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87・独り立ちを眺める夏
第267話 コゲタの納品を見届けよう
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差し入れをし、水田をチェックして回り、僕はすぐに外に飛び出した。
チェックはいつでも来れる。
だが、コゲタの初めてのパーティーでの仕事は今日しかないのだ!
ロバはのんびり歩くので、コゲタたち一行はまだ職人街に到着していなかった。
僕は後ろをそろりそろりとつけていく。
順調ではないか。
若者たちとコゲタも仲良くお喋りしている。
僕の前ではもっと子どもだと思っていたが、ちゃんと大人の人間と話ができる社会性を育んでいたのだ。
うーん、感動だなあ。
おっ、納品が終わった。
ロバと荷車は専用の馬房に預けられる。
これは翌日、また荷物を持って遺跡に帰っていくのだ。
職人から仕事達成の証明となる証票をもらい、これにて仕事達成!
一行は冒険者ギルドに向かう。
証票というのは仕事達成の証明で、そういう内容が刻まれた小さな木の板だ。
複雑な模様と木目が組み合わさっているから、コピーは困難だぞ。
「あらナザルさん、何をなさってるの?」
僕に声を掛けた人物がいる。
黒髪で、上品な黒い上下に身を包んだ若々しく美しい御婦人だ。
そう、彼女はギルドマスター夫人である。
「あっ、ドロテアさん! これはですね、話せば長いことながら、コゲタの初めてのパーティを組んでの仕事をこっそり見守っているんです」
「あらー! コゲタちゃんは冒険者になったのね! 凄いわ! 時の流れは本当に早いわよね……。私の子どもたちも、ついこの間まで小さかったと思ったらみんなおじさんになっていて、この間孫が生まれて」
「ドロテアさんに孫が!? おっと、話し込んでいる場合ではなかった」
「いいわ、私もついていくわね。ちょうどお散歩をしていたところだったの」
「じゃあギルドまで様子を見に行きますか」
あまり見守っていることを知られると、子どもというのは嫌がるものだ。
僕は前世でそういうテレビ番組などを見ていたからよく知っているんだ。
コゲタたちが入っていったあと、僕らは気付かれないようにそーっと入った。
「あっ!」
他の冒険者が気づいて声を上げるのを、シーッ!と静かにしてもらうジェスチャーをする。
冒険者は僕とコゲタを交互に見て、納得したようだ。
「心配性っすね」
「当たり前だろう」
被保護者が独り立ちするのを心配するのは当然である。
おっおっ、今まさにコゲタが証票を渡すところだ。
カウンターまで背が届かないので、仲間に後ろから抱えあげてもらって証票を手渡した。
コゲタにやらせてあげるの、優しい子たちだなあ!
僕が後で色々サービスをしてあげよう。
具体的には謎のパトロンから成功報酬に色を付けて払われるからな。
「ナザルさん、すっかりお父さんね」
「よく言われますが、種族が違いますからね」
「あら、それなら私は夫と種族が違うし、生まれた子どもたちもみんな人間で違う種族だわ」
「ドロテアさんは説得力がありすぎて反論できませんよ」
ということで、僕らは知らんぷりでギルドの酒場に腰掛けた。
マスターが休憩中だったが、特別にお茶を淹れてくれる。
カウンターの前では、コゲタたちが仕事の成功を喜び合っているところだった。
「これは小さな一歩かも知れないが、こうやって信頼を積み重ねていって、もっと大きな一歩を踏み出せるようになろうな!」
リーダー格らしき少年……とは言っても成人はしているだろうが……が力強く宣言する。
仲間たちも「おーっ!」と賛同した。
コゲタもぴょんと跳ねて「おー!」と言う。
うーんかわいい。
どうやらコゲタは、彼らと行動をともにすることにしたようである。
これから忙しくなるんだな。
寂しくなるなあ。
いや、アイアン級のうちはほぼ毎日うちの宿に帰ってくるんだけど。
「あっ、ごしゅじーん!! ドロテアさーん!」
コゲタが僕らを発見!
トテトテ走ってきた。
パーティは解散したらしい。
「おおコゲタ、もう仕事は終わったのかい?」
「うん!」
「コゲタちゃん、きちんとお仕事達成できて偉いわね。飴たべる?」
飴ちゃんだ!
ドロテアさん、若々しい美女の姿なんだけど、御年は還暦を超えている可能性があるから、立派なおばさまでもあるんだよなあ。
「わーい!」
飴を受け取り、口に放り込むコゲタ。
口の中でコロコロしている。
「そうか、他の仲間達はみんな田舎から出てきた子たちなのか。一緒に宿の部屋をシェアしてるのかな?」
「おんなじによいしてたよ! あっ、あとねあとね、ご主人のによいもとちゅうでした!」
ギクッ!!
「そうかそうか……。まあ僕も仕事であちこち行ったり来たりするからね! それと、彼らが同じ匂いということは、同じ部屋で寝起きしてるんだろうなあ」
今は節約生活をし、カッパー級になったら自分の部屋を借りる。
報酬で、それだけの暮らしができるようになるからだ。
まあ、安い宿限定なんだが。
その日まで、彼ら田舎から出てきたボーイズはルームシェアしながら頑張るのだろう。
コゲタへの面倒見もいいし、彼らならうちの子を任せてもいいかも知れない。
「仕事どうだった? 大変だった?」
「たのしかった! こんどはねー、あさって!」
「そうかー! 頑張るんだぞコゲタ!!」
僕はコゲタをわしゃわしゃして応援するのだった。
「それはそうと、ナザルさんも色々やることがあるのよねえ?」
「いや、全く仰る通りなんですけど」
水田の管理、本格的にやっていかねばなのだ。
チェックはいつでも来れる。
だが、コゲタの初めてのパーティーでの仕事は今日しかないのだ!
ロバはのんびり歩くので、コゲタたち一行はまだ職人街に到着していなかった。
僕は後ろをそろりそろりとつけていく。
順調ではないか。
若者たちとコゲタも仲良くお喋りしている。
僕の前ではもっと子どもだと思っていたが、ちゃんと大人の人間と話ができる社会性を育んでいたのだ。
うーん、感動だなあ。
おっ、納品が終わった。
ロバと荷車は専用の馬房に預けられる。
これは翌日、また荷物を持って遺跡に帰っていくのだ。
職人から仕事達成の証明となる証票をもらい、これにて仕事達成!
一行は冒険者ギルドに向かう。
証票というのは仕事達成の証明で、そういう内容が刻まれた小さな木の板だ。
複雑な模様と木目が組み合わさっているから、コピーは困難だぞ。
「あらナザルさん、何をなさってるの?」
僕に声を掛けた人物がいる。
黒髪で、上品な黒い上下に身を包んだ若々しく美しい御婦人だ。
そう、彼女はギルドマスター夫人である。
「あっ、ドロテアさん! これはですね、話せば長いことながら、コゲタの初めてのパーティを組んでの仕事をこっそり見守っているんです」
「あらー! コゲタちゃんは冒険者になったのね! 凄いわ! 時の流れは本当に早いわよね……。私の子どもたちも、ついこの間まで小さかったと思ったらみんなおじさんになっていて、この間孫が生まれて」
「ドロテアさんに孫が!? おっと、話し込んでいる場合ではなかった」
「いいわ、私もついていくわね。ちょうどお散歩をしていたところだったの」
「じゃあギルドまで様子を見に行きますか」
あまり見守っていることを知られると、子どもというのは嫌がるものだ。
僕は前世でそういうテレビ番組などを見ていたからよく知っているんだ。
コゲタたちが入っていったあと、僕らは気付かれないようにそーっと入った。
「あっ!」
他の冒険者が気づいて声を上げるのを、シーッ!と静かにしてもらうジェスチャーをする。
冒険者は僕とコゲタを交互に見て、納得したようだ。
「心配性っすね」
「当たり前だろう」
被保護者が独り立ちするのを心配するのは当然である。
おっおっ、今まさにコゲタが証票を渡すところだ。
カウンターまで背が届かないので、仲間に後ろから抱えあげてもらって証票を手渡した。
コゲタにやらせてあげるの、優しい子たちだなあ!
僕が後で色々サービスをしてあげよう。
具体的には謎のパトロンから成功報酬に色を付けて払われるからな。
「ナザルさん、すっかりお父さんね」
「よく言われますが、種族が違いますからね」
「あら、それなら私は夫と種族が違うし、生まれた子どもたちもみんな人間で違う種族だわ」
「ドロテアさんは説得力がありすぎて反論できませんよ」
ということで、僕らは知らんぷりでギルドの酒場に腰掛けた。
マスターが休憩中だったが、特別にお茶を淹れてくれる。
カウンターの前では、コゲタたちが仕事の成功を喜び合っているところだった。
「これは小さな一歩かも知れないが、こうやって信頼を積み重ねていって、もっと大きな一歩を踏み出せるようになろうな!」
リーダー格らしき少年……とは言っても成人はしているだろうが……が力強く宣言する。
仲間たちも「おーっ!」と賛同した。
コゲタもぴょんと跳ねて「おー!」と言う。
うーんかわいい。
どうやらコゲタは、彼らと行動をともにすることにしたようである。
これから忙しくなるんだな。
寂しくなるなあ。
いや、アイアン級のうちはほぼ毎日うちの宿に帰ってくるんだけど。
「あっ、ごしゅじーん!! ドロテアさーん!」
コゲタが僕らを発見!
トテトテ走ってきた。
パーティは解散したらしい。
「おおコゲタ、もう仕事は終わったのかい?」
「うん!」
「コゲタちゃん、きちんとお仕事達成できて偉いわね。飴たべる?」
飴ちゃんだ!
ドロテアさん、若々しい美女の姿なんだけど、御年は還暦を超えている可能性があるから、立派なおばさまでもあるんだよなあ。
「わーい!」
飴を受け取り、口に放り込むコゲタ。
口の中でコロコロしている。
「そうか、他の仲間達はみんな田舎から出てきた子たちなのか。一緒に宿の部屋をシェアしてるのかな?」
「おんなじによいしてたよ! あっ、あとねあとね、ご主人のによいもとちゅうでした!」
ギクッ!!
「そうかそうか……。まあ僕も仕事であちこち行ったり来たりするからね! それと、彼らが同じ匂いということは、同じ部屋で寝起きしてるんだろうなあ」
今は節約生活をし、カッパー級になったら自分の部屋を借りる。
報酬で、それだけの暮らしができるようになるからだ。
まあ、安い宿限定なんだが。
その日まで、彼ら田舎から出てきたボーイズはルームシェアしながら頑張るのだろう。
コゲタへの面倒見もいいし、彼らならうちの子を任せてもいいかも知れない。
「仕事どうだった? 大変だった?」
「たのしかった! こんどはねー、あさって!」
「そうかー! 頑張るんだぞコゲタ!!」
僕はコゲタをわしゃわしゃして応援するのだった。
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水田の管理、本格的にやっていかねばなのだ。
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