俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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34・久々の地上だ!

第103話 冬のアーランは熱いものが美味い

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 久々ということで、デュオス殿下に挨拶してきた。
 そして挨拶ついでににんにくとトマドとピーカラを効かせたアヒージョを作ってきたのだった。

「うおおおおおーっ!!」

 雄叫びをあげながら、アヒージョを食べまくる殿下なのだった。
 めちゃくちゃ美味かったらしい。
 そしてその後、口臭が臭くなったことをお嬢さんに指摘され、ガーンとショックを受けていた。

「このにんにくなるもの、大変美味であり、刺激もあって食事も楽しくなり、しかも体が温まる。だが……食後の臭いがな……」

「殿下、この臭いは牛乳で相殺できると言われております」

「ほう、牛乳とな!? 牛乳のような液体は毒を混ぜやすいし、悪くなると腹を壊すというので、私は一度も飲んだことがなかったのだ」

「では今度、遺跡の第二階層まで一緒に行きましょう。搾りたてなら毒の入る余地もありますまい」

「そうか! そなたが先導してくれる? 頼むぞナザル!!」

 新しいお仕事を請け負ってしまった。
 デュオス殿下、ウッキウキ。

 そして僕が姿をくらましているうちに、第一王子が僕に抱いた興味は薄れてしまったようである。
 ありがたい、ありがたい。

 僕が第二王子邸を出てくると、外でシズマとアーシェ、そして我が愛犬コゲタが待っていた。

「ご主人~! なんだかいいにおいがする」

「うむ。完成形アヒージョの香りだ。これはきっとアーランのスタンダードな味になることであろう……。絶対これから広まるからね」

 どうやら、早くできたオブリーは、巷に出回り始めているようだ。
 そのまま食べてもよし、油を使うと超美味い。
 どこでも引っ張りだこだとか。

 ハハハ、待っているがいい。
 そのうち、最高に美味いアヒージョを広めてやる。
 あと、トマトをソースにしたパスタとかな。

 あっ、ピザを作る手もあるな。
 この国、乳製品はチーズやバターの形でそこそこ出回ってるんだよな……。

「僕の知ってる食堂で、にんにくを持ち込んで料理してもらおう」

「いいな! にんにくを使って何を作ってもらうつもりだナザル?」

 シズマが楽しみそうである。
 ふふふ、冬場に温まるにんにくを使った料理と言えば……。

 思いつかん。

「おっ! 俺にパスタを伝えた男じゃねえか!!」

 僕らが入ってくると、なんか顔を覚えていてくれたらしい店主が声を掛けてくれた。
 パスタを秘密にしたのに、速攻で盗まれてアーラン中に広められてしまった店主だ。

「やっぱあれだな。下町の料理人どもは油断ならねえぜ……。一日で味を盗まれちまった。で、今日はどうしたんだ? 食いに来たのか? いいぞいいぞ。俺はな、画期的なパスタを開発したんだ」

「画期的なパスタだって!?」

「ど、どういうことなんだナザル!!」

「僕も分からん」

 シズマと二人で大盛りあがりしていると、この姿が面白かったらしく、コゲタとアーシェが笑っていた。

「まあ見ていろよ。ちょうど客がはけたところだからよ。生地をこうして伸ばすだろ? こいつをぐーっと伸ばして、粉を付けてから畳んでさらに伸ばして、また粉を付けてから伸ばして……」

「こ……これは……!!」

「手延パスタ!!」

 僕とシズマが衝撃を受けた。
 この世界の人々は、なんとバイタリティに溢れているのだろう!
 自らの力だけで、細長いパスタに容易にたどり着いてしまった!!

 店主は見事な手延パスタを作り上げると、これを茹で始めた。

 上下の部分はマカロニにしてくれる。

 ここに、僕がオブリーオイルを、シズマがにんにくを差し出した。
 ハッとする店主。

「こ、このすげえいい香りのオイル……。ウワサのオブリーオイルだな? そしてこいつは……ワオ! なんて刺激的な香りなんだ。ちょっとひと舐めもらうぜ……。ウオォッ!! 舌にびりびり来やがった! だが、こいつは美味くなるぞ……!!」

 目をギラギラ輝かせた店主は、にんにくの皮を剥き、スライスにした。
 これを茹で上がったパスタと一緒にフライパンでソテーしつつ、オブリーオイルを注いで絡める。
 そして刻んだピーカラを和えて……。

「か、完璧だ……。完璧なペペロンチーノだ……!!」

「あわわわわ……俺たちは今、歴史的瞬間に立ち会っている……!!」

「二人ともマジで大げさなんだけど! でも、ちょー美味しそうな匂い! あたしのお腹も減ってきたかも!」

「コゲタもー!」

 コゲタのはにんにく抜いてもらおうね。

 皿に取り分けられたペペロンチーノ。
 店主も一緒に食べる気満々で、自分の分まで用意してるじゃないか。

「俺のパスタはかなり評判になっててな。この技術がなければ作れない特別製だ。簡単な作り方なら真似られても、俺の技までは真似できねえって寸法……うおおお美味そうな匂いだ! 御託はいいから食おう食おう」

「いただきます!」

「いただきます!」

「シズマだけじゃなくナザルもその挨拶するの? んじゃ、あたしもー。いただきまあす」

「わん!」

 こうして味わうペペロンチーノは……。
 うおおお!!
 美味い、美味すぎる。

 打ち立て、茹でたてでコシのあるもちもちパスタはうどんのようでもある。
 そしてたっぷりと絡むオブリーオイルの香り高いこと!
 にんにくのすばらしい匂いに、ピーカラの刺激!

 フォークを使う手が止まらない。
 美味い、美味すぎる。
 ペペロンチーノってこんなに美味かったんだなあ……!!

 アツアツのペペロンチーノは、これも確かに冬に美味い料理といえば、そうなのだ。
 食材が順調に増える今、僕はスープパスタだとか、トマドを使った煮込み料理なんかを考え始めるのだった。

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