119 / 337
39・ごま油の気配
第119話 ゴマ油パワーと餃子!
しおりを挟む
出た出た、ゴマ油。
ゴマのかぐわしい香りを放つ、褐色の油が出てくる。
「ちょっぴりだな……。やはり口にした量に比例して油生成能力も変わるらしい」
「驚いた。このゴマというやつも本当に油になるんだな。ナザルの油使いは、すっかり食物が油になるかどうかの判定装置になってきている」
セサミを載せたケーキを食べ終え、満足げなリップル。
僕の能力について色々分析しているのだ。
うーむ、実際にそうかも知れない。
ギフトとして行使することはできるんだが、それによって得られるものは僕の望んだものではない。
むしろ、様々な油を再現できるところこそが、 油使いの真骨頂とまで思う。
ちょっぴり出てきたゴマ油を、僕とリップルとダイフク氏で味見してみた。
「あ、美味い。ちゃんとゴマ油だ」
「こんな強烈に味がする油は始めてだなあ……!」
「たっぷり飲んだら水に沈めなくなる味してますね。ハハハ」
カエルジョーク!
面白い人だなあダイフク氏。
とりあえず、ここでゴマ油の可能性はみんなで納得したところだ。
これは下手な加工をせず、ゴマ油の風味を生かした料理を考えていくべきだな。
「これは料理向けの味だね。そうだな……スープに少し垂らすだけで、素晴らしい香りになると思うな」
ちょっと舐めたマスターが的確な意見を出してきた。
さすが、料理に詳しいお人。
御本人的にはスイーツしか作りたくないのだろうが、こういう細かいところに知識のある人なのだ。
「だが、今はゴマの栽培が成功するまでは活かしきれないところだ。このスローな暮らし、そこが問題だよな」
「ナザル、常に新しいものを求めて突っ走らなくてもいいだろう。君はまだ若い。ここは立ち止まり、豊かになってきた食生活を堪能してはどうだね?」
リップル、たまにはいいことを言うなあ!
「で、その心は」
「新しい料理を作って私にごちそうしてほしい」
「そっちかあ……!」
まあ、最近リップルのことを放ったらかしだったし、たまには何かあげてもいい気がする。
では、何ができる?
一般的に入手できるようになってきた、パスタ、にんにく、ピーカラ、オブリーオイル……。
トマドを使うと一気にイタリアンみが増してしまう。
ゴマを手に入れた僕は、しばらくイタリアンから離れたい気持ちなのだ。
「うーん」
「肉を使うのはどうだい? ナザルの料理はあまり肉を使わないじゃないか。やはり、食卓には少しは肉がほしい」
「パスタと肉かあ。うーん、ゴロッとした肉だと相性がな……。ひき肉にでもしたら……」
ここで!
僕の脳裏に電流が走った!
もちもちとしたパスタは薄く薄く伸ばせば皮にもなるだろう!
そこに、ひき肉とにんにく、あとはザクザクとした歯ごたえの野菜を入れて包み、蒸し焼きにするかスープに放り込む……!!
「餃子だ!! 餃子が作れるようになっていた!!」
僕は震え上がった。
こりゃあとんでもないことだぞ……!!
「おや、君の前世の記憶から、とびきりヤバいのが飛び出してきたね?」
「僕の表情から思考を読むなよー」
「ははははは。期待しているよ元少年」
「ああ。これは脂っこくもないし、スープと合わせればあっさりしているから美味いぞ。期待しててくれ」
僕は餃子開発のため、いつもの店に向かうのだった。
そして、基本的に暇であるダイフク氏がついてくる。
餃子なら、にんにくを抜けばコゲタも食べられる。
よーし、コゲタを連れて行こう。
宿に戻ってくると、アララちゃんと遊んでいたコゲタがこっちに気付いた。
ばいばーい、とアララちゃんと別れ、こっちに走ってきた。
「ご主人~!」
「おーコゲタ! 一緒にお出かけしよう」
「わん!」
尻尾をフリフリするコゲタを抱き上げてくるくる回し、すとっと地面に立たせた。
ちょうど、ダイフク氏の眼の前である。
「はっ」
コゲタがダイフク氏を見てちょっと固まった。
「おさかな!」
「ノーノー」
魚呼ばわりされたダイフク氏が手をぶんぶん振って否定する。
カエル人間アビサルワンズである彼は、基本的に表情が分かりづらい。
シュールで面白いなあ。
コゲタが彼の周りをとことこ歩き回り、においをくんくん嗅いだ。
そして……。
「おさかな!」
「いやいや」
やっぱり理解してもらえてないぞ!
確かにダイフク氏のにおいはちょっと生臭い魚のようであるかも知れない。
コゲタはお日様のにおいがするし、僕はちょっと汗臭い。
誰しもにおいがするものである。
とりあえず、ダイフク氏のにおいはコゲタにとって嫌なものではなかったらしい。
僕と並んでくダイフク氏の周りをちょろちょろ動き回っている。
「とても人懐こいコボルドですな彼は」
「ええ、日々愛情を掛けて接してますんで」
「なるほどどうりで」
コゲタを撫でようと手を出したダイフク氏、その手のひらをペロッと舐められて「オアー」と妙な声をあげた。
「おさかなじゃない……」
「だから魚じゃないと言っているでしょう。わしはむしろカエルに近い。正しくは、カエルと魚と人間を混ぜ合わせたような存在です。なお、わしらの神の加護のお陰で地上でも平気ですが」
「そりゃすごい」
そんなダイフク氏の話を聞きながら、ギルボウの店にやって来たのだった。
良かった、港から戻ってきていたようだ。
中からトマドソースのいい香りがしてくる……。
だがすまんなギルボウ。
今回の料理で、トマドはお休みなんだ。
ゴマのかぐわしい香りを放つ、褐色の油が出てくる。
「ちょっぴりだな……。やはり口にした量に比例して油生成能力も変わるらしい」
「驚いた。このゴマというやつも本当に油になるんだな。ナザルの油使いは、すっかり食物が油になるかどうかの判定装置になってきている」
セサミを載せたケーキを食べ終え、満足げなリップル。
僕の能力について色々分析しているのだ。
うーむ、実際にそうかも知れない。
ギフトとして行使することはできるんだが、それによって得られるものは僕の望んだものではない。
むしろ、様々な油を再現できるところこそが、 油使いの真骨頂とまで思う。
ちょっぴり出てきたゴマ油を、僕とリップルとダイフク氏で味見してみた。
「あ、美味い。ちゃんとゴマ油だ」
「こんな強烈に味がする油は始めてだなあ……!」
「たっぷり飲んだら水に沈めなくなる味してますね。ハハハ」
カエルジョーク!
面白い人だなあダイフク氏。
とりあえず、ここでゴマ油の可能性はみんなで納得したところだ。
これは下手な加工をせず、ゴマ油の風味を生かした料理を考えていくべきだな。
「これは料理向けの味だね。そうだな……スープに少し垂らすだけで、素晴らしい香りになると思うな」
ちょっと舐めたマスターが的確な意見を出してきた。
さすが、料理に詳しいお人。
御本人的にはスイーツしか作りたくないのだろうが、こういう細かいところに知識のある人なのだ。
「だが、今はゴマの栽培が成功するまでは活かしきれないところだ。このスローな暮らし、そこが問題だよな」
「ナザル、常に新しいものを求めて突っ走らなくてもいいだろう。君はまだ若い。ここは立ち止まり、豊かになってきた食生活を堪能してはどうだね?」
リップル、たまにはいいことを言うなあ!
「で、その心は」
「新しい料理を作って私にごちそうしてほしい」
「そっちかあ……!」
まあ、最近リップルのことを放ったらかしだったし、たまには何かあげてもいい気がする。
では、何ができる?
一般的に入手できるようになってきた、パスタ、にんにく、ピーカラ、オブリーオイル……。
トマドを使うと一気にイタリアンみが増してしまう。
ゴマを手に入れた僕は、しばらくイタリアンから離れたい気持ちなのだ。
「うーん」
「肉を使うのはどうだい? ナザルの料理はあまり肉を使わないじゃないか。やはり、食卓には少しは肉がほしい」
「パスタと肉かあ。うーん、ゴロッとした肉だと相性がな……。ひき肉にでもしたら……」
ここで!
僕の脳裏に電流が走った!
もちもちとしたパスタは薄く薄く伸ばせば皮にもなるだろう!
そこに、ひき肉とにんにく、あとはザクザクとした歯ごたえの野菜を入れて包み、蒸し焼きにするかスープに放り込む……!!
「餃子だ!! 餃子が作れるようになっていた!!」
僕は震え上がった。
こりゃあとんでもないことだぞ……!!
「おや、君の前世の記憶から、とびきりヤバいのが飛び出してきたね?」
「僕の表情から思考を読むなよー」
「ははははは。期待しているよ元少年」
「ああ。これは脂っこくもないし、スープと合わせればあっさりしているから美味いぞ。期待しててくれ」
僕は餃子開発のため、いつもの店に向かうのだった。
そして、基本的に暇であるダイフク氏がついてくる。
餃子なら、にんにくを抜けばコゲタも食べられる。
よーし、コゲタを連れて行こう。
宿に戻ってくると、アララちゃんと遊んでいたコゲタがこっちに気付いた。
ばいばーい、とアララちゃんと別れ、こっちに走ってきた。
「ご主人~!」
「おーコゲタ! 一緒にお出かけしよう」
「わん!」
尻尾をフリフリするコゲタを抱き上げてくるくる回し、すとっと地面に立たせた。
ちょうど、ダイフク氏の眼の前である。
「はっ」
コゲタがダイフク氏を見てちょっと固まった。
「おさかな!」
「ノーノー」
魚呼ばわりされたダイフク氏が手をぶんぶん振って否定する。
カエル人間アビサルワンズである彼は、基本的に表情が分かりづらい。
シュールで面白いなあ。
コゲタが彼の周りをとことこ歩き回り、においをくんくん嗅いだ。
そして……。
「おさかな!」
「いやいや」
やっぱり理解してもらえてないぞ!
確かにダイフク氏のにおいはちょっと生臭い魚のようであるかも知れない。
コゲタはお日様のにおいがするし、僕はちょっと汗臭い。
誰しもにおいがするものである。
とりあえず、ダイフク氏のにおいはコゲタにとって嫌なものではなかったらしい。
僕と並んでくダイフク氏の周りをちょろちょろ動き回っている。
「とても人懐こいコボルドですな彼は」
「ええ、日々愛情を掛けて接してますんで」
「なるほどどうりで」
コゲタを撫でようと手を出したダイフク氏、その手のひらをペロッと舐められて「オアー」と妙な声をあげた。
「おさかなじゃない……」
「だから魚じゃないと言っているでしょう。わしはむしろカエルに近い。正しくは、カエルと魚と人間を混ぜ合わせたような存在です。なお、わしらの神の加護のお陰で地上でも平気ですが」
「そりゃすごい」
そんなダイフク氏の話を聞きながら、ギルボウの店にやって来たのだった。
良かった、港から戻ってきていたようだ。
中からトマドソースのいい香りがしてくる……。
だがすまんなギルボウ。
今回の料理で、トマドはお休みなんだ。
33
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる