171 / 196
終末の王編
第171話 イースマス連合からの教授との再会
しおりを挟む
一夜にして、アビサルワンズとルサルカ教団の連合軍は組織されていた。
トップ同士がいい仲なので、上意下達の組織ではこういう動きが早まるのだ。
社内政治みたいなのが全くないしな。
最近見かけなかったドミニク司祭の棺も、タイヤをつけてガラガラと引っ張られていっている。
「俺たちが昼に活動してたから、司祭と会わなかったんだな」
「そうさね。司祭は夜に起きて、ずっと仕事をしていたんだよ」
なるほど、連合軍の迅速な組成にはドミニク司祭の尽力があったか。
また夜にでも礼を言っておかないとな。
で、この軍はイースマス連合と名付けられた。
別所では、アリスティアとガガン率いるセブンセンス軍とでも言うべき軍隊が結成され、やはり出陣しようとしているとのことである。
世界が動く!
「これからスリッピー帝国の迎えも来るんだろ? フォーホース帝国の魔法師団も合流すると、大陸の四つの勢力が一つになるんじゃん。すげえもんだなあ」
「他人事みたいですけど、全部切っ掛けはマナビさんなんですからね?」
ルミイに言われて、俺はきょとんとした。
コンボの達人が俺を指さして、
「何を俺、また何かやっちゃいました? みたいな顔してるんだ。お前がやったんだぞ。お陰で俺は恐ろしい女に付け狙われることになった。昨夜は布団の中に潜り込まれてて、しかも全裸で……うわあーっ、恐ろしい恐ろしい。俺は必死に逃げた!」
「ダーリンったらうぶなんだから! 今までにいなかったタイプよね。でも、だからこそチャレンジのしがいがあるわ!」
「また出たあ」
コンボの達人が逃げ出す。
あいつの全力ダッシュは、残像を纏って一定距離をシュンシュンと移動するのだ。
格ゲーの移動技みたいな動きだな。
「待ってよダーリーン!」
圧倒的な肉体能力で追いかけるエリイ!
「姉さんがこれだけ付き纏ってるのに、まだグラッとしないの、初めてかもしれませんねー」
「ああ。積極的にこられたら、普通はコロッと行くからな……」
「とにかく! マナビさんは凄い事してますよって言ってるんです! 世界中を旅して、世界中の人たちと仲良くなって、繋げていってるんですから」
「世界中に喧嘩売ってるつもりだった」
俺は困惑する。
そんな偉大な人みたいに言われたことないぞ。
「マスターの主観と、世界から見たマスターの姿は大きく異なっているということですね。はい、行きますよ。マスターはラバーに乗って下さい」
アカネルにお尻をペチペチされて押しやられる。
俺は奥さんたちからのセクハラは積極的に受け入れるのだ。
「ぶるる!」
立派な格好に飾り立てられたラバーが、誇らしげな顔で俺を待っている。
「おおー! ラバー! かっこよくなったじゃないか! イカスなあー!!」
「ぶるるー!!」
駆け寄って首筋をわしわし撫でると、ラバーは顔を寄せてきてスリスリした。
おお、アンデッドホースはひんやりしてて気持ちいな。
「ナルカが乗るのだ!」
「いやいや、ここはカオルンだろう?」
「ナルカは奥さんにならないといけないのだ! だから乗るのだー!」
「あたいはバギーの上の方が戦いやすいんだよ! カオルンは馬の後ろから飛び立てるだろう?」
「言われてみればそうなのだ。効率的だったのだ。これはカオルン一本取られたのだ」
なんかでかいのとちっこいのがやり取りしてるぞ。
「なんだなんだ。俺の後ろに誰が乗るって話?」
「そうなのだ! カオルンが乗ることになったのだ!」
「あたいはバギーさね。マナビの後ろだと、掴まってないといけないだろう? 片手が塞がれたら、あたいの強みが半減だからね」
カオルンは恋愛ベースの話をしていたが、ナルカは実戦ベースの話をしていた。
で、ナルカがカオルンを説得したというわけだ。
「よし、じゃあ後ろに来いカオルン!」
「行くのだ!」
ラバーに飛び乗ると、後ろにカオルンがくっついてきた。
出発である。
パカポコとラバーが先頭を行き、バギーが並走する。
そしてあとに続くのがイースマス連合軍だ。
今回はルサルカをお留守番とし、オクタゴン本体がついてくる。
連合軍は主に馬車で移動する。
これは、アビサルワンズとルサルカ信者が召喚した、牽引型の眷属やスケルトンホースを用いるのだ。
ゾンビホースはあまり日に晒すと乾いてしまい、動きが鈍くなるのだとか。
なので、あらかじめ肉を落としてスケルトンにしておく。
問題は、スケルトンホースは軽いので、あまり重い荷馬車だとそっちに引っ張られてしまったり、骨むき出しなために乗馬に向かないことであろうか。
色々な意味で、肉がついたまま日差しの下でも平気なラバーは特別なのだ。
また、ルサルカの新しい加護をもらったしな。
馬車の中には、たくさんのアンデッドが搭載されている。
ルサルカ信者は馬車ごとに二人。
アビサルワンズは馬車ごとに四人。
戦うのは眷属とアンデッドだから、問題ないという方針だな。
なるほど、これは魔導王とは全く性質の異なる、異次元の戦法だ。
ワイワイと賑やかに軍は出発し、これを目撃した魔族たちは集団の規模にドン引き。
全く襲ってこない。
何事もなくシクスゼクス国境を越えて、スリッピー帝国へ入った。
一日の間、移動を続けると……。
向こうから土煙が上がっている。
迎えがやって来たのだ。
それぞれの集合場所は、ユーリンによって決定されている。
懐かしさすら覚える、魔導戦車に魔導ヘリのシルエット。
そっか、スリッピー帝国は普通に空中戦ができるんだよな。
今思えば、これは強い。
戦車の先頭に、魔導カーがあった。
兵員輸送車みたいな見た目で、助手席からメガネとワイシャツにジャケットを身に着けたムキムキの壮年男性が身を乗り出している。
「おお! マナビくん!! 久しぶりだね!」
「教授か! 無事だったか!」
スリッピー帝国最強戦力、ドンデーン教授との再会なのである。
トップ同士がいい仲なので、上意下達の組織ではこういう動きが早まるのだ。
社内政治みたいなのが全くないしな。
最近見かけなかったドミニク司祭の棺も、タイヤをつけてガラガラと引っ張られていっている。
「俺たちが昼に活動してたから、司祭と会わなかったんだな」
「そうさね。司祭は夜に起きて、ずっと仕事をしていたんだよ」
なるほど、連合軍の迅速な組成にはドミニク司祭の尽力があったか。
また夜にでも礼を言っておかないとな。
で、この軍はイースマス連合と名付けられた。
別所では、アリスティアとガガン率いるセブンセンス軍とでも言うべき軍隊が結成され、やはり出陣しようとしているとのことである。
世界が動く!
「これからスリッピー帝国の迎えも来るんだろ? フォーホース帝国の魔法師団も合流すると、大陸の四つの勢力が一つになるんじゃん。すげえもんだなあ」
「他人事みたいですけど、全部切っ掛けはマナビさんなんですからね?」
ルミイに言われて、俺はきょとんとした。
コンボの達人が俺を指さして、
「何を俺、また何かやっちゃいました? みたいな顔してるんだ。お前がやったんだぞ。お陰で俺は恐ろしい女に付け狙われることになった。昨夜は布団の中に潜り込まれてて、しかも全裸で……うわあーっ、恐ろしい恐ろしい。俺は必死に逃げた!」
「ダーリンったらうぶなんだから! 今までにいなかったタイプよね。でも、だからこそチャレンジのしがいがあるわ!」
「また出たあ」
コンボの達人が逃げ出す。
あいつの全力ダッシュは、残像を纏って一定距離をシュンシュンと移動するのだ。
格ゲーの移動技みたいな動きだな。
「待ってよダーリーン!」
圧倒的な肉体能力で追いかけるエリイ!
「姉さんがこれだけ付き纏ってるのに、まだグラッとしないの、初めてかもしれませんねー」
「ああ。積極的にこられたら、普通はコロッと行くからな……」
「とにかく! マナビさんは凄い事してますよって言ってるんです! 世界中を旅して、世界中の人たちと仲良くなって、繋げていってるんですから」
「世界中に喧嘩売ってるつもりだった」
俺は困惑する。
そんな偉大な人みたいに言われたことないぞ。
「マスターの主観と、世界から見たマスターの姿は大きく異なっているということですね。はい、行きますよ。マスターはラバーに乗って下さい」
アカネルにお尻をペチペチされて押しやられる。
俺は奥さんたちからのセクハラは積極的に受け入れるのだ。
「ぶるる!」
立派な格好に飾り立てられたラバーが、誇らしげな顔で俺を待っている。
「おおー! ラバー! かっこよくなったじゃないか! イカスなあー!!」
「ぶるるー!!」
駆け寄って首筋をわしわし撫でると、ラバーは顔を寄せてきてスリスリした。
おお、アンデッドホースはひんやりしてて気持ちいな。
「ナルカが乗るのだ!」
「いやいや、ここはカオルンだろう?」
「ナルカは奥さんにならないといけないのだ! だから乗るのだー!」
「あたいはバギーの上の方が戦いやすいんだよ! カオルンは馬の後ろから飛び立てるだろう?」
「言われてみればそうなのだ。効率的だったのだ。これはカオルン一本取られたのだ」
なんかでかいのとちっこいのがやり取りしてるぞ。
「なんだなんだ。俺の後ろに誰が乗るって話?」
「そうなのだ! カオルンが乗ることになったのだ!」
「あたいはバギーさね。マナビの後ろだと、掴まってないといけないだろう? 片手が塞がれたら、あたいの強みが半減だからね」
カオルンは恋愛ベースの話をしていたが、ナルカは実戦ベースの話をしていた。
で、ナルカがカオルンを説得したというわけだ。
「よし、じゃあ後ろに来いカオルン!」
「行くのだ!」
ラバーに飛び乗ると、後ろにカオルンがくっついてきた。
出発である。
パカポコとラバーが先頭を行き、バギーが並走する。
そしてあとに続くのがイースマス連合軍だ。
今回はルサルカをお留守番とし、オクタゴン本体がついてくる。
連合軍は主に馬車で移動する。
これは、アビサルワンズとルサルカ信者が召喚した、牽引型の眷属やスケルトンホースを用いるのだ。
ゾンビホースはあまり日に晒すと乾いてしまい、動きが鈍くなるのだとか。
なので、あらかじめ肉を落としてスケルトンにしておく。
問題は、スケルトンホースは軽いので、あまり重い荷馬車だとそっちに引っ張られてしまったり、骨むき出しなために乗馬に向かないことであろうか。
色々な意味で、肉がついたまま日差しの下でも平気なラバーは特別なのだ。
また、ルサルカの新しい加護をもらったしな。
馬車の中には、たくさんのアンデッドが搭載されている。
ルサルカ信者は馬車ごとに二人。
アビサルワンズは馬車ごとに四人。
戦うのは眷属とアンデッドだから、問題ないという方針だな。
なるほど、これは魔導王とは全く性質の異なる、異次元の戦法だ。
ワイワイと賑やかに軍は出発し、これを目撃した魔族たちは集団の規模にドン引き。
全く襲ってこない。
何事もなくシクスゼクス国境を越えて、スリッピー帝国へ入った。
一日の間、移動を続けると……。
向こうから土煙が上がっている。
迎えがやって来たのだ。
それぞれの集合場所は、ユーリンによって決定されている。
懐かしさすら覚える、魔導戦車に魔導ヘリのシルエット。
そっか、スリッピー帝国は普通に空中戦ができるんだよな。
今思えば、これは強い。
戦車の先頭に、魔導カーがあった。
兵員輸送車みたいな見た目で、助手席からメガネとワイシャツにジャケットを身に着けたムキムキの壮年男性が身を乗り出している。
「おお! マナビくん!! 久しぶりだね!」
「教授か! 無事だったか!」
スリッピー帝国最強戦力、ドンデーン教授との再会なのである。
0
あなたにおすすめの小説
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした
シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。
下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。
『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。
今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。
これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる