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73・カレーコを求めて
第218話 ステップ地帯を行く
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数日間北上していると、明らかに気候が変わってくる。
おお、懐かしき砂漠の王国への道。
ツインは真面目なので、周囲を警戒しながら先頭を行く。
街道に沿っていけばいいので、迷うということは無いのだが……。
賊は出るからね。
辺りの植生が変化し、ステップ地帯に変わってきた。
背の低い木々が茂っており、葉っぱも小さい。
その木々もどんどん減ってきて、焦げ茶の土の上に背の低い草ばかりになってきたぞ。
「この辺りは寒暖差が激しいと聞きます~。早めに野宿して、暖かくして朝を待ちましょう~」
ルリアは口調はのんびりだが、考え方はしっかりしているなあ。
「コゲタちゃん、テントを張る準備を手伝ってね」
「はーい!」
コゲタが元気に返事をして、ルリアと二人で作業を開始したのだった。
ほうほう、テントは一つ?
「これはですね~。私はあらゆる状況を逆戻しにする力を持っていますが、自身の戦闘能力はそう高くないので~」
「なるほど~」
思わずのんびりした口調に引っ張られる僕なのだった。
「では、夕食はこのマサラガラムを使って……」
「おおー!!」
「おお~」
「からいからーい!」
「コゲタのはあんまり辛くしないからね」
ステップでは水は貴重なのが基本だが、なんと街道を外れてちょっと行くと海がある。
海水を蒸留すれば水がガッツリ手に入るのだ。
「ではナザルは料理をしていてくれ! 僕が水を取りに行こう。ルリア、ナザルの手伝いをしてやってくれ!」
「はあ~い」
「あっ、じゃあ乾物を戻してください。それが具になるので。戻したお湯をそのまま使って、特製スープに乾パンを浸して食いましょう」
「いいですねえ~。マサラガラムの味も香りも、私大好きです~」
ルリアがゆっくり手を叩いた。
とても喜んでいるらしい。
では料理開始ということになり、たっぷりと水を使ってスープを作る。
マサラガラムのいい香りが周囲に漂い始めた。
なにもないステップでは、この匂いはどこまでも届くことだろう……。
さて、ステップと言うと僕はモンゴルみたいなところをイメージするのだが……。
ここのステップはなんだか様子が違う。
草木は背が低いとは言っても、生えてるなー、茂ってるなーという程度の量はある。
そしてその中を、もさもさに毛が生えた牛みたいな生き物がゆっくり歩いていくのだ。
「バッファローじゃねえか」
見た目は実にバッファローっぽい。
それが匂いに釣られてか、ゆーっくり近づいてくる。
近づいて近づいて、まだまだ近づいて……。
ん?
縮尺おかしくない?
「ああ~、あ、あれは~」
緊張感の無い声で驚くルリア。
「知ってるんですか、あのでっかいバッファロー」
「あれは~。伝説の魔獣、ベヒーモスです~」
「なんですって」
ベヒーモスはのんびり近づいてくると、僕らをじーっと見下ろした。
その大きさ、肩の高さだけで50mはあるんじゃないか。
「ナザルさん~」
「あっはい」
「ベヒーモスは温厚な魔獣です~。敵意の無いものには何もしません~」
「なーるほど。では……これならどうかな」
僕はマサラガラムのたっぷりはいったスープをひと掬いし、ベヒーモスに差し出した。
巨大な魔獣はじーっとこれを見ると、大きな舌をべろーんと出してきた。
そこに一匙載せてやる。
『ぶもー』
おっ、ほんの少しでもこの強烈な香味は分かるようだな!
ベヒーモスはしばらくぶもぶも鼻息を吹き出していた。
すごい勢いだ!
テントごと僕らが吹き飛ばされそう!
もちろん、火は消えた。
おっ、向こうから完全武装になったツインが走ってくる。
ルリアを守るつもりだな。
だがその必要はさなそうだ。
ベヒーモスはゆっくりとターンすると、去っていくのだった。
本当に何もしなかったな……。
マサラガラムの香りに興味を持って、覗きに来ただけだった。
あんな巨大な怪物が、ステップには住んでいるんだなあ……。
「おっきかったー!」
コゲタは「はひー」と息を吐きながら、手をバタバタさせている。
びっくりして、思わず息が止まっちゃったかー。
「大丈夫だったか!? まさかベヒーモスがいるとは……。あれは神出鬼没の魔獣。どこに現れるかは分からないんだ。僕らも出会ったのはこれが二回目。以前はシズマの沈没能力が通じなかった」
「マジですか。それは凄まじいなあ」
正確には、ベヒーモスを沈められたが、すぐに出てきてしまったということだった。
土に親しい魔獣らしく、シズマの能力とは相性がとても悪いんだとか。
僕の油も、あの大きさを覆うには魔力か、油の樽がいくつも必要だなあ。
平和的に終わって良かった良かった。
逆に考えると、そんなベヒーモスの興味を惹くほどの力が、このマサラガラムにはあるということなのだな。
「では、そんなすごい力を持ったマサラガラムのスープを食べて夕食としましょう!」
僕らは食事を開始するのだった。
賊なんかも現れるかなと思ったのだが、ベヒーモスがやってきたあとで、僕らに食って掛かる元気はなかったらしい。
大変平和なまま、ステップは夜になるのだった。
おお、懐かしき砂漠の王国への道。
ツインは真面目なので、周囲を警戒しながら先頭を行く。
街道に沿っていけばいいので、迷うということは無いのだが……。
賊は出るからね。
辺りの植生が変化し、ステップ地帯に変わってきた。
背の低い木々が茂っており、葉っぱも小さい。
その木々もどんどん減ってきて、焦げ茶の土の上に背の低い草ばかりになってきたぞ。
「この辺りは寒暖差が激しいと聞きます~。早めに野宿して、暖かくして朝を待ちましょう~」
ルリアは口調はのんびりだが、考え方はしっかりしているなあ。
「コゲタちゃん、テントを張る準備を手伝ってね」
「はーい!」
コゲタが元気に返事をして、ルリアと二人で作業を開始したのだった。
ほうほう、テントは一つ?
「これはですね~。私はあらゆる状況を逆戻しにする力を持っていますが、自身の戦闘能力はそう高くないので~」
「なるほど~」
思わずのんびりした口調に引っ張られる僕なのだった。
「では、夕食はこのマサラガラムを使って……」
「おおー!!」
「おお~」
「からいからーい!」
「コゲタのはあんまり辛くしないからね」
ステップでは水は貴重なのが基本だが、なんと街道を外れてちょっと行くと海がある。
海水を蒸留すれば水がガッツリ手に入るのだ。
「ではナザルは料理をしていてくれ! 僕が水を取りに行こう。ルリア、ナザルの手伝いをしてやってくれ!」
「はあ~い」
「あっ、じゃあ乾物を戻してください。それが具になるので。戻したお湯をそのまま使って、特製スープに乾パンを浸して食いましょう」
「いいですねえ~。マサラガラムの味も香りも、私大好きです~」
ルリアがゆっくり手を叩いた。
とても喜んでいるらしい。
では料理開始ということになり、たっぷりと水を使ってスープを作る。
マサラガラムのいい香りが周囲に漂い始めた。
なにもないステップでは、この匂いはどこまでも届くことだろう……。
さて、ステップと言うと僕はモンゴルみたいなところをイメージするのだが……。
ここのステップはなんだか様子が違う。
草木は背が低いとは言っても、生えてるなー、茂ってるなーという程度の量はある。
そしてその中を、もさもさに毛が生えた牛みたいな生き物がゆっくり歩いていくのだ。
「バッファローじゃねえか」
見た目は実にバッファローっぽい。
それが匂いに釣られてか、ゆーっくり近づいてくる。
近づいて近づいて、まだまだ近づいて……。
ん?
縮尺おかしくない?
「ああ~、あ、あれは~」
緊張感の無い声で驚くルリア。
「知ってるんですか、あのでっかいバッファロー」
「あれは~。伝説の魔獣、ベヒーモスです~」
「なんですって」
ベヒーモスはのんびり近づいてくると、僕らをじーっと見下ろした。
その大きさ、肩の高さだけで50mはあるんじゃないか。
「ナザルさん~」
「あっはい」
「ベヒーモスは温厚な魔獣です~。敵意の無いものには何もしません~」
「なーるほど。では……これならどうかな」
僕はマサラガラムのたっぷりはいったスープをひと掬いし、ベヒーモスに差し出した。
巨大な魔獣はじーっとこれを見ると、大きな舌をべろーんと出してきた。
そこに一匙載せてやる。
『ぶもー』
おっ、ほんの少しでもこの強烈な香味は分かるようだな!
ベヒーモスはしばらくぶもぶも鼻息を吹き出していた。
すごい勢いだ!
テントごと僕らが吹き飛ばされそう!
もちろん、火は消えた。
おっ、向こうから完全武装になったツインが走ってくる。
ルリアを守るつもりだな。
だがその必要はさなそうだ。
ベヒーモスはゆっくりとターンすると、去っていくのだった。
本当に何もしなかったな……。
マサラガラムの香りに興味を持って、覗きに来ただけだった。
あんな巨大な怪物が、ステップには住んでいるんだなあ……。
「おっきかったー!」
コゲタは「はひー」と息を吐きながら、手をバタバタさせている。
びっくりして、思わず息が止まっちゃったかー。
「大丈夫だったか!? まさかベヒーモスがいるとは……。あれは神出鬼没の魔獣。どこに現れるかは分からないんだ。僕らも出会ったのはこれが二回目。以前はシズマの沈没能力が通じなかった」
「マジですか。それは凄まじいなあ」
正確には、ベヒーモスを沈められたが、すぐに出てきてしまったということだった。
土に親しい魔獣らしく、シズマの能力とは相性がとても悪いんだとか。
僕の油も、あの大きさを覆うには魔力か、油の樽がいくつも必要だなあ。
平和的に終わって良かった良かった。
逆に考えると、そんなベヒーモスの興味を惹くほどの力が、このマサラガラムにはあるということなのだな。
「では、そんなすごい力を持ったマサラガラムのスープを食べて夕食としましょう!」
僕らは食事を開始するのだった。
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大変平和なまま、ステップは夜になるのだった。
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