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59・ツーテイカーぐらし
第173話 報告会とソーセージ
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「で、どうなんだ具合は」
街をぶらついて適当に入ってみた店に、なんとベンクマンがいた。
えっ、僕、もしかして誘い込まれてた?
「いやあ、いるなんて思わなくて……」
「俺は何人かいる影武者の一人だ。お前がいそうな店には大体俺がいる。で、どうだったんだ? 報告をしろ」
「はあ。いや、成果自体はかなり凄いのができましたよ。めちゃくちゃウマいかき揚げです。キノコの美味さを最高に表現できたと思います」
「ほう……。ここで作れるか?」
「もちろんです」
「どれ、料理法を見てやる」
後ろに立ってるぞ。
やりづらいなあ!
だが、この影武者だというベンクマンが料理方法を覚え、本物に教えるんだろう。
この黒幕さんは今頃、誰も知らない地下の城で報告を待っているに違いない。
「このようにキングキノコをですね。ザクザクに切って衣に混ぜてシュワーっと揚げる……!」
「ほお……! ごほん! おほん!」
影武者氏、素が出そうになって慌てて咳払いした。
どうやらこれ、上から魔法を被って変装しているらしい。
飼い主氏は何も教えてくれないだろうが、きっと一人ひとりが襲撃者を返り討ちにできるレベルの腕利きだ。
後ろに立たれているのに、全く気配がしない。
ちなみに、揚げ物のいい香りが漂った瞬間にブワッと気配が出てきた。
ごくりと唾を飲む音がした。
なお、他にも店の料理人さんがおり、彼は穴が空くほどの集中力でじーっと僕の料理を見ている。
「うちにある材料でできるな……。あの、こいつをうちで出していいんですか?」
料理人さんは影武者氏に聞く。
「ああ、構わん。広めてやれ」
影武者氏、鷹揚な仕草で告げる。
その後、かき揚げがじゅわーっと揚がったので、「おおーっ」とどよめく二人なのだった。
素が出てるよ、素が!!
なお、蕎麦は流石に品切れだったので、かき揚げをカットしてスープに入れて食べてもらった。
「うっま」
「うめえー」
もう演技を忘れた影武者氏。
キングキノコのかき揚げを貪るように食べ尽くすと、用意された酒をぐっとあおり……。
「では報告してくる」
そう告げて、彼は去っていった。
その背中がベンクマンのものから、全く別人のものに変わる。
「あの人、盗賊ギルドの幹部だったりするんですかねえ?」
「喋ったら俺が殺されちゃうよ」
「あ、そうですねすみません」
「いやあ、でもちょっといい料理を教えてもらっちゃったな。そっか、キングキノコの違った食感を一気に食べられるやり方ってこうなんだな! お礼と言ってはなんだけど、なんか食ってく?」
「あっ、じゃあ地元の名物料理みたいなのがあれば……!」
本日、コゲタは宿に置いてきている。
飼い主氏がアララちゃんと一緒に、この世界のドッグラン的なところに連れて行ってくれているらしい。
僕はこの国の散策をしているところだったので、名物がいただけるなら嬉しい。
「そうだなあ……。ツーテイカーと言えばキノコなんだが、それ以外ならソーセージだ。よっしゃ、ソーセージ盛り合わせを作ってやるぞ!」
すでに火を通してあるものを、温め直すわけだ。
「生のソーセージをすぐ茹でて食うのが美味いんだけどさ。でもそれってこの時間だともう悪くなっちまうからさ。明日は朝イチで来てくれよ。最高の白ソーセージを食わせてやるから」
「あ、それはありがたい!」
なお、温め直したとは言え、多種多様なソーセージ盛り合わせは大変美味しかった。
腸詰めごと食べるのではなく、ナイフで引き裂いて、中身をフォークで食べるのだ。
腸が分厚くて、食用じゃないんだなあ……。
「すげえ美味いんですけど、その、腸ごと食えるのとか無いんですか?」
「腸ごと? あるよ? 薄い腸を使えばそのまま食えてパリっとしてて美味い。だけどこれも足が早いからさあ……。朝イチで来てくれ」
「了解です。冷凍技術が無いとどうしてもそうなるよなあ。こっちもどこかで見つけ出して一般化したいよなあ……」
晩飯に、パリッとしたソーセージによく冷えたビール……。
食べたい!
だがこの世界では現状、無理だ。
ソーセージはアーランでも全然再現可能だろう。
これを夕食にできるようにすべきなのだ。
今のところは、一度火を通して肉の中の雑菌を殺してから保存……。
それでも、その日の内に使い切ってしまう。
薄い腸だと、破れてしまうからすぐ食べるのだろう。
うーむ……。
「ソーセージ食いながら難しい顔してるなあ。うちの特製の漬物、食う?」
「あっ、食べます。あー、酸っぱくて美味いですねえー」
「でしょ? あんま葉野菜作ってない国だからさ。地下で育つヒョロヒョロの野菜をこうやって漬け込むわけ」
恐らく発酵の段階で、ビタミン類なんかが生まれているんだろう。
この国は、あらゆる食事にこの酸っぱい漬物が付く。
僕の生前で言えば……ドイツっぽい国だな。
僕が考えながらソーセージを食べていたら、料理人氏は厨房に戻って行ってしまった。
とは言っても、ここから見える厨房だ。
鼻歌なんかしながら、キノコをザクザク切っている。
いやあ、手さばきは流石だなあ。
僕なんて素人もいいところだ。
「おーい! 衣の成分教えてくれ! 頼むー!」
「この国だと、パンに使う粉と……あれば卵ですかねえ」
「あ、卵! 卵はある! そっか、卵を使うのか。高級料理だねえ……!」
料理人氏はニヤニヤ笑いながら、勢いよく卵を割り、粉と混ぜてかき混ぜた。
実に楽しそう。
かき揚げを油に放り込んだ辺りで、彼は歓声をあげている。
あれは何油なんだろうなあ……。
この国、案外油が採れる食材が手に入りやすいのかも知れない。
僕の散策はまだ続きそうなのだった。
街をぶらついて適当に入ってみた店に、なんとベンクマンがいた。
えっ、僕、もしかして誘い込まれてた?
「いやあ、いるなんて思わなくて……」
「俺は何人かいる影武者の一人だ。お前がいそうな店には大体俺がいる。で、どうだったんだ? 報告をしろ」
「はあ。いや、成果自体はかなり凄いのができましたよ。めちゃくちゃウマいかき揚げです。キノコの美味さを最高に表現できたと思います」
「ほう……。ここで作れるか?」
「もちろんです」
「どれ、料理法を見てやる」
後ろに立ってるぞ。
やりづらいなあ!
だが、この影武者だというベンクマンが料理方法を覚え、本物に教えるんだろう。
この黒幕さんは今頃、誰も知らない地下の城で報告を待っているに違いない。
「このようにキングキノコをですね。ザクザクに切って衣に混ぜてシュワーっと揚げる……!」
「ほお……! ごほん! おほん!」
影武者氏、素が出そうになって慌てて咳払いした。
どうやらこれ、上から魔法を被って変装しているらしい。
飼い主氏は何も教えてくれないだろうが、きっと一人ひとりが襲撃者を返り討ちにできるレベルの腕利きだ。
後ろに立たれているのに、全く気配がしない。
ちなみに、揚げ物のいい香りが漂った瞬間にブワッと気配が出てきた。
ごくりと唾を飲む音がした。
なお、他にも店の料理人さんがおり、彼は穴が空くほどの集中力でじーっと僕の料理を見ている。
「うちにある材料でできるな……。あの、こいつをうちで出していいんですか?」
料理人さんは影武者氏に聞く。
「ああ、構わん。広めてやれ」
影武者氏、鷹揚な仕草で告げる。
その後、かき揚げがじゅわーっと揚がったので、「おおーっ」とどよめく二人なのだった。
素が出てるよ、素が!!
なお、蕎麦は流石に品切れだったので、かき揚げをカットしてスープに入れて食べてもらった。
「うっま」
「うめえー」
もう演技を忘れた影武者氏。
キングキノコのかき揚げを貪るように食べ尽くすと、用意された酒をぐっとあおり……。
「では報告してくる」
そう告げて、彼は去っていった。
その背中がベンクマンのものから、全く別人のものに変わる。
「あの人、盗賊ギルドの幹部だったりするんですかねえ?」
「喋ったら俺が殺されちゃうよ」
「あ、そうですねすみません」
「いやあ、でもちょっといい料理を教えてもらっちゃったな。そっか、キングキノコの違った食感を一気に食べられるやり方ってこうなんだな! お礼と言ってはなんだけど、なんか食ってく?」
「あっ、じゃあ地元の名物料理みたいなのがあれば……!」
本日、コゲタは宿に置いてきている。
飼い主氏がアララちゃんと一緒に、この世界のドッグラン的なところに連れて行ってくれているらしい。
僕はこの国の散策をしているところだったので、名物がいただけるなら嬉しい。
「そうだなあ……。ツーテイカーと言えばキノコなんだが、それ以外ならソーセージだ。よっしゃ、ソーセージ盛り合わせを作ってやるぞ!」
すでに火を通してあるものを、温め直すわけだ。
「生のソーセージをすぐ茹でて食うのが美味いんだけどさ。でもそれってこの時間だともう悪くなっちまうからさ。明日は朝イチで来てくれよ。最高の白ソーセージを食わせてやるから」
「あ、それはありがたい!」
なお、温め直したとは言え、多種多様なソーセージ盛り合わせは大変美味しかった。
腸詰めごと食べるのではなく、ナイフで引き裂いて、中身をフォークで食べるのだ。
腸が分厚くて、食用じゃないんだなあ……。
「すげえ美味いんですけど、その、腸ごと食えるのとか無いんですか?」
「腸ごと? あるよ? 薄い腸を使えばそのまま食えてパリっとしてて美味い。だけどこれも足が早いからさあ……。朝イチで来てくれ」
「了解です。冷凍技術が無いとどうしてもそうなるよなあ。こっちもどこかで見つけ出して一般化したいよなあ……」
晩飯に、パリッとしたソーセージによく冷えたビール……。
食べたい!
だがこの世界では現状、無理だ。
ソーセージはアーランでも全然再現可能だろう。
これを夕食にできるようにすべきなのだ。
今のところは、一度火を通して肉の中の雑菌を殺してから保存……。
それでも、その日の内に使い切ってしまう。
薄い腸だと、破れてしまうからすぐ食べるのだろう。
うーむ……。
「ソーセージ食いながら難しい顔してるなあ。うちの特製の漬物、食う?」
「あっ、食べます。あー、酸っぱくて美味いですねえー」
「でしょ? あんま葉野菜作ってない国だからさ。地下で育つヒョロヒョロの野菜をこうやって漬け込むわけ」
恐らく発酵の段階で、ビタミン類なんかが生まれているんだろう。
この国は、あらゆる食事にこの酸っぱい漬物が付く。
僕の生前で言えば……ドイツっぽい国だな。
僕が考えながらソーセージを食べていたら、料理人氏は厨房に戻って行ってしまった。
とは言っても、ここから見える厨房だ。
鼻歌なんかしながら、キノコをザクザク切っている。
いやあ、手さばきは流石だなあ。
僕なんて素人もいいところだ。
「おーい! 衣の成分教えてくれ! 頼むー!」
「この国だと、パンに使う粉と……あれば卵ですかねえ」
「あ、卵! 卵はある! そっか、卵を使うのか。高級料理だねえ……!」
料理人氏はニヤニヤ笑いながら、勢いよく卵を割り、粉と混ぜてかき混ぜた。
実に楽しそう。
かき揚げを油に放り込んだ辺りで、彼は歓声をあげている。
あれは何油なんだろうなあ……。
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僕の散策はまだ続きそうなのだった。
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