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55・今のところの成果を献上する
第159話 気を取り直して献上品ピックアップ
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「で、どうだった?」
「ううっ、飲みすぎて頭痛が……二日酔いだ」
「おさけくちゃーい」
コゲタがシャザクからちょっと距離を取っている。
うんうん、僕はコゲタに嫌われぬためにお酒とはほどよい距離で付き合うことを決めているのだ。
シャザクもちょっとショックを受けた顔をしている。
これに懲りたら飲み過ぎには気をつけような。
「それで、ピックアップする品だけど」
「あ、ああそうだな。私が食べてみたところ、油揚げと厚揚げはかなりいいな。ナットーとやらは」
その名を口にした瞬間、コゲタが顔をぎゅっとして鼻をつまむ仕草をした。
「……やめておいた方が良さそうだ」
うんうん、臭いに癖があるからね。
殿下が美食に飽いて、珍味を求めるようになったら紹介すればいい。
「よし、では油揚げと厚揚げで行こう。あまり新しいものを出し続けても殿下が混乱するだろう。ナザル、今日一日で準備をして、明日には殿下に献上するぞ」
がんばろー、と僕とシャザクで腕を天に突き上げたのだった。
コゲタは僕らを交互に見回した後、ちょっと遅れてグーを空に突き上げた。
食材の確保、そして下準備。
豆腐はあらかじめ作っておいて、水分を夜のうちにしっかり抜いておく。
油揚げ用と厚揚げ用でそれぞれ別にしておいて……。
「ナザル。魚醤の味は悪くないんだが、調味料の個性が強くて油揚げ本来の味が分からなかったな」
「なるほど。じゃあゴマ油にピーカラでラー油みたいなのを作っておこう。あとは口直し用にキーウリを塩で……」
「そのキーウリを昨日は食べなかったな。食べに行こう」
そう言う事になった。
水分たっぷりのキーウリなら二日酔いにもよかろう。
コゲタも連れて、三人で屋台の冷やしキーウリを食べる。
うむ、美味い。
「あっ、素晴らしいみずみずしさ……」
「だろ? 人気なんで昼過ぎには売り切れる」
「なんということだ」
「おいしー」
コゲタはなんでも美味しく食べられて偉いなあ。
「これはいいな。是非殿下に献上しよう」
「よしきた」
僕は屋台の親父に話を通した。
いきなり、屋台の冷やしキーウリが王室に献上されるということで、親父は目を白黒させていた。
一緒にいるシャザクが男爵ですよーと紋章を見せたので、ハハーっとなって状況を理解してしまう親父なのだ。
運命というやつはいきなりやって来るのだよ。
こうして食材を揃え、準備もし、手紙でシェフたちに話を通し、市販の豆腐も送ってテストで調理してもらい。
いよいよ献上の日となったのだった。
殿下も様々な美食に慣れてきているだろう。
だから、ちょっとずつ演出に凝ったり、あるいは前に献上した品のマイナーチェンジなどで新しいものばかりではないことを分かって頂く必要がある。
僕もなかなか大変なのだ!
その日のシャザクは流石に家に帰った。
そして翌朝やって来る。
「迎えに来たぞ!」
「よし、行こう!」
「コゲタもいく!」
ということで三人で王宮へ向かった。
門をくぐって右手が第二王子の邸宅。
門番たちは完全に僕とコゲタを覚えていて、「また美食が来るぞ」とか話し合ってる。
どうやら第二王子のデュオス殿下が気に入ったものは、兵士たちも週末には配給で食べられるらしい。
僕に対してちょっと好意的になってきているのは、それが理由であろう。
「美味いもの期待してるぜ……」
「任せろ」
門番とそんなやり取りをして、僕はデュオス殿下の前に向かった。
「ふむ、油揚げとな……!? 豆腐を揚げる!? ほうほう……。それをソースで食べると、ソースが染みて美味いと……。ほほー!」
期待に目を輝かせる殿下。
奥方もニコニコしている。
豆腐を使ったヘルシーグルメなら、存分に食べられるからだ。
なお、このご夫妻は日々のグルメで得てしまった圧倒的カロリーを消費すべく、武芸にダンスに乗馬に精を出しておられる。
殿下、さらに精悍になったなあ。
全ては健康的にグルメを楽しむため。
僕は厨房に向かい、シェフたちに本日の食材を渡す。
「油揚げと厚揚げ! そしてソース! これは今朝採りたてのキーウリだ! 本日の殿下の満足はみんなにかかっている! 頼むぞ、プロの料理人たち!!」
うおーっと気合の声を上げるシェフたちなのだった。
昨日のうちに、全員が油揚げを食べているので気合十分。
デュオス殿下は四人のシェフを抱えているのだが、普段はシフト制で二人が常に調理場にいる。
だが、今日みたいな献上の日は四人が勢揃いするのである。
「ナザルが来てから、殿下が本当に明るくなってな」「毎日が楽しそうだもんな」「今回の油揚げと厚揚げも、殿下を笑顔に変えられるだろうな!」「やってやろう!」
わいわいと料理が始まる。
この人たちはプロなので、素人である僕がホイホイ作った油揚げや厚揚げよりも全然良いものができるのだ!
僕は椅子に座って彼らの料理を眺めている。
時々味見をして、意見を言うだけの仕事だ。
あー、いいですねえー。
パリッとしてて中はしっとり。
最高の厚揚げ……。
油揚げは差別化するためにしっとりで行くか……。
これらとワインを合わせて召し上がってもらう。
食後はキーウリをさっぱりとビネガーで……。
いやあ、人に出す料理をみんなで工夫しながら作ってるこの瞬間は、妙に楽しいんだよな。
「ううっ、飲みすぎて頭痛が……二日酔いだ」
「おさけくちゃーい」
コゲタがシャザクからちょっと距離を取っている。
うんうん、僕はコゲタに嫌われぬためにお酒とはほどよい距離で付き合うことを決めているのだ。
シャザクもちょっとショックを受けた顔をしている。
これに懲りたら飲み過ぎには気をつけような。
「それで、ピックアップする品だけど」
「あ、ああそうだな。私が食べてみたところ、油揚げと厚揚げはかなりいいな。ナットーとやらは」
その名を口にした瞬間、コゲタが顔をぎゅっとして鼻をつまむ仕草をした。
「……やめておいた方が良さそうだ」
うんうん、臭いに癖があるからね。
殿下が美食に飽いて、珍味を求めるようになったら紹介すればいい。
「よし、では油揚げと厚揚げで行こう。あまり新しいものを出し続けても殿下が混乱するだろう。ナザル、今日一日で準備をして、明日には殿下に献上するぞ」
がんばろー、と僕とシャザクで腕を天に突き上げたのだった。
コゲタは僕らを交互に見回した後、ちょっと遅れてグーを空に突き上げた。
食材の確保、そして下準備。
豆腐はあらかじめ作っておいて、水分を夜のうちにしっかり抜いておく。
油揚げ用と厚揚げ用でそれぞれ別にしておいて……。
「ナザル。魚醤の味は悪くないんだが、調味料の個性が強くて油揚げ本来の味が分からなかったな」
「なるほど。じゃあゴマ油にピーカラでラー油みたいなのを作っておこう。あとは口直し用にキーウリを塩で……」
「そのキーウリを昨日は食べなかったな。食べに行こう」
そう言う事になった。
水分たっぷりのキーウリなら二日酔いにもよかろう。
コゲタも連れて、三人で屋台の冷やしキーウリを食べる。
うむ、美味い。
「あっ、素晴らしいみずみずしさ……」
「だろ? 人気なんで昼過ぎには売り切れる」
「なんということだ」
「おいしー」
コゲタはなんでも美味しく食べられて偉いなあ。
「これはいいな。是非殿下に献上しよう」
「よしきた」
僕は屋台の親父に話を通した。
いきなり、屋台の冷やしキーウリが王室に献上されるということで、親父は目を白黒させていた。
一緒にいるシャザクが男爵ですよーと紋章を見せたので、ハハーっとなって状況を理解してしまう親父なのだ。
運命というやつはいきなりやって来るのだよ。
こうして食材を揃え、準備もし、手紙でシェフたちに話を通し、市販の豆腐も送ってテストで調理してもらい。
いよいよ献上の日となったのだった。
殿下も様々な美食に慣れてきているだろう。
だから、ちょっとずつ演出に凝ったり、あるいは前に献上した品のマイナーチェンジなどで新しいものばかりではないことを分かって頂く必要がある。
僕もなかなか大変なのだ!
その日のシャザクは流石に家に帰った。
そして翌朝やって来る。
「迎えに来たぞ!」
「よし、行こう!」
「コゲタもいく!」
ということで三人で王宮へ向かった。
門をくぐって右手が第二王子の邸宅。
門番たちは完全に僕とコゲタを覚えていて、「また美食が来るぞ」とか話し合ってる。
どうやら第二王子のデュオス殿下が気に入ったものは、兵士たちも週末には配給で食べられるらしい。
僕に対してちょっと好意的になってきているのは、それが理由であろう。
「美味いもの期待してるぜ……」
「任せろ」
門番とそんなやり取りをして、僕はデュオス殿下の前に向かった。
「ふむ、油揚げとな……!? 豆腐を揚げる!? ほうほう……。それをソースで食べると、ソースが染みて美味いと……。ほほー!」
期待に目を輝かせる殿下。
奥方もニコニコしている。
豆腐を使ったヘルシーグルメなら、存分に食べられるからだ。
なお、このご夫妻は日々のグルメで得てしまった圧倒的カロリーを消費すべく、武芸にダンスに乗馬に精を出しておられる。
殿下、さらに精悍になったなあ。
全ては健康的にグルメを楽しむため。
僕は厨房に向かい、シェフたちに本日の食材を渡す。
「油揚げと厚揚げ! そしてソース! これは今朝採りたてのキーウリだ! 本日の殿下の満足はみんなにかかっている! 頼むぞ、プロの料理人たち!!」
うおーっと気合の声を上げるシェフたちなのだった。
昨日のうちに、全員が油揚げを食べているので気合十分。
デュオス殿下は四人のシェフを抱えているのだが、普段はシフト制で二人が常に調理場にいる。
だが、今日みたいな献上の日は四人が勢揃いするのである。
「ナザルが来てから、殿下が本当に明るくなってな」「毎日が楽しそうだもんな」「今回の油揚げと厚揚げも、殿下を笑顔に変えられるだろうな!」「やってやろう!」
わいわいと料理が始まる。
この人たちはプロなので、素人である僕がホイホイ作った油揚げや厚揚げよりも全然良いものができるのだ!
僕は椅子に座って彼らの料理を眺めている。
時々味見をして、意見を言うだけの仕事だ。
あー、いいですねえー。
パリッとしてて中はしっとり。
最高の厚揚げ……。
油揚げは差別化するためにしっとりで行くか……。
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