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43・また来たぞ、ギルドの大掃除
第130話 春の掃除は気持ちいいぞ
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コボルド二人を先に登らせる。
万一落っこちても、僕がフォローできるからね。
二人ははしごをテコテコと上がっていく。
たまにチラチラ僕を振り返るので、手を振ってやった。
手を振り返す二人。
リップルはちょっとハラハラしながら見守っているようだったが、なに、ああ見えてコゲタもアララもしっかりしているんだ。
ほら、きちんと登りきった。
「子供を先に行かせるのは怖くないかい……?」
「なので先に行ってもらって、落ちたら油で助けるんだ」
「そこまでできるようになってたのかい? 君のギフトは一見して使い道の限られる大したことがない力のようなのに、異常な応用性があるねえ……」
「修練の賜物だね。じゃあ次は僕が行く……」
はしごを登っていくことにする。
「ごしゅじーん!」
「コゲタのごしゅじーん!」
二人が手を振ってくれる。
「今掃除道具を持って行ってあげるからなー! 僕の背中に、何本もの箒がくくりつけてあるのだ」
「すごーい」「すごーい」
おおはしゃぎだ。
落ちないようになー。
登りきった僕は、コゲタとアララに箒を手渡した。
そしてバタバタと三人で掃除を始めるのだ。
リップルが後からやってきた。
「せっせとやっとるねー。屋上はまあ、そこまで大変じゃないけど……1年分の雨やホコリの汚れを落とさないといけないからね」
「よごれおとし!」
「やるー!」
「よーしコボルド諸君、この雑巾でゴシゴシとだな。ナザル、例のあれをやってくれ。油で汚れを浮かせるやつ」
「ほいほい。油!」
屋上の汚れに、油が染み込んでいく。
そうすると、汚れが浮かび上がって、雑巾で吸わせるだけで片付くようになるのだ。
「きれいきれい!」
「よごれおちるー!」
うんうん、汚れがガンガン落ちると楽しいよな。
広さ的には、大きな部屋ひとつ分くらい。
ということは、それなりに掃除のしがいがあるということだ。
「しかし昨年君が油掃除をやったから、今年の汚れは大したことがないなあ……。これではすぐに仕事が終わってしまう」
「あ、そうかあ……」
仕事が終わってしまうと、時間までは別の掃除を手伝う必要がある。
「できるだけ仕事はさぼりたいものだ」
「分かるかい?」
「分かる……。可能な限り少ない仕事量で一日をやり過ごし、楽な生活を目指す……。これが人生の大目標だと思う」
「ナザル!」
「リップル!」
僕らは固い握手を交わした。
その横で、コボルドの二人はせっせと掃除を進めていくのだ。
案外手際がいいぞ!
これはすぐに終わってしまいそうだ……!!
「二人とも、そこら辺でちょっとこっちに来てくれ!」
僕が声をかけると、コゲタもアララも仕事を止めた。
素直なのはいいことだ。
「なあにー」「なになに」
トコトコ寄ってくる。
「冒険者ギルドはこの辺りで一番大きい建物でな。三階でも他の建物よりもずーっと高いところにあるんだ」
「ふんふん」「ふふーん」
分かってるのか分かってないのか。
「なので、ここからだと下町がグワーッと見渡せるぞ!」
アーランの下町は、せいぜい二階建てくらいまでしか建物がない。
これ、理由を最近知ることになって納得したのだ。
遺跡が人々から少しずつ魔力を吸ってその機能を維持しているらしいのだが。
これ、三階から上になると、魔力の吸える量が減少してしまうんだそうだ。
だから、遺跡の機能に頼って反映しているアーランとしては、魔力吸収的に困ってしまうわけだ。
「おおー!」「たかーい!」
二人が景色を楽しみ始めた。
いいぞいいぞ。
落ちないように気をつけてね。
だけど、普段低いところからしか世界を見ていないコボルドにとって、この高さからアーランを見渡すというのは初めての体験だろう。
思った以上に、二人は夢中になっているようだった。
だが、犬は少ししたら飽きるからね。
一時間くらい、あそこは屋台だとか、あっちにギルボウのお店だとか、あっちが自分たちのおうちだとか喋り合っていた二人。
ようやく景色に飽きて、掃除に戻ってきた。
その間、僕とリップルは春の日差しを受けてぼーっとしていたのだった。
いやあ、存分にサボれた。
「ここで掃除に取り組めば、だいたい一時間で終わる……。そうしたらそろそろ大掃除も終わりの時間だぞナザル」
「リップルそこまで計算していたのか……!!」
「フフフフフ……」
恐るべし、安楽椅子冒険者。
お陰で楽ができたよ。
下ではそろそろ、掃除のノルマが終わった連中がダラダラとやってるフリをしながら雑談を始めている頃だった。
なんだかんだで冒険者としてやっていっている連中は、本気になれば掃除だってお手の物である。
ちなみに……こういうのもできないタイプの人は冒険者としてやっていけないので、地元に戻るか、下町や商業地区で下働きなんかをすることになる。
世知辛い世の中だ。
冬を終え、少しずつ色づき始めているアーランを眺めながら、僕はしみじみしてしまった。
こっちの世界には桜が無いから、木々に新しい葉が付き始める事で春を知る感じだな。
無いかなあ、桜……。
「ご主人ー! おそうじ!」
「ああ、はいはい!」
とうとうコゲタに叱られてしまった!
ちょっとの間、本気で掃除をすることにしよう。
油使いの実力を見せてやるぞー。
こうして、晩春の穏やかな日は過ぎていくのだった。
万一落っこちても、僕がフォローできるからね。
二人ははしごをテコテコと上がっていく。
たまにチラチラ僕を振り返るので、手を振ってやった。
手を振り返す二人。
リップルはちょっとハラハラしながら見守っているようだったが、なに、ああ見えてコゲタもアララもしっかりしているんだ。
ほら、きちんと登りきった。
「子供を先に行かせるのは怖くないかい……?」
「なので先に行ってもらって、落ちたら油で助けるんだ」
「そこまでできるようになってたのかい? 君のギフトは一見して使い道の限られる大したことがない力のようなのに、異常な応用性があるねえ……」
「修練の賜物だね。じゃあ次は僕が行く……」
はしごを登っていくことにする。
「ごしゅじーん!」
「コゲタのごしゅじーん!」
二人が手を振ってくれる。
「今掃除道具を持って行ってあげるからなー! 僕の背中に、何本もの箒がくくりつけてあるのだ」
「すごーい」「すごーい」
おおはしゃぎだ。
落ちないようになー。
登りきった僕は、コゲタとアララに箒を手渡した。
そしてバタバタと三人で掃除を始めるのだ。
リップルが後からやってきた。
「せっせとやっとるねー。屋上はまあ、そこまで大変じゃないけど……1年分の雨やホコリの汚れを落とさないといけないからね」
「よごれおとし!」
「やるー!」
「よーしコボルド諸君、この雑巾でゴシゴシとだな。ナザル、例のあれをやってくれ。油で汚れを浮かせるやつ」
「ほいほい。油!」
屋上の汚れに、油が染み込んでいく。
そうすると、汚れが浮かび上がって、雑巾で吸わせるだけで片付くようになるのだ。
「きれいきれい!」
「よごれおちるー!」
うんうん、汚れがガンガン落ちると楽しいよな。
広さ的には、大きな部屋ひとつ分くらい。
ということは、それなりに掃除のしがいがあるということだ。
「しかし昨年君が油掃除をやったから、今年の汚れは大したことがないなあ……。これではすぐに仕事が終わってしまう」
「あ、そうかあ……」
仕事が終わってしまうと、時間までは別の掃除を手伝う必要がある。
「できるだけ仕事はさぼりたいものだ」
「分かるかい?」
「分かる……。可能な限り少ない仕事量で一日をやり過ごし、楽な生活を目指す……。これが人生の大目標だと思う」
「ナザル!」
「リップル!」
僕らは固い握手を交わした。
その横で、コボルドの二人はせっせと掃除を進めていくのだ。
案外手際がいいぞ!
これはすぐに終わってしまいそうだ……!!
「二人とも、そこら辺でちょっとこっちに来てくれ!」
僕が声をかけると、コゲタもアララも仕事を止めた。
素直なのはいいことだ。
「なあにー」「なになに」
トコトコ寄ってくる。
「冒険者ギルドはこの辺りで一番大きい建物でな。三階でも他の建物よりもずーっと高いところにあるんだ」
「ふんふん」「ふふーん」
分かってるのか分かってないのか。
「なので、ここからだと下町がグワーッと見渡せるぞ!」
アーランの下町は、せいぜい二階建てくらいまでしか建物がない。
これ、理由を最近知ることになって納得したのだ。
遺跡が人々から少しずつ魔力を吸ってその機能を維持しているらしいのだが。
これ、三階から上になると、魔力の吸える量が減少してしまうんだそうだ。
だから、遺跡の機能に頼って反映しているアーランとしては、魔力吸収的に困ってしまうわけだ。
「おおー!」「たかーい!」
二人が景色を楽しみ始めた。
いいぞいいぞ。
落ちないように気をつけてね。
だけど、普段低いところからしか世界を見ていないコボルドにとって、この高さからアーランを見渡すというのは初めての体験だろう。
思った以上に、二人は夢中になっているようだった。
だが、犬は少ししたら飽きるからね。
一時間くらい、あそこは屋台だとか、あっちにギルボウのお店だとか、あっちが自分たちのおうちだとか喋り合っていた二人。
ようやく景色に飽きて、掃除に戻ってきた。
その間、僕とリップルは春の日差しを受けてぼーっとしていたのだった。
いやあ、存分にサボれた。
「ここで掃除に取り組めば、だいたい一時間で終わる……。そうしたらそろそろ大掃除も終わりの時間だぞナザル」
「リップルそこまで計算していたのか……!!」
「フフフフフ……」
恐るべし、安楽椅子冒険者。
お陰で楽ができたよ。
下ではそろそろ、掃除のノルマが終わった連中がダラダラとやってるフリをしながら雑談を始めている頃だった。
なんだかんだで冒険者としてやっていっている連中は、本気になれば掃除だってお手の物である。
ちなみに……こういうのもできないタイプの人は冒険者としてやっていけないので、地元に戻るか、下町や商業地区で下働きなんかをすることになる。
世知辛い世の中だ。
冬を終え、少しずつ色づき始めているアーランを眺めながら、僕はしみじみしてしまった。
こっちの世界には桜が無いから、木々に新しい葉が付き始める事で春を知る感じだな。
無いかなあ、桜……。
「ご主人ー! おそうじ!」
「ああ、はいはい!」
とうとうコゲタに叱られてしまった!
ちょっとの間、本気で掃除をすることにしよう。
油使いの実力を見せてやるぞー。
こうして、晩春の穏やかな日は過ぎていくのだった。
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