俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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63・帰るぞ帰るぞ

第188話 寄り道は続く、魚の南蛮風

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 フォーゼフの美味しい野菜に舌鼓を打ち、それはそれとしてスムージー酒は美味くなかったよなあ、体には明らかに良かったけど……。
 なんて思い出を得た僕ら。
 農業の国を後にする。

 そしてしばらく旅をすると、周囲が大変ポカポカと暖かくなってくるのだ。
 大陸で一番温暖な場所といえば……。

「ご主人ー!! うーみー!」

 先をトテトテ走っていったコゲタが、視界がひらけた場所でぴょんぴょん飛び跳ねた。
 森とか茂みとか草原だったのが、いきなり右手側が岩礁になったねえ。
 海がどこまでも広がっている。

 この大陸の南方には、お米があるという島と巨大な大陸が存在しているらしいが。
 西方には何があるんだろうな。

 案外、未知の大陸があったりして。
 夢が広がるなあ。

 そんな感じで一日旅をしたら、眼の前が巨大な砂浜になった。
 程々の距離の海の向こうに、島がある。

「一年ぶりだなあ、ファイブショーナン! そろそろ秋のはずだけど、ここは本当に常夏だな!」

「入国審査が厳しいと聞くが、入れるのか?」

 飼い主氏が心配しているが、大丈夫大丈夫。
 僕がいるから顔パスだ。

 しばらくすると潮が引いていき、島までの道が浮かび上がってきた。
 トコトコと渡っていく僕らなのだ。

 島の入口にはムキムキのお兄ちゃんが立っていて、僕らを止めた。

「入国審査をする。お前はうちの国の人間っぽいからいいよ」

「相変わらずザルだ!!」

 僕だけファイブショーナン人に特徴が近いので、スルーされるのだ。

「僕は女王陛下の友人である油使いなのだが。ほら、油をだらだらーっと」

「あーっ、陛下のお知り合いでしたか。あの噂のナザルさん? グルメの巨人ナザル?」

「妙な称号がついてるな……」

 結局僕の仲間だということで、シズマも飼い主氏も通してもらえた。
 飼い主氏はツーテイカーの工作員なんだが、誰の連れかという信頼はとても大事なのだ!

 なお、コボルドはスルーだぞ。

「コボルドが何か企むことなんかありえませんからね」

「全くその通り」

「あったかーい!」

「ぽかぽかー!」

 コゲタとアララちゃんがはしゃぎながらファイブショーナンに駆け込んでいく。
 うんうん、南国らしい植生と、土でできた道。
 ログハウスっぽい家ばっかりある町並みとか、テンション上がるよな。

 どう見ても南国の島なんだもんな。
 日差しが常に強い。
 だが、日陰がたくさんあるし、そこに入れば全く暑くなくなる。

 海風が吹き抜けて大変気持ちいい。
 これぞファイブショーナン。

「おお……!! なんというところなんだ! ただこうして立っているだけで心地良い……。この世の楽園……」

「まさにな。そのかわり、文化的にも技術的にも未熟なままだ。なぜかっていうと、人間、満たされていると成長する必要がないからだ」

「なるほど、深い……」

「今度アーシェを連れてきてやりてえなあ」

 おっ、シズマが彼女持ちらしい事を言ってるじゃないか。
 その彼女を二ヶ月ほったらかしなわけだが!

「せっかくなんで女王陛下に挨拶して行こう。こっちだ」

 僕は宮殿に向かうことにした。
 おっ、道行くおばちゃんに、コゲタとアララちゃんが果物をもらってるな。
 にこにこしながら「ありがとー!」とお礼を言っている二人。

 ありがとう言えて偉いぞ。
 ついでに僕らも果物をもらってしまった。
 あんまり甘くないマンゴーみたいなやつだ。

 喉の乾きが潤うー。

 五人でもりもり食べながら歩いていたら、宮殿が見えた。
 どでかいログハウスである。

 門番たちが座り込んでゲームみたいなことをしていたのだが、僕らに気付いてよっこらしょ、と立ち上がった。

「外の人間だな? 女王陛下はお会いにならんぞ」

「ナザルだよ。油使いのナザル」

 また油を出す様を見せると、門番たちがハッとした。

「あのスーパーグルメアドバイザーのナザルか!?」

「また変な二つ名が出てきたぞ……! ここの住人、暇つぶしに僕にあだ名つけて遊んでるじゃないだろうな……?」

 だが、通してくれることになった。
 飼い主氏が感心している。

「さすがはナザルさん、顔が広い……!」

「ファイブショーナンとアーランの国交を樹立したの、半分は僕の功績だからね……」

「なんという人だ……!!」

 顔が広いと、どこでも美味しいものが食べられるようになるからいいぞ。
 例えば……。

「おお、ナザルではないか! ちょうど魚の南蛮風を食べるところだったのじゃ! たくさん量を作ったからそなたらも来るがよい!!」

 ゴージャスなお姿の南国美女が現れた。
 女王陛下のバルバラ様である。

「やあお久しぶりです。近くに来たんで寄りました。最近どうです?」

「アーランからどんどん美味いものが入ってくるのでな、食べるのが実に楽しいぞ! まあ、この気候ゆえ日持ちがせんがな」

「あったかいですからねえ」

「なので国民の食生活は実は全然変わっておらぬ」

「うーん、ファイブショーナンの日常を維持する力が強い」

 国民は今の生活を変える面倒さよりも、現状維持の楽ちんさを選んでいるらしい。
 そしてそして、ご馳走になった魚の南蛮風は大変美味しかった。
 寒天のジュレソースが進化しているなあ。

「あっ、魚美味い……。こんな味付けがあるんだ……」

「あー、白飯が欲しい~」

「おいしー!」「おいしー!」

 僕ら、色々美食を体験しているが、なんだかんだ何を食っても美味いよな……。
 舌が肥えないというのはいいことだ。

 こうして、ファイブショーナンでも一泊するつもりでいる僕なのだった。

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