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66・一杯引っ掛けながら南国談義
第196話 素朴な美食がうまい
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ギルボウがまず出してきたものは……。
パスタにオブリーオイルを絡め、ハーブとにんにくで炒めたやつ……。
そう、ペペロンチーノだ!
「ほう! クリームに包まれてもいない、具材も少なめのシンプルなパスタだ。これは……?」
「ペペロンチーノと言ってだな。一番シンプルなオブリーオイルで食べさせるタイプのパスタだ。美味いぞ」
「ははは、私は日々の贅沢の中ですっかり舌が肥えているんだぞ。そこにこんなシンプルな……」
ぐるぐるっとフォークでパスタを巻いて口に運ぶ船主。
その目がカッと見開かれた。
「う、う、うまーい!!」
「な?」
「私もペペロンチーノは好きだな。シンプルだし、ちょっとお腹を満たしたい時にちょうどいい」
リップルもパクパク食べている。
これのにんにく抜き、ちょっとしょっぱいベーコンを散らしたやつはコゲタ用。
「コゲタ、ぎるぼうのパスタすきー!」
「おうそうかそうか。味のわかるコボルドだよなあお前さんは」
ギルボウがコゲタの頭をぐりぐり撫でた。
さて、船主はもりもりとペペロンチーノを食べている。
あっという間に食べ終わった。
これは、ギルボウがあえて量を少なめにしているためだ。
まだまだどんどん料理を食べて欲しいからな。
「驚いた……。パスタとオブリーオイルだけなのに、なんであんなに美味しかったんだ……?」
「それはな、今まで船主が食べてきたのは凝ったソースを食べさせるためにパスタがある料理だったんだ。ペペロンチーノは、パスタが主役なんだよ。オブリーオイルとにんにくとハーブで味付けして、パスタを存分に食う料理なんだ。どうだ、腹に溜まる感じがするだろ」
「するなあ……!」
大変清々しい顔つきになった船主なのである。
僕がタメ口になってしまっているが気付いていない。
いや、思わず美食の紹介になると熱が入って、敬語を忘れるんだよな……。
「食い終わったか? よし、じゃあシンプルの次にはシンプルが来る。トウフにショーユを掛けて食ってくれ。刻みハーブを載せてあるぞ。一緒に水割り蒸留酒を飲むといい」
「ほうほう……!? 皿の上が驚きの白さなんだが? この白いキューブがトーフか。私が出向いた貴族や商人たちはあまり食べていなかったが」
僕は肩をすくめた。
「そりゃあそうさ。豆腐はとても繊細で淡白な味わいなんだ。だが、深みがある。これに醤油を掛けて食べるとたまらないぞ……」
「それほど……!? どれどれ……」
豆腐……すなわち冷奴を食べる船主。
醤油にも魚醤のような癖が無いことに驚いている。
「おお、これは……。何とも言えぬ爽やかな味だ……! 日頃の贅沢で鈍っていた舌が鋭さを取り戻すかのようだ。そして……なんと淡い歯ごたえなのだろう……。口の中でほろりと崩れる……。これは不思議な美味さだな……」
そして雑味のない酒を口にする船主。
「美味い……! これほど美味い酒が下町にあるなんて……」
「面倒がらずに、きちんと仕事をする酒蔵を選びゃ、値段に関係なく旨い酒はあるんだよ」
ギルボウが笑う。
「酒ってのは値段で確かに味が変わるが、ある程度から上は希少価値が変わるだけで対して旨さは変化しなくなる。この酒はちょうどいい辺りってことさ」
「なるほどなあ……」
船主はなんか気分良くなりつつ、冷奴と酒を交互にやっている。
日本の酒飲みのおっさんみたいだ。
僕も冷奴をいただく。
美味い。
明らかに豆腐のレベルが上がってる。
醤油のレベルも上がってる。
「この世界の人達の進化は凄いな……。僕がちょっと道を示すと、あっという間にそれを極めてしまうぞ」
「普通、人々に明確な道を示すなんてこと、できないものだよ」
リップルがそんな事を言いながら、ちょっと違うものを食べてる。
醤油ではなく、ビネガーとハーブで豆腐を食べてるのか!
「しょっぱすぎるのも好きじゃないからねえ。ビネガーはいいぞ……体にもいいし……」
またご年配みたいなこと言ってる。
だが、最近は健康的なものを食べて胃腸も元気らしく、揚げ物も昼間ならパクパク食べているリップル。
長生きしてくれよな……!
その後、ギルボウは注文通りのシンプルメニューで攻めてくれた。
もろきゅうが出た後、メインディッシュの肉料理は唐揚げ。
これを寒天を使ったジュレソースでいただく……。
おいどこがシンプルなんだ!?
技巧の粋が凝らされた高級料理になってるじゃないか……。
「こ、こんな美味しい鳥肉はどんな貴族のところでも食べられなかった! 揚げ物なのにアッサリしていて、しかも酸味で食欲が刺激されて、どんどん食べてしまう……!」
「貴族のところで出る料理は、基本、こってりオンザこってりだろうからなあ……」
さもありなん、と僕は頷く。
最近、アーランの貴族や上級商人たちは如実に太ってきているのだ。
美食が彼らの肉体を蝕みつつある!
運動しよう!
その点、ギルボウの料理は消化しやすいようにしたり、油を抜いたりして作られている。
体にいいんだな。
どうもこいつ、僕がふんだんに油を使って料理する姿を見て、「あの真似をした料理を摂取し続けたら死ぬ」と直感したらしい。
鋭い。
そんなさっぱり料理をうまいうまいとパクパク食べる船主。
存分に健康料理で心身をデトックスして行ってくれ!
「ナザル、本題、本題」
「あっ、そうだった!!」
すっかり船主に飯を食わせることに夢中になっていた。
南の島の記録を見せねばならないのに。
パスタにオブリーオイルを絡め、ハーブとにんにくで炒めたやつ……。
そう、ペペロンチーノだ!
「ほう! クリームに包まれてもいない、具材も少なめのシンプルなパスタだ。これは……?」
「ペペロンチーノと言ってだな。一番シンプルなオブリーオイルで食べさせるタイプのパスタだ。美味いぞ」
「ははは、私は日々の贅沢の中ですっかり舌が肥えているんだぞ。そこにこんなシンプルな……」
ぐるぐるっとフォークでパスタを巻いて口に運ぶ船主。
その目がカッと見開かれた。
「う、う、うまーい!!」
「な?」
「私もペペロンチーノは好きだな。シンプルだし、ちょっとお腹を満たしたい時にちょうどいい」
リップルもパクパク食べている。
これのにんにく抜き、ちょっとしょっぱいベーコンを散らしたやつはコゲタ用。
「コゲタ、ぎるぼうのパスタすきー!」
「おうそうかそうか。味のわかるコボルドだよなあお前さんは」
ギルボウがコゲタの頭をぐりぐり撫でた。
さて、船主はもりもりとペペロンチーノを食べている。
あっという間に食べ終わった。
これは、ギルボウがあえて量を少なめにしているためだ。
まだまだどんどん料理を食べて欲しいからな。
「驚いた……。パスタとオブリーオイルだけなのに、なんであんなに美味しかったんだ……?」
「それはな、今まで船主が食べてきたのは凝ったソースを食べさせるためにパスタがある料理だったんだ。ペペロンチーノは、パスタが主役なんだよ。オブリーオイルとにんにくとハーブで味付けして、パスタを存分に食う料理なんだ。どうだ、腹に溜まる感じがするだろ」
「するなあ……!」
大変清々しい顔つきになった船主なのである。
僕がタメ口になってしまっているが気付いていない。
いや、思わず美食の紹介になると熱が入って、敬語を忘れるんだよな……。
「食い終わったか? よし、じゃあシンプルの次にはシンプルが来る。トウフにショーユを掛けて食ってくれ。刻みハーブを載せてあるぞ。一緒に水割り蒸留酒を飲むといい」
「ほうほう……!? 皿の上が驚きの白さなんだが? この白いキューブがトーフか。私が出向いた貴族や商人たちはあまり食べていなかったが」
僕は肩をすくめた。
「そりゃあそうさ。豆腐はとても繊細で淡白な味わいなんだ。だが、深みがある。これに醤油を掛けて食べるとたまらないぞ……」
「それほど……!? どれどれ……」
豆腐……すなわち冷奴を食べる船主。
醤油にも魚醤のような癖が無いことに驚いている。
「おお、これは……。何とも言えぬ爽やかな味だ……! 日頃の贅沢で鈍っていた舌が鋭さを取り戻すかのようだ。そして……なんと淡い歯ごたえなのだろう……。口の中でほろりと崩れる……。これは不思議な美味さだな……」
そして雑味のない酒を口にする船主。
「美味い……! これほど美味い酒が下町にあるなんて……」
「面倒がらずに、きちんと仕事をする酒蔵を選びゃ、値段に関係なく旨い酒はあるんだよ」
ギルボウが笑う。
「酒ってのは値段で確かに味が変わるが、ある程度から上は希少価値が変わるだけで対して旨さは変化しなくなる。この酒はちょうどいい辺りってことさ」
「なるほどなあ……」
船主はなんか気分良くなりつつ、冷奴と酒を交互にやっている。
日本の酒飲みのおっさんみたいだ。
僕も冷奴をいただく。
美味い。
明らかに豆腐のレベルが上がってる。
醤油のレベルも上がってる。
「この世界の人達の進化は凄いな……。僕がちょっと道を示すと、あっという間にそれを極めてしまうぞ」
「普通、人々に明確な道を示すなんてこと、できないものだよ」
リップルがそんな事を言いながら、ちょっと違うものを食べてる。
醤油ではなく、ビネガーとハーブで豆腐を食べてるのか!
「しょっぱすぎるのも好きじゃないからねえ。ビネガーはいいぞ……体にもいいし……」
またご年配みたいなこと言ってる。
だが、最近は健康的なものを食べて胃腸も元気らしく、揚げ物も昼間ならパクパク食べているリップル。
長生きしてくれよな……!
その後、ギルボウは注文通りのシンプルメニューで攻めてくれた。
もろきゅうが出た後、メインディッシュの肉料理は唐揚げ。
これを寒天を使ったジュレソースでいただく……。
おいどこがシンプルなんだ!?
技巧の粋が凝らされた高級料理になってるじゃないか……。
「こ、こんな美味しい鳥肉はどんな貴族のところでも食べられなかった! 揚げ物なのにアッサリしていて、しかも酸味で食欲が刺激されて、どんどん食べてしまう……!」
「貴族のところで出る料理は、基本、こってりオンザこってりだろうからなあ……」
さもありなん、と僕は頷く。
最近、アーランの貴族や上級商人たちは如実に太ってきているのだ。
美食が彼らの肉体を蝕みつつある!
運動しよう!
その点、ギルボウの料理は消化しやすいようにしたり、油を抜いたりして作られている。
体にいいんだな。
どうもこいつ、僕がふんだんに油を使って料理する姿を見て、「あの真似をした料理を摂取し続けたら死ぬ」と直感したらしい。
鋭い。
そんなさっぱり料理をうまいうまいとパクパク食べる船主。
存分に健康料理で心身をデトックスして行ってくれ!
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「あっ、そうだった!!」
すっかり船主に飯を食わせることに夢中になっていた。
南の島の記録を見せねばならないのに。
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