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62・冷凍の時代が見えてきた
第183話 帰りがてらのフレンチトースト
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ワンダバーに別れを告げ、ツーテイカーへ戻ることになった。
荷馬のポーターは相変わらず元気であり、ワンダバーの宿で美味い飼い葉をたくさん食べさせてもらったようだ。
いい宿だった。
やっぱり金は気前よく払っておくべきだな。
「ぶるるー」
「くすぐったーい」
鼻先でコゲタにじゃれ付くポーターなのだ。
荷物は僕らの衣類や食べ物、テントくらいしかないので、荷車も大変軽い。
そう言えば、魚がたくさん穫れる国だったが、魚の輸出なんかについて偉い人と話をしたりはしなかったな。
魔導書探し以外は、ほぼバカンスみたいなものだった。
たまにはこんなのもいいか。
「また二週間歩くわけか。本当に、この世界はよく歩くよなあ」
「交通機関が存在しないからね。街道があるだけ凄いよ。ちなみにこの大陸中に巡らされた街道は、とある神官が生涯を賭けて作ったんだそうだ。途中で志半ばで亡くなり、彼の志に打たれた各国の人々が後を継いで街道を作って行ったんだとか……」
「詳しいなナザル! 結構お前博識だよなあ」
「リップルに色々教わってるんだ」
「ははあ、あの英雄の。お前、どうなんだ。彼女とかなり仲がいいらしいじゃないか」
「幼い頃は、少年と呼ばれる仲ではあった」
「ラノベではないか」
「僕は生前ラノベはあまり読んでいなくてね……。ノンフィクション派だった」
「かーっ、お前がラノベ読んでたら、今頃リップルはヒロインだったんじゃねえか」
「シズマは何を言っているんだ」
そんな話をしながら、街道を戻っていくのだ。
ちなみに、街道が整備されるとこれを使って戦争が起きやすくなるものなのだが。
この道全てに、知識神による加護が掛かっている。
戦神も協力しているようで、軍隊を用いた戦闘は街道を外れて行わねば、バチが当たるんだそうだ。
なるほどなあ。
ありがたく、街道を利用させてもらおう。
道理で、街道近くは治安がいいはずだ。モンスターもあまり寄り付かないし。
とは言っても……。
二週間ひたすら旅をするのはやはり退屈ではある。
歩くのはいいが、飽きてくる。
コゲタとポーターがじゃれ合っているのを見るのが何よりの娯楽だ。
三日目くらいで、やっと行きで通りかかった農園が見えてきてホッとした。
結構な広さが丸ごと農場になっており、牛や馬を飼っているんだよね。
ここにフレンチトーストを伝授したが……。
おお、フレンチトーストの香りがする!!
しっかりと作られていっているようだ!
僕らが通りかかったのを見た農園の人々が、わいわいと寄ってきた。
「やあ戻ってきたね」「ワンダバーは何もなかっただろ?」「冬に行けば、寒いけど見どころがたくさんあったのに」「氷に閉ざされる内海は直接歩いて渡れるし、そこに穴を開けて釣りも楽しめるし」「オーロラが見えて綺麗だぞ」
「な、な、なんだってー!!」
冬場に全ての観光資源が集結した場所なんじゃないか!!
くっそー、次は絶対に冬に来る。
シズマが僕の気持ちを察してか、肩をポンポンしてくるのだ。
ところで、集まってきた農園の人たちだが。
どうやらフレンチトーストのレシピがこの農場全体に広まっており、みんなが自己流にアレンジし始めているんだそうだ。
進化が早い!
まだ、このメニューを伝えてから一週間ほどしか経過してないぞ。
だが、それも理由がある。
この世界の住人は、ずっと同じものを食べることに抵抗がない。
もともとメニューそのものが少ない世界だから、食べ物を選り好みする余裕などなかったわけだ。
そこに僕が美食を振りまいた。
彼らは美食に溺れ……そしてちょっとだけ、食べ飽きるという贅沢を知った。
そこでアレンジが始まったというわけだな。
「旅人さん、うちはね、フレンチトーストを畳んで間にハムを入れてる」
「おおっ! それは美味そう……」
「なんのなんの! こっちはトーストと卵にチーズを混ぜてるぞ!」
「こっちはヨーグルトが……」
「ソテーした野菜を挟んで食べてるわ!」
「色々なアレンジがなされている……!!」
食材が豊富にある場所というのは恐ろしい。
僕は戦慄した。
それぞれの食材を、煮るか焼くか炒めるかして食べていた彼らだったが、今あるものだけでフレンチトーストが作り出せることを知り、これを食の根幹に置いたようなのだった。
いかにして、飽きずにフレンチトーストを食べるか。
「これは……。この農場から世界に向けて、フレンチトーストの波が広がっていくぞ……!!」
我ながら、世界をまた変えてしまったという実感に震えるな。
それはそうとちょっとずつ作ってもらい、みんなのフレンチトーストを食べた。
うまーい!!
「ナザルが作ったのよりも美味くね……?」
「そりゃあ、農園で採れる食材の性質を知り尽くした人たちの料理だぞ。美味いに決まってる。これが街道を通じて他の国に流れ込んだら、大騒ぎになるぞ……! 僕は今からそれが楽しみだ!」
なお、コゲタは熱すぎないくらいの温度のフレンチトーストを作ってもらい、フォークでむしゃむしゃ食べていたのだった。
顔がべたべただぞー。
「おいしい~!」
顔を拭いてもらいながら、今日もニコニコのコゲタなのだった。
なんでも美味しく食べられるのは、コゲタのいいところだなあ。
荷馬のポーターは相変わらず元気であり、ワンダバーの宿で美味い飼い葉をたくさん食べさせてもらったようだ。
いい宿だった。
やっぱり金は気前よく払っておくべきだな。
「ぶるるー」
「くすぐったーい」
鼻先でコゲタにじゃれ付くポーターなのだ。
荷物は僕らの衣類や食べ物、テントくらいしかないので、荷車も大変軽い。
そう言えば、魚がたくさん穫れる国だったが、魚の輸出なんかについて偉い人と話をしたりはしなかったな。
魔導書探し以外は、ほぼバカンスみたいなものだった。
たまにはこんなのもいいか。
「また二週間歩くわけか。本当に、この世界はよく歩くよなあ」
「交通機関が存在しないからね。街道があるだけ凄いよ。ちなみにこの大陸中に巡らされた街道は、とある神官が生涯を賭けて作ったんだそうだ。途中で志半ばで亡くなり、彼の志に打たれた各国の人々が後を継いで街道を作って行ったんだとか……」
「詳しいなナザル! 結構お前博識だよなあ」
「リップルに色々教わってるんだ」
「ははあ、あの英雄の。お前、どうなんだ。彼女とかなり仲がいいらしいじゃないか」
「幼い頃は、少年と呼ばれる仲ではあった」
「ラノベではないか」
「僕は生前ラノベはあまり読んでいなくてね……。ノンフィクション派だった」
「かーっ、お前がラノベ読んでたら、今頃リップルはヒロインだったんじゃねえか」
「シズマは何を言っているんだ」
そんな話をしながら、街道を戻っていくのだ。
ちなみに、街道が整備されるとこれを使って戦争が起きやすくなるものなのだが。
この道全てに、知識神による加護が掛かっている。
戦神も協力しているようで、軍隊を用いた戦闘は街道を外れて行わねば、バチが当たるんだそうだ。
なるほどなあ。
ありがたく、街道を利用させてもらおう。
道理で、街道近くは治安がいいはずだ。モンスターもあまり寄り付かないし。
とは言っても……。
二週間ひたすら旅をするのはやはり退屈ではある。
歩くのはいいが、飽きてくる。
コゲタとポーターがじゃれ合っているのを見るのが何よりの娯楽だ。
三日目くらいで、やっと行きで通りかかった農園が見えてきてホッとした。
結構な広さが丸ごと農場になっており、牛や馬を飼っているんだよね。
ここにフレンチトーストを伝授したが……。
おお、フレンチトーストの香りがする!!
しっかりと作られていっているようだ!
僕らが通りかかったのを見た農園の人々が、わいわいと寄ってきた。
「やあ戻ってきたね」「ワンダバーは何もなかっただろ?」「冬に行けば、寒いけど見どころがたくさんあったのに」「氷に閉ざされる内海は直接歩いて渡れるし、そこに穴を開けて釣りも楽しめるし」「オーロラが見えて綺麗だぞ」
「な、な、なんだってー!!」
冬場に全ての観光資源が集結した場所なんじゃないか!!
くっそー、次は絶対に冬に来る。
シズマが僕の気持ちを察してか、肩をポンポンしてくるのだ。
ところで、集まってきた農園の人たちだが。
どうやらフレンチトーストのレシピがこの農場全体に広まっており、みんなが自己流にアレンジし始めているんだそうだ。
進化が早い!
まだ、このメニューを伝えてから一週間ほどしか経過してないぞ。
だが、それも理由がある。
この世界の住人は、ずっと同じものを食べることに抵抗がない。
もともとメニューそのものが少ない世界だから、食べ物を選り好みする余裕などなかったわけだ。
そこに僕が美食を振りまいた。
彼らは美食に溺れ……そしてちょっとだけ、食べ飽きるという贅沢を知った。
そこでアレンジが始まったというわけだな。
「旅人さん、うちはね、フレンチトーストを畳んで間にハムを入れてる」
「おおっ! それは美味そう……」
「なんのなんの! こっちはトーストと卵にチーズを混ぜてるぞ!」
「こっちはヨーグルトが……」
「ソテーした野菜を挟んで食べてるわ!」
「色々なアレンジがなされている……!!」
食材が豊富にある場所というのは恐ろしい。
僕は戦慄した。
それぞれの食材を、煮るか焼くか炒めるかして食べていた彼らだったが、今あるものだけでフレンチトーストが作り出せることを知り、これを食の根幹に置いたようなのだった。
いかにして、飽きずにフレンチトーストを食べるか。
「これは……。この農場から世界に向けて、フレンチトーストの波が広がっていくぞ……!!」
我ながら、世界をまた変えてしまったという実感に震えるな。
それはそうとちょっとずつ作ってもらい、みんなのフレンチトーストを食べた。
うまーい!!
「ナザルが作ったのよりも美味くね……?」
「そりゃあ、農園で採れる食材の性質を知り尽くした人たちの料理だぞ。美味いに決まってる。これが街道を通じて他の国に流れ込んだら、大騒ぎになるぞ……! 僕は今からそれが楽しみだ!」
なお、コゲタは熱すぎないくらいの温度のフレンチトーストを作ってもらい、フォークでむしゃむしゃ食べていたのだった。
顔がべたべただぞー。
「おいしい~!」
顔を拭いてもらいながら、今日もニコニコのコゲタなのだった。
なんでも美味しく食べられるのは、コゲタのいいところだなあ。
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