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52・コゲタ、特訓する
第151話 超豪華講師アーガイル
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「俺か? いいだろう」
二つ返事でコゲタの先生を引き受けてくれたアーガイルさん。
「お前にはギルドが色々と世話になっているからな。結果的にお前が広めた美食が、冷戦を終わらせている。盗賊ギルドも余計な出費が減って助かったところだ。金で片付けてもいいが、もっと無形の何かで礼をしておくのが仁義というものだろう」
「やあありがたい。じゃあコゲタの才能を見極めるために教えてやって下さい」
「お前じゃ特殊すぎて教えられないもんな……」
「その通りで……」
ということで。
そんなに厳しくない、アーガイルさんからの訓練が始まった。
「忍び足から行くぞ。お前たちコボルドは体型的にも盗賊に向いている。体が小さいこと、そして手足に肉球があって滑りにくいこと。毛が何かに引っかかりやすかったり、それが残ると証拠が残るが……」
「アーガイルさん、泥棒っぽい技は教えなくてもいいので……」
「おお、そうだったそうだった」
「がんばります!」
コゲタはムフーッと鼻息も雄々しく、やる気満々。
忍び足に、罠のチェック、隠れ身、登攀……。
アーガイルさんが一通りのアクションを教えてくれた。
登攀だけはパワー不足でできなかったね。
「コゲタは腕力が足りないな。同じコボルドとしてもちょっと非力な方だろう。まだ子供だからだろうが」
「やはり。小さいとそこらへんハンデですか」
「そうなるな。成熟するまでは、その辺りはお前がフォローしてやってくれ。あとは筋力トレーニングのメニューを出しておく」
「ありがたい」
コゲタは一通りの訓練が終わって、ぺたんと座って舌を出してはあはあしている。
疲れたねー。
水筒を渡したら、ごくごく飲み始めた。
うんうん頑張った。
「盗賊としてやっていくならビシバシ訓練するし、ついてこれないならそこまでだ。だが……とりあえずアイアン級冒険者になれさえすればいいんだろう? ならば今教えた内容をきちんと身につけるだけで十分だ。罠が分かれば回避できる。必ずしも罠を解除する必要はない。それは危険な行為だからな。自ら危険なことをする奴はただの馬鹿だ」
おお、リアリスト!
ゴールド級冒険者であり、自らの実力に裏打ちされた盗賊としての自負があるからこそ、余計な危険は避けるというわけだ。
「よし、では疲れた体をほぐすストレッチをやって今日の訓練は終わりにする。プログラムを渡しておくから、自分でちゃんと練習しておくようにな」
「はい!」
コゲタがいいお返事をした。
うむ、と頷くアーガイルさん。
「どうです? コゲタは素質ありますかね?」
「普通だな。才能が無いわけでも、飛び抜けてあるわけでもない。ギルドが育成しているエージェントには最初からこれ以上のセンスがあった者など幾らでもいる。だが、コゲタにしかないオリジナルがあるとすれば、お前と一番親しいことだろうな」
なるほどー。
コゲタは、彼がいろいろな人達と紡いできた関係性こそが強み。
それはその通りだ。
「じゃあな。アイアン級冒険者になれるよう祈っているよ」
こうして、お弁当も食べずにアーガイルさんは去って行ったのだった。
盗賊ギルドの幹部だからな。
多忙なところ、半日を割いて訓練を付けてくれたのだ。
どこかの暇な二人とは違う……。
「うぉーい」
「遊びに来たわよー」
「噂をしたら来たな。狙いは僕が作る弁当だろう」
「バレたか」
「ナザルのお弁当美味しいのよねー!」
「たくさんきた!」
コゲタは人が増えたので嬉しそうだ。
尻尾をぶんぶん振っている。
うんうん、この人懐っこさで盗賊は無理だよなあ。
身のこなしを覚えるようにして、護身はバンキンの近接戦闘術。
あとはキャロティの教えで、ちょっと魔法が使えたら十分。
一つ一つは大したことなくても、色々できれば活躍の場も増えるのだ。
僕なりの英才教育は、コゲタができること全部をそれなりに伸ばす、だ。
こうして、僕が弁当を作っている間に、三人はアーガイルさんが残していったメモのストレッチをやっていたのだった。
すっかり仲良しになってしまったな。
「俺の弟子だからなコゲタは」
「あら、あたしの弟子よコゲタは!」
師匠が三人増えたんだなあ。
その後、二人はコゲタに、どっちが好き? みたいな話をしており。
コゲタは「ご主人がすき!」と答えて二人ともがっくりしたりしていた。
ところで……。
タンパク質を愛するバンキンと、野菜大好きキャロティ、香りや刺激が強いものがダメなコゲタ。
この三名が満足できるメニューは……?
やはり豆腐になるでしょう……。
後からひき肉の餡を足すか、寒天入りの爽やかな餡を掛けるか選べる麻婆豆腐的なメニューを出すことにした。
主食はサラダ油で作った、マーガリンもどき……!!
これ、気合によって出すことができるようになったのだ。
制作はギルボウと協力しながら、ただいま進行中。
これが完成したらパン革命が起きるから、楽しみにしていて欲しい……。
「おいナザル、また新しいものを作りやがったな? これ、パンに塗られてるこれは……? うおっ! 肉トーフを乗せても染み込まねえ!!」
「このままでも美味しいわね! パンにコクがでるわ!」
「コゲタこれもすき!」
うんうん、好評だ。
今、幾つものラインで鋭意制作中なのだ。
まだまだ、美食の道は終わらんよ!
だが、その前にコゲタのアイアン級試験だなあ……。
二つ返事でコゲタの先生を引き受けてくれたアーガイルさん。
「お前にはギルドが色々と世話になっているからな。結果的にお前が広めた美食が、冷戦を終わらせている。盗賊ギルドも余計な出費が減って助かったところだ。金で片付けてもいいが、もっと無形の何かで礼をしておくのが仁義というものだろう」
「やあありがたい。じゃあコゲタの才能を見極めるために教えてやって下さい」
「お前じゃ特殊すぎて教えられないもんな……」
「その通りで……」
ということで。
そんなに厳しくない、アーガイルさんからの訓練が始まった。
「忍び足から行くぞ。お前たちコボルドは体型的にも盗賊に向いている。体が小さいこと、そして手足に肉球があって滑りにくいこと。毛が何かに引っかかりやすかったり、それが残ると証拠が残るが……」
「アーガイルさん、泥棒っぽい技は教えなくてもいいので……」
「おお、そうだったそうだった」
「がんばります!」
コゲタはムフーッと鼻息も雄々しく、やる気満々。
忍び足に、罠のチェック、隠れ身、登攀……。
アーガイルさんが一通りのアクションを教えてくれた。
登攀だけはパワー不足でできなかったね。
「コゲタは腕力が足りないな。同じコボルドとしてもちょっと非力な方だろう。まだ子供だからだろうが」
「やはり。小さいとそこらへんハンデですか」
「そうなるな。成熟するまでは、その辺りはお前がフォローしてやってくれ。あとは筋力トレーニングのメニューを出しておく」
「ありがたい」
コゲタは一通りの訓練が終わって、ぺたんと座って舌を出してはあはあしている。
疲れたねー。
水筒を渡したら、ごくごく飲み始めた。
うんうん頑張った。
「盗賊としてやっていくならビシバシ訓練するし、ついてこれないならそこまでだ。だが……とりあえずアイアン級冒険者になれさえすればいいんだろう? ならば今教えた内容をきちんと身につけるだけで十分だ。罠が分かれば回避できる。必ずしも罠を解除する必要はない。それは危険な行為だからな。自ら危険なことをする奴はただの馬鹿だ」
おお、リアリスト!
ゴールド級冒険者であり、自らの実力に裏打ちされた盗賊としての自負があるからこそ、余計な危険は避けるというわけだ。
「よし、では疲れた体をほぐすストレッチをやって今日の訓練は終わりにする。プログラムを渡しておくから、自分でちゃんと練習しておくようにな」
「はい!」
コゲタがいいお返事をした。
うむ、と頷くアーガイルさん。
「どうです? コゲタは素質ありますかね?」
「普通だな。才能が無いわけでも、飛び抜けてあるわけでもない。ギルドが育成しているエージェントには最初からこれ以上のセンスがあった者など幾らでもいる。だが、コゲタにしかないオリジナルがあるとすれば、お前と一番親しいことだろうな」
なるほどー。
コゲタは、彼がいろいろな人達と紡いできた関係性こそが強み。
それはその通りだ。
「じゃあな。アイアン級冒険者になれるよう祈っているよ」
こうして、お弁当も食べずにアーガイルさんは去って行ったのだった。
盗賊ギルドの幹部だからな。
多忙なところ、半日を割いて訓練を付けてくれたのだ。
どこかの暇な二人とは違う……。
「うぉーい」
「遊びに来たわよー」
「噂をしたら来たな。狙いは僕が作る弁当だろう」
「バレたか」
「ナザルのお弁当美味しいのよねー!」
「たくさんきた!」
コゲタは人が増えたので嬉しそうだ。
尻尾をぶんぶん振っている。
うんうん、この人懐っこさで盗賊は無理だよなあ。
身のこなしを覚えるようにして、護身はバンキンの近接戦闘術。
あとはキャロティの教えで、ちょっと魔法が使えたら十分。
一つ一つは大したことなくても、色々できれば活躍の場も増えるのだ。
僕なりの英才教育は、コゲタができること全部をそれなりに伸ばす、だ。
こうして、僕が弁当を作っている間に、三人はアーガイルさんが残していったメモのストレッチをやっていたのだった。
すっかり仲良しになってしまったな。
「俺の弟子だからなコゲタは」
「あら、あたしの弟子よコゲタは!」
師匠が三人増えたんだなあ。
その後、二人はコゲタに、どっちが好き? みたいな話をしており。
コゲタは「ご主人がすき!」と答えて二人ともがっくりしたりしていた。
ところで……。
タンパク質を愛するバンキンと、野菜大好きキャロティ、香りや刺激が強いものがダメなコゲタ。
この三名が満足できるメニューは……?
やはり豆腐になるでしょう……。
後からひき肉の餡を足すか、寒天入りの爽やかな餡を掛けるか選べる麻婆豆腐的なメニューを出すことにした。
主食はサラダ油で作った、マーガリンもどき……!!
これ、気合によって出すことができるようになったのだ。
制作はギルボウと協力しながら、ただいま進行中。
これが完成したらパン革命が起きるから、楽しみにしていて欲しい……。
「おいナザル、また新しいものを作りやがったな? これ、パンに塗られてるこれは……? うおっ! 肉トーフを乗せても染み込まねえ!!」
「このままでも美味しいわね! パンにコクがでるわ!」
「コゲタこれもすき!」
うんうん、好評だ。
今、幾つものラインで鋭意制作中なのだ。
まだまだ、美食の道は終わらんよ!
だが、その前にコゲタのアイアン級試験だなあ……。
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