188 / 337
63・帰るぞ帰るぞ
第188話 寄り道は続く、魚の南蛮風
しおりを挟む
フォーゼフの美味しい野菜に舌鼓を打ち、それはそれとしてスムージー酒は美味くなかったよなあ、体には明らかに良かったけど……。
なんて思い出を得た僕ら。
農業の国を後にする。
そしてしばらく旅をすると、周囲が大変ポカポカと暖かくなってくるのだ。
大陸で一番温暖な場所といえば……。
「ご主人ー!! うーみー!」
先をトテトテ走っていったコゲタが、視界がひらけた場所でぴょんぴょん飛び跳ねた。
森とか茂みとか草原だったのが、いきなり右手側が岩礁になったねえ。
海がどこまでも広がっている。
この大陸の南方には、お米があるという島と巨大な大陸が存在しているらしいが。
西方には何があるんだろうな。
案外、未知の大陸があったりして。
夢が広がるなあ。
そんな感じで一日旅をしたら、眼の前が巨大な砂浜になった。
程々の距離の海の向こうに、島がある。
「一年ぶりだなあ、ファイブショーナン! そろそろ秋のはずだけど、ここは本当に常夏だな!」
「入国審査が厳しいと聞くが、入れるのか?」
飼い主氏が心配しているが、大丈夫大丈夫。
僕がいるから顔パスだ。
しばらくすると潮が引いていき、島までの道が浮かび上がってきた。
トコトコと渡っていく僕らなのだ。
島の入口にはムキムキのお兄ちゃんが立っていて、僕らを止めた。
「入国審査をする。お前はうちの国の人間っぽいからいいよ」
「相変わらずザルだ!!」
僕だけファイブショーナン人に特徴が近いので、スルーされるのだ。
「僕は女王陛下の友人である油使いなのだが。ほら、油をだらだらーっと」
「あーっ、陛下のお知り合いでしたか。あの噂のナザルさん? グルメの巨人ナザル?」
「妙な称号がついてるな……」
結局僕の仲間だということで、シズマも飼い主氏も通してもらえた。
飼い主氏はツーテイカーの工作員なんだが、誰の連れかという信頼はとても大事なのだ!
なお、コボルドはスルーだぞ。
「コボルドが何か企むことなんかありえませんからね」
「全くその通り」
「あったかーい!」
「ぽかぽかー!」
コゲタとアララちゃんがはしゃぎながらファイブショーナンに駆け込んでいく。
うんうん、南国らしい植生と、土でできた道。
ログハウスっぽい家ばっかりある町並みとか、テンション上がるよな。
どう見ても南国の島なんだもんな。
日差しが常に強い。
だが、日陰がたくさんあるし、そこに入れば全く暑くなくなる。
海風が吹き抜けて大変気持ちいい。
これぞファイブショーナン。
「おお……!! なんというところなんだ! ただこうして立っているだけで心地良い……。この世の楽園……」
「まさにな。そのかわり、文化的にも技術的にも未熟なままだ。なぜかっていうと、人間、満たされていると成長する必要がないからだ」
「なるほど、深い……」
「今度アーシェを連れてきてやりてえなあ」
おっ、シズマが彼女持ちらしい事を言ってるじゃないか。
その彼女を二ヶ月ほったらかしなわけだが!
「せっかくなんで女王陛下に挨拶して行こう。こっちだ」
僕は宮殿に向かうことにした。
おっ、道行くおばちゃんに、コゲタとアララちゃんが果物をもらってるな。
にこにこしながら「ありがとー!」とお礼を言っている二人。
ありがとう言えて偉いぞ。
ついでに僕らも果物をもらってしまった。
あんまり甘くないマンゴーみたいなやつだ。
喉の乾きが潤うー。
五人でもりもり食べながら歩いていたら、宮殿が見えた。
どでかいログハウスである。
門番たちが座り込んでゲームみたいなことをしていたのだが、僕らに気付いてよっこらしょ、と立ち上がった。
「外の人間だな? 女王陛下はお会いにならんぞ」
「ナザルだよ。油使いのナザル」
また油を出す様を見せると、門番たちがハッとした。
「あのスーパーグルメアドバイザーのナザルか!?」
「また変な二つ名が出てきたぞ……! ここの住人、暇つぶしに僕にあだ名つけて遊んでるじゃないだろうな……?」
だが、通してくれることになった。
飼い主氏が感心している。
「さすがはナザルさん、顔が広い……!」
「ファイブショーナンとアーランの国交を樹立したの、半分は僕の功績だからね……」
「なんという人だ……!!」
顔が広いと、どこでも美味しいものが食べられるようになるからいいぞ。
例えば……。
「おお、ナザルではないか! ちょうど魚の南蛮風を食べるところだったのじゃ! たくさん量を作ったからそなたらも来るがよい!!」
ゴージャスなお姿の南国美女が現れた。
女王陛下のバルバラ様である。
「やあお久しぶりです。近くに来たんで寄りました。最近どうです?」
「アーランからどんどん美味いものが入ってくるのでな、食べるのが実に楽しいぞ! まあ、この気候ゆえ日持ちがせんがな」
「あったかいですからねえ」
「なので国民の食生活は実は全然変わっておらぬ」
「うーん、ファイブショーナンの日常を維持する力が強い」
国民は今の生活を変える面倒さよりも、現状維持の楽ちんさを選んでいるらしい。
そしてそして、ご馳走になった魚の南蛮風は大変美味しかった。
寒天のジュレソースが進化しているなあ。
「あっ、魚美味い……。こんな味付けがあるんだ……」
「あー、白飯が欲しい~」
「おいしー!」「おいしー!」
僕ら、色々美食を体験しているが、なんだかんだ何を食っても美味いよな……。
舌が肥えないというのはいいことだ。
こうして、ファイブショーナンでも一泊するつもりでいる僕なのだった。
なんて思い出を得た僕ら。
農業の国を後にする。
そしてしばらく旅をすると、周囲が大変ポカポカと暖かくなってくるのだ。
大陸で一番温暖な場所といえば……。
「ご主人ー!! うーみー!」
先をトテトテ走っていったコゲタが、視界がひらけた場所でぴょんぴょん飛び跳ねた。
森とか茂みとか草原だったのが、いきなり右手側が岩礁になったねえ。
海がどこまでも広がっている。
この大陸の南方には、お米があるという島と巨大な大陸が存在しているらしいが。
西方には何があるんだろうな。
案外、未知の大陸があったりして。
夢が広がるなあ。
そんな感じで一日旅をしたら、眼の前が巨大な砂浜になった。
程々の距離の海の向こうに、島がある。
「一年ぶりだなあ、ファイブショーナン! そろそろ秋のはずだけど、ここは本当に常夏だな!」
「入国審査が厳しいと聞くが、入れるのか?」
飼い主氏が心配しているが、大丈夫大丈夫。
僕がいるから顔パスだ。
しばらくすると潮が引いていき、島までの道が浮かび上がってきた。
トコトコと渡っていく僕らなのだ。
島の入口にはムキムキのお兄ちゃんが立っていて、僕らを止めた。
「入国審査をする。お前はうちの国の人間っぽいからいいよ」
「相変わらずザルだ!!」
僕だけファイブショーナン人に特徴が近いので、スルーされるのだ。
「僕は女王陛下の友人である油使いなのだが。ほら、油をだらだらーっと」
「あーっ、陛下のお知り合いでしたか。あの噂のナザルさん? グルメの巨人ナザル?」
「妙な称号がついてるな……」
結局僕の仲間だということで、シズマも飼い主氏も通してもらえた。
飼い主氏はツーテイカーの工作員なんだが、誰の連れかという信頼はとても大事なのだ!
なお、コボルドはスルーだぞ。
「コボルドが何か企むことなんかありえませんからね」
「全くその通り」
「あったかーい!」
「ぽかぽかー!」
コゲタとアララちゃんがはしゃぎながらファイブショーナンに駆け込んでいく。
うんうん、南国らしい植生と、土でできた道。
ログハウスっぽい家ばっかりある町並みとか、テンション上がるよな。
どう見ても南国の島なんだもんな。
日差しが常に強い。
だが、日陰がたくさんあるし、そこに入れば全く暑くなくなる。
海風が吹き抜けて大変気持ちいい。
これぞファイブショーナン。
「おお……!! なんというところなんだ! ただこうして立っているだけで心地良い……。この世の楽園……」
「まさにな。そのかわり、文化的にも技術的にも未熟なままだ。なぜかっていうと、人間、満たされていると成長する必要がないからだ」
「なるほど、深い……」
「今度アーシェを連れてきてやりてえなあ」
おっ、シズマが彼女持ちらしい事を言ってるじゃないか。
その彼女を二ヶ月ほったらかしなわけだが!
「せっかくなんで女王陛下に挨拶して行こう。こっちだ」
僕は宮殿に向かうことにした。
おっ、道行くおばちゃんに、コゲタとアララちゃんが果物をもらってるな。
にこにこしながら「ありがとー!」とお礼を言っている二人。
ありがとう言えて偉いぞ。
ついでに僕らも果物をもらってしまった。
あんまり甘くないマンゴーみたいなやつだ。
喉の乾きが潤うー。
五人でもりもり食べながら歩いていたら、宮殿が見えた。
どでかいログハウスである。
門番たちが座り込んでゲームみたいなことをしていたのだが、僕らに気付いてよっこらしょ、と立ち上がった。
「外の人間だな? 女王陛下はお会いにならんぞ」
「ナザルだよ。油使いのナザル」
また油を出す様を見せると、門番たちがハッとした。
「あのスーパーグルメアドバイザーのナザルか!?」
「また変な二つ名が出てきたぞ……! ここの住人、暇つぶしに僕にあだ名つけて遊んでるじゃないだろうな……?」
だが、通してくれることになった。
飼い主氏が感心している。
「さすがはナザルさん、顔が広い……!」
「ファイブショーナンとアーランの国交を樹立したの、半分は僕の功績だからね……」
「なんという人だ……!!」
顔が広いと、どこでも美味しいものが食べられるようになるからいいぞ。
例えば……。
「おお、ナザルではないか! ちょうど魚の南蛮風を食べるところだったのじゃ! たくさん量を作ったからそなたらも来るがよい!!」
ゴージャスなお姿の南国美女が現れた。
女王陛下のバルバラ様である。
「やあお久しぶりです。近くに来たんで寄りました。最近どうです?」
「アーランからどんどん美味いものが入ってくるのでな、食べるのが実に楽しいぞ! まあ、この気候ゆえ日持ちがせんがな」
「あったかいですからねえ」
「なので国民の食生活は実は全然変わっておらぬ」
「うーん、ファイブショーナンの日常を維持する力が強い」
国民は今の生活を変える面倒さよりも、現状維持の楽ちんさを選んでいるらしい。
そしてそして、ご馳走になった魚の南蛮風は大変美味しかった。
寒天のジュレソースが進化しているなあ。
「あっ、魚美味い……。こんな味付けがあるんだ……」
「あー、白飯が欲しい~」
「おいしー!」「おいしー!」
僕ら、色々美食を体験しているが、なんだかんだ何を食っても美味いよな……。
舌が肥えないというのはいいことだ。
こうして、ファイブショーナンでも一泊するつもりでいる僕なのだった。
22
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる