俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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67・初冬のあれこれ

第198話 キノコがこっちまで来た

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 かなり肌寒くなってきて、いよいよ冬だなあと思う頃合いになってきた。
 アーランは普通に雪が降る。
 街が真っ白に染まると、かなり綺麗なんだよね。

 で、コゲタが喜ぶ。
 いいことだ!

 そして初冬と言える頃合いのアーランに、新たな食べ物がやって来た。
 キノコである……!!

 瓶詰めになったキノコ、乾物になったキノコ、様々なキノコが来た。
 瓶詰めキノコは中の時間を止めてあるような状態なので、まあまあ美味いキノコが食べられる。
 乾物は戻す過程で凄まじい量の旨味を吐き出すので、色々な料理に使えるだろう。

 僕がいた時には乾物キノコの話は出てなかったと思うから、これは恐らく後から発見したのだろうな。
 間違いない輸出品だ。

 瓶詰めキノコはそのままスープの具材として流行り、あるいは僕がざく切りにしたものをかき揚げにしたメニューを巷に流したので、サクサクほくほくのキノコ天ぷらが大流行した。

 いいことだ。
 そしてそんな事をしていると、お呼びが掛かるのである。

 今僕は、第二王子殿下の家に来ている……!

「キノコのかき揚げ、美味いね!」「殿下もべた褒めだったよ!」「だが殿下は、ナザルならではの工夫が食べてみたいと仰ってるんだ」「無茶振りだと思うが……やれる?」

 シェフたちが心配してくる。

「ははは、任せてくれ。かき揚げは何と合うと思う? 麺類だよ……!!」

 僕は蕎麦切りを茹でて、醤油だしを作った。
 そしてキノコのかき揚げを別皿で用意する。

「別皿で……!? いや、確かに載せたらふやけてしまうが」「何を企んでいるんだ……」

「これは、そのまま食べてよし、載せてふやかしてよし、蕎麦と一緒に頬張ってよしという組み合わせで……」

「なるほどー!!」

 シェフたちにはご納得いただけたようだ。
 無論、デュオス殿下も大いに気に入って下さった。

「塩味と旨味のあるスープが、油を帯びてなんとも言えぬ美味さになっている! そして蕎麦切りとキノコのかき揚げの組み合わせがまた堪らん……! サクサクで食べてもいいし、ふやかしてつゆを吸わせても美味い! キノコそのものの滋味も深い……。これはいいな。体が温まる……」

 にっこり殿下。
 良かった良かった。
 奥方も大いに気に入ってくださったのだった。

 なお、育ち盛りのお嬢さんは別メニューで、フレンチトーストにベーコンとチーズをたっぷり挟んだやつを出した。
 むちゃくちゃ喜んでくれた。

「普段食べているパンがこんなに美味しくなるの!? あーん、これスキスキ! 私ずっとこれだけ食べる~!!」

 パンとバターと卵とチーズ、ベーコン。
 既にこの屋敷で使われている食材を、普段とは違う組み合わせにすることで生まれるメニューだ。
 こってり大好きな若者には最高でしょうねえ……。

 こうして、僕はまた第二王子の信頼を得て、出資を受けることができるのだった。

 殿下たちの部屋から出てきた僕を、シェフが迎えてくれる。

「やったな!」「常勝じゃないか……」「割と今あるメニューの組み合わせの違いで作れるものばかりだから助かる」「毎日食べるものが違うなんて、本当に凄い時代になったもんだ」

 うんうん、アーランは一昨年までは食にそこまで興味がなかったから、ずっと同じものばかり食ってたんだよな。
 パンと野菜のスープと、ゆで卵とかチーズとか。
 乳製品はそこまで一般的ではなかったから、本当に食生活が貧しかった。

 あ、ちょこちょこ魚は出たな。
 干し魚だが。

 あの灰色の食生活がまるで遠い昔のようだ。
 入口近くに設けられた部屋では、シャザクがコゲタとお喋りしていた。
 いつも世話を任せてしまってすまんね。

「いや、気にするな。しかし話す度にコゲタは賢くなっていくな。ナザルの知識を吸収していっているようだ。そろそろコボルドとしても成人なのだろう?」

「多分。背もちょっと伸びてるし。なーコゲタ」

「コゲタ、ちょびっとおおきくなった!」

「いいものだなあ。私もコボルドを飼うかなあ……。こう、ともに生きて成長を喜びたい」

「シャザクは普通に結婚して子どもを持ったらどうだ……?」

「うーむ……! 親族から勧められて見合いはしているのだが……」

 していたのか!
 ちなみに、シャザクとコゲタがいた部屋は、実はコゲタのために設けられた待合室なのである。
 玄関の一角だったところに壁を作り、絨毯を敷いて椅子と明かりを取り付けてある。

 うーん、僕の特別扱いが分かる!
 王族の屋敷にコボルド待機室を作らせてしまうとは。

「ナザル、今度アドバイスをしてくれ。私は男爵ではあるのだが、領地を持たない文官貴族だ。結婚によって己の立場を強めていく形になるのだが……」

「ふむふむ」

「とある有力な商人の娘との見合いに望むことになっている」

「ほうほう」

「今、商人たちの間で名を挙げている君の友として、名を貸して欲しい」

「僕の友人ということで箔をつけてお見合いを有利に進めるんだな? いいぞいいぞ。幾らでも名前を貸そう。そしてアドバイスとは」

「女性はどういう話題で盛り上がるのだろうな」

「それは僕に聞くな」

 全く分からん。
 だが、今度シャザクの見合いについていくことになったのだった。
 成り行きで話がどんどん転がっていくな……。

 まあ、彼はコボルドを飼うよりは家庭を持つほうが良かろう……!
 そして我が子の成長を楽しむのだ。

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