俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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65・勝手に遺跡の第四層へ

第193話 第四層のモンスターとか

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 攻略済みフラッグが無いところまでやって来た。
 基本的に僕らは戦闘力だけならまあまあ高いので、迷い込んだモンスターなど瞬殺なのだ。

 油で転がして、リップルがそのモンスターの弱点魔法を叩き込む。
 数が多い時は空間そのものを油まみれにして行動妨害し、リップルが広範囲魔法を叩き込む。

「安楽椅子探偵よりも正道で魔法使いやってたほうが楽なのでは……?」

「私は戦いそのものは好きじゃないんだ……。たまたま気が合う仲間が英雄になる素質を持ったやつだっただけで……」

 友達についていったら英雄になってしまったわけか。
 戦いの日々に疲れて、リップルはアーランに落ち着いた。

 英雄たちの行方はリップルと別れた後は不明なんだそうで、海を渡って別の大陸に行ったのかも知れないな。
 冒険者という枠を大きく超えた人々だったんだろう。

「フラッグを超えたら、明らかにモンスターが増えたなあ」

 ゴーレムを転がして、その隙間に油を染み込ませて構造材の摩擦を奪い、バラバラにする。
 攻撃もまともに通じず、魔法にも高い耐性を持ち、とんでもない腕力で暴れまわる石の怪物がゴーレムだ。
 正当な攻略方法は、頭に隠された魔法文字を削り取ること。大変難易度が高い。

 なので、僕はこいつの関節や接合部分を油でツルッツルにしてバラすことにしたのだった。

「ゴーレムを子供扱いしたね? シチュエーションがはまると、ナザルはプラチナ級並の実力を発揮するなあ」

「ははは、ただの油使いなんで名誉職レベルだよ」

「実力でプラチナ級になった化け物並だって言ってるんだよ」

「名誉職なのに明らかにプラチナ級以上っぽい人が何かを仰っておられる」

「そんな大したものではない。戦うとか虚しいし。おっと、ライトニングバインド」

『ウグワーッ!!』

 新たに出現していたスライムみたいなモンスターが、リップルの放った稲妻の束縛に囚われた。
 放っておいてもシビシビしながら滅びていくと思われるが、放置して後ろから攻撃されてもあれだ。
 僕はスライムに指をつぷっと入れて、油をドバっと流し込んだ。

 おお、スライムが一瞬で濁った。
 こいつの酸性粘液みたいなのを一瞬で全部薄めきったな。
 核が赤から茶色に変わって、すぐ動かなくなる。

「こうしてみると……こいつも食えそうな気がするなあ」

「君も油使いとしての腕を上げてるな。万人に通じる一芸だよそれは」

「どんなに強くても、グルメにはあまり関係がないからね……」

「私と一緒じゃないか」

 そんなバカな!
 おっと、そんな話をしていたら、常に先行させている油に床が反応した。

 ぐにゃぐにゃと動き始めて、油を包み込もうと通路のあちこちから腕が伸びてくる。

「フロア・イミテーターだ。盗賊を連れていない私達にとっては、恐ろしいトラップでありモンスターだねえ」

「ほんとほんと」

 うねうね動く廊下に、リップルが広範囲殲滅型の火炎魔法を放り込んだ。
 おお、燃えている。
 そして苦しんでいる。

 最後はどろどろになったあと、焼け焦げてぼろぼろと崩れ落ちていった。
 その下から本来の廊下が出てくる。

「あ、そうか! フロアイミテーターがいると、壁や床がちょっとだけせり上がるんだな。なるほどなあ……」

「何に活かすつもりだい?」

「いやあ、もし同じようなのに遭遇したらと思って……。だけどもう迷宮には潜らないか」

 僕らはそもそも、冒険らしい冒険をする気が無いのだった!
 こうして迫りくる罠やモンスターを、オーバーな火力や油で撃破しながら進撃。
 正式な探索ではないから、フラッグも立てていない。

 どんどん直進していったところで、大きな扉に到着した。
 魔法によって施錠されていたから、僕が罠の出てきそうなところにひたすら油を流し込み、リップルの解錠魔法で開けた。

 扉の中で、ヌルルルルッとなにかが動いた音がした。
 うん、摩擦がゼロだから全く機能しなかったみたいだな。

「これは……吊り天井の罠だね。魔法使いの解除を警戒してか、機械仕掛けの罠だったみたいだけど、だからこそナザルに無力化された」

「ははは。歯車など僕の前では無力」

 扉を開き、奥へと向かう。
 そこは廊下だった。

 今までの遺跡とは違い、瓦礫などがない。
 片付いていて、静かで、魔法の明かりがあちこちに灯されていた。

「明らかに他の廊下とは異なる目的で作られているのが分かるね。これは……我々の求めていたものがあるかも知れないよ」

「そんな都合よく、情報が書かれた書物があるわけが……」

 なんて言っていたら。
 突き当りの部屋の扉を開けると、そこが書庫だった。

 な、な、なんだってー!?

「本当に書庫になっていた。ワンダバーの本捨て場とは違う、本物の書庫だ……。リップル、なんでここに書庫があると……? 偶然……?」

「いや、実は君が戻って来る前に、私の夢の中でやたら頭の良さそうな男が現れてね。第四階層に必要な知識が眠る書庫がある、と教えてくれたんだ。私はその時まで、別に必要な知識なんかなかったから、なんて支離滅裂な夢だと思ってたけど……」

「知識神があからさまな介入をしてきやがったな……!? いや、でもありがたい!」

 南の島に関する本を、ここで探すとしようじゃないか。

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