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50・油使い、本領を発揮する
第144話 油揚げのままで美味いのだが
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揚げたての油揚げは、パリッとしていて、しかしタレが染みてじゅわーっと旨味が出てくるのだ。
淡白が豆腐がここまで美味しくなるとは。
油パワー大したものだ!
「ナザル、君の油の味が変わってないかい? オブリーオイルとも、ゴマ油とも違う気がするんだ。なんというか……豆腐や油揚げにとてもマッチした味だ」
「なんだって!? 何の油だろうか……」
僕は僕自身の能力をよく分かっていないところがある。
何か、油になる食物を口にしたから、それが油として出せるようになったということだろうか。
それにしても、リップルがはっきりと違う味だと分かる油……。
僕の別種の油は、該当の食材をそれなりの量で食べていなければ完全再現できない。
これは……。
もしかして、大豆から油が採れる……?
そうだったのか!?
「そう言えば、フォーゼフでも油を使っていた……。獣脂ではない、サラサラの油で、あそこではオブリーもゴマも育ててないはずだから、つまり……大豆油を使ってたのか!」
だが、フォーゼフはまあまあ閉鎖的で、豆腐のレシピを報酬で手に入れられただけでラッキーだったからな。
醤油の話をしただけで睨まれたし。
しかしこの大豆油……サラサラとしてキラキラ輝き、どこかで見たことが……。
僕の髪の色に似ている……。
「まさか、サラダ油……!? こ、こんなところにいたのか、サラダ油!! それじゃあ、マーガリンが作れちゃうじゃないか!!」
おいおいおい、なんということだ!
大豆を手に入れた瞬間に、開発できる料理や食材の幅が爆発的に広がったぞ!
僕が意識する大豆は、豆腐と味噌と醤油くらいだったのに、想像を絶するほどの広範囲に大豆は使われていたのだ……。
ほえー、勉強になるなあ……。
「ナザルが呆けてしまった」
リップルにぺちぺちとほっぺたを叩かれ、ハッとする。
「あまりに膨大な今後のタスクが脳内を駆け巡り、ちょっと昇天してた……」
「せっかく君はここじゃない世界から第二の生を受けてやって来たんだから、死んでしまったらもったいないじゃないか」
「さらっと僕が転生者だと分かってるカミングアウト来たな……。だが、まあいい。大豆の前では些事だ」
「なあナザル、私はこの油揚げも嫌いじゃないが、豆腐を分厚いまま揚げたらなかなか美味しくなるんじゃないかと睨んでいるんだ。どうだい?」
「厚いまま……厚揚げだと……!? 無からその発想を!?」
やはりこのハーフエルフ、天才かもしれない。
厚揚げにしょっぱいソースを掛けて、お茶と一緒にやりたいらしい。
良かろう、その願いを叶える!
僕はスッとギルドを飛び出すと「あーっ、ナザルさん! また最近仕事してないんだから何か仕事をー!」エリィが何か言っているな。だが、僕はこれから厚揚げを作らねばならないのだ。
きちんとした調理設備がある場所へ……。
そう!
あそこしかない!
「ギルボウ!! 力を貸してくれ!!」
「うわーっ!? ナザル!? お前、今度は面倒事を持ってきてないだろうな……?」
ちょうど昼の営業が終わり、のんびりまかないと酒を楽しんでいたらしいギルボウ。
座ったまま飛び上がったんだから、そうとうびっくりしたのだろう。
「悪い悪い。今回は大丈夫だ。リップルに厚揚げをご馳走したくてな」
「リップル……? リップルと言うと、あのハーフエルフの姉ちゃんか。お前が一番仲の良い女だよな。なに? そういう関係じゃない? お前はいい年なんだからそろそろ身を固めてだな……。えっ俺!? 俺はいいの。俺は料理が恋人で女房なんだから」
ぶつくさ言いながら、さっさと調理の準備をしてくれるギルボウ。
この男、料理が生きがいであり、趣味である。
だからこそこうやって料理関係では極めて協力的なのだ。
「期待してるな? ご期待通りだ。僕は新しい料理のレシピを持ってここにやって来た。レシピは頭の中だけど、やり方を見せれば……」
「おう、一発だ。厚揚げとやらだな? お前が絡んでるってことは、トーフか。ありゃあ酒のあてにいいな。濾過したワインに合うぜ。魚醤を掛けて、生臭さが相殺されるくらいの淡白さが堪らん」
「ギルボウも豆腐を気に入っていたか……」
「癖がねえ食い物はな、保守的なこの国の人間でも受け入れやすいんだ。魚醤が先に来てたのがデカかったな。あれと合わせた豆腐は屋台のあちこちで出てるぜ」
なんともまあ、豆腐というちょっと面倒くさい料理をみんなよく作るものだ。
それくらい、アーランの人間は豆腐を気に入ってくれたんだろう。
では、僕は豆腐と……そして大豆の新しい可能性を切り開くだけだ。
ここに持ってくるまでの間に、豆腐から随分水分が抜けてしまった。
……厚めで水分がちょっと抜けた豆腐……これか!?
僕はサラダ油を作り出し、そこに豆腐を入れた。
全体がきつね色になるくらいに揚げていく……。
簡単だ。
実に簡単なものだ。
だが、簡単だからこそ奥深い……!
「真っ白だった豆腐が、なんとも美味そうな色になっていくぜ……!! どんな食感になるんだ!? 早く食いてえ……!!」
「よし、一緒に食べよう」
皿に取った厚揚げを二つに切ると、きつね色の外側と、真っ白な内側のコントラストが美しい。
これを、ハーブを入れたゴマ油のソースにつけて食べるのだが……。
「ああ、美味いな。しみじみ美味い……」
「淡白だったトーフに、どっしりと芯が通った感じだな……! こりゃあ、メインディシュ張れるぜ! お前が用意したトーフは水分が抜けていた。つまり、上から重しを乗せるなりして水分を抜き、それを揚げるか。簡単なもんだ。だが、調理の複雑さと味は関係がねえ。トーフはシンプルな調理で、その美味さをどんどん変化させていける食材だってことだな!」
なんと頼れる男なのだ、ギルボウ!
完全に厚揚げをマスターしたな。
後は油揚げを教えて、僕はこのメニューがまたアーラン中に広まる事を期待するのだった。
おっと、リップルのところに持っていってやらないとな……。
淡白が豆腐がここまで美味しくなるとは。
油パワー大したものだ!
「ナザル、君の油の味が変わってないかい? オブリーオイルとも、ゴマ油とも違う気がするんだ。なんというか……豆腐や油揚げにとてもマッチした味だ」
「なんだって!? 何の油だろうか……」
僕は僕自身の能力をよく分かっていないところがある。
何か、油になる食物を口にしたから、それが油として出せるようになったということだろうか。
それにしても、リップルがはっきりと違う味だと分かる油……。
僕の別種の油は、該当の食材をそれなりの量で食べていなければ完全再現できない。
これは……。
もしかして、大豆から油が採れる……?
そうだったのか!?
「そう言えば、フォーゼフでも油を使っていた……。獣脂ではない、サラサラの油で、あそこではオブリーもゴマも育ててないはずだから、つまり……大豆油を使ってたのか!」
だが、フォーゼフはまあまあ閉鎖的で、豆腐のレシピを報酬で手に入れられただけでラッキーだったからな。
醤油の話をしただけで睨まれたし。
しかしこの大豆油……サラサラとしてキラキラ輝き、どこかで見たことが……。
僕の髪の色に似ている……。
「まさか、サラダ油……!? こ、こんなところにいたのか、サラダ油!! それじゃあ、マーガリンが作れちゃうじゃないか!!」
おいおいおい、なんということだ!
大豆を手に入れた瞬間に、開発できる料理や食材の幅が爆発的に広がったぞ!
僕が意識する大豆は、豆腐と味噌と醤油くらいだったのに、想像を絶するほどの広範囲に大豆は使われていたのだ……。
ほえー、勉強になるなあ……。
「ナザルが呆けてしまった」
リップルにぺちぺちとほっぺたを叩かれ、ハッとする。
「あまりに膨大な今後のタスクが脳内を駆け巡り、ちょっと昇天してた……」
「せっかく君はここじゃない世界から第二の生を受けてやって来たんだから、死んでしまったらもったいないじゃないか」
「さらっと僕が転生者だと分かってるカミングアウト来たな……。だが、まあいい。大豆の前では些事だ」
「なあナザル、私はこの油揚げも嫌いじゃないが、豆腐を分厚いまま揚げたらなかなか美味しくなるんじゃないかと睨んでいるんだ。どうだい?」
「厚いまま……厚揚げだと……!? 無からその発想を!?」
やはりこのハーフエルフ、天才かもしれない。
厚揚げにしょっぱいソースを掛けて、お茶と一緒にやりたいらしい。
良かろう、その願いを叶える!
僕はスッとギルドを飛び出すと「あーっ、ナザルさん! また最近仕事してないんだから何か仕事をー!」エリィが何か言っているな。だが、僕はこれから厚揚げを作らねばならないのだ。
きちんとした調理設備がある場所へ……。
そう!
あそこしかない!
「ギルボウ!! 力を貸してくれ!!」
「うわーっ!? ナザル!? お前、今度は面倒事を持ってきてないだろうな……?」
ちょうど昼の営業が終わり、のんびりまかないと酒を楽しんでいたらしいギルボウ。
座ったまま飛び上がったんだから、そうとうびっくりしたのだろう。
「悪い悪い。今回は大丈夫だ。リップルに厚揚げをご馳走したくてな」
「リップル……? リップルと言うと、あのハーフエルフの姉ちゃんか。お前が一番仲の良い女だよな。なに? そういう関係じゃない? お前はいい年なんだからそろそろ身を固めてだな……。えっ俺!? 俺はいいの。俺は料理が恋人で女房なんだから」
ぶつくさ言いながら、さっさと調理の準備をしてくれるギルボウ。
この男、料理が生きがいであり、趣味である。
だからこそこうやって料理関係では極めて協力的なのだ。
「期待してるな? ご期待通りだ。僕は新しい料理のレシピを持ってここにやって来た。レシピは頭の中だけど、やり方を見せれば……」
「おう、一発だ。厚揚げとやらだな? お前が絡んでるってことは、トーフか。ありゃあ酒のあてにいいな。濾過したワインに合うぜ。魚醤を掛けて、生臭さが相殺されるくらいの淡白さが堪らん」
「ギルボウも豆腐を気に入っていたか……」
「癖がねえ食い物はな、保守的なこの国の人間でも受け入れやすいんだ。魚醤が先に来てたのがデカかったな。あれと合わせた豆腐は屋台のあちこちで出てるぜ」
なんともまあ、豆腐というちょっと面倒くさい料理をみんなよく作るものだ。
それくらい、アーランの人間は豆腐を気に入ってくれたんだろう。
では、僕は豆腐と……そして大豆の新しい可能性を切り開くだけだ。
ここに持ってくるまでの間に、豆腐から随分水分が抜けてしまった。
……厚めで水分がちょっと抜けた豆腐……これか!?
僕はサラダ油を作り出し、そこに豆腐を入れた。
全体がきつね色になるくらいに揚げていく……。
簡単だ。
実に簡単なものだ。
だが、簡単だからこそ奥深い……!
「真っ白だった豆腐が、なんとも美味そうな色になっていくぜ……!! どんな食感になるんだ!? 早く食いてえ……!!」
「よし、一緒に食べよう」
皿に取った厚揚げを二つに切ると、きつね色の外側と、真っ白な内側のコントラストが美しい。
これを、ハーブを入れたゴマ油のソースにつけて食べるのだが……。
「ああ、美味いな。しみじみ美味い……」
「淡白だったトーフに、どっしりと芯が通った感じだな……! こりゃあ、メインディシュ張れるぜ! お前が用意したトーフは水分が抜けていた。つまり、上から重しを乗せるなりして水分を抜き、それを揚げるか。簡単なもんだ。だが、調理の複雑さと味は関係がねえ。トーフはシンプルな調理で、その美味さをどんどん変化させていける食材だってことだな!」
なんと頼れる男なのだ、ギルボウ!
完全に厚揚げをマスターしたな。
後は油揚げを教えて、僕はこのメニューがまたアーラン中に広まる事を期待するのだった。
おっと、リップルのところに持っていってやらないとな……。
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