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33・食人植物の果実はまるで
第100話 第二王子、花マルをくれる
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トマトもどきは、素で乾燥しているトマトみたいなものだ。
瑞々しいジューシーさは無いが、その分だけ酸味が凝縮されている。
残念ながら甘さは無い。
しかし、とんでもない旨味が中に潜んでいた。
酸っぱい顔をしながらも、思わず笑ってしまうとんでもない旨味だ。
これを活かさない手はない。
第二王子の期待に応えるときだ!
「コック諸君、ちょっとこれ食べてみてくれ」
「おお、ナザルさんがまた変わったのを持ってきたな。どれどれ……?」
「うわあ酸っぱい!! こ、これ大丈夫なのか!?」
「いや、酸っぱいだけじゃない。奥に何かこう……味の深みみたいなものがある……」
「これ、面白いぞ。面白い食材だ!」
シェフたちがざわつく。
流石、味のわかる人達だ。
コゲタはすっぱい匂いが満ちる厨房で、顔をしかめてプルプル震えている。
「コゲタ、無理しないでいいぞ。外でお昼寝してきなさい」
「わかったー!」
トテトテと走り出ていくコゲタ。
使いの人が、コゲタを庭まで連れて行ったようだ。
彼は僕と主にコンタクトを取る人なので、コゲタとも顔なじみだ。
見守りを任せてもよかろう。
「じゃあこれ、甘みが無いんで砂糖を加えて、まずは寒天料理作ってみましょう」
「いいですね!」
「寒天は常に作れるように用意してあるんで、これを使いましょう」
「砂糖こちらです!」
準備がいい!
僕とシェフたちのコンビネーションが、どんどんと料理を作っていくぞ!
そして完成したのは、甘み付けをしたトマトのジュレみたいなやつだ。
デザートで食べられるトマト料理だな。
シェフたちも、デュオス殿下一家の反応が見たいということで、みんなでやって来た。
前はこういうの許されなかったらしいが、最近の殿下はとても寛容らしい。
ぞろぞろやって来たので、一家はちょっと驚いていたが……。
盆の上に乗ったプルプル震える赤い寒天を見て、笑顔になった。
「さあ、持って来るのだ! おお、これが……これがトマド……!! ほう、ほうほうほう。あの酸味のある味がどのように料理されたのか楽しみだ……。どーれ」
デュオス殿下はトマド寒天を、匙で掬った。
おお、プルップルだ。
シェフたち、さらに寒天料理の腕に磨きを掛けているな。
これだけなら僕を上回っている。
流石プロ。
そして殿下、一口食べる。
その目がカッと見開かれた。
「おお……おおおおおお!! あの強い酸味が、ほどよいくらいに抑えられ、だが加えられた甘みを引き立てている! 鼻から抜けていくこの素晴らしい香りはどうだ! これは素晴らしい……。未知なのに、体中がこれを求めていたと告げている!」
情熱的な食レポだ!
それだけ告げた後、殿下は夢中で寒天を食べた。
一口食べてはうっとりとし、また一口食べては凄くいい笑顔になり。
奥方とお嬢さんも匙が止まらない様子。
あっという間にトマド寒天を食べきってしまった。
「美味しかったわ! 今まで食べたことがない、本当に爽やかな味! ハーブの寒天も良かったけれど、これはなんていうのかしら……。あの赤い果実自体に深い味わいが眠っていたのね。それが寒天と一緒に煮込まれたらパッと花開いたみたいな。そんな素晴らしい風味だった」
奥方も語る~!
「あと十個くらい食べたい」
お嬢さんが明らかに足りないご様子だ!
子供が大好きな味ではありますね。
「どうですか、殿下」
「よくやった」
なんか万感の思いを込めた一言だった。
「まだやれるのだろう? この果実、持っているポテンシャルがこれだけとは思えない」
「ええ、その通りです。これをスープにして、そこにパスタを漬けて食べてもいいですし、そのまま具だくさんにしてもいいです。さらに水を少なめにしてペーストにし、パンに塗ることもできますし」
ごくり、と三人のやんごとなき方々の喉が鳴った。
「栽培のご許可を……!」
「許す!!」
一瞬で許可が出た!
「私の持ちうる全ての力を使い、トマドの栽培を支援する! 大量生産をするのだ! 寄生植物? たっぷりと栄養を与え、育ててやるのだ! この素晴らしい果実を広めて欲しい! そうすれば……私達も、いつでもこの素晴らしい料理を味わうことができる」
食は全てを解決する!
こうして僕は、王家の全面的な支援を得て、トマドの栽培事業に乗り出すこととなった。
噂によると、弟がなんか妙な男を迎え入れ、美食の限りを尽くしているらしいと知った第一王子が僕を気にしているとか。
やめてくれ。
将来国王確定な人に気に入られでもしたら、遊んで暮らせなくなるじゃないか!!
ほとぼりが冷めるまでは、遺跡の中で栽培事業を行うとしよう。
僕はギルドと、根城にしている宿にそう告げ、コゲタを連れて遺跡第三層へ向かったのだった。
王家に雇われた農夫数名と一緒に作業を開始する。
寄生植物は果たして、遺跡第三層の土に根付くのか。
水の量は?
日差しの量は?
味はどう変わるのか?
調べなければならないことが山積みだ。
ああ、なんと楽しいのだろう!!
「コゲタ、しばらく忙しいぞ! すっぱいのもちょっと慣れてくれな」
「コゲタがんばるー!」
ガッツポーズをする頼もしい相方とともに、僕はしばしの農業ライフに入るのだった。
瑞々しいジューシーさは無いが、その分だけ酸味が凝縮されている。
残念ながら甘さは無い。
しかし、とんでもない旨味が中に潜んでいた。
酸っぱい顔をしながらも、思わず笑ってしまうとんでもない旨味だ。
これを活かさない手はない。
第二王子の期待に応えるときだ!
「コック諸君、ちょっとこれ食べてみてくれ」
「おお、ナザルさんがまた変わったのを持ってきたな。どれどれ……?」
「うわあ酸っぱい!! こ、これ大丈夫なのか!?」
「いや、酸っぱいだけじゃない。奥に何かこう……味の深みみたいなものがある……」
「これ、面白いぞ。面白い食材だ!」
シェフたちがざわつく。
流石、味のわかる人達だ。
コゲタはすっぱい匂いが満ちる厨房で、顔をしかめてプルプル震えている。
「コゲタ、無理しないでいいぞ。外でお昼寝してきなさい」
「わかったー!」
トテトテと走り出ていくコゲタ。
使いの人が、コゲタを庭まで連れて行ったようだ。
彼は僕と主にコンタクトを取る人なので、コゲタとも顔なじみだ。
見守りを任せてもよかろう。
「じゃあこれ、甘みが無いんで砂糖を加えて、まずは寒天料理作ってみましょう」
「いいですね!」
「寒天は常に作れるように用意してあるんで、これを使いましょう」
「砂糖こちらです!」
準備がいい!
僕とシェフたちのコンビネーションが、どんどんと料理を作っていくぞ!
そして完成したのは、甘み付けをしたトマトのジュレみたいなやつだ。
デザートで食べられるトマト料理だな。
シェフたちも、デュオス殿下一家の反応が見たいということで、みんなでやって来た。
前はこういうの許されなかったらしいが、最近の殿下はとても寛容らしい。
ぞろぞろやって来たので、一家はちょっと驚いていたが……。
盆の上に乗ったプルプル震える赤い寒天を見て、笑顔になった。
「さあ、持って来るのだ! おお、これが……これがトマド……!! ほう、ほうほうほう。あの酸味のある味がどのように料理されたのか楽しみだ……。どーれ」
デュオス殿下はトマド寒天を、匙で掬った。
おお、プルップルだ。
シェフたち、さらに寒天料理の腕に磨きを掛けているな。
これだけなら僕を上回っている。
流石プロ。
そして殿下、一口食べる。
その目がカッと見開かれた。
「おお……おおおおおお!! あの強い酸味が、ほどよいくらいに抑えられ、だが加えられた甘みを引き立てている! 鼻から抜けていくこの素晴らしい香りはどうだ! これは素晴らしい……。未知なのに、体中がこれを求めていたと告げている!」
情熱的な食レポだ!
それだけ告げた後、殿下は夢中で寒天を食べた。
一口食べてはうっとりとし、また一口食べては凄くいい笑顔になり。
奥方とお嬢さんも匙が止まらない様子。
あっという間にトマド寒天を食べきってしまった。
「美味しかったわ! 今まで食べたことがない、本当に爽やかな味! ハーブの寒天も良かったけれど、これはなんていうのかしら……。あの赤い果実自体に深い味わいが眠っていたのね。それが寒天と一緒に煮込まれたらパッと花開いたみたいな。そんな素晴らしい風味だった」
奥方も語る~!
「あと十個くらい食べたい」
お嬢さんが明らかに足りないご様子だ!
子供が大好きな味ではありますね。
「どうですか、殿下」
「よくやった」
なんか万感の思いを込めた一言だった。
「まだやれるのだろう? この果実、持っているポテンシャルがこれだけとは思えない」
「ええ、その通りです。これをスープにして、そこにパスタを漬けて食べてもいいですし、そのまま具だくさんにしてもいいです。さらに水を少なめにしてペーストにし、パンに塗ることもできますし」
ごくり、と三人のやんごとなき方々の喉が鳴った。
「栽培のご許可を……!」
「許す!!」
一瞬で許可が出た!
「私の持ちうる全ての力を使い、トマドの栽培を支援する! 大量生産をするのだ! 寄生植物? たっぷりと栄養を与え、育ててやるのだ! この素晴らしい果実を広めて欲しい! そうすれば……私達も、いつでもこの素晴らしい料理を味わうことができる」
食は全てを解決する!
こうして僕は、王家の全面的な支援を得て、トマドの栽培事業に乗り出すこととなった。
噂によると、弟がなんか妙な男を迎え入れ、美食の限りを尽くしているらしいと知った第一王子が僕を気にしているとか。
やめてくれ。
将来国王確定な人に気に入られでもしたら、遊んで暮らせなくなるじゃないか!!
ほとぼりが冷めるまでは、遺跡の中で栽培事業を行うとしよう。
僕はギルドと、根城にしている宿にそう告げ、コゲタを連れて遺跡第三層へ向かったのだった。
王家に雇われた農夫数名と一緒に作業を開始する。
寄生植物は果たして、遺跡第三層の土に根付くのか。
水の量は?
日差しの量は?
味はどう変わるのか?
調べなければならないことが山積みだ。
ああ、なんと楽しいのだろう!!
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