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48・かもせ!
第138話 いかにして大豆を発酵させるか?
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ひとまず、このヒュージビーンズを大豆と僕の中で呼ぶことにした。
大豆っぽいものがこれしか存在しないっぽいのだから、間違ってはいないだろう。
長めに水を吸わせれば豆腐だって作れるし、おからも出る。
どうやら、フォーゼフには秘伝の醤油みたいなものまであるらしいじゃないか。
夢の食材である。
「ご主人、なにしてるのー?」
ヒュージビーンズを並べて難しい顔をしている僕を、コゲタが気にしている。
だが表情とは裏腹に心躍る僕の気持ちが分かっているようだ。
「これなあにー?」
「うむ、大豆だよ」
「だいず? ふんふん。んー、おいしいによいしない」
「このままだとねえ。色々加工して美味しくなるんだ」
「ふーん」
言葉の意味が分かってるのか分かってないのか、テーブルの上の大豆を眺めながら、周りをトコトコ歩き回る。
「食べてみる?」
「いらなーい! おいしくないによいする!」
「コゲタはグルメだからなあ」
ともかく、しばらく留守にしてたから、コゲタは僕にたくさん甘えたいようだ。
一緒に街歩きでもしながら、今後のことを考えようではないかということになった。
「ご主人~! コゲタ、お店みたい!」
「よし、お店見に行こう」
今日は一日、コゲタのわがままを聞く日だ。
まあ、コゲタはいい子だからあんまりわがままを言わないんだけど。
今回は近くにいたいらしくて、僕のズボンの裾を摘んで、引っ張ってどんどん歩く。
やる気満々だねえ。
まあしばらくは、コゲタ優先の日々を送ろう。
だが、あまり留守にしても気の毒だな。
ここは、コゲタにアイアン級冒険者くらいのランクを得させて冒険に連れて行くのがいいのではないか。
鍛えるか、コゲタ……!
「ご主人~! これこれ!」
「おおーっ、これはコボルド用の木刀! これは投げて拾って遊ぶやつと違うけどいいの?」
「いいの!」
では買ってあげよう。
木刀を手渡すと、コゲタは嬉しそうにピュンピュン振り回したあと、木刀にくっついてる紐を上手に使って背負った。
おおーっ、ちびっこ剣士だ。
「なかなかかっこいいじゃん」
「かっこいい? わふふー」
嬉しそうなコゲタである。
では、ここらで二人でご飯でも……とコボルド入店可の店を探す。
いや、軒先で食事できるところならいいか。
適当なところで、黒パンのサンドイッチを頼んだのだった。
食のレベルが大きく向上したアーラン。
黒パンと言えど、以前とは全く違う美味さになっているのだ!
トマドをビネガーと塩とハーブで味付けして、にんにくの香りがする漬物で和えたやつがパンに挟んである。
燻製肉が刻まれて散りばめられており、なかなか食べごたえがあって美味い。
「たった一年で全く違う食生活になってしまったな……。素晴らしい。お茶は相変わらずまあまあ美味いが」
「おいしー」
コボルドはそもそも、黒パンの味や香り、食感が大好きらしい。
コゲタは犬用のささみ肉がもりもり挟まれたパンを、ニコニコしながら食べている。
僕は一足先にサンドイッチを食べ終わり、ちょっと周囲を観察することにした。
隣のおっさんが、ぬるいエールをグビグビ飲んでいる。
まだまだ、酒を冷やす設備が無いもんな。
いや、この国、酒を冷やす習慣が無いのではないか……?
住み着いて十数年。
初めて気付いた衝撃!
「いやあ、出来立てのエールは美味いぜー。あそこの醸造所は本当にいい酒作るよなあ」
できたての酒かあ。
……酒?
待てよ、酒は発酵させて作るよな。
だったら……大豆を発酵させることにも詳しいんじゃないか?
「あの、すみません。ちょっとお聞きしたいんですが、醸造所について」
「おん? 兄ちゃんもこの酒に興味あるかい? 店に言えば出してくれるぜ! ここのエールはな、ちゃんと濾して作ってるからカスが浮いてなくて飲みやすいんだ。ごくごくいけるぜ」
「カスが浮いてないエールは凄いなあ」
僕は感心した。
安酒の代表であるエールは、完全にろ過されきってないものがほとんどなのだ。
仕事が細かい醸造所はいいところな気がする。
「ぜひ教えて下さい」
「よしよし、いいぜいいぜ。その代わりと言っちゃ何だが……」
「一杯奢りましょう」
「話が分かるぜ兄ちゃん!!」
おっさんは大変気さくに、いい醸造所の場所を教えてくれた。
僕はコゲタのご飯が終わるのを待って出発することにする。
「ご主人、どこいくのー?」
「うん、お酒を作ってるところだよ」
「おさけ! コゲタちょっぴりのめる!」
「あれ? コゲタってコボルドの成人だったっけ?」
コボルドも亜人種。
酒をちょっとは飲めるのだ。
ただし、成熟した個体に限る。
子どものうちはいいことないぞ。
コゲタの年齢は良く分からないが……。
アララちゃんと比べるとちょっとちっちゃいし、街で配達やってるコボルドよりも小柄だしなあ。
まだ子供なのではないか。
「お酒はやめておこうなー」
「えー! のめるよー!」
コゲタが抗議して、僕の足をポコポコ叩いた。
ははは、かわいいかわいい。
そうこうしている間に、醸造所に到着だ。
酒を作っている蔵に当たる場所は大変繊細な温度、湿度管理をしている気がするので、面にある直売所に挨拶することにした。
「あの、すみません」
「はいはい! エール、搾りたてだよ! うちのは念入りに濾してあるからね。ちょっと値は張るけど飲みやすいよ!」
「じゃあ一杯ください。どれどれ……? ほほー! 今まで飲んだエールでは一番雑味がない……」
「でしょう」
得意げな販売の人。
「こんなに腕の良い醸造所なら……できるんじゃないかと思うんですよ」
「何がだい?」
「この豆を発酵させるんだけど……」
「豆を!?」
販売員が目を見開いた。
想像できまい。
だが、これはビッグな商売のチャンスだぞ。
大豆っぽいものがこれしか存在しないっぽいのだから、間違ってはいないだろう。
長めに水を吸わせれば豆腐だって作れるし、おからも出る。
どうやら、フォーゼフには秘伝の醤油みたいなものまであるらしいじゃないか。
夢の食材である。
「ご主人、なにしてるのー?」
ヒュージビーンズを並べて難しい顔をしている僕を、コゲタが気にしている。
だが表情とは裏腹に心躍る僕の気持ちが分かっているようだ。
「これなあにー?」
「うむ、大豆だよ」
「だいず? ふんふん。んー、おいしいによいしない」
「このままだとねえ。色々加工して美味しくなるんだ」
「ふーん」
言葉の意味が分かってるのか分かってないのか、テーブルの上の大豆を眺めながら、周りをトコトコ歩き回る。
「食べてみる?」
「いらなーい! おいしくないによいする!」
「コゲタはグルメだからなあ」
ともかく、しばらく留守にしてたから、コゲタは僕にたくさん甘えたいようだ。
一緒に街歩きでもしながら、今後のことを考えようではないかということになった。
「ご主人~! コゲタ、お店みたい!」
「よし、お店見に行こう」
今日は一日、コゲタのわがままを聞く日だ。
まあ、コゲタはいい子だからあんまりわがままを言わないんだけど。
今回は近くにいたいらしくて、僕のズボンの裾を摘んで、引っ張ってどんどん歩く。
やる気満々だねえ。
まあしばらくは、コゲタ優先の日々を送ろう。
だが、あまり留守にしても気の毒だな。
ここは、コゲタにアイアン級冒険者くらいのランクを得させて冒険に連れて行くのがいいのではないか。
鍛えるか、コゲタ……!
「ご主人~! これこれ!」
「おおーっ、これはコボルド用の木刀! これは投げて拾って遊ぶやつと違うけどいいの?」
「いいの!」
では買ってあげよう。
木刀を手渡すと、コゲタは嬉しそうにピュンピュン振り回したあと、木刀にくっついてる紐を上手に使って背負った。
おおーっ、ちびっこ剣士だ。
「なかなかかっこいいじゃん」
「かっこいい? わふふー」
嬉しそうなコゲタである。
では、ここらで二人でご飯でも……とコボルド入店可の店を探す。
いや、軒先で食事できるところならいいか。
適当なところで、黒パンのサンドイッチを頼んだのだった。
食のレベルが大きく向上したアーラン。
黒パンと言えど、以前とは全く違う美味さになっているのだ!
トマドをビネガーと塩とハーブで味付けして、にんにくの香りがする漬物で和えたやつがパンに挟んである。
燻製肉が刻まれて散りばめられており、なかなか食べごたえがあって美味い。
「たった一年で全く違う食生活になってしまったな……。素晴らしい。お茶は相変わらずまあまあ美味いが」
「おいしー」
コボルドはそもそも、黒パンの味や香り、食感が大好きらしい。
コゲタは犬用のささみ肉がもりもり挟まれたパンを、ニコニコしながら食べている。
僕は一足先にサンドイッチを食べ終わり、ちょっと周囲を観察することにした。
隣のおっさんが、ぬるいエールをグビグビ飲んでいる。
まだまだ、酒を冷やす設備が無いもんな。
いや、この国、酒を冷やす習慣が無いのではないか……?
住み着いて十数年。
初めて気付いた衝撃!
「いやあ、出来立てのエールは美味いぜー。あそこの醸造所は本当にいい酒作るよなあ」
できたての酒かあ。
……酒?
待てよ、酒は発酵させて作るよな。
だったら……大豆を発酵させることにも詳しいんじゃないか?
「あの、すみません。ちょっとお聞きしたいんですが、醸造所について」
「おん? 兄ちゃんもこの酒に興味あるかい? 店に言えば出してくれるぜ! ここのエールはな、ちゃんと濾して作ってるからカスが浮いてなくて飲みやすいんだ。ごくごくいけるぜ」
「カスが浮いてないエールは凄いなあ」
僕は感心した。
安酒の代表であるエールは、完全にろ過されきってないものがほとんどなのだ。
仕事が細かい醸造所はいいところな気がする。
「ぜひ教えて下さい」
「よしよし、いいぜいいぜ。その代わりと言っちゃ何だが……」
「一杯奢りましょう」
「話が分かるぜ兄ちゃん!!」
おっさんは大変気さくに、いい醸造所の場所を教えてくれた。
僕はコゲタのご飯が終わるのを待って出発することにする。
「ご主人、どこいくのー?」
「うん、お酒を作ってるところだよ」
「おさけ! コゲタちょっぴりのめる!」
「あれ? コゲタってコボルドの成人だったっけ?」
コボルドも亜人種。
酒をちょっとは飲めるのだ。
ただし、成熟した個体に限る。
子どものうちはいいことないぞ。
コゲタの年齢は良く分からないが……。
アララちゃんと比べるとちょっとちっちゃいし、街で配達やってるコボルドよりも小柄だしなあ。
まだ子供なのではないか。
「お酒はやめておこうなー」
「えー! のめるよー!」
コゲタが抗議して、僕の足をポコポコ叩いた。
ははは、かわいいかわいい。
そうこうしている間に、醸造所に到着だ。
酒を作っている蔵に当たる場所は大変繊細な温度、湿度管理をしている気がするので、面にある直売所に挨拶することにした。
「あの、すみません」
「はいはい! エール、搾りたてだよ! うちのは念入りに濾してあるからね。ちょっと値は張るけど飲みやすいよ!」
「じゃあ一杯ください。どれどれ……? ほほー! 今まで飲んだエールでは一番雑味がない……」
「でしょう」
得意げな販売の人。
「こんなに腕の良い醸造所なら……できるんじゃないかと思うんですよ」
「何がだい?」
「この豆を発酵させるんだけど……」
「豆を!?」
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想像できまい。
だが、これはビッグな商売のチャンスだぞ。
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