俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
47 / 337
17・冒険者になりたいだって!?やめとけやめとけぇ

第47話 最後は薪割りをしよう

しおりを挟む
 ということで、夜は僕の宿に泊まっていった。
 昼間は大変体を動かしたので、夕食ももりもり食べ、僕の部屋に来た頃にはうつらうつらしていたビータ。
 すぐに眠ってしまった。

 寝る子は育つ。

「ふんふん」

 コゲタが、ビータのにおいを嗅いでいる。
 
「コゲタにはチャームが通じないんだな」

「コゲタわからない。コゲタご主人すき」

「そうかそうか」

 わしわしとコゲタを撫でた。
 その後、僕もベッドで寝た。
 横にビータ、枕元にコゲタが寝ており、ベッドがなかなか狭い。
 だがこんなのもたまには良かろう。

 朝は顔を洗って口をすすいだ後、朝食を摂りながら今日の話をする。

「一応依頼は今日までだからな。最後は体を動かして終わりにしよう」

「体を動かすって……。昨日も結構動いてた気がします」

「あれは持久力的な意味での運動だったな。今回のは筋力だ。つまり、密林の第一伐採所へ向かい、そこで薪割りのバイトをする……!!」

「ま、薪割り……!!」

 この様子では、ビータは薪割り未経験だな。
 その細腕では、冒険者にはなれないぞ。

 どれだけ頑張れるか見てやるとしよう。

 コゲタが一晩ですっかりビータに慣れたので、今回は彼も連れて行くことにする。
 戦闘力は皆無だが、鼻が利くし手先はそこそこ器用だから、細々とした手伝いに向いてるのだ。

 さて、伐採所に到着すると……。
 職人たちが並んで難しい顔をしていた。
 だが、僕を見てパッと表情を輝かせる。

「ナザルじゃないか!」

「最高のタイミングで来てくれたな!」

「お前を待ってたんだ!」

「ほうほう、どうしたどうした」

 僕がコゲタとビータを従えてやって来ると、職人たちの前には大柄な野鳥が何羽も転がっていた。

「見ての通り、鳥だ」

「ふむふむ」

「俺達が食べるには量が多くないから、食いでがなくてな。どうしたもんかと思っていたんだ。だが、お前の油で揚げてくれれば腹に溜まるようになる」

「頼むぞナザル」

「よしきた。唐揚げの練習と洒落込もう……。おっと、じゃあ僕からも頼みがあるんだが」

「なんだ?」

 僕はビータを指し示した。

「あの子が冒険者に憧れて、色々体験中なんだ。最初は鼻っ柱を折るつもりだったんだが、一生懸命に仕事に励むのでちょっと情が湧いてきてね」

「分かる」

「子供が懸命に仕事してるの見ると涙腺緩むよな」

 職人たちと大いに盛り上がった。
 それはそれとして、やはりビータの美貌は通用するらしく、職人たちはすぐにメロメロになった。
 彼らに薪割りレクチャーは任せておけばいいだろう……。

「ビータ、力加減なんかを学ぶんだぞ。力任せだと、肩や腰を壊すからな」

「は、はい! ナザルさんはどうするんですか」

「鳥の素揚げを作る」

「鳥の……素揚げ!?」

 楽しみにしているがいい。
 今日、ビータが頑張って割った薪が、いつか唐揚げのための火力に変わるかも知れない。
 努力は明日に通じているのだ……。

 なお、この伐採所では作った薪は放置せず、乾燥させるための蔵に放り込んで熱したりするからすぐに使えるようになるぞ。

 他の職人たちと、鳥の羽をむしっていく。
 溜まった羽の中に、コゲタが入ってきた。

「わふー」

 羽を舞い上げて遊んでいる。

「仕方ねえなあコボルドは」

「犬だもんなあ」

 職人たちが大目に見てくれていて助かる。
 さて、むしり終わった鳥は腹を裂いて内蔵を取り出し、内臓は内臓で鉄板の上に油を引いて炒める。
 内臓の焼き鳥だ。

 で、鳥肉は一口サイズにカットし、僕が作り出した油を熱して投じる。
 鳥皮は油をたっぷり含んでいるので、これはこれで別個に炒める。

 美味しそうな匂いがしてきた。

「おお……昼間だってのに酒が進みそうな香りだ……」

「もう仕事なんかしてられねえ……!!」

「うおおおお!! 俺は飲むぞーっ!!」

 職人たちがみんな集まってきてしまった。
 ビータのチャームよりも、酒とつまみの誘惑が勝つか!

 まだまだ発展途上のギフトだな。
 揚げ物の出来上がるタイミングを職人に教えた後、僕は外に様子を見に行った。

 ビータは薪の束を幾つか割った後、くたくたになって倒れていた。

「やあ、お疲れ。どうだ、薪割りは」

「つ、つらいです……! 腕や肩や腰がパンパンで、もう動けません……」

「そうだろうそうだろう。君はあれだ。冒険者になるという憧れはあったが、体のほうがまるでできちゃいなかった。冒険者は体が資本だ。夢を語るなら、まずは基礎的な体力をつけ、筋肉を鍛えるべきだな。育ちかけのチャームのギフトだけじゃ、世の中は渡っていけないぞ」

「そのギフトってなんだかわからないですけど、はい……。ぼくは、非力です……」

 しょんぼりしている。
 若者に挫折はつきものなのだ。

 そんな力尽きた彼の口に、揚げたてをちょっと冷ました鳥の素揚げを放り込んでやった。

「ふわ!? あつつ……んんん、おいひい!」

「君が割った薪は、いつかこの美味い揚げ物を作る火力になるかも知れないぞ。頑張れ少年!」

「ふぁ、ふぁい!」

 こうして、ビータは一旦冒険者を諦めてくれたらしい。
 次に冒険者を目指す時、彼はきっとムキムキのマッチョになっていることだろう。

 見る者をチャームで魅了するムキムキマッチョの冒険者。
 それならば全然、やっていけると思うよ……!

 なお、鳥の素揚げや内臓を使った焼鳥は職人たちに大変好評だった。
 塩とハーブを多めに使い、ちょっとでも酒が進むようにしたのは正解だったな。
 なお、これを続けると痛風や高血圧になるから気をつけるんだぞ職人たちよ。

 依頼を終えた僕は、騎士ボータブルに会った。

「どうだったナザル。ビータは冒険者になれそうか」

「今のままじゃ無理だね。筋力が足りないし、背丈だって足りない。そしてもっと世の中のことを知るべきだ」

「やっぱりな。そうかそうか。聞いたかビータ。お前はまだ色々足りないんだぞ」

「は、はい! ぼく、頑張って足りないものを身に着けて、またナザルさんと冒険します!」

「……ナザルよ。なんだか弟の目がキラキラ輝いているんだが……。諦めさせてくれるのでは無かったのか……?」

「現時点では諦めたさ。だけどまあ、夢ってのは一度折れたくらいでは全然その輝きを失わないものだったりしますんで」

「ぐう……! そ、そうか……!」

 ボータブルがフクザツな顔になった。
 弟が冒険者というヤクザな職業を諦めていないこと、そして、弟がそれを目指して努力する夢を見つけたということ。
 良くないことと良いことが一度に起こってるからね。

「世話になった、ナザルよ。あとは我が家の問題だ。冒険者になるために努力するくらいなら、騎士を目指させた方が建設的という気もする……」

 なんかぶつぶつ言いながら、ボータブルとビータが去っていった。 
 最後にあの美少年は、僕に向けてペコリと一礼したのだった。

 僕にギフトがなければ、キュンと来ているところだったな。


しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

処理中です...