召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
116 / 196
セブンセンス法国編

第116話 天罰・八百長・井戸端会議掃討戦

しおりを挟む
 知識神教団との交渉はバッチリいけた。
 なにせ、身内に魔族が紛れ込んでいて、しかも他勢力との仲違いを工作していたのだ。

 俺の口にしたことが全て正しかったことが証明されている。
 こちらの申し出を断るわけがない。

「我々は、知識神教団のバックアップを受けて活動し、各教団のスナークを退治して回る……。その方向でよろしい?」

「ああ、構わなんよ。あの巧みな人間への擬態を見破れる者などそうはいないからのう」

 知識神教団最高司祭のオジイチャンが頷いた。
 彼に指示されたグラーシズが、何かロールペーパーじみたものを持ってくる。

「これが認定書だ」

「何も書いてないが」

「これから最高司祭猊下が知識神イクシャード様より約定を賜る。見ていろ」

 ほうほう。
 こちらは、どうせ許諾されることがわかっている。
 なにせ、うちの邪神が既に知識神と交友を結んでいるのだ。

 ほら、すぐにOKの意味がある文言が書類に浮かび上がってきた。
 オジイチャンも驚いている。

「こんなに迅速なのは初めてじゃ。まるで裏から手回ししてあったみたいに一瞬で許諾の文言が浮いてきたぞい。文章まで練られておったようじゃ。八百長かな?」

 そこまで言ったら、天井からピシャーンと雷が落ちてオジイチャンを罰した。

「ウグワーッ!?」

 黒焦げになるオジイチャン。

「あっ、最高司祭猊下が死んでる!! イクシャード様に失礼なことを言ってしまったからか……。そういえば最近曖昧になっておられたからな……」

 知識神教団は大騒ぎになってしまった。
 だが、これと同時に、イクシャードより神託が下る。

 司祭グラーシズを臨時の最高司祭とし、コトマエマナビとその仲間たちを支援させよ、と。
 これによって、全ての知識神教団員が俺のバックアップをしてくれることになった。

 神様が味方になると話が早いなあ!

 あまりに流れが速すぎて、ガガンが目を回した。

「ど……どういうことなんだマナビ! オレにも分かるように説明してくれ!」

「つまりな」以下略。

 俺は早速、知識神教団に潜む全てのスナークを刈り取るべく行動を始めている。
 敷地内を練り歩くのである。
 常にアカネルがアンテナを立て、教団員一人ひとりの素性をヘルプで確認している。

「約定書が持ち出される前から、うちの邪神と知識神が友誼を結んだ。もう、何があってもオーケーな状態だ」

「ふんふん」

「だが、神様だから信者を納得させる必要もある。形式として約定書を作ることになった。その約定書が一瞬で完成したので、最高司祭がこの速度はおかしい、まるで最初から準備してたみたいじゃないかって疑ったんだ。神を疑ったらいけないよな。痛くない腹を探られたらカチンとくるけど、痛い腹を探られたら逆ギレするもん」

「そういうことか……。知識神と言う割に武闘派なんだな……」

「知は武力でもあるんだぞ」

 そんな話をしてたら、アカネルが見つけた。

「いました! あそこで井戸端会議をしている御婦人全員がスナークです!」

「なんと!!」

 これには俺も驚愕だ。
 なるほど、井戸の回りに集まった御婦人が噂話をする姿は、ありふれていて誰も警戒しない。
 だが、あれこそが各教団の情報を持ち寄って交換する集まりだったのだ。

 俺たちの姿を見て、ニセの御婦人方は声を潜めて何かささやきあっている。
 こいつらはスナークなので、知識神や他の神を信仰していない。
 だから神の言葉は聞こえていないのだ。

 つまり、自分が狩られる立場になったということに気づけ無い。

「あたいに任せな。魔眼、行くよ」

 ナルカが眼帯を外した。
 その下から、真っ赤に輝く瞳が現れる。

「これはどういう状況? ヘルプ機能で分かりやすくできる?」

「はい。マスターの視界をジャックしてナルカの能力を分かりやすくしますね」

 ということで。
 俺の目に、ナルカの目から放たれる一条の赤いビームが見えるようになった。
 それがニセ御婦人たちを一瞬で走査する。

 すると、ニセ御婦人がたの周囲に赤い影が出現した。
 まるで、彼らの動きを予測する未来図だ。

「あたいの死の魔眼からは……逃れられないよ!」

 ナルカの腰からナイフが引き抜かれた。
 投擲されたそれは、赤いビームをなぞるように突き進み、ニセ御婦人から離れた赤い影に突き刺さった……と思ったら、そこに避けようとしたニセ御婦人がドンピシャで移動した。
 頭にナイフが刺さる。

「ウグワーッ!!」

 野太い声で叫んだニセ御婦人。
 あっという間にスナークの正体を現し、絶命した。

「なん……だと……!?」

「こいつ……こいつは一体!!」

 慌てて、スナークたちは戦闘態勢に入った。
 両手に投げナイフを構えるナルカ。
 その横に、拳を打ち鳴らしながらガガンが並んだ。

 こうなればもう、掃討戦ですわ。
 俺は高みの見物をしている。

「俺が出るまでもあるまい。……一度言ってみたかったんだよね」

「マスターは正真正銘、切り札ですからね」

 そうかな。そうかも。
 最近、チュートリアルへの解像度が高まってきて、なんとなくこの能力が何なのか分かってきたところなのだ。
 まあ、まだ推測に過ぎないから色々検証してから明言することにする。

「あっ……という間にスナークが全滅しました! 楽勝ですね。これは余裕ができてしまうのではないですか? マスター、仕事は彼らに任せ、当機能たちは慈愛神の休憩所で慈愛を交わし合うのはどうでしょう」

「なんかガンガン誘惑してくるようになったね!! ダメだよ!」

 俺の自制心がグラッグラになっている。
 アカネル、何かにつけて揺さぶりを掛けてくるのをやめるのだ……!
 彼女は俺の人間性に影響されてるらしいので、俺のエッチさがアカネルをエッチにしているとでも言うのか!

 ともかく!
 これで知識神の教団にはびこっていたスナークは一掃できたようである。
 次は戦神、技巧神をどうにかせねばなるまい。

 急進派であるこの三教団をクリアできれば、ルサルカ教団との争いは収まることだろう。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...