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67・初冬のあれこれ
第199話 シャザクのお見合い
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シャザクが見合いをするという日がやって来た。
彼と僕の仲なので、助言を頼まれたらやらねばなるまい。
一応貴族なんだから、どーんと構えてたらいいのに。
だが、土地を持たない官僚な貴族だから、色々自信がないのだな……。
今回の見合いは力のある商人の娘がお相手らしいから、見事マッチングできればシャザクの未来が開けることであろう。
お金持ちな家がバックに付くと全然世界が変わるからな。
「頼むぞナザル……。お前がバックについてくれているだけで心強い」
「そうかそうか。シャザクの一族はどうなんだ?」
「爵位を持つのは私だけだからな……。ほかは戦力にならんのだ」
おお、土地なし貴族の辛さ。
お屋敷に住んでるわけでもないらしいしな……。
「ご主人、きょうはどこいくの?」
「シャザクの応援だぞ」
「おうえん? しゃざく、がんばれー!」
「おお、ありがとうな。やっぱり子どもはいいなあ……。欲しいなあ、子ども……」
やる気になれ、シャザク。
お前ならやれる。
こうしてやって来たのは、商業地区の中心にあるかなりいいレストランだった。
食堂ではない。
レストランだ。
アーランの高級料理を出すというお店で……いかにも高級そうな店構えに、慣れぬものなら気後れしてしまうだろう。
だが、シャザクは第二王子の部下なので、豪華な建物なんてものは見慣れているのだ。
まずは第一関門突破であろう。
で、僕とコゲタはシャザクに用意されたちょっといい服に身を包んでいた。
彼の家族……あるいは郎党であるという扱いだ。
レストランの大きな個室に案内されると、そこにはシャザクのお相手とその一族が待っていた。
ほうほう、見たことがある顔ぶれだ。
僕は商業地区に食材を卸している人間として、彼らと何度も会ったことがあるからな。
「ほう、ナザル殿のお知り合いだったか!!」
向こうの偉そうなおじいさんがあごひげをしごきながら頷いた。
あれ、商業組合の前会長だね。
お見合い相手、大物の娘じゃないか。
「なんだかナザルの存在でもう信頼を勝ち取ってしまった気分だな……」
「普通に顔見知りばかりだからね」
「あまりにも心強い……」
「誰がこの国の美食に食材を提供してると思ってるんだ」
僕は大豆とにんにくとオブリーとトマドの元締めだぞ。
そんな気はないがそんなポジションになっていたんだ。
「ナザルさん!? どうしてここに!?」
聞き覚えのある女性の声がするなあ。
誰だろうなーと思ったら。
髪を下ろして、美しく着飾ってお化粧もバッチリ決まっているエリィがいた。
あー!
シャザクのお見合い相手って君かあ!
「僕はシャザク男爵の友人なんでね。彼と一緒に様々な活動をして、アーランに美味しいものを広めていたところなんだ」
僕の説明に、エリィの一族がおぉーっと感心の声をあげた。
うん、向こうの一族は味方につけた気がする!
第二関門突破だな!
エリィ一人だけ、解せぬ……といった顔をしていた。
気にしないでいただきたい。
こうして始まった会食。
シャザクは実直な感じで話をし、エリィもこれをお上品な感じで受け止めている。
いい感じなのではないか。
というかエリィ、大商人の娘だったんだな。
「我が一族直系の三女でしてな」
「ははあ、なるほど」
長女は領地持ちの貴族の奥方に、次女は別の大商人の奥方になったらしい。
で、エリィで第二王子側のポジションを狙うと。
なかなか老獪ではないか、大商人。
おっ、料理が出てきたぞ。
食前酒、流石にいい酒だ。
雑味のない果実酒だね。
で、スープが出てくる。
淡い茶色に濁った、魚介の香りと大豆由来の旨味に満ちた滋味あふれるスープ……。
「味噌汁じゃん!!」
「どうされた、ナザル殿?」
「これは僕が開発したオリジナルのスープです」
「なんと!?」
先代会長と一族の者たちが驚く。
珍しいスープに、エリィはおっかなびっくりだが……。
僕と行動をともにしているから、こういうのに完全に慣れているシャザクは落ち着いたものだ。
「エリィさん。これは塩味のするスープですが、大豆を発酵させて作った味噌というペーストが深い味わいを出してくれているものです。飲酒をした後、少々酔い過ぎてしまった後には特に美味しい」
「まあ……! 詳しいんですね……! ……そっか、ナザルさんの友達ですもんね……」
「正気に戻るなエリィ。お見合い続けて、続けて」
「やりにくいなあー!」
すっかり場の雰囲気はまったりしたものになっていた。
顔見知りしかいないからね!
唯一のアウェーはシャザクなんだが、僕の友人というアドバンテージで一点突破。
出される珍しい料理に次々嫌味のない蘊蓄を披露し、食べ方のマナーも完璧。
ということで、エリィの一族は完全に彼を気に入ってしまったようだった。
まあ、できる男だからな。
自己評価が低いだけだ。
納得してないのはエリィだけだが、これは僕が彼の友人だからに他ならない!
まあまあ、将来性が良く分からない、僕のような謎の人物よりもシャザクの方がいいぞ。
そしてこの世界の結婚は、家と家の関係を結ぶものだ。
当人たちの好き嫌いでは決まらない。
エリィの一族がシャザクを気に入ったということは、この見合いは成立したと言っていいだろう。
おめでとう、二人とも!
僕は祝福するよ!
「解せぬ……」
エリィ、そんな顔はやめなさい。
僕は、コゲタがパクパクとコボルド用ご飯を食べる横で、二人の将来を寿ぐのだった。
彼と僕の仲なので、助言を頼まれたらやらねばなるまい。
一応貴族なんだから、どーんと構えてたらいいのに。
だが、土地を持たない官僚な貴族だから、色々自信がないのだな……。
今回の見合いは力のある商人の娘がお相手らしいから、見事マッチングできればシャザクの未来が開けることであろう。
お金持ちな家がバックに付くと全然世界が変わるからな。
「頼むぞナザル……。お前がバックについてくれているだけで心強い」
「そうかそうか。シャザクの一族はどうなんだ?」
「爵位を持つのは私だけだからな……。ほかは戦力にならんのだ」
おお、土地なし貴族の辛さ。
お屋敷に住んでるわけでもないらしいしな……。
「ご主人、きょうはどこいくの?」
「シャザクの応援だぞ」
「おうえん? しゃざく、がんばれー!」
「おお、ありがとうな。やっぱり子どもはいいなあ……。欲しいなあ、子ども……」
やる気になれ、シャザク。
お前ならやれる。
こうしてやって来たのは、商業地区の中心にあるかなりいいレストランだった。
食堂ではない。
レストランだ。
アーランの高級料理を出すというお店で……いかにも高級そうな店構えに、慣れぬものなら気後れしてしまうだろう。
だが、シャザクは第二王子の部下なので、豪華な建物なんてものは見慣れているのだ。
まずは第一関門突破であろう。
で、僕とコゲタはシャザクに用意されたちょっといい服に身を包んでいた。
彼の家族……あるいは郎党であるという扱いだ。
レストランの大きな個室に案内されると、そこにはシャザクのお相手とその一族が待っていた。
ほうほう、見たことがある顔ぶれだ。
僕は商業地区に食材を卸している人間として、彼らと何度も会ったことがあるからな。
「ほう、ナザル殿のお知り合いだったか!!」
向こうの偉そうなおじいさんがあごひげをしごきながら頷いた。
あれ、商業組合の前会長だね。
お見合い相手、大物の娘じゃないか。
「なんだかナザルの存在でもう信頼を勝ち取ってしまった気分だな……」
「普通に顔見知りばかりだからね」
「あまりにも心強い……」
「誰がこの国の美食に食材を提供してると思ってるんだ」
僕は大豆とにんにくとオブリーとトマドの元締めだぞ。
そんな気はないがそんなポジションになっていたんだ。
「ナザルさん!? どうしてここに!?」
聞き覚えのある女性の声がするなあ。
誰だろうなーと思ったら。
髪を下ろして、美しく着飾ってお化粧もバッチリ決まっているエリィがいた。
あー!
シャザクのお見合い相手って君かあ!
「僕はシャザク男爵の友人なんでね。彼と一緒に様々な活動をして、アーランに美味しいものを広めていたところなんだ」
僕の説明に、エリィの一族がおぉーっと感心の声をあげた。
うん、向こうの一族は味方につけた気がする!
第二関門突破だな!
エリィ一人だけ、解せぬ……といった顔をしていた。
気にしないでいただきたい。
こうして始まった会食。
シャザクは実直な感じで話をし、エリィもこれをお上品な感じで受け止めている。
いい感じなのではないか。
というかエリィ、大商人の娘だったんだな。
「我が一族直系の三女でしてな」
「ははあ、なるほど」
長女は領地持ちの貴族の奥方に、次女は別の大商人の奥方になったらしい。
で、エリィで第二王子側のポジションを狙うと。
なかなか老獪ではないか、大商人。
おっ、料理が出てきたぞ。
食前酒、流石にいい酒だ。
雑味のない果実酒だね。
で、スープが出てくる。
淡い茶色に濁った、魚介の香りと大豆由来の旨味に満ちた滋味あふれるスープ……。
「味噌汁じゃん!!」
「どうされた、ナザル殿?」
「これは僕が開発したオリジナルのスープです」
「なんと!?」
先代会長と一族の者たちが驚く。
珍しいスープに、エリィはおっかなびっくりだが……。
僕と行動をともにしているから、こういうのに完全に慣れているシャザクは落ち着いたものだ。
「エリィさん。これは塩味のするスープですが、大豆を発酵させて作った味噌というペーストが深い味わいを出してくれているものです。飲酒をした後、少々酔い過ぎてしまった後には特に美味しい」
「まあ……! 詳しいんですね……! ……そっか、ナザルさんの友達ですもんね……」
「正気に戻るなエリィ。お見合い続けて、続けて」
「やりにくいなあー!」
すっかり場の雰囲気はまったりしたものになっていた。
顔見知りしかいないからね!
唯一のアウェーはシャザクなんだが、僕の友人というアドバンテージで一点突破。
出される珍しい料理に次々嫌味のない蘊蓄を披露し、食べ方のマナーも完璧。
ということで、エリィの一族は完全に彼を気に入ってしまったようだった。
まあ、できる男だからな。
自己評価が低いだけだ。
納得してないのはエリィだけだが、これは僕が彼の友人だからに他ならない!
まあまあ、将来性が良く分からない、僕のような謎の人物よりもシャザクの方がいいぞ。
そしてこの世界の結婚は、家と家の関係を結ぶものだ。
当人たちの好き嫌いでは決まらない。
エリィの一族がシャザクを気に入ったということは、この見合いは成立したと言っていいだろう。
おめでとう、二人とも!
僕は祝福するよ!
「解せぬ……」
エリィ、そんな顔はやめなさい。
僕は、コゲタがパクパクとコボルド用ご飯を食べる横で、二人の将来を寿ぐのだった。
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