218 / 337
73・カレーコを求めて
第218話 ステップ地帯を行く
しおりを挟む
数日間北上していると、明らかに気候が変わってくる。
おお、懐かしき砂漠の王国への道。
ツインは真面目なので、周囲を警戒しながら先頭を行く。
街道に沿っていけばいいので、迷うということは無いのだが……。
賊は出るからね。
辺りの植生が変化し、ステップ地帯に変わってきた。
背の低い木々が茂っており、葉っぱも小さい。
その木々もどんどん減ってきて、焦げ茶の土の上に背の低い草ばかりになってきたぞ。
「この辺りは寒暖差が激しいと聞きます~。早めに野宿して、暖かくして朝を待ちましょう~」
ルリアは口調はのんびりだが、考え方はしっかりしているなあ。
「コゲタちゃん、テントを張る準備を手伝ってね」
「はーい!」
コゲタが元気に返事をして、ルリアと二人で作業を開始したのだった。
ほうほう、テントは一つ?
「これはですね~。私はあらゆる状況を逆戻しにする力を持っていますが、自身の戦闘能力はそう高くないので~」
「なるほど~」
思わずのんびりした口調に引っ張られる僕なのだった。
「では、夕食はこのマサラガラムを使って……」
「おおー!!」
「おお~」
「からいからーい!」
「コゲタのはあんまり辛くしないからね」
ステップでは水は貴重なのが基本だが、なんと街道を外れてちょっと行くと海がある。
海水を蒸留すれば水がガッツリ手に入るのだ。
「ではナザルは料理をしていてくれ! 僕が水を取りに行こう。ルリア、ナザルの手伝いをしてやってくれ!」
「はあ~い」
「あっ、じゃあ乾物を戻してください。それが具になるので。戻したお湯をそのまま使って、特製スープに乾パンを浸して食いましょう」
「いいですねえ~。マサラガラムの味も香りも、私大好きです~」
ルリアがゆっくり手を叩いた。
とても喜んでいるらしい。
では料理開始ということになり、たっぷりと水を使ってスープを作る。
マサラガラムのいい香りが周囲に漂い始めた。
なにもないステップでは、この匂いはどこまでも届くことだろう……。
さて、ステップと言うと僕はモンゴルみたいなところをイメージするのだが……。
ここのステップはなんだか様子が違う。
草木は背が低いとは言っても、生えてるなー、茂ってるなーという程度の量はある。
そしてその中を、もさもさに毛が生えた牛みたいな生き物がゆっくり歩いていくのだ。
「バッファローじゃねえか」
見た目は実にバッファローっぽい。
それが匂いに釣られてか、ゆーっくり近づいてくる。
近づいて近づいて、まだまだ近づいて……。
ん?
縮尺おかしくない?
「ああ~、あ、あれは~」
緊張感の無い声で驚くルリア。
「知ってるんですか、あのでっかいバッファロー」
「あれは~。伝説の魔獣、ベヒーモスです~」
「なんですって」
ベヒーモスはのんびり近づいてくると、僕らをじーっと見下ろした。
その大きさ、肩の高さだけで50mはあるんじゃないか。
「ナザルさん~」
「あっはい」
「ベヒーモスは温厚な魔獣です~。敵意の無いものには何もしません~」
「なーるほど。では……これならどうかな」
僕はマサラガラムのたっぷりはいったスープをひと掬いし、ベヒーモスに差し出した。
巨大な魔獣はじーっとこれを見ると、大きな舌をべろーんと出してきた。
そこに一匙載せてやる。
『ぶもー』
おっ、ほんの少しでもこの強烈な香味は分かるようだな!
ベヒーモスはしばらくぶもぶも鼻息を吹き出していた。
すごい勢いだ!
テントごと僕らが吹き飛ばされそう!
もちろん、火は消えた。
おっ、向こうから完全武装になったツインが走ってくる。
ルリアを守るつもりだな。
だがその必要はさなそうだ。
ベヒーモスはゆっくりとターンすると、去っていくのだった。
本当に何もしなかったな……。
マサラガラムの香りに興味を持って、覗きに来ただけだった。
あんな巨大な怪物が、ステップには住んでいるんだなあ……。
「おっきかったー!」
コゲタは「はひー」と息を吐きながら、手をバタバタさせている。
びっくりして、思わず息が止まっちゃったかー。
「大丈夫だったか!? まさかベヒーモスがいるとは……。あれは神出鬼没の魔獣。どこに現れるかは分からないんだ。僕らも出会ったのはこれが二回目。以前はシズマの沈没能力が通じなかった」
「マジですか。それは凄まじいなあ」
正確には、ベヒーモスを沈められたが、すぐに出てきてしまったということだった。
土に親しい魔獣らしく、シズマの能力とは相性がとても悪いんだとか。
僕の油も、あの大きさを覆うには魔力か、油の樽がいくつも必要だなあ。
平和的に終わって良かった良かった。
逆に考えると、そんなベヒーモスの興味を惹くほどの力が、このマサラガラムにはあるということなのだな。
「では、そんなすごい力を持ったマサラガラムのスープを食べて夕食としましょう!」
僕らは食事を開始するのだった。
賊なんかも現れるかなと思ったのだが、ベヒーモスがやってきたあとで、僕らに食って掛かる元気はなかったらしい。
大変平和なまま、ステップは夜になるのだった。
おお、懐かしき砂漠の王国への道。
ツインは真面目なので、周囲を警戒しながら先頭を行く。
街道に沿っていけばいいので、迷うということは無いのだが……。
賊は出るからね。
辺りの植生が変化し、ステップ地帯に変わってきた。
背の低い木々が茂っており、葉っぱも小さい。
その木々もどんどん減ってきて、焦げ茶の土の上に背の低い草ばかりになってきたぞ。
「この辺りは寒暖差が激しいと聞きます~。早めに野宿して、暖かくして朝を待ちましょう~」
ルリアは口調はのんびりだが、考え方はしっかりしているなあ。
「コゲタちゃん、テントを張る準備を手伝ってね」
「はーい!」
コゲタが元気に返事をして、ルリアと二人で作業を開始したのだった。
ほうほう、テントは一つ?
「これはですね~。私はあらゆる状況を逆戻しにする力を持っていますが、自身の戦闘能力はそう高くないので~」
「なるほど~」
思わずのんびりした口調に引っ張られる僕なのだった。
「では、夕食はこのマサラガラムを使って……」
「おおー!!」
「おお~」
「からいからーい!」
「コゲタのはあんまり辛くしないからね」
ステップでは水は貴重なのが基本だが、なんと街道を外れてちょっと行くと海がある。
海水を蒸留すれば水がガッツリ手に入るのだ。
「ではナザルは料理をしていてくれ! 僕が水を取りに行こう。ルリア、ナザルの手伝いをしてやってくれ!」
「はあ~い」
「あっ、じゃあ乾物を戻してください。それが具になるので。戻したお湯をそのまま使って、特製スープに乾パンを浸して食いましょう」
「いいですねえ~。マサラガラムの味も香りも、私大好きです~」
ルリアがゆっくり手を叩いた。
とても喜んでいるらしい。
では料理開始ということになり、たっぷりと水を使ってスープを作る。
マサラガラムのいい香りが周囲に漂い始めた。
なにもないステップでは、この匂いはどこまでも届くことだろう……。
さて、ステップと言うと僕はモンゴルみたいなところをイメージするのだが……。
ここのステップはなんだか様子が違う。
草木は背が低いとは言っても、生えてるなー、茂ってるなーという程度の量はある。
そしてその中を、もさもさに毛が生えた牛みたいな生き物がゆっくり歩いていくのだ。
「バッファローじゃねえか」
見た目は実にバッファローっぽい。
それが匂いに釣られてか、ゆーっくり近づいてくる。
近づいて近づいて、まだまだ近づいて……。
ん?
縮尺おかしくない?
「ああ~、あ、あれは~」
緊張感の無い声で驚くルリア。
「知ってるんですか、あのでっかいバッファロー」
「あれは~。伝説の魔獣、ベヒーモスです~」
「なんですって」
ベヒーモスはのんびり近づいてくると、僕らをじーっと見下ろした。
その大きさ、肩の高さだけで50mはあるんじゃないか。
「ナザルさん~」
「あっはい」
「ベヒーモスは温厚な魔獣です~。敵意の無いものには何もしません~」
「なーるほど。では……これならどうかな」
僕はマサラガラムのたっぷりはいったスープをひと掬いし、ベヒーモスに差し出した。
巨大な魔獣はじーっとこれを見ると、大きな舌をべろーんと出してきた。
そこに一匙載せてやる。
『ぶもー』
おっ、ほんの少しでもこの強烈な香味は分かるようだな!
ベヒーモスはしばらくぶもぶも鼻息を吹き出していた。
すごい勢いだ!
テントごと僕らが吹き飛ばされそう!
もちろん、火は消えた。
おっ、向こうから完全武装になったツインが走ってくる。
ルリアを守るつもりだな。
だがその必要はさなそうだ。
ベヒーモスはゆっくりとターンすると、去っていくのだった。
本当に何もしなかったな……。
マサラガラムの香りに興味を持って、覗きに来ただけだった。
あんな巨大な怪物が、ステップには住んでいるんだなあ……。
「おっきかったー!」
コゲタは「はひー」と息を吐きながら、手をバタバタさせている。
びっくりして、思わず息が止まっちゃったかー。
「大丈夫だったか!? まさかベヒーモスがいるとは……。あれは神出鬼没の魔獣。どこに現れるかは分からないんだ。僕らも出会ったのはこれが二回目。以前はシズマの沈没能力が通じなかった」
「マジですか。それは凄まじいなあ」
正確には、ベヒーモスを沈められたが、すぐに出てきてしまったということだった。
土に親しい魔獣らしく、シズマの能力とは相性がとても悪いんだとか。
僕の油も、あの大きさを覆うには魔力か、油の樽がいくつも必要だなあ。
平和的に終わって良かった良かった。
逆に考えると、そんなベヒーモスの興味を惹くほどの力が、このマサラガラムにはあるということなのだな。
「では、そんなすごい力を持ったマサラガラムのスープを食べて夕食としましょう!」
僕らは食事を開始するのだった。
賊なんかも現れるかなと思ったのだが、ベヒーモスがやってきたあとで、僕らに食って掛かる元気はなかったらしい。
大変平和なまま、ステップは夜になるのだった。
22
あなたにおすすめの小説
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる