召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終末の王編

第171話 イースマス連合からの教授との再会

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 一夜にして、アビサルワンズとルサルカ教団の連合軍は組織されていた。
 トップ同士がいい仲なので、上意下達の組織ではこういう動きが早まるのだ。

 社内政治みたいなのが全くないしな。
 最近見かけなかったドミニク司祭の棺も、タイヤをつけてガラガラと引っ張られていっている。

「俺たちが昼に活動してたから、司祭と会わなかったんだな」

「そうさね。司祭は夜に起きて、ずっと仕事をしていたんだよ」

 なるほど、連合軍の迅速な組成にはドミニク司祭の尽力があったか。
 また夜にでも礼を言っておかないとな。

 で、この軍はイースマス連合と名付けられた。
 別所では、アリスティアとガガン率いるセブンセンス軍とでも言うべき軍隊が結成され、やはり出陣しようとしているとのことである。

 世界が動く!

「これからスリッピー帝国の迎えも来るんだろ? フォーホース帝国の魔法師団も合流すると、大陸の四つの勢力が一つになるんじゃん。すげえもんだなあ」

「他人事みたいですけど、全部切っ掛けはマナビさんなんですからね?」

 ルミイに言われて、俺はきょとんとした。
 コンボの達人が俺を指さして、

「何を俺、また何かやっちゃいました? みたいな顔してるんだ。お前がやったんだぞ。お陰で俺は恐ろしい女に付け狙われることになった。昨夜は布団の中に潜り込まれてて、しかも全裸で……うわあーっ、恐ろしい恐ろしい。俺は必死に逃げた!」

「ダーリンったらうぶなんだから! 今までにいなかったタイプよね。でも、だからこそチャレンジのしがいがあるわ!」

「また出たあ」

 コンボの達人が逃げ出す。
 あいつの全力ダッシュは、残像を纏って一定距離をシュンシュンと移動するのだ。
 格ゲーの移動技みたいな動きだな。

「待ってよダーリーン!」

 圧倒的な肉体能力で追いかけるエリイ!

「姉さんがこれだけ付き纏ってるのに、まだグラッとしないの、初めてかもしれませんねー」

「ああ。積極的にこられたら、普通はコロッと行くからな……」

「とにかく! マナビさんは凄い事してますよって言ってるんです! 世界中を旅して、世界中の人たちと仲良くなって、繋げていってるんですから」

「世界中に喧嘩売ってるつもりだった」

 俺は困惑する。
 そんな偉大な人みたいに言われたことないぞ。

「マスターの主観と、世界から見たマスターの姿は大きく異なっているということですね。はい、行きますよ。マスターはラバーに乗って下さい」

 アカネルにお尻をペチペチされて押しやられる。
 俺は奥さんたちからのセクハラは積極的に受け入れるのだ。

「ぶるる!」

 立派な格好に飾り立てられたラバーが、誇らしげな顔で俺を待っている。

「おおー! ラバー! かっこよくなったじゃないか! イカスなあー!!」

「ぶるるー!!」

 駆け寄って首筋をわしわし撫でると、ラバーは顔を寄せてきてスリスリした。
 おお、アンデッドホースはひんやりしてて気持ちいな。

「ナルカが乗るのだ!」

「いやいや、ここはカオルンだろう?」

「ナルカは奥さんにならないといけないのだ! だから乗るのだー!」

「あたいはバギーの上の方が戦いやすいんだよ! カオルンは馬の後ろから飛び立てるだろう?」

「言われてみればそうなのだ。効率的だったのだ。これはカオルン一本取られたのだ」

 なんかでかいのとちっこいのがやり取りしてるぞ。

「なんだなんだ。俺の後ろに誰が乗るって話?」

「そうなのだ! カオルンが乗ることになったのだ!」

「あたいはバギーさね。マナビの後ろだと、掴まってないといけないだろう? 片手が塞がれたら、あたいの強みが半減だからね」

 カオルンは恋愛ベースの話をしていたが、ナルカは実戦ベースの話をしていた。
 で、ナルカがカオルンを説得したというわけだ。

「よし、じゃあ後ろに来いカオルン!」

「行くのだ!」

 ラバーに飛び乗ると、後ろにカオルンがくっついてきた。
 出発である。

 パカポコとラバーが先頭を行き、バギーが並走する。
 そしてあとに続くのがイースマス連合軍だ。

 今回はルサルカをお留守番とし、オクタゴン本体がついてくる。
 連合軍は主に馬車で移動する。
 これは、アビサルワンズとルサルカ信者が召喚した、牽引型の眷属やスケルトンホースを用いるのだ。

 ゾンビホースはあまり日に晒すと乾いてしまい、動きが鈍くなるのだとか。
 なので、あらかじめ肉を落としてスケルトンにしておく。
 問題は、スケルトンホースは軽いので、あまり重い荷馬車だとそっちに引っ張られてしまったり、骨むき出しなために乗馬に向かないことであろうか。

 色々な意味で、肉がついたまま日差しの下でも平気なラバーは特別なのだ。
 また、ルサルカの新しい加護をもらったしな。

 馬車の中には、たくさんのアンデッドが搭載されている。
 ルサルカ信者は馬車ごとに二人。
 アビサルワンズは馬車ごとに四人。

 戦うのは眷属とアンデッドだから、問題ないという方針だな。
 なるほど、これは魔導王とは全く性質の異なる、異次元の戦法だ。

 ワイワイと賑やかに軍は出発し、これを目撃した魔族たちは集団の規模にドン引き。
 全く襲ってこない。
 何事もなくシクスゼクス国境を越えて、スリッピー帝国へ入った。

 一日の間、移動を続けると……。
 向こうから土煙が上がっている。

 迎えがやって来たのだ。
 それぞれの集合場所は、ユーリンによって決定されている。

 懐かしさすら覚える、魔導戦車に魔導ヘリのシルエット。
 そっか、スリッピー帝国は普通に空中戦ができるんだよな。
 今思えば、これは強い。

 戦車の先頭に、魔導カーがあった。
 兵員輸送車みたいな見た目で、助手席からメガネとワイシャツにジャケットを身に着けたムキムキの壮年男性が身を乗り出している。

「おお! マナビくん!! 久しぶりだね!」

「教授か! 無事だったか!」

 スリッピー帝国最強戦力、ドンデーン教授との再会なのである。
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