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61・魔導書を掘り起こせ
第180話 よし、書庫を漁るぞ
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「あっ、寝起きの揚げ物重いけど美味いねー。胃袋にドシンとくる……。書庫? どうぞどうぞ。多分まだ他の住人は寝てるから」
僕らが探索を許された書庫は、五つの塔が共用している場所だった。
そして魔法使いたちは昼夜逆転している者も珍しくないらしく、太陽が一番高いところに来るまでは他の面子は起きてこないだろう……と言う話だった。
家主たる魔法使いがフィッシュフライを食べている間に、僕らは老人に別れを告げ、書庫へと向かうのだった。
「あれ? 長老揚げ物大丈夫なんですか」
「ほっほっほ、度重なるサウナと整いにより、明日をも知れぬ命。揚げ物の一つや2つ」
大丈夫かな、この国の人達。
塔の三階から、空中回廊を通って書庫に到達する。
入ったら、大変埃っぽい。
これは堪らん。
「くしゅん! くしゅん!!」
コゲタがクシャミし始めたので、僕は素早く移動して窓を開け……。
うおっ、何年閉めっぱなしなんだ!
軋んでいて全く開かない。
「おらあっ! 油!!」
ぬるぬるとした油を流し込み、無理やり窓が動くようにした。
よーしよし!
「お、おいナザル。図書館とかは陽の光が入らないようにして本を守ってるんだろ? いいのか、勝手に開けたりして」
「魔導書よりもコゲタの健康の方が大事だ! オラアッ!!」
ガラガラガラッ!
窓が開いた。
吹き込んでくる風。かき回される書庫の空気。
「ははは、爽やかだ! 爽やかな風が吹いてきたぞ!」
「あーっ、なんか窓際にあった古い魔導書が断末魔をあげながらサラサラ崩れていく……」
「もう寿命だったんだろう。安らかに眠らせてやろう」
「コゲタのためなら鬼になるのな、ナザル」
「犬は大事だからね。コゲタ、もう大丈夫か?」
「わん!」
よーしよし。
「では、探索開始だ。本が山程あるからな。どこかに冷凍魔法の魔導書があるぞ」
「本当に見つかるのか? 魔導書の山じゃねえか。あ、そうか。違うのは沈めて行けばいいのか」
「それだ! 冴えてるなあシズマ!」
「へへっ、任せておけよ! ってことで、行くぜ行くぜ行くぜ!」
「コゲタも頼むぞ!」
「わん! がんばる!」
僕らは魔導書の探索を開始した。
冷凍の魔導書は複数冊存在しているらしい。
この国にやってくると、一番最初に思いつく魔法がそれなんだとか。
だから全ての書庫に冷凍の魔導書が複数冊。
なるほど……大した価値がない扱いをされているわけだ。
「ええと、魔導書の文字はこれだろ? これと見比べて……これは違う、これも違う……」
何せ、魔法使いから大事にされなかった魔導書だ。
大した力を持っていない。
たまに意思があるやつがあっても、息も絶え絶えでちょっとページを捲ったら『ウグワーッ』とか叫んで崩れていったりする。
うーむ、あわれ。
「これちがう! これも……んー、ちがう?」
「違うなあ。沈めとくぞ」
コゲタが持ってくる魔導書を見て、シズマがこれを床に沈めていく。
違う本は片っ端から沈んでいくから、残るのはまだ表紙の確認をしていない本ばかりということになる。
なーるほど、これは冴えたやり方だ。
一冊ずつ減らしていけば、いつかは必ず冷凍の魔導書にたどり着くというわけだ。
「これは違う、これも違う、これも……違う!」
「おっしゃ、こっちにくれ! どんどん沈める!」
「これとこれとこれとこれー!」
「あー、全部違うなこれは。よし沈めるなー」
コゲタともいい感じじゃないか。
こうして、積み上がった魔導書の山はどんどん減っていき……。
ついに、小山が残るのみとなった。
「よし、どんどん行くぞ! 次はこの本……つめたっ!!」
手にした魔導書がめちゃくちゃ冷たかったので、僕はびっくりして手放した。
「ご主人!これー!」
拾い上げたコゲタ。
その本を見て、シズマが「おー! おーおーおー!!」と叫んだ。
「間違いない? 本物?」
「本物の冷凍の魔導書だ! 当たりが出たぞ。思ったよりも早かったなあ……」
「何冊もあるって話だったし、まあ考えて見ればありえる話だったなあ……」
その後、冷凍の魔導書がそこから何冊も見つかったのだった。
本当にどれだけあるんだこれ。
「せっかくだし、読んでみようぜ」
「それもそうだ。どれどれ?」
「どーれー?」
三人で冷凍の魔導書を読む。
なるほど、分からん。
やはりこれ、魔法使いの素養がないと分からん本なのかも知れない。
僕もシズマも、ギフトに頼り切りで、魔法使いではないというわけだな。
あと、冷凍の魔導書は別に特別な一冊というわけではなかったっぽく、自律意思を持ってもいなかった。
うーん、ちょっと変わった本だなあこれは。
ということで。
探索は終了だ。
「この本をくださるということで?」
「いいよいいよ。揚げ物美味しかったし。そんなもん珍しくもなんともないからね」
魔法使いからの許可は頂戴した。
いやあ、一年の半分を氷に閉ざされる北の都市国家において価値がないものが、それ以外の国では値千金の価値を有するのだ。
冷凍の魔導書よ。
君はここで、何の価値もない本だったかも知れないが、これからまさしく世界を変える一冊になるのだ。
こいつはちょっと面白い下剋上だぞ。
意思がないはずの冷凍の魔導書が、少しだけ光り輝いた気がした。
僕らが探索を許された書庫は、五つの塔が共用している場所だった。
そして魔法使いたちは昼夜逆転している者も珍しくないらしく、太陽が一番高いところに来るまでは他の面子は起きてこないだろう……と言う話だった。
家主たる魔法使いがフィッシュフライを食べている間に、僕らは老人に別れを告げ、書庫へと向かうのだった。
「あれ? 長老揚げ物大丈夫なんですか」
「ほっほっほ、度重なるサウナと整いにより、明日をも知れぬ命。揚げ物の一つや2つ」
大丈夫かな、この国の人達。
塔の三階から、空中回廊を通って書庫に到達する。
入ったら、大変埃っぽい。
これは堪らん。
「くしゅん! くしゅん!!」
コゲタがクシャミし始めたので、僕は素早く移動して窓を開け……。
うおっ、何年閉めっぱなしなんだ!
軋んでいて全く開かない。
「おらあっ! 油!!」
ぬるぬるとした油を流し込み、無理やり窓が動くようにした。
よーしよし!
「お、おいナザル。図書館とかは陽の光が入らないようにして本を守ってるんだろ? いいのか、勝手に開けたりして」
「魔導書よりもコゲタの健康の方が大事だ! オラアッ!!」
ガラガラガラッ!
窓が開いた。
吹き込んでくる風。かき回される書庫の空気。
「ははは、爽やかだ! 爽やかな風が吹いてきたぞ!」
「あーっ、なんか窓際にあった古い魔導書が断末魔をあげながらサラサラ崩れていく……」
「もう寿命だったんだろう。安らかに眠らせてやろう」
「コゲタのためなら鬼になるのな、ナザル」
「犬は大事だからね。コゲタ、もう大丈夫か?」
「わん!」
よーしよし。
「では、探索開始だ。本が山程あるからな。どこかに冷凍魔法の魔導書があるぞ」
「本当に見つかるのか? 魔導書の山じゃねえか。あ、そうか。違うのは沈めて行けばいいのか」
「それだ! 冴えてるなあシズマ!」
「へへっ、任せておけよ! ってことで、行くぜ行くぜ行くぜ!」
「コゲタも頼むぞ!」
「わん! がんばる!」
僕らは魔導書の探索を開始した。
冷凍の魔導書は複数冊存在しているらしい。
この国にやってくると、一番最初に思いつく魔法がそれなんだとか。
だから全ての書庫に冷凍の魔導書が複数冊。
なるほど……大した価値がない扱いをされているわけだ。
「ええと、魔導書の文字はこれだろ? これと見比べて……これは違う、これも違う……」
何せ、魔法使いから大事にされなかった魔導書だ。
大した力を持っていない。
たまに意思があるやつがあっても、息も絶え絶えでちょっとページを捲ったら『ウグワーッ』とか叫んで崩れていったりする。
うーむ、あわれ。
「これちがう! これも……んー、ちがう?」
「違うなあ。沈めとくぞ」
コゲタが持ってくる魔導書を見て、シズマがこれを床に沈めていく。
違う本は片っ端から沈んでいくから、残るのはまだ表紙の確認をしていない本ばかりということになる。
なーるほど、これは冴えたやり方だ。
一冊ずつ減らしていけば、いつかは必ず冷凍の魔導書にたどり着くというわけだ。
「これは違う、これも違う、これも……違う!」
「おっしゃ、こっちにくれ! どんどん沈める!」
「これとこれとこれとこれー!」
「あー、全部違うなこれは。よし沈めるなー」
コゲタともいい感じじゃないか。
こうして、積み上がった魔導書の山はどんどん減っていき……。
ついに、小山が残るのみとなった。
「よし、どんどん行くぞ! 次はこの本……つめたっ!!」
手にした魔導書がめちゃくちゃ冷たかったので、僕はびっくりして手放した。
「ご主人!これー!」
拾い上げたコゲタ。
その本を見て、シズマが「おー! おーおーおー!!」と叫んだ。
「間違いない? 本物?」
「本物の冷凍の魔導書だ! 当たりが出たぞ。思ったよりも早かったなあ……」
「何冊もあるって話だったし、まあ考えて見ればありえる話だったなあ……」
その後、冷凍の魔導書がそこから何冊も見つかったのだった。
本当にどれだけあるんだこれ。
「せっかくだし、読んでみようぜ」
「それもそうだ。どれどれ?」
「どーれー?」
三人で冷凍の魔導書を読む。
なるほど、分からん。
やはりこれ、魔法使いの素養がないと分からん本なのかも知れない。
僕もシズマも、ギフトに頼り切りで、魔法使いではないというわけだな。
あと、冷凍の魔導書は別に特別な一冊というわけではなかったっぽく、自律意思を持ってもいなかった。
うーん、ちょっと変わった本だなあこれは。
ということで。
探索は終了だ。
「この本をくださるということで?」
「いいよいいよ。揚げ物美味しかったし。そんなもん珍しくもなんともないからね」
魔法使いからの許可は頂戴した。
いやあ、一年の半分を氷に閉ざされる北の都市国家において価値がないものが、それ以外の国では値千金の価値を有するのだ。
冷凍の魔導書よ。
君はここで、何の価値もない本だったかも知れないが、これからまさしく世界を変える一冊になるのだ。
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