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69・ファイブショーナンから雪を見に来る
第205話 南国よりの来客
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「ナザル、ファイブショーナンから女王陛下と国民たちが観光に来るらしいぞ」
「なんだって」
やって来たシャザクが、とんでもないことを僕に教えてくれたのだった。
それで、そいつをどうしろというんだ?
「殿下はお前に、女王陛下たちの観光案内をしてくれと仰せだ」
「なんだって」
いや、確かにバルバラ女王は親しい仲だが。
一国の指導者の歓待を冒険者に任せるとは……!
本当にいいのか?
いいのだろうな……。お金ももらえるらしいので、僕はこの仕事を引き受けることにした。
王家より直々の依頼なので、断るという選択肢はないしな……。
ということで。
「女王陛下が来るので手を貸して欲しい」
「どうして私が!?」
もこもこに着込んでギルドの酒場にいたリップルに声を掛ける。
「暇そうだったので」
「そりゃあ暇だけどさあ。冬になると安楽椅子冒険者の仕事も減るし……」
さらにさらに。
「女王陛下が来るんで一緒にお出迎えしませんか」
「あらいいわね。私、ちょうどやることがなくなって来たところだったの」
ドロテアさんに声も掛けてみた。
このギルドマスター夫人は人間ではないので、年を取らない。
お子さん三人がみんな成人しているというのに、ご本人は異常に若々しい。
二十歳代半ばそこそこにしか見えない……。
「やあやあドロテアさんお久しぶり」
「あらーリップルさーん」
いえー、と二人でハイタッチしている。
人生のベテランお二人だから、コゲタがやるハイタッチよりもゆっくりしてて落ち着いたものだ……。
それを口にしたら睨まれそうだから何も言わないけど。
後は……。
「どの面下げて私に依頼を……?」
「ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます~、じゃなーい!!」
エリィにどつかれたのだった。
彼女に会いに行くと行ったらシャザクもついてきた。
で、むくれているエリィに美味しいお菓子の詰め合わせを差し入れるのだ。
「あ、ありがとうございます、気を使わせちゃって……」
「親しき仲にも礼儀というものは必要ですから。どうぞよろしくお願いします、エリィさん」
これでエリィは断れなくなった。
さて、バルバラ女王を迎える勢力は、僕、リップル、ドロテアさん、エリィ、シャザクの五人……。
「ご主人~!」
コゲタが僕のにおいを追ってやって来た!
六人になりました。
「そっか、コゲタも冒険者にチャレンジするし、お仕事してもいいかもなー」
「おしごとするー!」
「あらー、コゲタちゃんはやっぱりカワイイわね」
ドロテアさんがしゃがんでコゲタを目線を合わせて、いぇーい、とタッチする。
この二人は仲良しなのだ。
年の差が凄い。
この間聞いたんだけど、コボルドの寿命は二十年ちょっとくらいらしいので、未成年のコゲタは多分三歳くらいではないか。
大体四歳で成人ということになるらしい。
もうすぐ大人だし、アーランの観光大使みたいな役割を果たしてもよかろう……。
こうしてメンバーが揃ったので、女王陛下の到着を待つことにした。
アーランに向かってやって来る一団がある。
妙に露出度が高いな。
あっ、何か着込み始めた。
この大陸の気候はなかなか極端で、寒いところと暖かいところが明確に切り替わる。
あの辺りがアーランの寒さが始まるところなんだな。
視認できるんだ……。
もこもこしたファイブショーナンの人たち、入国!
「来たのじゃー! わらわ、冬、初体験!」
「バルバラ陛下、ようこそ真っ白なアーランへ!」
「うむうむ」
彼女をお迎えしたら、大変ご満悦なのだった。
ずっと温暖なファイブショーナンでは、雪を見ることなど絶対にない。
女王の連れて来た国民たちも、珍しそうにずっときょろきょろしている。
あっ、雪をすくって食べようとしている!
「雪はばっちいので食べてはいけないよ」
「そうなの!?」
「降ってきたばかりならいいが、降り積もっているものは色々な汚れを吸っているからね」
リップルの言葉の説得力に、南国からの観光客はほほー、と感心するのだった。
「では皆さん、私が案内するわね。雪の商店街も楽しいものよ」
「えー、この旗を目印についてきてくださーい」
ドロテアさんとエリィが、観光客の一部を連れて移動していった。
エリィはその商店街……商業地区を根城にする、豪商の娘だしな。
心強い!
で、僕とリップルとシャザク、それとコゲタで、女王陛下と彼女のお付きを案内する。
まずは……。
「雪の王宮がいいんじゃない?」
リップルが凄い提案をしてきたな……。
「いいの?」
「いいんじゃないかな」
シャザクが適当な感じで承認してきたぞ。
では行こう行こう、ということになった。
山の手の町並みは、雪を纏うと実に絵になる。
女王とお付き達が、「ほおー」「美しい」「絵になりますねこれ!」と大盛りあがりだ。
「ところで女王陛下、どうしていきなりファイブショーナンの人をたくさん連れてお越しになったんで?」
「それはじゃな、ツーテイカーの連中が急に貿易力を身に着けて、各地によく冷えた酒を売り込んでいるらしいからじゃ。なぜ方向転換したかは分からぬが、より手強くなったわ。なので、わらわが自らこちらに来て、アーランとの結びつきの強さを強調する意図がじゃな」
「な、なるほどー。誰がツーテイカーを強くしたんでしょうねえー」
「知らぬ。それにここまで来た本当の理由は、雪が降ったと聞いて、これはアーランで熱い料理が美味いぞと思ってな……。ついでに、大人数で楽しもうということで国民からランダムに選んで連れてきた」
目的は本当に観光だった!!
内心でホッとする僕なのだった。
「なんだって」
やって来たシャザクが、とんでもないことを僕に教えてくれたのだった。
それで、そいつをどうしろというんだ?
「殿下はお前に、女王陛下たちの観光案内をしてくれと仰せだ」
「なんだって」
いや、確かにバルバラ女王は親しい仲だが。
一国の指導者の歓待を冒険者に任せるとは……!
本当にいいのか?
いいのだろうな……。お金ももらえるらしいので、僕はこの仕事を引き受けることにした。
王家より直々の依頼なので、断るという選択肢はないしな……。
ということで。
「女王陛下が来るので手を貸して欲しい」
「どうして私が!?」
もこもこに着込んでギルドの酒場にいたリップルに声を掛ける。
「暇そうだったので」
「そりゃあ暇だけどさあ。冬になると安楽椅子冒険者の仕事も減るし……」
さらにさらに。
「女王陛下が来るんで一緒にお出迎えしませんか」
「あらいいわね。私、ちょうどやることがなくなって来たところだったの」
ドロテアさんに声も掛けてみた。
このギルドマスター夫人は人間ではないので、年を取らない。
お子さん三人がみんな成人しているというのに、ご本人は異常に若々しい。
二十歳代半ばそこそこにしか見えない……。
「やあやあドロテアさんお久しぶり」
「あらーリップルさーん」
いえー、と二人でハイタッチしている。
人生のベテランお二人だから、コゲタがやるハイタッチよりもゆっくりしてて落ち着いたものだ……。
それを口にしたら睨まれそうだから何も言わないけど。
後は……。
「どの面下げて私に依頼を……?」
「ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます~、じゃなーい!!」
エリィにどつかれたのだった。
彼女に会いに行くと行ったらシャザクもついてきた。
で、むくれているエリィに美味しいお菓子の詰め合わせを差し入れるのだ。
「あ、ありがとうございます、気を使わせちゃって……」
「親しき仲にも礼儀というものは必要ですから。どうぞよろしくお願いします、エリィさん」
これでエリィは断れなくなった。
さて、バルバラ女王を迎える勢力は、僕、リップル、ドロテアさん、エリィ、シャザクの五人……。
「ご主人~!」
コゲタが僕のにおいを追ってやって来た!
六人になりました。
「そっか、コゲタも冒険者にチャレンジするし、お仕事してもいいかもなー」
「おしごとするー!」
「あらー、コゲタちゃんはやっぱりカワイイわね」
ドロテアさんがしゃがんでコゲタを目線を合わせて、いぇーい、とタッチする。
この二人は仲良しなのだ。
年の差が凄い。
この間聞いたんだけど、コボルドの寿命は二十年ちょっとくらいらしいので、未成年のコゲタは多分三歳くらいではないか。
大体四歳で成人ということになるらしい。
もうすぐ大人だし、アーランの観光大使みたいな役割を果たしてもよかろう……。
こうしてメンバーが揃ったので、女王陛下の到着を待つことにした。
アーランに向かってやって来る一団がある。
妙に露出度が高いな。
あっ、何か着込み始めた。
この大陸の気候はなかなか極端で、寒いところと暖かいところが明確に切り替わる。
あの辺りがアーランの寒さが始まるところなんだな。
視認できるんだ……。
もこもこしたファイブショーナンの人たち、入国!
「来たのじゃー! わらわ、冬、初体験!」
「バルバラ陛下、ようこそ真っ白なアーランへ!」
「うむうむ」
彼女をお迎えしたら、大変ご満悦なのだった。
ずっと温暖なファイブショーナンでは、雪を見ることなど絶対にない。
女王の連れて来た国民たちも、珍しそうにずっときょろきょろしている。
あっ、雪をすくって食べようとしている!
「雪はばっちいので食べてはいけないよ」
「そうなの!?」
「降ってきたばかりならいいが、降り積もっているものは色々な汚れを吸っているからね」
リップルの言葉の説得力に、南国からの観光客はほほー、と感心するのだった。
「では皆さん、私が案内するわね。雪の商店街も楽しいものよ」
「えー、この旗を目印についてきてくださーい」
ドロテアさんとエリィが、観光客の一部を連れて移動していった。
エリィはその商店街……商業地区を根城にする、豪商の娘だしな。
心強い!
で、僕とリップルとシャザク、それとコゲタで、女王陛下と彼女のお付きを案内する。
まずは……。
「雪の王宮がいいんじゃない?」
リップルが凄い提案をしてきたな……。
「いいの?」
「いいんじゃないかな」
シャザクが適当な感じで承認してきたぞ。
では行こう行こう、ということになった。
山の手の町並みは、雪を纏うと実に絵になる。
女王とお付き達が、「ほおー」「美しい」「絵になりますねこれ!」と大盛りあがりだ。
「ところで女王陛下、どうしていきなりファイブショーナンの人をたくさん連れてお越しになったんで?」
「それはじゃな、ツーテイカーの連中が急に貿易力を身に着けて、各地によく冷えた酒を売り込んでいるらしいからじゃ。なぜ方向転換したかは分からぬが、より手強くなったわ。なので、わらわが自らこちらに来て、アーランとの結びつきの強さを強調する意図がじゃな」
「な、なるほどー。誰がツーテイカーを強くしたんでしょうねえー」
「知らぬ。それにここまで来た本当の理由は、雪が降ったと聞いて、これはアーランで熱い料理が美味いぞと思ってな……。ついでに、大人数で楽しもうということで国民からランダムに選んで連れてきた」
目的は本当に観光だった!!
内心でホッとする僕なのだった。
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