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42・アララの飼い主の正体
第128話 冷戦の終わり
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ツーテイカーの幹部らしき人たちがやってきて、盗賊ギルドの幹部や、冒険者ギルドのグランドマスターとギルボウの店で会談している。
ギルボウはまた青い顔をして料理しているではないか。
「どうしたんだギルボウ、落ち着けよ」
「こ、これが落ち着けるかよ……! なんで俺の店で世界の命運を決めるような話をしてるんだ……。どうして俺がこんなことに……。下町でただただ美味い料理を作っていたいだけなのに」
僕はギルボウの肩にポンと手を置いた。
「君は美味しい料理を作りすぎたんだ……」
「ぐわあああ」
苦しげに呻きながらも、小さなパスタを次々に作り出していく。
それはトマドスープパスタだね?
最初の一発目としてはバッチリであろう。
ニンニクを隠し味で入れてある。
こりゃあ美味いぞー。
実際、料理が出ると、お偉い方々は一口食べるなり、無言になった。
ひたすら食べている。
「ギルボウ。君はあれだ。チートだ」
「チートぉ!? なんだそりゃ」
「おそらく君は……この世界で一番料理が上手い」
「そんな馬鹿な」
世界で一番美味しい料理を作る男であることだけは確かだろう。
日頃散々美味いものを食い慣れており、今さっきまで酒を飲みながら刺々しい口調で語っていたツーテイカーの幹部が一発で静かになったんだから。
酒よりも、スープパスタを食うことが優先されたということだ。
これはとんでもないことだぞ。
だが、ギルボウは「どうして俺がどうして俺が最悪だ最悪だ」とか呟きながら、次の料理を作っているのだ。
それは油煮……アヒージョだな!?
さらに、オブリーオイルで炒めて蒸して、洋風ソースで食べさせる餃子……ラビオリまで作り出している。
こいつ、天才なのではないか……?
外見は強面の男なのだが、手さばきは実に繊細。
どんなときでも100%の調理の腕を発揮する。
一度教えた料理、見た料理はすぐに再現でき、さらに自分でどんどんアレンジを加えて、知らないはずの地球の料理を次々に作り出していく。
ギフト持ちなのではないか……?
いや、料理に関係するギフトなんて聞いたことがない。
なんだただの天才か。
案の定、アヒージョもラビオリも絶賛の嵐。
「美味い……!! なんだ!? なんだこの美味さは!? 止まらん……! 食べるのが止まらん……!!」
「どうしてこんな場末の店なんぞを選んだのかと思っていたが……。そうか、アーラン最高のシェフはここにいたのか!!」
「ふふふ、それはどうでしょうな」
アーガイルさんを従えた、ロマンスグレーのおっさんが不敵に笑う。
これが盗賊ギルドのマスターだ。
「まさか……。この極めて高いレベルの料理人が、アーランには何人もいるというのか!?」
「恐ろしい連中だ……!!」
ツーテイカーの幹部たちがおののいている。
いやいやいや、僕が知る限りギルボウを超える料理人はいない。
あの日、ドロテアさんとやってきた下町の料理屋が世界最高の料理人の店だったとはなあ。
ちなみにそんな感じでやり取りをしていた偉い人々は、なんだかんだで飯がめちゃくちゃ美味いので、話も弾んだようだ。
「なるほどな。アーランでは生産する余裕のない作物を作ってほしいということか。我々も、アーランの作物が欲しい。この味を知ってしまってはな……」
舌が肥えてしまうと、食のランクを容易に落とせなくなるんだよな。
アーランとファイブスターズの冷戦を主導していたらしきツーテイカー。
かの都市国家は、アーランから盗み出した美食のレシピにより、自ら毒が回って陥落した。
「おい主人!」
「は、はい!」
「この料理のレシピをくれ。金は出そう」
「は、はい!」
ギルボウがレシピを箇条書きにして用意する。
盗賊ギルドのマスターはこれをニヤニヤしながら見守っていたが、そんな彼もずっとアヒージョを食べ、酒を飲んでの繰り返しだ。
なお、途中でグランドマスターが「美味い!!」と吠えて目を見開いたので、その場にいたお偉いさんが全員気圧されて「うわーっ」とのけぞった。
グランドマスターは何もかもを飲み込む強烈な迫力があるな……。
結局、会談は成功したようだ。
ツーテイカーはアーランの美味しい料理のレシピを持ち帰り、食材を輸入する約束も取り付けた。
「生半可な麻薬なんか目じゃねえ……。とんでもねえものを生み出してくれたな、お前らは」
最後にそんな事を言われたのだが、盗賊ギルドのマスターとアーガイルさんがじーっと僕を見たので、ツーテイカーの幹部も僕を注視した。
「えっ、あいつが? あいつが……。ほー」
「言っとくが、手出ししようと思うなよ。あいつが油使いだ」
「げぇっ」
幹部が絞め殺されたみたいな悲鳴を漏らした。
なんだなんだ!?
油使いがどうしたって!?
アーガイルさんが僕にだけ聞こえるように囁く。
「お前は知らんだろうがな。油使いは裏社会ではアンタッチャブルな化け物の代名詞なんだよ」
「そんなー」
「ツーテイカーは国そのものが盗賊ギルドみたいなものだ。その国が総力を上げてアーランを調べた時、お前という男の脅威を知ったのだろうな。良かったな、有名人だぞ」
「嬉しくない!」
だが、恐れられているということは僕がツーテイカーにさらわれて、新しい料理のネタを絞り出される……みたいなことは起こるまい。
まあいいか。
「おいアーガイル。このギルボウという男は絶対に守れよ。アーランの至宝だ」
「うむ!! 素晴らしき料理人よ! だがこの男を下町から連れ出しては輝きを失うだろう!! ごみ溜めの中でしか輝かぬ華はある! 精進せよ!!」
グランドマスターはいちいち言葉に覇気が満ちてるんだよな……!!
そして去っていくツーテイカーの幹部たち。
なお、飼い主氏は今後は、ツーテイカー側の大使として正式にこの国に残ることになった。
アララちゃんはずっとこっちにいられるな!
冷戦は終わり、世界は少し平和になったのだった。
美食は世界を救うのだ……。
ギルボウはまた青い顔をして料理しているではないか。
「どうしたんだギルボウ、落ち着けよ」
「こ、これが落ち着けるかよ……! なんで俺の店で世界の命運を決めるような話をしてるんだ……。どうして俺がこんなことに……。下町でただただ美味い料理を作っていたいだけなのに」
僕はギルボウの肩にポンと手を置いた。
「君は美味しい料理を作りすぎたんだ……」
「ぐわあああ」
苦しげに呻きながらも、小さなパスタを次々に作り出していく。
それはトマドスープパスタだね?
最初の一発目としてはバッチリであろう。
ニンニクを隠し味で入れてある。
こりゃあ美味いぞー。
実際、料理が出ると、お偉い方々は一口食べるなり、無言になった。
ひたすら食べている。
「ギルボウ。君はあれだ。チートだ」
「チートぉ!? なんだそりゃ」
「おそらく君は……この世界で一番料理が上手い」
「そんな馬鹿な」
世界で一番美味しい料理を作る男であることだけは確かだろう。
日頃散々美味いものを食い慣れており、今さっきまで酒を飲みながら刺々しい口調で語っていたツーテイカーの幹部が一発で静かになったんだから。
酒よりも、スープパスタを食うことが優先されたということだ。
これはとんでもないことだぞ。
だが、ギルボウは「どうして俺がどうして俺が最悪だ最悪だ」とか呟きながら、次の料理を作っているのだ。
それは油煮……アヒージョだな!?
さらに、オブリーオイルで炒めて蒸して、洋風ソースで食べさせる餃子……ラビオリまで作り出している。
こいつ、天才なのではないか……?
外見は強面の男なのだが、手さばきは実に繊細。
どんなときでも100%の調理の腕を発揮する。
一度教えた料理、見た料理はすぐに再現でき、さらに自分でどんどんアレンジを加えて、知らないはずの地球の料理を次々に作り出していく。
ギフト持ちなのではないか……?
いや、料理に関係するギフトなんて聞いたことがない。
なんだただの天才か。
案の定、アヒージョもラビオリも絶賛の嵐。
「美味い……!! なんだ!? なんだこの美味さは!? 止まらん……! 食べるのが止まらん……!!」
「どうしてこんな場末の店なんぞを選んだのかと思っていたが……。そうか、アーラン最高のシェフはここにいたのか!!」
「ふふふ、それはどうでしょうな」
アーガイルさんを従えた、ロマンスグレーのおっさんが不敵に笑う。
これが盗賊ギルドのマスターだ。
「まさか……。この極めて高いレベルの料理人が、アーランには何人もいるというのか!?」
「恐ろしい連中だ……!!」
ツーテイカーの幹部たちがおののいている。
いやいやいや、僕が知る限りギルボウを超える料理人はいない。
あの日、ドロテアさんとやってきた下町の料理屋が世界最高の料理人の店だったとはなあ。
ちなみにそんな感じでやり取りをしていた偉い人々は、なんだかんだで飯がめちゃくちゃ美味いので、話も弾んだようだ。
「なるほどな。アーランでは生産する余裕のない作物を作ってほしいということか。我々も、アーランの作物が欲しい。この味を知ってしまってはな……」
舌が肥えてしまうと、食のランクを容易に落とせなくなるんだよな。
アーランとファイブスターズの冷戦を主導していたらしきツーテイカー。
かの都市国家は、アーランから盗み出した美食のレシピにより、自ら毒が回って陥落した。
「おい主人!」
「は、はい!」
「この料理のレシピをくれ。金は出そう」
「は、はい!」
ギルボウがレシピを箇条書きにして用意する。
盗賊ギルドのマスターはこれをニヤニヤしながら見守っていたが、そんな彼もずっとアヒージョを食べ、酒を飲んでの繰り返しだ。
なお、途中でグランドマスターが「美味い!!」と吠えて目を見開いたので、その場にいたお偉いさんが全員気圧されて「うわーっ」とのけぞった。
グランドマスターは何もかもを飲み込む強烈な迫力があるな……。
結局、会談は成功したようだ。
ツーテイカーはアーランの美味しい料理のレシピを持ち帰り、食材を輸入する約束も取り付けた。
「生半可な麻薬なんか目じゃねえ……。とんでもねえものを生み出してくれたな、お前らは」
最後にそんな事を言われたのだが、盗賊ギルドのマスターとアーガイルさんがじーっと僕を見たので、ツーテイカーの幹部も僕を注視した。
「えっ、あいつが? あいつが……。ほー」
「言っとくが、手出ししようと思うなよ。あいつが油使いだ」
「げぇっ」
幹部が絞め殺されたみたいな悲鳴を漏らした。
なんだなんだ!?
油使いがどうしたって!?
アーガイルさんが僕にだけ聞こえるように囁く。
「お前は知らんだろうがな。油使いは裏社会ではアンタッチャブルな化け物の代名詞なんだよ」
「そんなー」
「ツーテイカーは国そのものが盗賊ギルドみたいなものだ。その国が総力を上げてアーランを調べた時、お前という男の脅威を知ったのだろうな。良かったな、有名人だぞ」
「嬉しくない!」
だが、恐れられているということは僕がツーテイカーにさらわれて、新しい料理のネタを絞り出される……みたいなことは起こるまい。
まあいいか。
「おいアーガイル。このギルボウという男は絶対に守れよ。アーランの至宝だ」
「うむ!! 素晴らしき料理人よ! だがこの男を下町から連れ出しては輝きを失うだろう!! ごみ溜めの中でしか輝かぬ華はある! 精進せよ!!」
グランドマスターはいちいち言葉に覇気が満ちてるんだよな……!!
そして去っていくツーテイカーの幹部たち。
なお、飼い主氏は今後は、ツーテイカー側の大使として正式にこの国に残ることになった。
アララちゃんはずっとこっちにいられるな!
冷戦は終わり、世界は少し平和になったのだった。
美食は世界を救うのだ……。
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