俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
142 / 337
49・大豆プレゼン・オブ・王室

第142話 第二王子、豆腐を食す後編

しおりを挟む
 豆腐はついに完成した。
 シェフたちは流石である。
 自分たちで食べてみた豆腐の具合から、殿下の好む豆腐の硬さはこれくらいであろうところまで推測し、的確に水分を抜いたのだ。

 かなり絹ごし豆腐っぽい感じになった。

「ハイクオリティ……。やっぱりプロには勝てないな」

「我々はナザルからインスピレーションをもらっているんだ」「そうだ。何もないところから新しいものを持ってくる者と、あるものをブラッシュアップする者とでは得意分野が違う」「感謝感激」

「そう言ってもらうとありがたい……」

 なんかこのシェフたちとも友情が芽生えつつある気がするな……。
 こうして、完成した豆腐は皿に盛られ、しずしずと運ばれていった。

 第二王子一家が見守る前で、切り分けられていく。
 おお、ドキドキしてるな。

 そしてタレはここに用意してある。
 そう、久々の登場、魚醤だ!
 これをゴマ油と混ぜてですね……。

「おお、真っ白で美しい食べ物に、タレを上から……? おお、いい香りだ……堪らん……」

 デュオス殿下、天にも登る心地であろう。

 僕が彼らの豆腐を切り分けた。
 すっと通るナイフ。

「おお……なんという柔らかさか」

 寒天ソムリエみたいになってる殿下は、目を輝かせた。
 真っ白く上品な輝きを放つ豆腐。
 ブレンドされたタレがかかった姿は琥珀色にも見える……。

「どれ……? おお、匙でほろりと崩れる。なんと儚い食べ物なのだ……。む、むむむっ」

 口に含み、噛んで飲み込んでからため息を漏らした。

「これほど柔らかく、とろけてしまう食べ物があったのか……」

「これはヘルシーだわ! 最近美味しいものを食べすぎて、お腹周りが……。うん、程よいお肉は富裕さの象徴だけど、行き過ぎはねえ……? だけどこれなら、あまり太らなそう! それに淡白なお味にソースをがとっても合うわね! これ、いいわ!」

「私、これはあっさりし過ぎな気がするんだけど……。お肉と混ぜたら食べられない? あ、でもお肉だけの方が美味しいか……」

 お嬢さん、なかなか鋭い。
 豆腐はプレーンに食べるのもいいが、いろいろなものと合わせることで新たな美味しさを味わう事ができるのだ。

 だが、今は豆腐の解説に終始するとしよう。

「これは先程の水を吸った豆を加工したものです。これはなめらかであり、大変体に良い」

「やはり!」

「そんな気がしていたわ」

 大いに喜ぶ第二王子夫妻。
 二人ともすっかり美食に慣れ、ちょっと違うお味に興味津々なのだろう。

「豆から作られた……いわば豆のケーキと言うか豆の寒天というか……」

「なるほど……! そんなものが!」

「そなたはこれを探していたんですね!」

 ご理解いただけたようだ。
 僕がどうして最近あまり来れなかったかをご理解いただけただろうか。
 いや、ちょっと忘れてただけなんだけど。

「まず豆腐はこれと肉を混ぜたりなどして、新しい食べ方が可能で」

「すてき!」

 お嬢さんが歓声をあげた。
 若者はガッツリしたものが好きよね。

「さらに、この元となる豆を使って調味料を作ろうと考えているのです。豆を発酵させることで、未体験の味が……」

 ざわつく第二王子夫妻。
 豆腐から醤油、味噌なんて変化は想像もできないだろうからね。

「ですが、ご賞味いただいた通り、豆腐には大いなる可能性があります。しばらく豆腐レシピを色々考えて持ってくるので、これを食べて新しい報告を待っていただければ」

「分かった。しっかりと仕事をしていたのだなナザル。私は嬉しい」

「はははは、僕は勤勉ですから」

 アルカイックスマイルを浮かべる僕なのだった。
 よし!
 まだまだ資金供与が続く。
 美食探索に邁進できるぞ!

「ねえちょっとナザル!!」

「へい」

「お肉と合わせるお豆腐? とか言うの、用意してよね」

「お任せください……」

「すっごく楽しみにしてるからね!」

 お嬢さんからも期待をかけられてしまった。
 資金などはデュオス殿下からいただくわけだが、お嬢さんからの覚えがめでたくなっていれば、さらなる口利きなどもしてもらえるかも知れない。

 あるいは、お嬢さんと仲の良い第一王子の息子……一見バカ王子なウノへの伝手が得られる可能性もある……。
 いいぞいいぞ。

「ナザルが怪しい笑みを浮かべている」「常に怪しいんだよね」「非情に怪しいのに裏表が無いというのが凄い」「美味しいもののことしか考えていない」

 ははは、僕のことをよく分かってくくれたようで実に嬉しい。
 こうして僕はパトロンに納得してもらい、資金供与を続けてもらうことになったのだった。

「あっ、ご主人~!」

 外でシャザクに遊んでもらっていたコゲタがこっちに気付いた。
 駆け寄ってくる。

「ご主人にこにこ! いいことあったの?」

「もちろん。みんな幸せになった」

「よかったー!」

「それは良かった! 殿下もしばらく大人しくされることでしょうね。いや、以前の何に対しても無気力だった殿下と比べると、実に精力的でいいことなのだが」

「美食は人に生きがいを与えるからね!」

「うむ。それに……君を通じて、再会できた人もいたことだし」

 そう言えば……。
 人生、万事塞翁が馬というかなんというか。
 なにかする度に何かに繋がっている気がするのだった。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...