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63・帰るぞ帰るぞ
第186話 さらばツーテイカー
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ツーテイカーとワンダバーを巡る旅で二ヶ月くらい使った気がする。
流石にアーランが恋しい。
もう夏も終わっている頃だろう。
じゃあ帰ろう、という事になった。
飼い主氏もまた一緒になり、僕らは帰途につく。
「来年にはアーランにも冷えたビールの試飲会が届くだろう。楽しみにしているがいい」
ベンクマンがそう言って笑った。
実に楽しみである。
でも、井戸水で冷やしたビールだって十分に冷たくて美味しいけどね。
そういう前提のビールは、既にせっせと輸出を行っているらしい。
脂っこいものと一緒に飲むと、爽やかな苦味がスッキリさせてくれるし、無類の喉越しの良さが最高、と評判らしい。
謀略の国だったツーテイカーが、ちゃんとした貿易で豊かになっていくぞ。
「最後はドンパチになると思ったら、あっさり返してくれたな。俺たちはツーテイカーの秘密を知ってるって言うのに」
「いやいや、僕らはベンクマンだと名乗る男のそれっぽい顔しか知らないだろ。あの国、最後まで本物の支配者が誰なのかをはっきりさせなかったよ」
「えっ、そうなのか!?」
飼い主氏はニコニコして何も語らない。
それが全てを表しているな。
多分ツーテイカーは、やって来た人間に合わせて様々な顔を見せる。
次に僕が訪れたときに顔を出してくる支配者は全く別の人間だろう。
だって、あれほど守りが厳重だったベンクマンが後半は、影武者なのか本人なのか出ずっぱりだったじゃないか。
それに、他の人々との距離感にしたって絶対的支配者のそれではなかった。
あれは支配者の役割を演じている何者かだった可能性もある……。
まあ、そんな事は今考えても仕方ない。
ツーテイカーと言う国の信頼を僕らが勝ち取り、彼の国に繁栄の種をもたらした。
これからあの国は大いに貿易で栄えていくことであろう。
キノコ、ソーセージ、ビール、そして冷凍魔法。
ニッチだ!
だが、そのニッチが他に代えがたいものならば世界と戦えるのだ。
「早く、最高に美味いソーセージが食卓に並んでほしいな。ツーテイカーのソーセージの美味さはちょっと他の国とは別格だった」
「だよな。冷凍魔法が普及したらあのソーセージがアーランでも食えるんだ。楽しみすぎるー」
「うんうん、私も故郷の食事がアーランでもできるなんて夢みたいだよ。ナザルさんがやることは本当に魔法みたいだ。ありえないような事を次々に実現してくれる」
「なに、僕がアーランで美味いソーセージを冷えたビールで流し込みたいだけだから」
そのためなら、どんな努力でも根回しでもやる。
それだけだ!
「ご主人~!」
「ご主人~! まーだー?」
先をトテトテ走って行っていた、コゲタとアララちゃんが振り返って手を振っている。
黒豆柴なコゲタと、白くてふわふわのアララちゃんは見栄えがするコンビだなあ。
アララちゃん、犬だとすると日本スピッツかなあ。
コボルドには垂れ耳種がいないんだよな。
みんな耳が立ってる。
ここはまだ、彼らが野生と飼い犬の間にいるということを表しているのかも知れない。
今後、だんだんと耳の垂れたコボルドが登場するのかもしれない。
「あ、耳が垂れたコボルド? いるよ。穴蔵を住まいにする種族が耳が垂れている。穴にこすれないようにするためだろうね」
「いるの!?」
飼い主氏、博識だなあ!
いつか会ってみたいものだ。
別のコボルドに会うために旅をするのもいいかも知れない。
ツーテイカーを出て数日すると、フォーゼフに到着する。
たくさんの隊商が到着していて、フォーゼフの作物を積み込んでいるところだった。
農夫たちの誇らしげな顔!
この農業の国で生み出された大豆群が、アーランの美食を支えているのだ!
足を向けて寝られないね。
僕がやって来ると、顔を知っている農夫の人たちが手を振った。
「景気はどうです?」
「作っても作っても足りないよ! しかもいい値段で買ってくれるし、アーランの珍しい作物とも交換してもらえる。フォーゼフの食卓が豊かになったよ」
「そりゃあ何よりです! 美味いものを作り、美味いものを食う! それでみんなハッピーですから!」
農夫の人たちと、わっはっは、と笑いあった。
コゲタとアララちゃんは、隊商の荷馬をペタペタ触っている。
そうすると、荷馬たちがぞろぞろ集まってきて、二人を鼻先でむにむに押したりし始めた。
馬はコボルド好きだよな……。
「いやあ、しかしナザルさんはどこに行っても歓迎されているねえ……。本当に凄い。それだけのことをこれまで成し遂げてきたんだ」
「そのお陰で大豆加工品をたっぷり食えるようになってるので、ウィンウィンですよ……」
「うぃんうぃん……?」
「どちらにも利益がもたされたってことだよ」
「ああ、ドラグモールとドラゴンの仲ってことか。なるほどね」
この世界のことわざだな。
ドラグモールというのは巨大なモグラ。
遺跡や、滅びた村や街を掘り返し、そこにある死体とか食物を食べる。
だがドラグモールはそこにある宝物には興味がない。
これをあちこちに放り出すので、その頭上でドラゴンはのんびり待っているだけでたっぷりと宝物を得られるというわけだ。
そしてドラグモールの天敵であるロック鳥は、ドラゴンを恐れて近づけない。
ウィンウィンな関係だな。
「ここで一泊して行こう。採れたてのフォーゼフ野菜の料理を食べるぞ……!!」
アーランは恋しくても、旅の途中もまた楽しい旅。
存分に堪能せねば無作法というものなのだ。
流石にアーランが恋しい。
もう夏も終わっている頃だろう。
じゃあ帰ろう、という事になった。
飼い主氏もまた一緒になり、僕らは帰途につく。
「来年にはアーランにも冷えたビールの試飲会が届くだろう。楽しみにしているがいい」
ベンクマンがそう言って笑った。
実に楽しみである。
でも、井戸水で冷やしたビールだって十分に冷たくて美味しいけどね。
そういう前提のビールは、既にせっせと輸出を行っているらしい。
脂っこいものと一緒に飲むと、爽やかな苦味がスッキリさせてくれるし、無類の喉越しの良さが最高、と評判らしい。
謀略の国だったツーテイカーが、ちゃんとした貿易で豊かになっていくぞ。
「最後はドンパチになると思ったら、あっさり返してくれたな。俺たちはツーテイカーの秘密を知ってるって言うのに」
「いやいや、僕らはベンクマンだと名乗る男のそれっぽい顔しか知らないだろ。あの国、最後まで本物の支配者が誰なのかをはっきりさせなかったよ」
「えっ、そうなのか!?」
飼い主氏はニコニコして何も語らない。
それが全てを表しているな。
多分ツーテイカーは、やって来た人間に合わせて様々な顔を見せる。
次に僕が訪れたときに顔を出してくる支配者は全く別の人間だろう。
だって、あれほど守りが厳重だったベンクマンが後半は、影武者なのか本人なのか出ずっぱりだったじゃないか。
それに、他の人々との距離感にしたって絶対的支配者のそれではなかった。
あれは支配者の役割を演じている何者かだった可能性もある……。
まあ、そんな事は今考えても仕方ない。
ツーテイカーと言う国の信頼を僕らが勝ち取り、彼の国に繁栄の種をもたらした。
これからあの国は大いに貿易で栄えていくことであろう。
キノコ、ソーセージ、ビール、そして冷凍魔法。
ニッチだ!
だが、そのニッチが他に代えがたいものならば世界と戦えるのだ。
「早く、最高に美味いソーセージが食卓に並んでほしいな。ツーテイカーのソーセージの美味さはちょっと他の国とは別格だった」
「だよな。冷凍魔法が普及したらあのソーセージがアーランでも食えるんだ。楽しみすぎるー」
「うんうん、私も故郷の食事がアーランでもできるなんて夢みたいだよ。ナザルさんがやることは本当に魔法みたいだ。ありえないような事を次々に実現してくれる」
「なに、僕がアーランで美味いソーセージを冷えたビールで流し込みたいだけだから」
そのためなら、どんな努力でも根回しでもやる。
それだけだ!
「ご主人~!」
「ご主人~! まーだー?」
先をトテトテ走って行っていた、コゲタとアララちゃんが振り返って手を振っている。
黒豆柴なコゲタと、白くてふわふわのアララちゃんは見栄えがするコンビだなあ。
アララちゃん、犬だとすると日本スピッツかなあ。
コボルドには垂れ耳種がいないんだよな。
みんな耳が立ってる。
ここはまだ、彼らが野生と飼い犬の間にいるということを表しているのかも知れない。
今後、だんだんと耳の垂れたコボルドが登場するのかもしれない。
「あ、耳が垂れたコボルド? いるよ。穴蔵を住まいにする種族が耳が垂れている。穴にこすれないようにするためだろうね」
「いるの!?」
飼い主氏、博識だなあ!
いつか会ってみたいものだ。
別のコボルドに会うために旅をするのもいいかも知れない。
ツーテイカーを出て数日すると、フォーゼフに到着する。
たくさんの隊商が到着していて、フォーゼフの作物を積み込んでいるところだった。
農夫たちの誇らしげな顔!
この農業の国で生み出された大豆群が、アーランの美食を支えているのだ!
足を向けて寝られないね。
僕がやって来ると、顔を知っている農夫の人たちが手を振った。
「景気はどうです?」
「作っても作っても足りないよ! しかもいい値段で買ってくれるし、アーランの珍しい作物とも交換してもらえる。フォーゼフの食卓が豊かになったよ」
「そりゃあ何よりです! 美味いものを作り、美味いものを食う! それでみんなハッピーですから!」
農夫の人たちと、わっはっは、と笑いあった。
コゲタとアララちゃんは、隊商の荷馬をペタペタ触っている。
そうすると、荷馬たちがぞろぞろ集まってきて、二人を鼻先でむにむに押したりし始めた。
馬はコボルド好きだよな……。
「いやあ、しかしナザルさんはどこに行っても歓迎されているねえ……。本当に凄い。それだけのことをこれまで成し遂げてきたんだ」
「そのお陰で大豆加工品をたっぷり食えるようになってるので、ウィンウィンですよ……」
「うぃんうぃん……?」
「どちらにも利益がもたされたってことだよ」
「ああ、ドラグモールとドラゴンの仲ってことか。なるほどね」
この世界のことわざだな。
ドラグモールというのは巨大なモグラ。
遺跡や、滅びた村や街を掘り返し、そこにある死体とか食物を食べる。
だがドラグモールはそこにある宝物には興味がない。
これをあちこちに放り出すので、その頭上でドラゴンはのんびり待っているだけでたっぷりと宝物を得られるというわけだ。
そしてドラグモールの天敵であるロック鳥は、ドラゴンを恐れて近づけない。
ウィンウィンな関係だな。
「ここで一泊して行こう。採れたてのフォーゼフ野菜の料理を食べるぞ……!!」
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