俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
271 / 337
89・水田の中心で収穫を叫んだ油使い

第271話 遺跡の中の経済圏

しおりを挟む
 来たぞ!
 夜這いが!

 くそっ、こんな時に凄まじいスケールのモテ期が来るとは!!
 予想通り、張っておいた油地獄の罠に嵌まってアップアップしていたので、引き上げて帰らせた。

「玉の輿とか欠片も可能性が無いのでお帰りなさい」

「えーん」

 六人くらい女子が帰っていった!
 貞操観念はどうなっているんだ。
 いや、これは職人たちが我が娘を嫁がせようと仕組んだのだろう。
 恐ろしい連中だ。

 間違いなく味方なのだが、あわよくば身内になろうと狙っていやがる。
 第四層に居を構えるのは考えた方がいいな……。

 僕はその夜のうちに、第三層に作られた村へ向かった。
 町と村の間くらいのサイズだ。

 ここに、第三層で働く人々の家族が住んでいる。
 ちょうど第三層の中央にある形だ。

 ここからならば、三層のあらゆる場所へ向かうことができる。

 そして……。
 第三層というのは、その半分が僕の息がかかった畑なのである!
 オブリーとか大豆とかにんにくとかピーカラとか、カレーコとかマサラガラムとかが育てられているぞ。

 なので、僕が深夜に訪れたというのに……。

「あーっ! あなたはナザルさん!!」

 起きてきた宿の主人は飛び上がって驚き、

「どうぞどうぞ! 一番いいお部屋を用意しますから! おい、起きろ! ナザルさんだ! ナザルさんが我が宿に泊まってくださるぞ!」「えっ、ナザルさんが!?」「まともな作物を全て第一層と第二層に取られて、ほそぼそと暮らしていた第三層に一大美食産業の作物を授けてくださったあのナザルさんか!!」

 泊まっていた人々まで起きてきて、僕を大歓迎するのである。

「ウワーッ! 落ち着け落ち着け!! 大げさ過ぎる!!」

「何が大げさなもんですか。あなたは我々の救世主なんだ。我々に仕事と誇りを与えてくれた!!」「そうだ! 誇りは何よりも重い!」「私達の精神的指導者なんです!」

 大変なことになってきたぞ。
 ということで、やたら広い成金っぽい部屋に案内されてしまったのだった。
 ウワーッ!
 キングサイズベッド!!

 仕方ない。
 好意を受け取ってここで寝ることにするか……。

 僕は恐ろしくフカフカのベッドで、大の字になって寝るのだった。

 朝である。
 目覚めて少ししたら、勝手にルームサービスが来た。
 監視されてる……!?

「第三層で採れる食材を使ったパンとスープです」

「ああ、これはどうも……!」

 明らかに食べたことがある味がする。
 これは、にんにくを効かせた鳥肉のスープと、パンとそれを浸ける用のオブリーオイルだ。
 贅沢な朝食だなあ……!

 アーランの最高級のホテルで出る朝食と同じレベルである。
 もしかして第三層、こんないいものを食べてるのか?

 サーブしてきたのはなんと宿の主人であり、彼は自慢げに告げた。

「第三層で最も美味い朝食ですよ! 我々だってそんなにしょっちゅうは食べられません! ですが、他でもないナザルさんだからこそお出ししたんです! パンは今朝焼いたばかりのもの! オブリーオイルは今朝絞ったばかりのもの! 鳥は昨夜締めて肉を寝かせて落ち着けてあります! にんにくも擦りたてですよ!」

「あまりにも凄い……!!」

「喜んでいただけて何よりです。それでナザルさん、なんでこちらにお越しになったんですか? 夕方くらいに一度ぶらぶらされてたようですが」

「聞いてくれ。実は水田の管理をしにやってきて、これから数ヶ月ほど遺跡の中で過ごすんだが」

「おお、ナザルさんがこちらに長居を!? 素晴らしい!! みんな喜びますよ!」

「うん、僕を慕ってくれるのはいいんだが……水田の職人たちが娘たちを僕に夜這いさせるのだ」

「あー、そりゃあいけません。ナザルさんと言えば婚約者のリップルさんがおられるのは周知の事実ですから」

「おいこら待て」

「美食の革命家と、かつての大英雄の夫婦。この間には何人も入り込むことはできませんよ。我々の間では常識です」

「いやだから違って」

 聞いちゃいねえ!
 だが、その話に乗っておけば誰かに迫られることも無くなるかも知れない。
 僕はそんな噂に乗っておくことにした。

 宿から外に出ると、待ち構えられているのではないかと思っていたが……。
 村は全然日常をやっていた。

 つまり、日々のルーチンワークをみんな真面目にこなしているのだ。
 昨夜は完全なオフタイムだったから僕に注目したわけだ。

 で、僕が近くを通りかかると会釈してくる。
 完全に尊敬されてしまった。

 僕が最初に雇った職人たちは、もっとずっとフラットだったように思うが……。
 彼らの作る食材がアーランにおいて、その価値を認められて人気になるに従い、職人たちの地位や評判も上がっていたのだそうだ。

 そして彼らが呼び寄せた家族や仲間たちは、まだ見ぬナザルという男について想像をたくましくし、ついには英雄視するようになってしまったと。
 なんということだ。
 遺跡が妙なところになってしまっている!

 このような環境で数ヶ月を過ごせるかどうか……。
 僕は唸りながら、第四層の水田に向かうのだった。

 何はともあれ、仕事だ仕事! 

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...