俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
101 / 337
34・久々の地上だ!

第101話 楽しき農作業暮らし

しおりを挟む
 まず、寄生植物ことトマドだが、きちんと土に刺さると根付くことが分かった。
 この世界の植物はたくましいな。
 環境に合わせて、育ち方を変えられるのだ。

「ナザルさん! こいつを見てくれ。トマドの身に水分が……!」

「なんだって!?」

 遺跡の中に作られた土は、基本的に栄養豊富だ。
 というのも、地上で暮らす人々からちょっとずつ魔力を集めて養分に変えているためだ。

 これ、もしかしてトマドにとっては想定していない環境なのではないだろうか?

 クリーピングツリーにくっついている状態では、思うように水分を得られまい。
 だから、果実は栄養を凝縮して最小限の水分で存在していた。
 だが、この水と栄養に満ちた環境ならどうだろう。

「こりゃあ……みずみずしくて、すぐにでも食べられそうだ!」

 僕の補助をしてくれる農夫の人達とともに、幾つか実をもぐ。

「よし、じゃあみんなで食べてみよう」

 ナイフで切り分けると、なるほど、これはトマトだ。
 だが、どこか水っぽい感じがする。
 なんだろう、この違和感は……。

 全員で食べてみて、むむっと首を傾げた。

「確かにみずみずしいんだが……。まるで別の果実みたいな味なんだが……」

「ええ、なんかこいつは、味が薄くなってますよ。旨味も酸味も薄い……」

「美味しそうなにおい!」

 コゲタが走ってきた。
 そして、切り分けられたトマドをひょいっと掴むと、パクパク食べてしまった。

「おいしい~」

「コゲタが美味しいということは……濃度がかなり薄くなったってことだ。これ単体を水代わりにガツガツ食べるならいいが、料理に使うには明らかに力不足だ! くそー、地面に直接植えるのは失敗だ!」

 あー、とうめいて天を仰ぐ農夫の人達。
 ここで、僕らは角を突き合わせて相談することとなった。

「遺跡から供給される栄養の量が多すぎるんだ。これをどうにかコントロールしないと、トマド本来の味が出てこないぞ」

「そうですねえ。だとすると……。上の階層でやってるやり方にしましょうか」

「上のやり方?」

 農夫の人が頷いた。

「二弾重ねになってる畑があったでしょう。あれで、栄養を二箇所に分けられるんですよ。穀物も富栄養すぎるとよくなかったりするんで」

「なるほどなるほど。だとしたら……。たっぷりの栄養を必要とする植物と一緒に育てるのがいいだろうな」

「と、いいますと?」

「オブリーだよ」

 僕はニヤリと笑った。
 そう。
 なぜ気付かなかったのだろう!

 元の世界では、オリーブとトマトは友達みたいなものだ。
 似たような環境で育つ。
 トマドがトマトと似た性質を持っている可能性があるならば、オブリーと同じ環境で育てるのがいいのだ!

 僕らはトマドを持って、オブリー畑を訪れた。
 職人氏がせっせと作業しているところだ。

「おーい!」

「あ、ナザルさん! どうしたんだい?」

「実はこっちの空いている畑でトマドを作らせてもらえたらいいなと思って」

「ああ、噂の。話を聞くに、オブリーに植生が近い作物みたいだねえ」

 流石はオブリー職人。 
 トマドの実と葉を見て、全て理解したらしい。

「一緒にやろう。うちの環境は俺がじっくりとヒートスに近くなるように調整したんだ。栄養を与えすぎず、水も少なめ。植物は必死で水と栄養を果実に蓄える。これが美味くなるんだ」

「なるほどー! 流石は職人だ……」

 こういうのはプロに任せるに限る。
 こうして、僕らはトマドをオブリー畑にせっせと運び込んだ。

 植えた端から、オブリーと同じ環境での育成を行うのだ。

 程なくして、トマドはいい感じで水分が抜けてきた。
 とは言っても、寄生植物だった頃のようなしおしおとした姿ではない。

 前世で僕が知る、ミニトマトに近い姿になっていた。
 いや、それよりは少し大きいか。

「すっぱすっぱのにおいがするー!」

 コゲタが顔をしかめている。
 ということは、酸味が戻ってきたということだ!

 また、みんなで会食してみた。

「おっ、これは……」

「すっぱいっ!!」

「こりゃあ、凄い味だなあ……!!」
 
 職人氏も一緒になって味わうのだ。
 他にはない、強烈な酸味。
 そして奥深いコク。
 まさにトマド。

 水分を得たトマドはそれ単体でも食べられるようになっていた。
 まあ、酸っぱいから人は選ぶと思うな。
 糖度はそんなに高くないと思うし。

 これを料理してみる。
 熱すると酸味が柔らかくなり、奥に潜んでいた旨味が溢れ出してくる。
 一つで味付けとお出汁ができてしまうスーパー植物、復活!

 あとはひとつまみの塩と砂糖。
 お好みでハーブ。

 滋養たっぷりの真っ赤なスープが出来上がった。

「うーむ、美味い」

「こりゃあ堪らん……」

「いやあ、美味いっすねえ」

 みんなしみじみとしてしまう。
 この素晴らしい食材を増産し、アーランに行き渡らせるのだ。
 僕らの責任は重大だぞ。

 まあ、僕はここで当分農作業に従事することで、地上で面倒事に巻き込まれるのを避けているわけなのだが。
 あと二、三ヶ月はこっちに引っ込んでいるぞ。

「ご主人、コゲタあそびにいってくる!」

「おう、あまり奥に行かないようにね。モンスターが出るかもだからね」

「はーい!」

 コゲタがトテトテと駆け出していった。
 第二層辺りで家畜と遊んだりするのが日課らしい。
 遺跡は何気に暮らしやすい環境が整っているのだ。

 いやあ、なんならずっとここに住んでいてもいいな。
 いやいや、たまには外に出て美食と洒落込みたい気もするし……。
 うーむ。
 贅沢な悩みだ。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...