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スリッピー帝国編
第61話 明日の活力は洋食風のご飯から
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「シュッシュッ! どうかな、かっこいいかな」
俺はもらった魔導ネクタイを拳に巻いて、シャドーボクシングしてみる。
「んー、なんでしょう。マナビさんを見てると、全然ドンデーンさんと違うんですよね。なんででしょう。もっとヘロヘロでナヨナヨに見えます」
「腰が全然入ってないのだなー。マナビは戦う才能が全然無いのだ。ど素人なのだ」
「マスター、無理はせずにオシャレとして身につけるだけにしましょう」
こ、この女子たちは……。
すっかりやる気を失った俺は、魔導ネクタイを頭に巻いて宴席に参加した。
「おお、それは君の故郷のスタイルなのかね」
「ある意味そうです」
教授が興味深そうにしていたので、適当に答えた。
オールド・エンカイ・ブレイコウスタイルだね。
とりあえず、女子たち満場一致で俺にはかっこよく戦うセンスがゼロということになった。
いいもんね、もう二度と戦いの練習とかしないもんね。
俺は素人のまま突き進んでやるぞーっ。
「スリッピー帝国の贅を凝らした料理だ。楽しんでいってもらいたい。そして、国にこれ以上の被害をもたらさないでもらいたい」
皇帝が本音を喋った。
うんうん、部隊一つを潰されて、工業都市では醜態を見られて、挙げ句は国のシステムを掌握されて……踏んだり蹴ったりだもんな。
でも、ワンザブロー帝国よりマシだぞ。あの国、もう無いからな。
「ほわあああ、マナビさん、これは大変なことですよー!!」
ルミイが衝撃に打ち震えている。
スリッピー帝国の宮廷料理が美味いのだ。
言うなれば……ザ・洋食屋さんのご飯みたいな料理がずらりと並んでいる。
チキンライス、エビフライ、ハンバーグ、スパゲッティ、フライドポテト、ポテトサラダ、真っ赤なウインナー……。
デザートには、すぐ食べられるようになった切れ込み入りのオレンジが付いてきている。
見た目は地球の食物に似ているが、実際は違う材料で料理の名前も異なるらしい。
味は一緒だ。
ルミイは終始ニコニコしながら、食べ物をパクパクやっていた。
「そんなに食べまくってると、またムチムチになるぞ」
「あ、そうですよねえ。ママは、たくさん食べてムチムチしてきたら、エネルギーが溜まってるので思いっきり魔法を使うか、赤ちゃんを作っちゃうって言ってました」
「赤ちゃんを!?」
衝撃のあまり、座ったまま椅子ごと飛び上がる俺である。
「では俺と──」
「わたしはママがご飯食べまくってムチムチしてた時にパパと出会って、そのままムラムラっと来て作っちゃった子なんだそうです! なんかママ、パパとすっごく相性が良かったみたいでそれからずっといっしょですね!」
「ちょっと待つのだルミイ! マナビが何か言いかけてたのだ!」
「今のは触れないであげるのが優しさかと思われます」
そうだぞ。
カオルン、俺の発言はスルーしろ。アカネルが正しいぞ。
くそー、まだルミイの中の好感度が上がりきって無いのか……。
というかこのむちむちハーフエルフ、どうやったら好感度アップできるんだ……?
どうやら言葉に出ていたらしく、俺のポケットからアカネルが囁いてきた。
「彼女は天然なので、既にマスターに対する好意は極めて高くなっているものと思われますが、本人が自覚していません。押して押して押しまくりましょう」
「そうか! アカネルは頼れるなあ」
「お二人の冒険をずっと見てきましたから」
「で、アカネルは飯食わないわけ?」
「当機能はアカシックレコードから直接エネルギーを供給されて活動していますので」
「食べないのか」
「ご希望とあらばご相伴に与りますが」
「よし、一緒に食おう」
「了解しました」
アカネルは俺の胸ポケットから、ぴょーんと飛び出してくる。
デフォルメされたようなその姿が、隣の席に飛び降りた瞬間、ピカッと光って人間に変わった。
「あっ」
「あっ」
皇帝や取り巻きたち、そして教授が驚きの声をあげる。
「おおー、不思議な技なのだ!」
「お料理美味しいですー! 幸せー!」
カオルンも驚き、若干一名は全く反応しない。
ルミイ、大物だな……。
「ではいただきます。スパゲッティとハンバーグとエビフライとフライドポテトを」
「外見通り、食べ盛りの女子高生みたいな好みだ」
アカネルはフォーク一本を自在に扱い、料理をむっしゃむっしゃと食べたのである。
ちなみにスリッピー帝国の食事が基本的にどれもガッツリ飯なのは、魔法工業が盛んなガテン系の国でもあるかららしい。
体が資本なんだな。
「それでマナビくん、君は次はどこに行くのかね? 私は国境線までは見送りに行こう」
先に食事を終えた教授が、口元をナプキンで拭いながら聞いてくる。
「そうだなあ。フィフスエレ帝国だと思う。あそこはバーバリアンの里とも交流があるらしいし、いよいよルミイを送り届けられるだろ」
「ほう、魔獣の国フィフスエレか! 興味深い。魔法文明時代にありながら、高い知性を持つ魔獣達をモンスターではないとし、帝国民として迎え入れた国だ。かつてスリッピー帝国が蛮族の国だと言って攻め込んだが、魔法使いと魔獣の連携によって敗れ去った歴史が……」
「師よ!」
皇帝がそれ以上喋るな、と釘を差してきた。
国の恥ずかしい歴史なんだな。
教授、ニヤリと笑う。
「君なら平気だとは思うが、油断はするなよ。かの国は理屈ではない。フィーリングが何よりも重要視される」
「おう、覚えとく!」
「それで君はいつ出国するのだね?」
「うーん、一日休んで明後日かな」
俺の言葉に、皇帝と取り巻きたちがあからさまにホッとするのが分かった。
厄介者が出ていってくれると思ってるのだろうな。
まあ、俺としても色々あったが、この国は滅ぼすほどでもない。
いい人もたくさんいたし、異世界は捨てたもんじゃないと認識させてくれた。
気持ちよく旅立とうではないか。
「で、泊まるための部屋だが……。男女別々はやめてもらえると……」
「そうしようそうしよう」
すぐに皇帝が受け入れてくれた。
やったー!!
俺のテンションは絶頂なんである。
俺は下心でしか動いてないからな!
俺はもらった魔導ネクタイを拳に巻いて、シャドーボクシングしてみる。
「んー、なんでしょう。マナビさんを見てると、全然ドンデーンさんと違うんですよね。なんででしょう。もっとヘロヘロでナヨナヨに見えます」
「腰が全然入ってないのだなー。マナビは戦う才能が全然無いのだ。ど素人なのだ」
「マスター、無理はせずにオシャレとして身につけるだけにしましょう」
こ、この女子たちは……。
すっかりやる気を失った俺は、魔導ネクタイを頭に巻いて宴席に参加した。
「おお、それは君の故郷のスタイルなのかね」
「ある意味そうです」
教授が興味深そうにしていたので、適当に答えた。
オールド・エンカイ・ブレイコウスタイルだね。
とりあえず、女子たち満場一致で俺にはかっこよく戦うセンスがゼロということになった。
いいもんね、もう二度と戦いの練習とかしないもんね。
俺は素人のまま突き進んでやるぞーっ。
「スリッピー帝国の贅を凝らした料理だ。楽しんでいってもらいたい。そして、国にこれ以上の被害をもたらさないでもらいたい」
皇帝が本音を喋った。
うんうん、部隊一つを潰されて、工業都市では醜態を見られて、挙げ句は国のシステムを掌握されて……踏んだり蹴ったりだもんな。
でも、ワンザブロー帝国よりマシだぞ。あの国、もう無いからな。
「ほわあああ、マナビさん、これは大変なことですよー!!」
ルミイが衝撃に打ち震えている。
スリッピー帝国の宮廷料理が美味いのだ。
言うなれば……ザ・洋食屋さんのご飯みたいな料理がずらりと並んでいる。
チキンライス、エビフライ、ハンバーグ、スパゲッティ、フライドポテト、ポテトサラダ、真っ赤なウインナー……。
デザートには、すぐ食べられるようになった切れ込み入りのオレンジが付いてきている。
見た目は地球の食物に似ているが、実際は違う材料で料理の名前も異なるらしい。
味は一緒だ。
ルミイは終始ニコニコしながら、食べ物をパクパクやっていた。
「そんなに食べまくってると、またムチムチになるぞ」
「あ、そうですよねえ。ママは、たくさん食べてムチムチしてきたら、エネルギーが溜まってるので思いっきり魔法を使うか、赤ちゃんを作っちゃうって言ってました」
「赤ちゃんを!?」
衝撃のあまり、座ったまま椅子ごと飛び上がる俺である。
「では俺と──」
「わたしはママがご飯食べまくってムチムチしてた時にパパと出会って、そのままムラムラっと来て作っちゃった子なんだそうです! なんかママ、パパとすっごく相性が良かったみたいでそれからずっといっしょですね!」
「ちょっと待つのだルミイ! マナビが何か言いかけてたのだ!」
「今のは触れないであげるのが優しさかと思われます」
そうだぞ。
カオルン、俺の発言はスルーしろ。アカネルが正しいぞ。
くそー、まだルミイの中の好感度が上がりきって無いのか……。
というかこのむちむちハーフエルフ、どうやったら好感度アップできるんだ……?
どうやら言葉に出ていたらしく、俺のポケットからアカネルが囁いてきた。
「彼女は天然なので、既にマスターに対する好意は極めて高くなっているものと思われますが、本人が自覚していません。押して押して押しまくりましょう」
「そうか! アカネルは頼れるなあ」
「お二人の冒険をずっと見てきましたから」
「で、アカネルは飯食わないわけ?」
「当機能はアカシックレコードから直接エネルギーを供給されて活動していますので」
「食べないのか」
「ご希望とあらばご相伴に与りますが」
「よし、一緒に食おう」
「了解しました」
アカネルは俺の胸ポケットから、ぴょーんと飛び出してくる。
デフォルメされたようなその姿が、隣の席に飛び降りた瞬間、ピカッと光って人間に変わった。
「あっ」
「あっ」
皇帝や取り巻きたち、そして教授が驚きの声をあげる。
「おおー、不思議な技なのだ!」
「お料理美味しいですー! 幸せー!」
カオルンも驚き、若干一名は全く反応しない。
ルミイ、大物だな……。
「ではいただきます。スパゲッティとハンバーグとエビフライとフライドポテトを」
「外見通り、食べ盛りの女子高生みたいな好みだ」
アカネルはフォーク一本を自在に扱い、料理をむっしゃむっしゃと食べたのである。
ちなみにスリッピー帝国の食事が基本的にどれもガッツリ飯なのは、魔法工業が盛んなガテン系の国でもあるかららしい。
体が資本なんだな。
「それでマナビくん、君は次はどこに行くのかね? 私は国境線までは見送りに行こう」
先に食事を終えた教授が、口元をナプキンで拭いながら聞いてくる。
「そうだなあ。フィフスエレ帝国だと思う。あそこはバーバリアンの里とも交流があるらしいし、いよいよルミイを送り届けられるだろ」
「ほう、魔獣の国フィフスエレか! 興味深い。魔法文明時代にありながら、高い知性を持つ魔獣達をモンスターではないとし、帝国民として迎え入れた国だ。かつてスリッピー帝国が蛮族の国だと言って攻め込んだが、魔法使いと魔獣の連携によって敗れ去った歴史が……」
「師よ!」
皇帝がそれ以上喋るな、と釘を差してきた。
国の恥ずかしい歴史なんだな。
教授、ニヤリと笑う。
「君なら平気だとは思うが、油断はするなよ。かの国は理屈ではない。フィーリングが何よりも重要視される」
「おう、覚えとく!」
「それで君はいつ出国するのだね?」
「うーん、一日休んで明後日かな」
俺の言葉に、皇帝と取り巻きたちがあからさまにホッとするのが分かった。
厄介者が出ていってくれると思ってるのだろうな。
まあ、俺としても色々あったが、この国は滅ぼすほどでもない。
いい人もたくさんいたし、異世界は捨てたもんじゃないと認識させてくれた。
気持ちよく旅立とうではないか。
「で、泊まるための部屋だが……。男女別々はやめてもらえると……」
「そうしようそうしよう」
すぐに皇帝が受け入れてくれた。
やったー!!
俺のテンションは絶頂なんである。
俺は下心でしか動いてないからな!
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