俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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75・カレーなる凱旋

第226話 マイルドなカレーで行くぞ

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 ここから試食!!
 シャザクやシェフたちにとっては、これこそが本番。
 完成したカレーという料理を、生まれて初めて味わうのだ。

「マサラガラムとは全く違う香り……。鼻腔をくすぐるかぐわしさはあっても、突き抜ける強さがなく、まろやか……。それでいて強烈に食欲を刺激してくる」

「シャザクが食べる前から食レポしてやがる」

「これは詩人になってしまうだろう……!!」

 シェフたちも何やら、カレーの香りにうっとりしているではないか。
 カレー。
 この世界で作り上げると、あの茶色いドロリとした液体にはならない。

 ベースのカレーコが金色なんだよな。
 だから黄金のペーストになる。
 まばゆい~。

 そして眩しいだけではなく美味い。
 圧倒的に美味い。
 まあマサラガラム抜きでもちょっと美味しいレトルトカレーくらい美味しい。
 つまり超ハイレベルってことだ。

 カレーコだけで作ったシチュー状のそれを、シャザクとシェフたちが口に運ぶ。

「むおおお!!」「うおおおお!!」「ぬおおおお!!」「ぐおおおお!」

 シェフたちが叫んでる。
 ご満足いただけたようだ。
 シャザクもうんうん頷いている。

「ぴりりと来るが優しい辛さだ。ここにマサラガラムを加えると、あの辛味も一体となるんだな」

「そうだ。三辛くらいになる」

「さんから……?」

 なお、カレーコだけのスープなら、コゲタも食べられる。

「おいしーね!」

 ニコニコしながら食べるコゲタなのだった。
 別にコゲタがいる意味はないのだが、せっかくなので同じ部屋で見学していてもらったのである。

 僕もカレーを食べる。
 うん、割とウマい。
 生前よく食べていたから、新鮮な感動はないが懐かしい味だな。

 郷愁を覚える。
 まあ、転生したからもう戻ることはできないんだけどね。

「えー、じゃあ味変をするぞー! マサラガラムそれなりに混ぜた鍋がこっち。にんにくを加えたものがこっち」

 わいわいとお椀を持って集まってくるシャザクとシェフたち。
 マサラガラム入のものは三辛くらいになるので、ひいひい、ふうふう言いながら食べていた。
 にんにくが入ると、これに強烈なパンチが効き始める。

「す、すごい刺激的な味だ! だが、元気が出てくる気がする……!!」

「にんにくはスタミナ食材だからな!」

 全体的に好評と言うか、大好評だった。
 危うく、ロイヤルファミリーの分を食べ尽くすところだったじゃないか。

 僕らは大慌てで追加分を作り、ドワークの鍛冶屋に発注していた保温容器に注ぎ込んだ。
 味変分も含めて、三つの保温容器が用意されている。
 これをロイヤルファミリーが待つところまでサーブだ。

 果たして、第二王子一家はすごい目をして待っていた。

「あまりにも美味そうな香りが漂ってくるのに、いつまで経っても料理が来ない……! 何度厨房に押しかけようかと思ったぞ……!!」

「はっ。殿下、空腹は食事を美味しくする最高のスパイスですから。では……プレーンからサーブして参ります」

 僕の宣言に続き、シェフたちが料理を盛り付ける。
 具沢山のカレーである。

 プレーンカレーとパンが添えられていた。
 茹で上がったうどんもあるので、カレーうどんにしていただいてもいい。

「いただこう……!!」

「いただくわ……!」

「いただきまあす!!」

 お嬢さんはついに、僕の前世の世界の食事の挨拶にたどり着いてしまっている。
 三人は、貴族の頂点たるロイヤルの余裕をかなぐり捨て、カレーに挑んだ!

 おお!
 カレーとパンとうどんがみるみる減っていく!
 殿下は完全にうどんを啜る技を身に着けており、カレーが跳ねる対策用の前掛けをつけて見事にずるずる食べている。

 奥方はパン専門だ。
 なにっ、パンの間にカレーを挟んで食べる……!?
 悪魔的な食べ方を開発なさるお方だ。

 お嬢さんはうどんとパンをぶつ切りにしてカレーに放り込む、パクパク食べる。
 正義!

 カレーはどう食べても美味いのだ。

「ではここから、マサラガラムを足した第二段階のカレーです。これはかなりスパイシーですから、こちらにミルクを用意してあります」

 これもまた受けた。
 大いに受けた。
 味変で飽きることなく、カレーを消費していけるのだ。

「こ、これは結構辛くて、するするいけないかも……」

 お嬢さんが難色を示した。

「ではこの漬物をどうぞ……」

「えっ、カレーの合間に漬物を!? あら! これ! パリパリしてて美味しい! 甘酸っぱくて……これなら辛いものもパクパクいけちゃう!」

「わ、わたくしにもちょうだい!」

「私にもだ!」

 漬物をサーブする僕。
 ロイヤルファミリーが猛烈な勢いで第二段階カレーを平らげるさまをニコニコしながら眺めるのだった。

「最後です。これはとても強烈な味わいなので、少量だけお召し上がりください」

 にんにくを加えた、完成形。
 パルメディアカレーとでも呼ぼうか。

 これを食べたものは、この世界に僕とシャザクとシェフたちしかいない。

「殿下、こちらは……ナザルが見つけ出した食べ物の中でも、恐らく究極のものでしょう」

「シャザクがそこまで言うのか!!」

 驚愕するデュオス殿下。
 重々しく頷くシャザク。
 奥方とお嬢さんがごくりとつばを飲んだ。

 そしてついに差し出される、にんにく入りの完成形カレー……!
 古代魔法王国時代、カレーはこの形を持って完成とされていたのだ。

 殿下はこれを一匙掬うと、口に運んだ。
 カッと見開かれる目!

 思わず立ち上がる殿下!

「うっ、うっ、うっ……うーまーいーぞーっ!!」

 屋敷中に殿下の咆哮が響き渡った!
 アーラン最高の香りを誇る三種のハーブを使った、最高にして最香の料理を口にしたのである!

 殿下は自分の分の器を瞬く間に平らげた後、ふう……とため息をついた後に放心状態になった。
 あー、やっぱりなりますか。

 なお、奥方も順調に放心状態になり、お嬢さんだけが「お代わりないの? えっ、これだけ!? もっと食べたいなあ……。えっ、太っちゃう? ほんと!?」なんて言っていたのだった。

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