44 / 337
16・来たぞ、地下の討伐依頼だ
第44話 コゲタへのお土産
しおりを挟む
遺跡に出現したモンスターを倒すと、いつの間にか床に吸い込まれていってしまって後には何も残らなくなる……みたいなことがよくある。
つまり、遺跡は有機物を回収する機能が存在しているらしい。
これ、僕は有機物を魔力に変換し、遺跡そのものを維持しているのだと考えているんだけど。
もしかして、アーランが出来上がり、第一層と第二層に畑や牧場が誕生した今、遺跡はとても元気に稼働していたりするのではないだろうか……?
おっと、話が戻ると、クァールの死体は放置していて構わないということ。
それから、クァール討伐の証を手に入れないといけないわけだ。
「耳かな」
「耳だろうなあ」
「なんかゾッとするわね!」
キャロティがウサギ耳を抑えた。
あれだけの戦いをやった後でも、ラビットフットは元気いっぱいだ。
ものすごい速さで体力が回復する種族なんだよね、彼ら。
ただし、食いだめをしておかないといけないとか。
今もキャロティは、ポシェットから乾燥した野菜のスティックみたいなのを出して、カリカリかじっている。
ウサギだ。
「よーし、耳切り取れたぞ。生きてると防御の魔法でも働くのか、やたらと頑丈なくせになあ。死んだらあっさりと切れた」
「さっきは僕の油に対抗するために魔力を回してたんだろうねえ。いや、しかし噂に聞く以上のとんでもない化け物だった。よく勝てたな僕らは」
「俺はお前がいれば勝てると思ってたぜ。何せ、クァールは地べたの上を歩いてるからな」
わっはっは、とバンキンが笑った。
確かに。
地上を歩く相手に対して、僕は一方的にメタを張れるもんな。
あっと!
ここで思い出した。
「コゲタにお土産を持って帰るって約束したんだった……」
「ああ、あのコボルドか? 本当にずっと世話してるんだなあ」
「犬は大事にする主義なんだよ」
「犬に似てるが犬じゃないだろ、コボルドは……。あ、いや、でもあいつらの自認は犬なんだよな」
そうそう。
コボルドは自分たちを犬扱いされても全く怒らない。
というか、自ら犬であると自負しているところがある。
なので、僕みたいにコボルドを従えている人は王国に何人もいるのだ。
大抵は金持ちなんだけどね……。
どれがいいかな、とクァールの全身を眺める。
……これだな。
僕が選んだのは、クァールの一番目立つ部分。
触手だった。
これをバンキンから借りた手斧で……。
先端あたりをバツン、と叩き切る。
いや、バツンじゃなかった。
何回か思い切り叩きつけて、ようやく切れた。
バンキンはこんな頑丈なものをよく切れるな……。
耳だって同じ材質なんじゃないか?
「切り口がザクザクじゃねえか。ちょっと貸してみろ。これはな、全身を使って叩き切るんだよ。あとは高さな。リビングアーマーの胴体をここに置いてだな……」
「台座を用意するのか」
「そういうこった。据え物を斬るなら準備は大事。せーのっ!! おりゃっ!!」
気合一発、もう片方の触手の先端が、バツンと切れた。
「おおーっ!」
触手先端は細くなっており、ムチのようにしなる。
このままでは有機物なので、干したり煮込んだりして加工する必要があるが……。
「あっ、加工した触手は棒みたいに硬くなんのよ! 犬ならそれのほうが嬉しいんじゃない?」
「なるほど!」
キャロティからいいことを聞いた。
この場でちょっと、触手の先を煮込んでいく……。
「なんで煮込む道具持ってきてるんだよお前」
「僕はどこでも揚げ物を作れるように、マイ調理セットを所持しているんだ」
「本当に変わったやつだなあ……」
思ったよりも早くクァールが倒せたので時間がまだまだある。
僕はぐつぐつと触手を煮込み、とりあえず棒状に加工することに成功したのだった。
なお、クァールの触手は棒状になると使い物にならないことで有名なんだそうで。
「わざわざ価値を落とす加工をしたわねえ……」
「いいんだよ。コゲタにとっては値千金の棒なんだ」
僕らはこうして、地上へと戻ったのだった。
冒険者ギルドやってくると、心配していたお下げの受付嬢がホッとした様子だった。
「良かった……! いかに皆さんとは言え、クァール相手に三人はちょっときついかなって思ってたんです……! でも、勝てたんですね!」
「いやあ、厄介な相手だったよ。僕の能力と相性が良くて助かった。マインドブラストも油で滑らせたし」
「油で……? ナザルさん相手に相性がいい人っているんですか?」
分からない……。
そして、雀の涙ほどのお金をいただき。
なんかギルドの特別券みたいなものを受け取った。
これがあれば、多少のわがままを聞いてもらえるようになる。
三枚集めると、もっとすごいお願いができるぞ。
まあ、安い金で命がけだったんだから多少はね。
こうして僕は宿に戻り……。
「ご主人~!」
興奮して四本脚で走ってくるコゲタの突撃を受け止めたのだった。
「ご主人元気、良かった」
「ああ。お陰様で元気に戻ってこれたよ。コゲタを残して死ねないからな。あ、これお土産。ちょうどいい感じの棒」
「棒! コゲタこれ好き」
コゲタは棒を受け取ると、握りしめてぶんぶん振り回した。
うんうん、気に入ってもらえて何よりだ。
そのちょうどいい感じの棒を手に入れるの、本当に大変だったんだからな。
ちなみにその棒、本当に何の力も残ってはいないのだった。
僕はこれを遠くに放り投げ、コゲタが喜んでそれを追いかけていき、咥えて戻って来る……みたいな遊びを日暮れまで堪能したのだった。
つまり、遺跡は有機物を回収する機能が存在しているらしい。
これ、僕は有機物を魔力に変換し、遺跡そのものを維持しているのだと考えているんだけど。
もしかして、アーランが出来上がり、第一層と第二層に畑や牧場が誕生した今、遺跡はとても元気に稼働していたりするのではないだろうか……?
おっと、話が戻ると、クァールの死体は放置していて構わないということ。
それから、クァール討伐の証を手に入れないといけないわけだ。
「耳かな」
「耳だろうなあ」
「なんかゾッとするわね!」
キャロティがウサギ耳を抑えた。
あれだけの戦いをやった後でも、ラビットフットは元気いっぱいだ。
ものすごい速さで体力が回復する種族なんだよね、彼ら。
ただし、食いだめをしておかないといけないとか。
今もキャロティは、ポシェットから乾燥した野菜のスティックみたいなのを出して、カリカリかじっている。
ウサギだ。
「よーし、耳切り取れたぞ。生きてると防御の魔法でも働くのか、やたらと頑丈なくせになあ。死んだらあっさりと切れた」
「さっきは僕の油に対抗するために魔力を回してたんだろうねえ。いや、しかし噂に聞く以上のとんでもない化け物だった。よく勝てたな僕らは」
「俺はお前がいれば勝てると思ってたぜ。何せ、クァールは地べたの上を歩いてるからな」
わっはっは、とバンキンが笑った。
確かに。
地上を歩く相手に対して、僕は一方的にメタを張れるもんな。
あっと!
ここで思い出した。
「コゲタにお土産を持って帰るって約束したんだった……」
「ああ、あのコボルドか? 本当にずっと世話してるんだなあ」
「犬は大事にする主義なんだよ」
「犬に似てるが犬じゃないだろ、コボルドは……。あ、いや、でもあいつらの自認は犬なんだよな」
そうそう。
コボルドは自分たちを犬扱いされても全く怒らない。
というか、自ら犬であると自負しているところがある。
なので、僕みたいにコボルドを従えている人は王国に何人もいるのだ。
大抵は金持ちなんだけどね……。
どれがいいかな、とクァールの全身を眺める。
……これだな。
僕が選んだのは、クァールの一番目立つ部分。
触手だった。
これをバンキンから借りた手斧で……。
先端あたりをバツン、と叩き切る。
いや、バツンじゃなかった。
何回か思い切り叩きつけて、ようやく切れた。
バンキンはこんな頑丈なものをよく切れるな……。
耳だって同じ材質なんじゃないか?
「切り口がザクザクじゃねえか。ちょっと貸してみろ。これはな、全身を使って叩き切るんだよ。あとは高さな。リビングアーマーの胴体をここに置いてだな……」
「台座を用意するのか」
「そういうこった。据え物を斬るなら準備は大事。せーのっ!! おりゃっ!!」
気合一発、もう片方の触手の先端が、バツンと切れた。
「おおーっ!」
触手先端は細くなっており、ムチのようにしなる。
このままでは有機物なので、干したり煮込んだりして加工する必要があるが……。
「あっ、加工した触手は棒みたいに硬くなんのよ! 犬ならそれのほうが嬉しいんじゃない?」
「なるほど!」
キャロティからいいことを聞いた。
この場でちょっと、触手の先を煮込んでいく……。
「なんで煮込む道具持ってきてるんだよお前」
「僕はどこでも揚げ物を作れるように、マイ調理セットを所持しているんだ」
「本当に変わったやつだなあ……」
思ったよりも早くクァールが倒せたので時間がまだまだある。
僕はぐつぐつと触手を煮込み、とりあえず棒状に加工することに成功したのだった。
なお、クァールの触手は棒状になると使い物にならないことで有名なんだそうで。
「わざわざ価値を落とす加工をしたわねえ……」
「いいんだよ。コゲタにとっては値千金の棒なんだ」
僕らはこうして、地上へと戻ったのだった。
冒険者ギルドやってくると、心配していたお下げの受付嬢がホッとした様子だった。
「良かった……! いかに皆さんとは言え、クァール相手に三人はちょっときついかなって思ってたんです……! でも、勝てたんですね!」
「いやあ、厄介な相手だったよ。僕の能力と相性が良くて助かった。マインドブラストも油で滑らせたし」
「油で……? ナザルさん相手に相性がいい人っているんですか?」
分からない……。
そして、雀の涙ほどのお金をいただき。
なんかギルドの特別券みたいなものを受け取った。
これがあれば、多少のわがままを聞いてもらえるようになる。
三枚集めると、もっとすごいお願いができるぞ。
まあ、安い金で命がけだったんだから多少はね。
こうして僕は宿に戻り……。
「ご主人~!」
興奮して四本脚で走ってくるコゲタの突撃を受け止めたのだった。
「ご主人元気、良かった」
「ああ。お陰様で元気に戻ってこれたよ。コゲタを残して死ねないからな。あ、これお土産。ちょうどいい感じの棒」
「棒! コゲタこれ好き」
コゲタは棒を受け取ると、握りしめてぶんぶん振り回した。
うんうん、気に入ってもらえて何よりだ。
そのちょうどいい感じの棒を手に入れるの、本当に大変だったんだからな。
ちなみにその棒、本当に何の力も残ってはいないのだった。
僕はこれを遠くに放り投げ、コゲタが喜んでそれを追いかけていき、咥えて戻って来る……みたいな遊びを日暮れまで堪能したのだった。
42
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる