召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
183 / 196
終末の王編

第183話 一気呵成からの、俺の趣味だ

しおりを挟む
 俺たちがハチャメチャに快進撃をしている。
 魔導王が用意したのであろう、壁や床に擬態した人食いモンスターとか、カオルンに匹敵する速度で飛翔する超強化ガーゴイル軍団とか、建造物そのものが魔法生物として動き出し、全身から魔法をぶっ放してくるやつとか……。
 色々いたが、全て正面突破していく。

 達人がコンボでぶち破り、オクタゴンが領域で制圧し、俺は隙間をスルッと抜ける。
 後に続いて、女子チームが追いかけてくるわけだ。

 ルミイの精霊魔法がモンスターたちを圧倒する。
 カオルンが飛び回り、ガーゴイルを撃破する。
 アカネルはポケットサイズになり、ナルカの懐へ。
 ナルカは魔導ガンを連射しながら、的確に相手の命を断っていく。

 エリイは卓越した体術任せに、攻撃を回避したり殴り返したり。
 フリズドライが氷のブレスを吐き出して、モンスターたちを凍結させる。

 うーむ、強い!
 俺たちは非常に強い。

 なお、魔導王は押されっぱなしにみえているのだが、全く弱いというわけではない。
 現に、俺たち以外は魔導王の大攻勢を突破できていない。

 フォーホース魔法師団とイースマス連合、スリッピー魔導兵団、セブンセンス戦士団がようやく全力を使って拮抗できているところだ。
 これは、対策本部も想定外だったらしい。
 思った以上に強力な魔導王の軍勢に、あちこちから悲鳴が上がっている。

「いやあ、雑魚を引き受けてくれるから進撃が実に楽だ。こちらは最短ルートで行けるしな」

「マナビ、アカネルが何か言っているよ!」

 バギーが上がってきて、ラバーと並走する。
 ナルカが身を乗り出して、胸をはだけてみせた。
 おっ!! と思うが、その豊かな膨らみの間にはアカネルが収まっているのである。

「当機能、大変羨ましくもあり複雑な気分ですが、素晴らしいクッションになっていて収まりがいいです。マスター、近道は最も魔導王の守りが厚い場所になります。ご注意ください!」

 ヘルプ機能でマップが展開される。
 遠回りすれば、魔導王の守りをかいくぐれる。
 その代わり、十倍くらい長いルートを通ることになる。

 最短ルートは、守りのためのモンスターで埋まっている。
 しかし近い!

「のんびりしてると連合軍に被害が出るだろ。そうしたらモンスターは地上に溢れていって周辺に被害が出る。めちゃくちゃ強力な奴らだぞ。スススス連合以外の軍が相手できるもんかい」

「ではマスター、最短距離を……!?」

「もちろん。おい兄弟、達人、ギアを最大にしていくぞ」

『いいだろう! ふんっ!!』

 オクタゴンの巨体がさらに膨れ上がった。
 もう、実体はなく、領域そのものが膨れ上がりながら魔導王の城を飲み込んでいくような状況になる。

「俺は常に全力だ! あっ、ゲージ溜まった。覇ぁっ!」

 達人、露骨に今までより強力な波動のウェーブめいた飛び道具をぶっ放し、立ちふさがるモンスターたちを「ウグワーッ!?」っと粉砕した。

「きゃーっ! ダーリン素敵! ほんと、こういう非常事態で頼れる男って最高だわーっ!!」

「姉さんこれべた惚れしてますねー。達人のひとはもう逃れられませんねー」

 姉妹が何か言っている。

 そして、フリズドライが空へ駆け上がり、カオルンとともに空で螺旋を描きつつ、超強化ガーゴイルどもを叩き落としていく。
 なんとも絵的にきれいである。

 俺はこの光景を眺めつつ、ラバーを駆って相手の攻撃をするすると回避する。
 チュートリアルを挟みながら、チートモードも発動しつつ。
 魔導王の防衛戦は鉄壁の守りのように見えて、弱点があるのだ! いや、弱点を今作ったのだ。

「俺に続け。ここが今から、猛烈に守りが薄くなる」

『よし! 全員、俺様の領域で運ぶぞ。集まれ!!』

 オクタゴンが吠えた。
 カオルンとフリズドライが高度を下げる。
 バギーが寄せてきて、俺と達人以外はオクタゴンの間近である。

 領域化したオクタゴンが、仲間たちを包み込んだ。
 細長い蛇のような姿になる。

『行け、兄弟。全員まとめて俺様が連れていく。道を切り開け』

「ほいほい! 邪魔してくるやつは達人頼むな」

「任せろ! ちぇいさー!!」

 返事と同時に、襲いかかってきた輝く鎧の怪物を、ジャンプキックからの連続コンボで仕留めていく達人である。

「空中ガードを実装していないとは、旧式め! システムを練り上げてから出直すがいい!」

 イキってるイキってる!

「じゃあ、突破する。1,2の……3!」

 俺が数えた瞬間、眼の前の守りが突然消えた。
 魔導王をガードするモンスターたちが、偶然一致した挙動を行ったのである。

 誰もが仲間とぶつからぬよう、横に移動したのだ。
 起こり得ない偶然。
 もちろん、チートモードがこの状況を引き起こした。

 時間は一秒ほど。
 致命的なくらい長い。

「突撃!」

「うおおおおおお!!」

『ははははは、貧弱貧弱貧弱!』

 俺たち三人が、この隙間を高速で駆け抜けていく。
 もう誰も追いつけない。

 追いつけるはずのガーゴイルは、既にカオルンとフリズドライによって壊滅させられている。

「オクタゴン! 俺を撃ち出せ!」

『何か企んでいるな達人? まあいいけどな。それっ!』

 オクタゴンの体から触手が出現し、達人の背中を押す。
 達人はこの力に逆らわず、飛び上がって蹴りのポーズになった。

「ゲージ消費! 名付けて、天空無双脚!!」

 触手に押し出されて、達人が飛翔した。
 途中から、達人自体が謎のパワーで加速し始める。
 なんかピカピカ光ってるな。

 そして、一見して何もないところを達人が蹴った。

 バリーンっという音。
 何もないはずのところが砕け散り、周辺の光景までが粉砕され、ガラスの破片のように崩れていく。

 残ったのは、ウユニ塩湖のような空間だ。
 そこに、魔導王が立っている。

「ウユニ塩湖だ」

「アニメで見たことある」

『ふーん幻想的じゃん』

 俺、達人、オクタゴンで召喚されてきた時代が違うので、ネタの理解度が異なるな。
 ここでオクタゴンが女子たちを解放するのだ。

 魔導王が凄い目で俺たちを睨んでいる。

「何もかも、台無しだ! 僕の大事な作業を邪魔しやがって!!」

 魔導王が叫んだ。
 激おこである。
 俺は笑みを浮かべながら返した。

「嫌いなやつのやることを、徹底的に邪魔するんだ。一番いいところで出鼻をくじいたり、ここだけはやめてくれというタイミングで殴りつける。そうすると……最高に気持ちいい。俺の趣味だ」

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...