召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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凍土の王国編

第104話 ちくしょうちくしょうから怒りの矛先へ

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「ちくしょうちくしょう! 魔力の星め! 今落ちること無いだろうが! あんまりだろうが!」

「マスターがこんなに怒ってるのを初めて見ました!」

「そんなに裸でルミイとくっつきたかったのだ? よく分からないのだなー」

「むおー! わたしも今回は怒ってますよー!」

 おお、ルミイも激おこだ。
 すっかり盛り上がった気分に水を差されて、しおしおっとなった俺とルミイ。
 怒りを燃え上がらせて、服を着た。

 四人で宮殿を飛び出してみると、王国中の人々が外に出てきたようだった。

「魔力の星が落ちた!」

「すごい光の柱だ……」

「幻想的!」

 幻想的という話ではない。
 大事な大事なファースト営みを!
 邪魔しくさったのである!

「魔力の星のアホー!!」

「許しませんからねー!!」

 二人ならんで、光の柱に罵声を浴びせかける。
 すると、呆れ顔のルリファレラがやって来た。
 なんか夜なのに普通に目が冴えている様子で、身につけている布一枚の下は裸では?

「あらまあ、その様子だとアレのせいで失敗しちゃった? 焦ることは無いわよ。結婚したんだからこれから何回だってチャンスがあるんだから」

 長生きしている人の含蓄あるお言葉である。
 俺もルミイも、ちょっと落ち着いた。

「そ、そうか。明日頑張ろう」

「そうですね! 明日頑張りましょう!」

「あなたたち、本当に似たもの夫婦ねえ……」

 お、俺がルミイと似ているだと……!?

「それはともかくとして、大変なことになっているわ。私の感覚だと、空気中に混じった魔力の質がどんどん変化していっている。多分、私たちエルフは魔法を使うのは問題ないわ。他はどうなるかしら」

 ルリファレラが曖昧なことを言っている。

「どうだろう、ヘルプ機能。空気中の魔力の質について」

「はい。ヘルプ機能からの返答です。今までは、天然の魔力であるマナと、魔力の星から送り込まれてくる魔力、エーテルが混じり合っていました。魔法帝国はこのエーテルを使って無限の魔力を実現し、強大な魔法の力を行使していました。それが不可能になります」

 魔法帝国群による、魔力を行使した国家運営が不可能になるということか。
 なるほど。
 これは正しく、魔法帝国時代の終わりの始まりだ。

「話は聞かせてもらったぞ!」

 ドーンと現れるバルク。
 腰布以外は裸で、汗を拭きながら出てきた。

 これは……ルリファレラと励んでいたな!?

 俺の視線を受けて、バルクがニヤリと笑った。

「お前にルミイを取られるからな! また一人増やしておかんとな!!」

「くっそー、なんて男だ」

 俺は戦慄した。
 この世界に来て初めて負けたかも知れん。
 俺はもっと図太くなるべきなのではないか!

「負けていられないぞルミイ!」

「が、頑張りましょうマナビさん! パパとママがこんなに偉大だったなんて……」

 俺たちはその辺りは、根本的にヘタレなのかも知れんからな!
 反省会をする俺とルミイ。
 そーっとそこに入ってくるアカネル。

「じゃあ、予行演習を当機能としましょう。大丈夫、当機能は機械ですからノーカウントですよ!」

「そうかな……そうかも……?」

 俺が揺れたら、ルミイが「だめですよー!!」と揺さぶってきた。

「うーわー」

「なんなのだ? マナビを揺らすのだ!? カオルンも遊ぶのだー!!」

 カオルンもしがみついてきて、俺をぶんぶん揺さぶってきた。

「ウグワーッ!!」

 女子たちに抱きつかれるのは大変嬉しいが、揺さぶられるのは勘弁していただきたい!
 これを笑いながら見ていた、バルクとルリファレラの夫妻。
 すぐに真顔になり、王国の人々に向けて声を放った。

「皆の者!! よく聞け! 魔力の星は落ちた! 即ち、魔法の時代の終わりである!!」

「「「「「「「「「おおーっ!!」」」」」」」」」」

 どよめき。

「時は来た!! 我ら凍土の王国は、凍らぬ大地を手に入れる! 夜が明けたなら、戦の準備だ! これは守るための戦いではない。勝ち取るための戦いである! 時代は今、我らバーバリアンに微笑んだ!!」

「「「「「「「「「「うおおおおーっ!!」」」」」」」」」」

 大歓声が上がった。
 バーバリアン王バルクの言葉は、人づてに広がっていき、明日中には凍土の王国すべての人が知ることになるだろう。

「どこに行くんだ?」

 セブンセンス帝国を滅ぼされたらかなわないので、一応聞いてみた。

「そうだな……。まずはフィフスエレを滅ぼすかな。俺たちの語彙の中で、筋肉の少ない男はモヤシと呼ばれる。その言葉を受けて、向こうの新王がこじらせてな。結果、ルミイを救うための行軍を邪魔したんだ。許せん」

「これはひどい」

 バルクの意思は固いようである。
 フィフスエレ帝国逃げてー。

 シクスゼクスは、魔法なしでも魔族との混血によって強靱な肉体を得ている。
 セブンセンスは、魔法なしでも神の力を得て、神聖魔法を使えるわけだ。

 この二つは後回しというわけだ。

「フィフスエレを征服したら、戦力を整えられるようになるわ。あの国は森も豊かで、魔獣の数を減らせば私たちエルフの住処にもなるもの」

 エルフの考えもあるわけね。
 そこへガガンもやってきた。

「お、お、オレは! 戦いに参加し、王国に凍らぬ大地をもたらしたい! だが……オレの嫁さん探しが……」

 おお、悩んでいる!

「くうーっ! オレは、戦いに参加する! 嫁さんは後だ!!」

 めちゃくちゃ悔しそうな顔をして、地面をガンガン殴りながらガガンは決断した。
 男らしい!
 だが、ここにバルクが声を掛けた。

「いや、ガガン。お前はマナビとともに行け」

「!?」

「シクスゼクスは力押しでなんとかなる。だが、セブンセンスは衰えたとは言え、蛮神ではない神の力を使う。この国を調べるのだ」

「ええ。セブンセンスは今、内戦の最中だと言うわ。だけど、その力が統一されてこちらに向けられたら油断はできないわ。シクスゼクスはだからこそ、セブンセンスを混乱させたんでしょう?」

 ご夫妻、かなり冷静に状況を把握してるな!
 ガガンは何を言われたか分からなかったようだが、徐々に理解し、目を輝かせた。

「じゃ、じゃあ、オレは!」

「行って来い!!」

 バルクに肩をバーンと叩かれ、ガガンが目をキラキラさせた。

「よし、ガガン! 晴れて仲間だな! 一緒に来い! セブンセンスに行って暴れてやろうぜ!!」

 俺もまたガガンの肩を叩いた。

「ああ! 暴れて……暴れ……? え、暴れる……?」

 俺は、このむしゃくしゃをセブンセンスに叩きつけてやろうと言うのだよ……!
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