召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終末の王編

第180話 合流からの今夜!今夜!

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 セブンセンス神官戦士団がやって来た。
 先頭には、見覚えのあるでかいのが……。

 うおっ!
 オーダーメイドな紅白の甲冑を身につけたガガンではないか!
 歩く重戦車という感じでなかなかかっこいい。

 そして彼の肩には、聖女アリスティアが乗っている。
 身長差が50センチくらいあるカップルだからな。
 体重差なら三倍くらいあるだろう。

 ここまで差があると肩に載せられるのか……。

 ガガンの肩から飛び降りたアリスティアは、着地ざまにどこからか槍を取り出した。
 先端にセブンセンスっぽい旗がついている。

「セブンセンス神官戦士団、魔導王討伐の助けとなるべく参上いたしました!」

 彼女の宣言の後、神官戦士団がウォーっと盛り上がる。
 こちらからも対策本部の首脳陣がやって来て、出迎える式みたいなのを開始した。

 俺はガガンに手を振る。
 ガガンも、ちょっと嬉しそうな顔をした。

「なあルミイ、なんかあいつ知的な感じになってない?」

「なんかですね、神聖魔法が使えるようになったみたいです」

「なんだって」

「至高神アクシスと蛮神バルガイヤー様が一緒だったじゃないですか。ガガンはあっちで良い働きもしましたし、信仰心も篤いので、神様が直接力を授けてくださったとか」

「あいつの鉄腕と神聖魔法が組み合わさるなら、とんでもないことじゃないか。義兄の双子に匹敵してくるぞ」

 現地人最強枠が増えてしまったな。
 彼らを迎え、宮殿の会議室はまた賑やかになったのである。

「では、オクタゴンと教授の戦いが佳境になっているっぽいので中継で見てみよう」

「そんな事が可能なのかい!?」

 ベストールが驚愕した。
 できるとも。
 会議場の中心にヘルプ機能の中継映像を展開する。

 オクタゴンが領域を展開し、無数に生まれてくる魔導機械を全て掌握したところである。
 そして魔導王によって狂わされた、遺跡中枢。
 そこから出現した最終防衛システムみたいな、ロボっぽいやつと教授が至近距離で殴り合っている。

 ビームを撃たれそうになると、教授は気配を察して砲口を殴って歪め、さらに掴んで捻じ曲げ、放たれたビームは防衛システムに叩き込まれる。
 相変わらずおかしい戦い方をしている。

 防衛システムがビームソードみたいなのを展開して殴ってくるのを、的確にマジックネクタイを巻いた拳で弾く。
 弾かれた隙に、空いている腕で高速のジャブを叩き込み、防衛システムの正面装甲に拳の跡を付けた。

 人間の戦い方ではない。

『ピガー!』

 防衛システムが一瞬エラーを起こしたらしく、攻撃が止まった。
 これを見逃す教授ではない。
 振りかぶって放たれる、強烈なストレートが、拳によって劣化させられた正面装甲を粉砕し、防衛システムの胴をぶち抜いた。

 粉々になって撒き散らされる防衛システム。
 その後、遺跡の中枢になっている光るものを、教授は掴んでねじ切った。

 勝利である。

「さすが我が恩師、人間ではない」

 ベストールがよく分からない褒め方をした。
 これを見ていた、達人とガガンとフリズドライがムムムッと唸った。

「戦いたい」「勝負したい」『強そうだな』

 戦闘狂みたいなのが三人……!!
 教授、しばらく忙しくなるぞ。

 オクタゴンみたいなタイプが相手だと、見てて意味が分からないので、俺より強いやつに会いに行くタイプの人には響かないのだろう。
 だが、教授は分かりやすい物理戦闘である。
 魔法が使えなくなった魔法使いが、純粋な物理戦闘力で魔導機械を圧倒するのはどうなんだ。

 というか、俺には教授が強い理由が全く分からん。

「マスター、あれは体を鍛えているから強いのです」

「そんな単純な理由で」

「彼は生来の覇気使いです。そこに磨き上げた頭脳を組み合わせることで、知的な戦闘を行い相手を圧倒します」

 アカネルの説明でさらに分からなくなってきた。
 こうして観戦が終わり、会議が始まった。

 議長を務めるベストール。
 言うことは率直である。

「周辺地域に存在していた、魔導王に利用可能な遺跡は全て破壊した。彼はもう搦め手を使ってこれないだろう。直接攻撃に来るはずだ。だが、待つことはしない。こちらから叩く! アカネルくん」

「はい。こちら、魔導王の居城です」

 アカネルが展開したのは、魔力の星が存在していた辺り。
 つまり、上空である。

『オクタゴンの力を借り、地上と空を繋ぐ。全軍で魔導王を倒す。これは最後の戦いだ』

 ユーリンも熱く語っているな。
 フルメンバーが揃ったのだ。
 今こそ決戦の時ということだろう。

「ではマナビ氏、君が見た現状について語ってもらいたい」

「俺か。まあヘルプ機能あるもんな。オクタゴンの領域でここと空を繋げて攻め込むのはベストな手段だろ。あとは、オクタゴンの眷属を直視しなければ問題ない。それで魔導王本人に関してだが、アカネル、図を出してくれ。魔導王の居城」

「はい。展開します」

 いきなり、魔導王の空飛ぶ城の図面が出てきた。
 詳細な図面だったので、その場にいた首脳たちが驚愕する。

「こ、これは……」

 代表して驚いているベストールに、俺は頷いた。

「これ、地図な。罠とか設備も書いてあるから、今のうちにメモしてね。魔導王相手には常識的な強さのやつがどれだけ掛かっても無駄なので、これは俺とオクタゴンと達人が独自に移動して仕掛ける。つまり諸君は囮だ」

 この言葉に、常識的な首脳陣はムッとするのだが、アリスティアやガガンは納得した顔なのだ。

「マナビさんや達人さんは、神をその手で倒しています。魔導王の打倒はそれ以上の難行であると言う事ですね?」

「アリスティア、理解が速い。そういうことだ」

 まだ常識的首脳陣は納得できないようなので、痛い目にあって覚えてもらうしかないかも知れない。
 この世界の住人ではマシな人々だが、基本的に他人を見くびってるような人種だからな。

「じゃあ、しばらく地図を表示しておくのでみんなで写してくれー。ベストール、他に何かある?」

「あ、ああ。後は軍に情報を広め、準備するだけだ。明日には出発できるだろう」

「よし、それで行こう」

 そう言う事になった。
 会議が終わり、外で待っていたナルカがアリスティアに寄って行った。

「アリスティア、変わりないようだね。国はどうなってるんだい?」

「問題ないわ。みんな、わたくしとガガンを信じて付いてきてくれてる。もちろん、わたくしたちの仲もとってもいいわよ」

 ナルカ相手だとタメ口になるアリスティアなのだ。
 幼なじみだもんな。

「それで……ナルカはどうなの? ルサルカ様も、あなたがマナビさんと契る事を望んでいるってアクシスがわたくしに教えてくださったわ」

「そ、それは……!!」

「もうすぐ決戦なんだから、ナルカもどーんと決めよう! 今夜! 今夜!」

「あ、あうー!」

 アリスティアに押されて、たじたじなナルカなのだった。
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