ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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渦巻く策謀と、いつもの私編

第427話 新米?新妹?勇者伝説

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「あれ? たこやきの妹さんって配信やってるの?」

 休憩に入っていたたこやきが、一階のロビーでカップラーメンを食べてたのだった。
 その時に開いてたのが、アワチューブの動画。

 見たことあるような配信者の人だなーと思ったら、たこやきが「これ、俺の妹なんだ」と爆弾発言をしたのだった。

「はえー。知らなかった! なのに私の仕事ばっかり色々頼んでごめんねえ」

「いいんだよ。はづきっちは忙しすぎだし。これでもうちの妹、登録者が一万人に届きそうなんだ」

「すごい!」

 それは本当に凄い。

「こいつ、俺がはづきっちの最初の配信を見つけてぼーっと見てるのを、後ろからハラハラしながら眺めててさ。で、はづきっちがそこからトントン拍子でスターの階段みたいなのを上がって行ったでしょ。こいつもそれに憧れて配信を始めて」

「ほえー。……ってことは、最初のリスナーの一人だった!?」

「そういうこと。同接数っていう数字に現れない同接がいるんだよ、この世界。俺はそれを数値化したいと思ってる。それはともかく、はづきっち、別にうちの妹だからって応援しなくてもいいからね」

 そうは言われても、知ってしまったものは気になるなあ!
 なになに?

 ユーシャ・ブレイバーの勇者部ちゃんねる?
 あれっ!?
 この娘ってこの間私がこっそお世話になった……!? 

 彼女、私よりも一個年上で、高等専門学校の学生さんなんだそうだ。
 ほうほうほう……。

「あ、なんかマジックハンドみたいなのが出た。ほほー! マジックハンドから魔法を!? これ自分で作ったんです?」

 この間の配信では出してなかったけど、余裕がなかったのかも?
 なんか私のアクスタを得てからパワーアップして、ちょっと色々やれるようになったみたいだ。

「そうそう。工学系の高専だからね。手先は器用だし、学校には妹の活動を支援する専門の部活もある。名付けて勇者部」

「勇者部!! マンガとかアニメでありそう!」

 あのサポートの人たち、ユーシャちゃんと一緒の部活だったんだなあ!
 そうか、部活動で配信。
 青春だあ。

 私はたくさんの作業の合間に、ユーシャちゃんの動画をちょこちょこ見ることにしたのだった。

 ユーシャ・ブレイバー。
 背丈は私よりちょっと低いくらいで、女子の平均身長かな。
 体格はふつう? 配信者2年半やってるそうなんで、結構鍛えられてるかも。

 アバターの姿は、赤い髪がつんつんに逆だってて、ゲームキャラみたいな額冠を身につけてる。
 あとはマントと、肩当てと胸当てがついたブレザータイプの制服みたいな。

 彼女の所属してる高専って制服無いよね?

 スタイルは様々なガジェットを使った、状況対応型。
 でも、決め手は必ず剣。
 スイッチを入れると、効果音が鳴り響いて柄に埋め込まれたLEDが明滅する。

『うおおー! 伝説剣アルティメットブリンガー!』

※『決まったー! G・O・B・O・U!!』『グレート・オール・バスター・オーダー・アルティメット!』

「意味のわからない羅列! だけど頭文字がゴボウじゃん! 驚いたねえユーシャちゃん、奇しくも同じ響きだねえ。運命を感じる~」

 あまりにも面白かったので、ついついコメント欄に書き込んでしまう私なのだった。
 そうしたら、数分後に返信が来た。

『うわあああ! はづきっちにコメントをもらうなんて! ありがとうございます! 応援してます! また見に来てくれると嬉しいです!』

 初々しいなあ……。
 私はにっこりしてしまった。
 私とスファトリーさんをキャリーしてくれた時は頼もしいお姉さんだったのに、こう言う時はかわいいところが出るのね。

 私がコメントしてきたというのは話題になったみたいで、その後、ユーシャちゃんをキーワードにして検索したら、私との絡みの話がちょこちょこ出るようになっていた。
 ユーシャちゃんは私のフォロワーでもあるらしく……。

 ちょいちょい、私のグッズを抱きしめてる写真をアップしてくれるようになった。
 もちろん、常に私があげたアクスタが画面端に写ってるんだけど。
 だが、ここにコメントをしては私が彼女を特別扱いしているという意味になってしまう……。

 よし、引用リツブヤキしておこうっと。

『それは特別扱いなのでは?』

「ベルっち、さすが私。私が自分を誤魔化していたのに言語化してしまうとは」

 当然のようにまた話題になった。
 これは……。
 5月の私のマイブーム、ユーシャちゃんとの絡みだな。

 せっかくなので、コラボの話を送ってみた。
 すぐ返ってきた。

 してくれるそうです。

 その直後に、たこやきから連絡も来る。

『別に妹を甘やかしてくれなくてもいいのだが』

「なんか必殺技がゴボウじゃん。運命を感じちゃった」

 実はもう、こっそりコラボ済みですし。

『露骨に語呂合わせしてるだけでしょ。いや、でもまあ妹をよろしくお願いします』

「はーい、よろしくされました」

 たこやきにはお世話になってるしね。
 妹ちゃんにお返しするのもいいかもなのだ。

 ちゃん付けだけど、実際は私の1個上なんですが!

 私とユーシャちゃんのコラボの話が、タイムラインを駆け巡る。
 魔王であるベルっちと融合している私なので、このコラボは『魔王と勇者』といつの間にかハッシュタグを付けられて出回ってしまった。

 ファンイラストが一日でどかどか上がってきたぞ……!
 そして、ユーシャちゃんに世界が気付いた。

 1万3人くらいだった登録者数が、いつの間にか5万人まで増えている。

『妹が、あひーと悲鳴を上げてる。勇者部のメンバーもテンションが上がってるそうだ』

「ほうほう、何よりです……。来週のコラボ配信楽しみにしてます」

 その間に、私はユーシャちゃんのアーカイブを見て勉強しておく。
 ほうほう、現代魔法は一回目の配信からなんか使えたのね。

 主に雷撃系?
 他の配信者さんとコラボした時には、回復系も使えるみたい。
 たこやき曰く、別に誰かに習ったわけではなく、配信でやろうとしたらやれてしまったそうだから……。

「これはやはり才能がある人なのでは? よし、この間のお礼も兼ねて、サポートしまくって有名にしよう!!」

 私はそう決心したのだった。
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