159 / 337
55・今のところの成果を献上する
第159話 気を取り直して献上品ピックアップ
しおりを挟む
「で、どうだった?」
「ううっ、飲みすぎて頭痛が……二日酔いだ」
「おさけくちゃーい」
コゲタがシャザクからちょっと距離を取っている。
うんうん、僕はコゲタに嫌われぬためにお酒とはほどよい距離で付き合うことを決めているのだ。
シャザクもちょっとショックを受けた顔をしている。
これに懲りたら飲み過ぎには気をつけような。
「それで、ピックアップする品だけど」
「あ、ああそうだな。私が食べてみたところ、油揚げと厚揚げはかなりいいな。ナットーとやらは」
その名を口にした瞬間、コゲタが顔をぎゅっとして鼻をつまむ仕草をした。
「……やめておいた方が良さそうだ」
うんうん、臭いに癖があるからね。
殿下が美食に飽いて、珍味を求めるようになったら紹介すればいい。
「よし、では油揚げと厚揚げで行こう。あまり新しいものを出し続けても殿下が混乱するだろう。ナザル、今日一日で準備をして、明日には殿下に献上するぞ」
がんばろー、と僕とシャザクで腕を天に突き上げたのだった。
コゲタは僕らを交互に見回した後、ちょっと遅れてグーを空に突き上げた。
食材の確保、そして下準備。
豆腐はあらかじめ作っておいて、水分を夜のうちにしっかり抜いておく。
油揚げ用と厚揚げ用でそれぞれ別にしておいて……。
「ナザル。魚醤の味は悪くないんだが、調味料の個性が強くて油揚げ本来の味が分からなかったな」
「なるほど。じゃあゴマ油にピーカラでラー油みたいなのを作っておこう。あとは口直し用にキーウリを塩で……」
「そのキーウリを昨日は食べなかったな。食べに行こう」
そう言う事になった。
水分たっぷりのキーウリなら二日酔いにもよかろう。
コゲタも連れて、三人で屋台の冷やしキーウリを食べる。
うむ、美味い。
「あっ、素晴らしいみずみずしさ……」
「だろ? 人気なんで昼過ぎには売り切れる」
「なんということだ」
「おいしー」
コゲタはなんでも美味しく食べられて偉いなあ。
「これはいいな。是非殿下に献上しよう」
「よしきた」
僕は屋台の親父に話を通した。
いきなり、屋台の冷やしキーウリが王室に献上されるということで、親父は目を白黒させていた。
一緒にいるシャザクが男爵ですよーと紋章を見せたので、ハハーっとなって状況を理解してしまう親父なのだ。
運命というやつはいきなりやって来るのだよ。
こうして食材を揃え、準備もし、手紙でシェフたちに話を通し、市販の豆腐も送ってテストで調理してもらい。
いよいよ献上の日となったのだった。
殿下も様々な美食に慣れてきているだろう。
だから、ちょっとずつ演出に凝ったり、あるいは前に献上した品のマイナーチェンジなどで新しいものばかりではないことを分かって頂く必要がある。
僕もなかなか大変なのだ!
その日のシャザクは流石に家に帰った。
そして翌朝やって来る。
「迎えに来たぞ!」
「よし、行こう!」
「コゲタもいく!」
ということで三人で王宮へ向かった。
門をくぐって右手が第二王子の邸宅。
門番たちは完全に僕とコゲタを覚えていて、「また美食が来るぞ」とか話し合ってる。
どうやら第二王子のデュオス殿下が気に入ったものは、兵士たちも週末には配給で食べられるらしい。
僕に対してちょっと好意的になってきているのは、それが理由であろう。
「美味いもの期待してるぜ……」
「任せろ」
門番とそんなやり取りをして、僕はデュオス殿下の前に向かった。
「ふむ、油揚げとな……!? 豆腐を揚げる!? ほうほう……。それをソースで食べると、ソースが染みて美味いと……。ほほー!」
期待に目を輝かせる殿下。
奥方もニコニコしている。
豆腐を使ったヘルシーグルメなら、存分に食べられるからだ。
なお、このご夫妻は日々のグルメで得てしまった圧倒的カロリーを消費すべく、武芸にダンスに乗馬に精を出しておられる。
殿下、さらに精悍になったなあ。
全ては健康的にグルメを楽しむため。
僕は厨房に向かい、シェフたちに本日の食材を渡す。
「油揚げと厚揚げ! そしてソース! これは今朝採りたてのキーウリだ! 本日の殿下の満足はみんなにかかっている! 頼むぞ、プロの料理人たち!!」
うおーっと気合の声を上げるシェフたちなのだった。
昨日のうちに、全員が油揚げを食べているので気合十分。
デュオス殿下は四人のシェフを抱えているのだが、普段はシフト制で二人が常に調理場にいる。
だが、今日みたいな献上の日は四人が勢揃いするのである。
「ナザルが来てから、殿下が本当に明るくなってな」「毎日が楽しそうだもんな」「今回の油揚げと厚揚げも、殿下を笑顔に変えられるだろうな!」「やってやろう!」
わいわいと料理が始まる。
この人たちはプロなので、素人である僕がホイホイ作った油揚げや厚揚げよりも全然良いものができるのだ!
僕は椅子に座って彼らの料理を眺めている。
時々味見をして、意見を言うだけの仕事だ。
あー、いいですねえー。
パリッとしてて中はしっとり。
最高の厚揚げ……。
油揚げは差別化するためにしっとりで行くか……。
これらとワインを合わせて召し上がってもらう。
食後はキーウリをさっぱりとビネガーで……。
いやあ、人に出す料理をみんなで工夫しながら作ってるこの瞬間は、妙に楽しいんだよな。
「ううっ、飲みすぎて頭痛が……二日酔いだ」
「おさけくちゃーい」
コゲタがシャザクからちょっと距離を取っている。
うんうん、僕はコゲタに嫌われぬためにお酒とはほどよい距離で付き合うことを決めているのだ。
シャザクもちょっとショックを受けた顔をしている。
これに懲りたら飲み過ぎには気をつけような。
「それで、ピックアップする品だけど」
「あ、ああそうだな。私が食べてみたところ、油揚げと厚揚げはかなりいいな。ナットーとやらは」
その名を口にした瞬間、コゲタが顔をぎゅっとして鼻をつまむ仕草をした。
「……やめておいた方が良さそうだ」
うんうん、臭いに癖があるからね。
殿下が美食に飽いて、珍味を求めるようになったら紹介すればいい。
「よし、では油揚げと厚揚げで行こう。あまり新しいものを出し続けても殿下が混乱するだろう。ナザル、今日一日で準備をして、明日には殿下に献上するぞ」
がんばろー、と僕とシャザクで腕を天に突き上げたのだった。
コゲタは僕らを交互に見回した後、ちょっと遅れてグーを空に突き上げた。
食材の確保、そして下準備。
豆腐はあらかじめ作っておいて、水分を夜のうちにしっかり抜いておく。
油揚げ用と厚揚げ用でそれぞれ別にしておいて……。
「ナザル。魚醤の味は悪くないんだが、調味料の個性が強くて油揚げ本来の味が分からなかったな」
「なるほど。じゃあゴマ油にピーカラでラー油みたいなのを作っておこう。あとは口直し用にキーウリを塩で……」
「そのキーウリを昨日は食べなかったな。食べに行こう」
そう言う事になった。
水分たっぷりのキーウリなら二日酔いにもよかろう。
コゲタも連れて、三人で屋台の冷やしキーウリを食べる。
うむ、美味い。
「あっ、素晴らしいみずみずしさ……」
「だろ? 人気なんで昼過ぎには売り切れる」
「なんということだ」
「おいしー」
コゲタはなんでも美味しく食べられて偉いなあ。
「これはいいな。是非殿下に献上しよう」
「よしきた」
僕は屋台の親父に話を通した。
いきなり、屋台の冷やしキーウリが王室に献上されるということで、親父は目を白黒させていた。
一緒にいるシャザクが男爵ですよーと紋章を見せたので、ハハーっとなって状況を理解してしまう親父なのだ。
運命というやつはいきなりやって来るのだよ。
こうして食材を揃え、準備もし、手紙でシェフたちに話を通し、市販の豆腐も送ってテストで調理してもらい。
いよいよ献上の日となったのだった。
殿下も様々な美食に慣れてきているだろう。
だから、ちょっとずつ演出に凝ったり、あるいは前に献上した品のマイナーチェンジなどで新しいものばかりではないことを分かって頂く必要がある。
僕もなかなか大変なのだ!
その日のシャザクは流石に家に帰った。
そして翌朝やって来る。
「迎えに来たぞ!」
「よし、行こう!」
「コゲタもいく!」
ということで三人で王宮へ向かった。
門をくぐって右手が第二王子の邸宅。
門番たちは完全に僕とコゲタを覚えていて、「また美食が来るぞ」とか話し合ってる。
どうやら第二王子のデュオス殿下が気に入ったものは、兵士たちも週末には配給で食べられるらしい。
僕に対してちょっと好意的になってきているのは、それが理由であろう。
「美味いもの期待してるぜ……」
「任せろ」
門番とそんなやり取りをして、僕はデュオス殿下の前に向かった。
「ふむ、油揚げとな……!? 豆腐を揚げる!? ほうほう……。それをソースで食べると、ソースが染みて美味いと……。ほほー!」
期待に目を輝かせる殿下。
奥方もニコニコしている。
豆腐を使ったヘルシーグルメなら、存分に食べられるからだ。
なお、このご夫妻は日々のグルメで得てしまった圧倒的カロリーを消費すべく、武芸にダンスに乗馬に精を出しておられる。
殿下、さらに精悍になったなあ。
全ては健康的にグルメを楽しむため。
僕は厨房に向かい、シェフたちに本日の食材を渡す。
「油揚げと厚揚げ! そしてソース! これは今朝採りたてのキーウリだ! 本日の殿下の満足はみんなにかかっている! 頼むぞ、プロの料理人たち!!」
うおーっと気合の声を上げるシェフたちなのだった。
昨日のうちに、全員が油揚げを食べているので気合十分。
デュオス殿下は四人のシェフを抱えているのだが、普段はシフト制で二人が常に調理場にいる。
だが、今日みたいな献上の日は四人が勢揃いするのである。
「ナザルが来てから、殿下が本当に明るくなってな」「毎日が楽しそうだもんな」「今回の油揚げと厚揚げも、殿下を笑顔に変えられるだろうな!」「やってやろう!」
わいわいと料理が始まる。
この人たちはプロなので、素人である僕がホイホイ作った油揚げや厚揚げよりも全然良いものができるのだ!
僕は椅子に座って彼らの料理を眺めている。
時々味見をして、意見を言うだけの仕事だ。
あー、いいですねえー。
パリッとしてて中はしっとり。
最高の厚揚げ……。
油揚げは差別化するためにしっとりで行くか……。
これらとワインを合わせて召し上がってもらう。
食後はキーウリをさっぱりとビネガーで……。
いやあ、人に出す料理をみんなで工夫しながら作ってるこの瞬間は、妙に楽しいんだよな。
32
あなたにおすすめの小説
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる