五時で閉めるんですよ」
「なるほどー」
お正月だけ休んで、二日から営業なんだとか。
頭が下がるー。
でも、ここのパンを毎日食べてる人たちがいるわけだもんねえ。
今では完全に営業も軌道に乗って、たくさんのファンがいるパン屋さんになっているのだった。
私はここのキッシュが大好きでして。
どっさりお惣菜が乗ったパンみたいなもんです、あれ。
もみじちゃんも中身を作る時は一枚噛んでるようで、どんどん新しいキッシュが出てくる……。
日持ちがしないけど、大人気メニューなんで一瞬で売り切れる。
私が来た時、ちょうどキッシュが並んだところだった。
母と二人で、無言で五人分ゲット。
今日の昼食はキッシュにしよう。
夕飯はサラッとやって、夜に年越しそばを食べるんだし、昼はあっさりくらいでよろしかろう。
こうしてランニングに出た目的を忘れ、ほくほく顔で帰宅する私たち親子なのだった……。
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